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1節 大気の大循環と地上の天気

 

高層天気図

 高層天気図は,高層の大気の流れや上空の寒気・暖気の様子を示すものである。ラジ

オゾンデ・航空機・気象衛星の観測による風向・風速・等圧面高度・気温・露点温度など

が記入され,特定の高度や等圧面について作成される。各等圧面天気図にはそれぞれ

実用上の利点がある。850hPa700hPaは下層と中層の暖湿気流を,500hPaは大気の代

表的な寒気を,300hPa200hPaはジェット気流を知るのに都合がよい。

 等圧面高度の凹凸を等高線で示したものは,地上天気図の気圧分布に相当する。高

層天気図の等圧面高度の分布は,空間的に不規則に分布している観測値から,等間隔

の格子点の値を計算機によって求め,それから図化される。格子点の間隔は,北半球天

気図で約180km,アジア・極東天気図では約150kmである。このため,波長約100km

下の細かい変化は正確には表現されていない。

 気象に大きな影響を与えるチベットのような大地形を示すため,ほとんどの高層天気図

には,1500m〜3000mの地域を右下がりの斜線で,3000m以上の地域を左下がりの斜線

で示している。

 300hPa天気図を除く各等圧面天気図には,実線で60mごとの等高線,破線で6℃ごと,

必要に応じて3℃ごとの等温線がひかれている。300hPa天気図には,実線で120mごとの

等高線,破線で20ノット(10/s)ごとの等風速線がかかれ,気温分布は6℃ごとの数字

の配列で示してある。

[850hPa700hPa天気図]  850hPa天気図および700hPa天気図は,下層大気の様子

を代表する高層天気図である。特に850hPa天気図は,地表の摩擦や熱の影響がなくなる

最下層に相当するもので,前線の解析に重要である。

 850hPa天気図の等高線は,地上の気圧配置によく似る。しかし,実測される風によって

流線を描くと,高度分布には現れない小さな渦を見いだすこともある。このような渦は,し

ばしば低気圧に成長していく。一方,700hPa天気図では,高気圧や低気圧も,閉じた等

高線で表されるものは少なくなって,等高線は一般に南北に波うつ波形を示すようにな

る。

 850hPa天気図,700hPa天気図ともに,湿数の3℃以下の領域を点々模様で表してい

る。湿数は,気温と露点温度の差であって,相対湿度に相当する。湿数3℃以下の領域

は,850hPa面では下層雲の,700hPa面では下層雲・中層雲の広がりにほぼ一致する。ま

た,大雨に関連が深い湿舌付近では,湿数の水平方向の傾度が非常に大きく,しばしば

下層ジェット気流とよばれる比較的狭い線状の強風域が存在する。

500hPa天気図] 500hPa天気図は,大気の中層の様子を代表するもので,対流圏で

の大気の運動の骨組みを示す最も重要な天気図である。北緯30°60°の中緯度帯での

等高線は,南北に波うつ波形を示し,下層の天気図に見られるような閉じた等高線に囲ま

れた高気圧・低気圧はほとんどない。

 実測される風は,等高線に平行に高度の高いほうを右に見て吹き,等高線が混んでい

るところほど強く吹いて,地衡風の関係が非常によい近似でなりたっていることを示してい

る。したがって,中緯度帯では,大気が南北に波うちながら,西から東へ流れていることに

なる。これは偏西風波動とよばれるもので,波動が南に下がっている部分が気圧の谷(トラ

),北に上がっている部分が気圧の尾根(リッジ)である。上層の偏西風帯の波動は.地

上の高・低気圧と密接に関連している。

[300hPa天気図]  300hPa天気図は,航空機の飛行高度面に近い天気図である。上部

対流圏の様子を代表し,主に背の高い温暖高気圧や,寒冷低気圧,ジェット気流の解析

などに重要である。等風速線分布の極大域を結んだ線がジェット気流軸である。普通,ジ

ェット気流軸は等高線にほぼ平行である。

 

 

