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2節 地球環境の変化とその観測

 

プレート運動の実測

 プレートの運動により,地球上の離れた2地点の距離の変化が起こるはずである。

2地点間の距離を時間をおいてくり返し測定することにより,プレート運動を実測

することができる。教科書に示されているVLBIのほか,SLRGPSなどが利用され

ている。

[VLBI]  超長基線干渉計(Very Long Baseline Interferrometer)と訳されるこの方法は,

教図8にあるように,クェーサーからの電波の到着時刻の差と,クェーサーの方向

(図中の角度θ)から,2地点間の距離を求めることができる。日本には,茨城県の鹿

島にVLBI局がある。北アメリカプレートに対する太平洋周辺の各局のVLBI局の移

動速度は,次の表II,および図VIのように求められている。図VIは太平洋プレー

トと北アメリカプレートのオイラー極を北極にとって描いたメルカトール投影図で,

各極の動きがよくそろっており,太平洋プレートがあたかも剛体のようにふるまっ

ていることがわかる。この方法では,長期間の平均移動速度がわかるだけでなく,

短期間での移動量が計測でき,プレートの周縁部での動きも明らかにされつつある。

                                  

 

 [SLR] 衛星レーザー測距(Satellite Laser Ranging)と訳されるこの方法は,人工衛星を

利用した位置決定法で,くり返し測定することにより,2地点間の距離の変化を知

ることができる。                      

 

測定の原理は次のようになっている。図Zのように,観測地点と人工衛星の間の

レーザーの往復時間から人工衛星までの距離を求める。3地点以上で同時に距離を

測れば,人工衛星の位置が決まるので,その位置を利用して他の地点の位置を決め

る。この方法では,数千kmの距灘を数cmの精度で測定することができる。表III

VIII19841988年の間の基線長の変化率を示したものである。ハワイが太平

洋プレートの動きによって,日本に近づいていることなどがわかる。

[GPS] 汎世界測位システム(Global Positioning System)と訳されるこの方法は,自動車用

ナビゲーションシステムとしておなじみの方法である。人工衛星を利用しての位置

決定法で,100km程度の距離の測定によく用いられる。位置のわかっている3個以

上の人工衛星の電波を受信して位置を決定する。

 

沈み込んだリソスフェアのゆくえ

教図10 日本列島を横切る断面での地震波の速度分布

地震波トモグラフィーという手法で作成された地震波速度の分布を表す図である。これ

は,地震波を使ったCTスキャンのようなものである。地震波速度が遅い部分は岩石が相対

的にやわらかい比較的高温な部分を,地震波速度が速い部分は岩石が相対的にかたい低温

な部分を表している。

 

最近では,プルームテクトニクスとよばれるもので,プレートの動きも含めて地

球の内部の動きが説明されようとしている。それは図IXのように,熱いマントルの

大規模な上昇流であるホットプルーム,およびやや冷えた重いマントルの大規模な

下降流であるコールドプルームの動きによって,大陸の分裂や海嶺,ホットスポ

ットの生成などを説明しようというものである。

 

気候変動

気候は,大気・海洋・陸地・雪氷・生物圏など,複雑な相互作用をもつシステム(

候系とよぶ)のなかで形成されるものであり,さまざまな時間スケールの変動が重な

っている。気温を例にとれば,日本の年平均気温に見られる10年程度の周期の変動

をはじめ,氷期のような数万年〜数十万年もの長い周期の変動まで,幅広い時間ス

ケールの変動がある。また気温の変動の起こり方も世界各地で異なっており,さら

に全地球や南北両半球の平均気温と各地域の平均気温の変動との間にも異なった変

動が見られる。このような時間的・空間的にさまざまなスケールをもつ気候変動は,

日常経験する日々の気象の変化と同じく,多くは自然のゆらぎとして生じている。

しかし,近年,人間活動に起因する気候変動が心配されている。

 