ジェット気流軸の解析にあたっては,天気図に記入された実測風も参考にする。

 一般に,偏西風帯には2本以上のジェット気流がある。緯度20°30°の低緯度を流れて

いるものが亜熱帯ジェット気流で,夏には緯度40°付近にまで達するが日々の南北方向へ

の変動は小さい。一方,亜熱帯ジェット気流よりさらに高緯度側には複数の寒帯前線ジェ

ット気流があって,日々南北に大きく変動する。これらのジェット気流は,互いに接近したり

離れたりしながら地球をとり巻いて流れている。

 図Iは,東西に流れる寒帯前線ジェット気流を,南北方向の鉛直断面で切って見た風速

と気温の模式的な分布図である。ジェット気流軸を輪切りにしたジェット核(J)は対流圏上

部に位置し,その下には気温傾度の大きい気層が存在する。この気層は前線面に対応

するもので,上層から下層に向かって南にのび,地上の前線に達している。ジェット気流

は,前線と密接に関連していることを示している。

 ジェット気流は,温帯低気圧の発達や移動とも関係が深い。普通,地上に温帯低気圧

が発生しはじめるときのジェット気流軸の位置は,はるか北西側にある。温帯低気圧が北

東に進んで発達するとともに,ジェット気流軸は低気圧に接近する。地上の低気圧が閉塞

しはじめる時点で,ジェット気流軸は低気圧中心の真上を流れるのが普通である。やがて

低気圧の本体はジェット気流軸北側の気圧の谷の中に入って衰弱し,閉塞点はジェット

気流軸の真下に位置する。

 [東西風の時間・経度平均]  図IIは,地球全体にわたる東西風の季節および経度

平均の緯度高度分布を表したものである。平均期間は12月〜2月の3か月間で,これは

北半球の冬,南半球の夏に対応している。南北両半球の差を度外視すれば,図の左半

分を冬半球,右半分を夏半球と見ることもできる。春秋の状態は,大まかには冬と夏の中

間に近いと考えてよい。この図から,次のような特徴が読みとれる。

 @ 夏冬両半球とも,中緯度の対流圏上部に強い西風が存在する。

 A この西風は冬半球のほうがやや低緯度に寄り,かつ風速が大きい。

 B 対流圏下層の低緯度領域では東風が卓越している。

成層圏(中緯度では約10km以高,低緯度では約15km以高)について見れば,冬半球で

は西風,夏半球では東風が卓越している。

 

 @およびCから,対流圏では年間を通して南北両半球の対称成分が大きく,逆に成層

圏では反対称成分が顕著であるということもできる。したがって,春秋の成層圏はほぼ南

北対称になると考えられるが,事実そのとおり20km以高を見れば(ここに図示はしないが)

赤道領域が弱い東風,中高経度では両半球とも弱い西風になっている。

 

◆渦度と偏西風波動

 高層天気図は上層の大気の流れを示している。流れの中に存在する渦巻きの程度を示

すのが渦度である。流体のある部分が角速度Uで回転しているとき,ω2U の渦度をも

っているという。空気が1秒間に鉛直軸のまわりを0.5×10 -6radの角速度で回転していると

き,渦度を10 -6/sで示す。回転が低気圧性のときを正の渦度,高気圧性のときを負の渦

という。

 

 

上層の大気の流れは一様ではなく,大きく蛇行しながら流れている。偏西風波動と渦の

関係を図IIIに示してある。上層の気圧の谷のところには正の渦,尾根のところには負の渦

が対応していることがわかる。これらの,正の渦度・負の渦度が地上の低気圧の発生・発

に大きく関係している(p.36)3次元の運動をする大気の渦度方程式は.次のように表さ

れる。

 

ここで,ζは渦度,fは転向力(コリオリの力)の鉛直成分,uvxy方向の流れの速度

である。

 いま,地上の気圧を1000hPaと考え,大気の厚さを1000hPaから0hPaまでと考えると,

その中間の500hPa面付近が大気の平均的な流れと考えられるので,500hPa面では収束

も発散もないと仮定する(Div V0)。また,簡単にするため,運動が東西方向(X軸方向)

のみに行われている,すなわち

 

とすると,渦度方程式は

と表される。

 いま,500hPa面での流れが,図IVのような場合について考えてみる。気圧の谷のところ

では正の渦が,尾根のところでは負の渦が対応する。気圧の谷の前面(移動する方向の

)では,正の渦ができてくるので,図中の領域ABでは,時間とともに正の渦ができてく

る。すなわち,ζ5/∂t0 である。したがって式(2)において,流れが東向き(u0)とすれ

ば,ある時刻における渦度の空間的変化は∂ζ5/∂x0となる。これは,気圧の谷の東ほど

渦度は少ないという内容である。

  また,領域ACでは渦度は時間とともに減少する。すなわち,

である。

 

◆渦度分布と地上天気図

 気象庁は500hPa面の渦度分布図を作成し,気象ファックスで送信している。渦度分布

図と地上天気図の関係を見るためには,渦度の様子から渦度の移流を調べる必要があ

る。渦度の移流は,渦度のこう配と風速の積で与えられ,大気の流れの下流に向かって,

正の渦度が減少または負の渦度が増すときを正,逆に,正の渦度が増すか負の渦度が

減少するときを負で表す。渦度移流が正であるところでは上昇流,負の渦度移流のところ

では下降流があり,また上昇流や下降流の大きさは渦度のこう配が大きいほど大きくな

る。したがって,渦度分布図を見ることによって,上昇流・下降流がどこにどの程度に起こ

るかの予測ができ,地上での低気圧や高気圧の発生と発達を知ることができる。

 地上低気圧の風上側に大きな正の渦度の中心があるとき,この低気圧は発達する。渦

度の中心が低気圧の真上にあるときには,低気圧は閉塞過程にあり,渦度の中心が低気

圧の風下にくると,低気圧は衰弱すると考えられる。

 低気圧の移動については,正の渦度が最も増加すると予測される地域に移動していくと

考えられる。

 東西にのびる強風軸があるときには,その北側に正の渦度,南側に負の渦度が生じる。

このとき,渦度0の線と地上の前線が平行に並ぶこともある。前線は一般に渦度0の線の

数百km南に位置する。

 地上の寒冷前線が通過するとき,風上側に正の渦度があるときには天気は回復しにく

く,逆に風上側に負の渦度があるときには天気の回復が急である傾向がある。

 気象庁の数値予報では,500hPa等圧面渦度分布の予想図を192時間(8)先まで計

算している。

 

◆偏西風の波動

 偏西風波動では500hPaの等圧面が代表面になる。偏西風の一般流の速さをUとし,偏

西風波動の波長および波速をそれぞれλおよびcで表すと,次の近似関係が導かれてい

る。

ここでβはロスビー因子とよばれ,コリオリ因子の南北方向の傾度を表すものである。地球

自転の角速度をω,緯度をψ,地球の半径をRとすると,

で与えられる。近似関係といったのは,現実の波動ではもっといろいろの影響が入るの

で,このままでは正確にはなりたたないという意味である。しかし傾向的には実際の現象を

よく説明する。そこでこのような波のことを研究者の名前にちなんでロスビー波ということが

ある。

 この式を少し吟味してみよう。まず,波動の波長が短くて,右辺の第2項が第1項にくら

べて非常に小さいときには,偏西風の波動はほぼ一般流Uの速さで動いていく。波長が

長くなると,第2項が大きくなるので波の移動の速さは小さくなり,

 