異常気象と気候変動

 過去の平均的な気候状態からの大きな偏りが異常気象である。したがって気候状

態に変化がなくても,統計的には,異常気象は自然の変動としてある頻度で発生す

る。しかし,気候状態に変化が生じた場合,たとえば過去の気候状態にくらべ,対

象とする気候要素の変動幅が大きくなった場合,あるいは平均レベルに変化が生じ

た場合には,異常気象の発生は統計的に期待される発生頻度と異なることになる。

 月平均気温を例にとると,平年値からの年々の変動幅が大きくなれば,異常高温

や異常低温の発生数の増加が考えられる。一方,変動幅に変化がなくても,気温の

平均レベルが,基準となる平年値より高く(または低く)なることにより,異常高温(

たは異常低温)が増加することになる。このように,異常気象の発生形態の変化は,

対象とする気候要素の分散や平均値の変動,いいかえれば気候の変動にともなって

生じることになる。

 人間の活動にともなう二酸化炭素など温室効果気体の濃度の増加により,全地球

の平均気温の急激な上昇が心配されている。もし予測どおりの上昇が起これば,平

均レベルの上昇により異常高温が増加することが考えられる。しかし,現在のとこ

ろ,気温の年々の変動幅が大きくなるかあるいは小さくなるかを評価し,異常気象

の総数の増減を予想することは

困難である。

教図1213 100年間の気温の変化と日本の都市部の気温変化

   図は,年毎の変動の様子であるが,数年以上の長い周期に着目して見ると次のように

なっているのがわかる。

 小氷期が終わった19世紀末から現在にかけて,全地球の平均気温は,約0.6/100年の

割合で上昇している。特に1910年代後半から1940年にかけて急に上昇し,その後1960

代後半まで低温化の傾向をたどったが,1970年代から再び上昇するなど,数十年規模で変

動している。1980年代からの上昇は急激で,温暖化が社会の関心を集めるようになった。

    日本国内の平均地表気温は,全地球平均地表気温とは違った変動をしているが,1980

年代からは全地球も日本も平均地表気温の上昇が著しく,気候が温暖な時代にはいったと

思われる。これは,小氷期の寒冷気候時代の反転と人間活動の影響が重なった結果であろ

う。

 

日本上空のオゾン層

 教図14のグラフに見られるように、オゾン量は低緯度地域よりも高緯度地域で

高い。日本各地のオゾン層の年平均値では,那覇で約260ドブソンであるが,鹿児

島では約290ドブソン,つくばでは約310ドブソン,札幌では約350ドブソンであ

(1990)。このうち,札幌で最もオゾンの減少が大きく,1960年からの30年間

で約20ドブソンの減少になっている。この減少は全地球的なオゾン減少と関連して

いるものと考えられている。

 

オゾンホールの形成

 オゾンホールが南極上空を中心に形成される過程は,次のようにまとめられてい

る。

1.晩秋から冬にかけて南極成層圏の気温が低下し,極成層圏雲(硫酸液滴・氷粒子・

硝酸三水和物結晶粒子からなる)が発生する。

2.極成層圏雲に硝酸ガスが消費される結果,大気中のNOx濃度が減少する。一方,

極成層圏雲の粒子表面の化学反応によってCl2が発生する。この塩素の供給源がフ

ロンである。NOxClONO2となってオゾン消失反応を抑制するはたらきをする。

3.春になると太陽放射によってCl2が光分解し,Cl原子がつくられる。このCl

子がオゾン層破壊の反応サイクルを形成する。この反応が,NOx濃度減少のために

活発に進行し,オゾンホールが出現する。

4.オゾンホールが消えると,南極成層圏のオゾンの少ない大気が中・低緯度へ拡散

し,地球規模でのオゾン層の減少をひき起こす。

 

酸性雨

 酸性雨の被害として最も一般的なものは建造物に対するものである。人体への直

接的な影響はないと考えられている。酸性雨の生態系への影響としては,湖沼の酸

性化と土壌の酸性化とが,主に北欧で指摘されているが,日本では明瞭な影響は認

められていない。日本の土壌は酸性雨を中和する能力が大きいためである。

 湖沼に酸が付加され酸性化が進むと,湖底堆積物などから金属イオンの溶出が進

み,pH4以下になるとAlイオンが溶出する。Alイオンは魚類の生殖機能を弱め,

湖沼の生態系を破壊する。             

土壌の場合も栄養塩類の流出や金属イオンの溶出によって,植物の生育に障害を

ひき起こす。

 

 

 








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