のところで0,すなわち動かなくなり,これよりも波長が長くなると速さは負,すなわち東から

西のほうに動いていくようになる。このことは,実際に高層天気図を調べてみても定性的に

はなりたっている。

 波長を,地球をとり巻いたときの波の数nで表し,波速を与える式の第2項の値を緯度

別に計算したのが表Iである。緯度40°付近での冬の500hPaの風速は20/s程度なの

で,この表で見れば波数45くらいの波はあまり動かず,それより大きい波数の波,すな

わち波長の短い波は東に移動していくことになる。そして偏西風が速いほど,長い波長の

波が停滞波になる。

 次表IIの波数は,中緯度上空で地球をとり巻いて存在する波の数で,これを図Vに模

式的に示す。

 中間規模の波長のものは,発生期の東シナ海低気圧や土佐沖低気圧などに対応する

偏西風波動であり,比較的下層に見られる。

 

 

◆大気大循環と大気状態との関係

先に述べた偏西風の理論的考察に基づいて大気大循環と現実の大気状態との関係に

ついて考えてみる。天気に影響する現実の大気状態は大循環とその擾乱(乱れ)とが組み

合わさったものである。天気機構の多様性は,この組み合わせの多様さに原因があると考

えられる。もちろん天気機構のなかで最も基本的な役割りを演じているのは,蒸発輪送

(もち上げを含む)→凝結降水といった水−水蒸気循環であることはいうまでもない。大

気擾乱は循環と渦に対応する種々の波長λの波のスペクトルからなる(III)。総観的な天

気現象に関係するのはこのなかの大きい波長のものである。波長の大きさによって循環は

惑星(地理学)的,第2次的および第3次的規模に分類される。

 

 

[惑星波]  前線−ジェット系,すなわち最大エネルギー地域に形成される長い波長の波

は低緯度においては極を中心とする約4個の周極波が,中緯度においては約3個,高緯

度ではおそらく2個の周極波のとき定常状態に近いものになると考えられる。惑星波では

λが〜10000kmになるので,それらは部分的大気大循環の形を決めることになる。長波の

中の短い波長の波(3000λ8000km)は緩慢に東へ伝搬する。この種の波は速度差に

よる不安定によってほとんどが,波舌状切離渦という段階で経過して図VIVIIに示

してあるような総観形態に発展する。上空の空気はこれらの準定常的(ほぼ定常的)な長

波のパターン全体を通して速い速度で流れているから,等温線は流線や等圧線にほぼ

一致する。そのため,赤道側に向かってのびる舌状部や切離渦はまわりより寒冷であっ

て,一般には(少なくとも上空では)低気圧と一致する傾向がある。これに対して,極側に向

かってのびる舌状部や切離渦は周囲より温暖で高気圧と一致する傾向を示す。前者は

寒冷空気のドーム状構造を形づくり,少なくとも高緯度では極の空気からなるドームをつく

っている(VIII)。これに対して極方向にのびた舌状部や切離渦は熱帯の空気を含んで

いて圏界面がずっと高くなっている。

 

 

[2次的および3次的循環] 第2次的な波長は1000λ3000kmで,前線−ジェット

系が不安定になるとこのような波によって第2次的循環が生じ,それが低気圧の生涯の経

過に従って発展する。すなわち初期前線波動若い低気圧初期閉塞巻き込み閉塞

の経過をたどるのである。重要な第2次的循環で前線−ジェット系をはずれた部分に発

生するものもある。偏東風波動・熱帯低気圧および対流系がそれにあたるが,それらは主

に低緯度に発生する。これらの後の2つは明僚な波動段階へ発展することはない。

 第3次的循環は,通常の総観気象観測の観測網ではほとんど見ることはできない。網

目幅10km以下の中間規模の気象の観潮網や変動の時系列によって見ることができる。

これらの規模の天気機構は海陸風,山谷風やその他の局地風(フェーン,アメリカ北西部

で冬に吹く南西の暖風であるチヌーク,アドリア海で季節的に吹く強い寒冷な北東風ボラ

など),トルネード,地形性の雲や降水や風下波である。この規模の現象では数多くの地

形的要因や日々の日照時間がほとんどの気象要素に影響し現象を多様化している。

[高層天気図と地上変動]  一般的には,日々の天気図(地上天気図)上に見られる擾

(変動)と上層の大規模パターンとの間には密接な関係がある(VI)。図VIIIはこの相

互関係を3次元的に表したものであって,前線−ジェット系(北極前線を含む)の擾乱の例

を詳細に示したものである。特にそのような系によって条件づけられている8つの天気域

が示されている。総観的な気象や天気予報にとっては基本的な重要性をもつ。

 寒帯前線ジェット気流は,冬季には平均して緯度2445°の間に,夏季には緯度40

60°の間に,高度711kmの間に位置している。幅わずか数百kmで,風速100/sをこえ

る。場合によっては,2つのまったく違った特徴を示す。1つは小さな振幅の波をともなうだ

けで全体として緯度に平行に流れる場合であり,他は子午線方向に大きく変動し,しばし

ば切離渦を生じる場合である。図VIIは対流圏のほぼ中央の高度500hPa等圧面での等

温線,等圧面等高線と流れのパターンを示す。これでは3個の長波W1W2W3と,3

の深い気圧の谷T1T2T3と,3個の切離低気圧L1L2L3,が見られる。等温線が等高

線や流線との平行性をはずれて顕著に発散しているところでは,寒冷で重い空気(A)ある

いは温暖で軽い空気(B)が水平方向にかなり実際に流れて,すなわち大きな移流があっ

て,ほとんどの高さの層で気圧や風が変化する。

 特に図[に示されているような3次元構造解析を積み上げることによってつくられた観測

事実に矛盾しない,平均的な冬季の大気循環の鉛直断面模型が図IXである。熱帯にお

けるハドレー循環,中・高緯度における傾斜対流が表現されている。

 

 

◆大気の大循環と世界の気候区分

 大気の大循環はハドレー循環とロスビー循環とに大別される。図Xは大気大循環に基

づいて区分された世界の気候区を示したものである。

[ハドレー循環に支配される地域]  熱帯収束帯・亜熱帯高気圧・貿易風帯がハドレ

ー循環系に属する。これらの地域では低気圧や高気圧が西から東に移動していくことは

なく,基本的には,太陽高度の日変化による1日周期の規則的気象変化がくり返される。

熱帯収束帯は多雨であるが,亜熱帯高気圧の中心部は地球上で最も乾燥している。亜

熱帯高気圧から熱帯収束帯にかけての貿易風帯は,風向・風速が大きく変化することが

少ない安定した風系になっている。同じ亜熱帯高気圧でもその東部では下降気流が強く

安定した気候になるが,西縁はそれにくらべ,熱帯低気圧のコースになったり,また,高緯

度の前線の影響を受けるなど,やや不安定である(沖縄や中央アメリカなど)

[ロスビー循環に支配される地域]  偏西風とその蛇行がこの地域の特徴である。図

Xによれば,北半球では北緯45°以北,南半球では南緯40°以南が,1年中,ロスビー循

環に支配される地域である。日本では北海道がこれに含まれる。北緯30°から45°の地域

では,夏はハドレー循環に支配され(亜熱帯高気圧の西端である北太平洋高気圧),冬は

ロスビー循環に支配される。

 

◆大気の大循環と日本の気象

 偏西風帯に位置する日本の気象には,その地理的位置,地形などから次のような特徴

をもっている。

@ 南北の気温差が大きい中緯度帯に位置する。気温差が大きいために,ジェット気流

が強く,そのために温帯低気圧の発生が多い。

A 日本海の存在,冬の北西季節風は日本海から蒸発する水の潜熱によって暖められ,

また,多量の降雪をもたらす。

B 大陸の東側に位置する。そのため亜熱帯高気圧が海洋上に閉じた高気圧をつくる

(北太平洋高気圧)。この高気圧によって低緯度から高緯度へ向かう風が吹き,大量の水

蒸気を運んでくる(湿舌)だけでなく,台風を運んでくる。

C ヒマラヤ・チベット山塊が偏西風を蛇行させ,偏西風を強くするはたらきをしている。

また,梅雨や寒波もヒマラヤ・チベット山塊に関係していると考えられる。

 

◆梅雨とブロッキング高気圧

 典型的な梅雨期の地上天気図は,オホーツク海方面に高気圧,南の小笠原方面にも

高気圧があって,いずれも停滞している。日本付近はこれらの高気圧の谷間にあたり,前

が停滞し,小規模の低気圧が前線上を東進している。これに対応する上層の流れは図

XIのようになり,日本の西方には寒冷な空気の渦を中に包み込んだ深い気圧の谷が存在

し,日本の東方は気圧の尾根となり,オホーツク海方面にブロッキング高気圧が形成され

ている場合が多い。このとき,ジェット気流は分流し,南の亜熱帯ジェット気流は日本付近

を東西にはしり,一方,北の寒帯前線ジェット気流はブロッキング高気圧の北側の高緯度

地帯をほぼ東西にはしり,北太平洋上で合流している。

 

 

一般的には,中緯度・高緯度の偏西風帯の峯が発達してジェット気流が南北に分流

し,分流点より下流の北側の停滞性の暖かい高気圧が形成されるような循環の状態をブロッキングとよぶ。北方の高気圧をブロッキング高気圧 しばしば共存する高気圧の南側

あるいは谷場に形成される低気圧を切離低気圧,または寒冷低気圧とよんでいる。ブロッ

キングの状態は,基本的には分流型と南北流型に大別される。図XII(a)に分流型の上

層の流れを,(b)に南北型の上層の流れを示した。これらの流れの状態は,地上の気圧系

(高気圧・低気圧・前線など)が停滞あるいは変則的な動きを示すときに高層天気図で検

出される。

 ブロッキング現象の例としてとり上げられる梅雨は極東特有のものであるが,最近の研究

によると,世界的な規模で起こるブロッキング現象の1つの現れであることがわかってき

た。ブロッキングの現象が起こると,高気圧や低気圧の移動がとまり,ときには変則コース

をとったり,異常気象が起こりやすい。

 

◆台風の進路と高層天気図

 巨大な渦巻きである台風は,指向流とよばれる気流にのって移動する。この指向流は北

太平洋高気圧から吹き出す風である。北太平洋高気圧の気圧の尾根の軸に達した台風

はそれまでの西寄りの進路から東寄りに進路を変えるが,この点を転向点とよぶ。台風の

進路の予測には,上層の指向流を見る必要がある。背の低い台風の場合には500hPa

層天気図が,背の高い台風の場合には300hPa高層天気図が,指向流を見るのに有効で

あるとされている。

 台風が北上して,北太平洋高気圧と偏西風帯との境界域まで達すると台風は偏西風帯

の流れにのって北東進する。特に,台風が転向点近くまで進んできているときに,偏西風

の気圧の谷が東進していると,台風は気圧の谷にのって,谷の東側前面を北東または北

北東に進むことが多い。したがって,偏西風波動の谷と尾根の東進を高層天気図によっ

て追跡することも,進路予測の方法となる。

 台風の周辺の雲の形態と分布は,台風の周囲の空気の流れとがあいまってつくられる。

発達期には雲が進行方向を長軸とする楕円形になる傾向があり,転向点に近づく最盛期

には円形に,偏西風帯に近づくと楕円形になる傾向がある。これらの変化は衛星写真で

追跡することができる。

 

◆天気予報

 広い範囲にわたる地域の天気状態を,一定の時刻に定められた方法によって観測し,

観測結果を天気図記号を使って1枚の白地図の上に記入した後,等圧線および高気圧・

低気圧・前線などの位置を記入したものが天気図である。天気図が実用になるためには,

次の2つの条件がみたされなければならない。

  (1) 各地に散在した測候所で同時に観測されること。

  (2) その観測結果をきわめて短時間に1か所に集める組織が整っていること。

である。そのため,天気図を有効に天気予報に役だたせるには,国際的な協力が必要で

あり,国際連合の下部機関である世界気象機関(WMO)において,気象情報の交換が行

われている。現在,北半球全体にわたる天気図がつくられるようになり,地上のみならず

150010000mの上層の大規模な気流系を解析した高層天気図もつくられている。

 

 

【参考】 天気予報のできるまで


各地の気象官署で観測された気圧・気温・湿度・風向・風速・雲量・雲形・天気状態・降水

量などの気象要素は有線・無線などによってすみやかに気象庁に通報される。気象庁で

は,このほかに無線で入手した外国資料も使って,北半球全体の地上天気図・高層天気

図などがつくられる。この天気図をもとに,北半球全体について気象状況の大勢をつか

み,高気圧・低気圧の位置・強さ・動き方を確かめる。高層天気図では気圧の谷や尾根の

位置,ジェット気流の動向などに注意が向けられる。このようにして今後の気圧系の動き,

天気の推移についての見込みをつける。その結果に基づいて,地方気象官署に気象通

報が送られる。こうして地方気象官署では天気図をつくることができるが,最近では能率

的に仕事を行うために,気象庁予報部で作成した天気図を電送することが行われてい

る。


         

 

 [数値予報]  天気予報を出すためには,予報しようと思う将来の時刻における気圧配

置,すなわち予想天気図をかかなければならない。現在行われている方法は2つある。

 1つは,現在および過去の時刻における天気図によって高気圧・低気圧・前線・気団・

気圧の谷などの動きを読みとり,総観的な考察と経験とをもとにして予想天気図をつくる方

法で,総観予報とでもいうべきものである。こうした気圧系の動きの判断や総観予報にお

いても,気象力学や気象熱力学の理論に基づいてつくられた種々の予報法則が用いられ

ることはいうまでもない。しかしそれは,定性的な場合が多い。

 もう1つの方法は,大気の力学的・熱力学的特性を,可能なかぎり忠実に力学および熱

力学方程式に表し,現在の大気の状態,すなわち気圧や気温の分布を初期条件として将

来の状態を求めるもので,数値予報とよばれている。数値予報は,気象現象を支配する

物理法則に基づいて,将来の気圧配置を客観的に予想する方法である。

 

IV 天気に関係したことわざの例


1

 冬スズメが群がり鳴くときは雪

冬に三日の大荒れなし

 寒に霜おおければ夏干ばつあり

 寒に雨なければ夏日照り

2

 トビが低く飛べば雨,高く飛べば晴れ

 梅の花,上向きに咲く年は晩霜あり

3

 高い山見えれば晴れ

 ヒバリが高く昇ると晴れ

 スズメが水を浴びると晴れ

4

 ツバメが低く飛べば雨近し

 女心は四月の空のごとし

 カラスが田の中に巣をつくるのは晴天のしるし

 月が暈をかぶると雨

5

 蒸し暑い翌日は雨

 トビが高く飛べば大風が吹く

 朝雨は女の腕まくり

6月

 西に虹は晴れる

 鳥類が木の高所に巣をつくる年は洪水あり

 富士山が笠をかぶれば雨

 

7

蚊柱たてば雨

8

 太陽黒点の極小期に凶冷

 太鼓の音さえるは晴,にごるは雨

9

 サケ・マスの豊漁は早冷

 煙突の煙が下をはうと風の兆し

 暑さ寒さも彼岸まで

 返り花の多い年は大雪

10

 三味・太鼓の音のにごるは雨の兆し

 秋晴れに夏の湿り

 秋雨が涼しくなれば晴れる

 日本晴れ三日続けば三日以内に雨となる

 四方に雲なきは三日の雨

 渡り鳥早きときは雪多し

 東風吹けば雨

11

 月夜の大霜

 秋風と夫婦喧嘩は日が入るとやむ

12

 ウシが丸くなって寝ていると天気が悪くなる

 冬の雨は三日降らず

 鳥が高いところに巣をつくれば大雪

 アマガエルが低いところにいれば晴

 

 

(東京堂出版「天気予知ことわざ辞典」より)

 

 


 








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