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第1節 銀河系

 

銀河系の発見

変光星による銀河系の大きさの測定

球状星団の分布

銀河系内の恒星の分布

銀河系内の水素の分布

銀河系中心部

銀河系の活動性

 

 

銀河系の発見

 恒星や星雲といった天体は古くから知られていた。特に“星雲”に関しては,フランスのメシエ(Messier)がカタログをつくり,その分類は現在でもM1(かに星雲)やM31(アンドロメダ銀河)のように使用されている。しかし,これらの“星雲”のなかには,かに星雲のような現在ではガス状の星雲で銀河系内にあることがわかったものと,アンドロメダ銀河のような銀河系外の恒星の集団であるものとが混在していた。これは銀河系という概念が見いだされていなかったことによる。つまり,天体がすべて1つの系をなしており,その中に個々に分離される恒星と広がった“星雲”が存在していると考えられていたのである。これは,天体までの距離が測定できなかったことにも原因がある。

 しかし,ハーシェル(W.Herschel)は特定の等級までの恒星の数の方向依存性を調べ,恒星がレンズ状の集団をなして存在していることを見いだした。これによって,宇宙の中には,恒星以外に多数の恒星の集団という別の階層が存在することを示したわけである。もちろん,ハーシェルはその集団の大きさや“星雲”までの距離を測定することができなかったので,宇宙には銀河系だけでなくその外部に多数の銀河が存在するという描像が得られるのは,シャプレー(H.Shapley)によって銀河系の大きさが測定されるまでまたなくてはならない。

 

変光星による銀河系の大きさの測定

 天体からの光は星間物質によって吸収されるため,銀河面内では3kpckpcはキロパーセク)より遠くの星は可視光線では観測できない。したがって,銀河面から離れた天体を観測することによって,銀河系のスケールを知ることができる。

 近傍の恒星までの距離は,年周視差を測定したりスペクトル型を観測することで知ることができるが,遠くの星団については,年周視差やスペクトル型を使うことはできない。しかし,星団の中に変光星があると,その光度を推定できそれを使って距離を求めることができる。

変光星のうちで周期的に変光する脈動変光星は,その変光周期と絶対等級の間に,はっきりとした相関が認められている。この関係を周期光度関係という。ケフェウス座δ星のような変光星をケフェウス座δ型変光星(古典的セファイド)といい,その変光は図Tのようになる。その変光周期と絶対等級の関係は図Uの中に示してある。

それを式で表すと,

MalogPb (M;絶対等級,P;変光周期)となる。ここでabは定数であるが,観測者によって幅をもった値である。

 

 

 おとめ座W型変光星は,ケフェウス座δ型変光星とよく似ているが,ケフェウス座δ型より1〜2等級暗い。ケフェウス座δ型変光星は種族Tの恒星であるのに対し,おとめ座W型変光星は種族Uに属する。こと座RR型変光星は星団型変光星ともいわれ,種族Uの恒星で,その変光周期は短く絶対等級はほぼ一定である。こと座RR型変光星の周期光度関係は,おとめ座W型変光星のほぼ延長上に連なる。

 表は種々の脈動変光星の特徴を示したものである。図Vは,これらの変光星のHR図上の位置を示したものである。これを見ると,脈動変光星はHR図上の限られた領域に存在し,恒星の進化のある一段階にあると考えられる。主系列から離れるほど,周期は長く光度が大きくなっていくこともわかる。

 

脈動変光星の種類と特徴

 

 

球状星団の分布

現在までに約130個の球状星団が発見され,約110個の星団の空間分布が求められている。下図は銀河面に垂直な面に投影した球状星団の分布図である。これを見ると,太陽が銀河の中心からかなり離れた位置にあることがわかる。この球状星団の分布から求められた銀河系の半径は約40kpc13万光年)もあり,恒星が密に分布している銀河系の円盤部の半径よりも大きい。このような銀河の円盤部をとり囲む大きな球状空間を銀河のハローとよんでいる。

 

銀河系内の恒星の分布

 銀河系は,半径5万光年程度の銀河円盤部分,半径1万光年程度のバルジ,半径7.5万光年程度のハローからなる。恒星はこの3つの領域に分布しているが,それぞれの領域で特徴をもっている。

 

ハロー部分には球状星団があり,1つの星団に数十万から数百万の星が存在している。この星団の星の特徴は年齢が150億年程度と古く,その化学組成は水素とヘリウムとがほとんどを占めて,それらより重い“金属元素”がきわめて少ないことである。つまり,恒星としては種族Uに属す古い星である。星団中では恒星と恒星の相互作用が大きいため, 中性子星などのコンパクト星が多く観測されている。またハローに属する星は銀河面に対して大きな速度で運動している。

 バルジの恒星の質量は小さいものが多く,その年齢は球状星団のものと同程度である。そのため,進化して赤色巨星の段階にあるものが多いので,橙黄から赤い星として観測される。

 円盤に属する恒星は主として種族Tの星で,銀河面に対する速度は小さく銀河面内にとどまっている。特徴的なことは年齢の若い星が多いことで,それは恒星が銀河面内で誕生していることを意味する。恒星は銀河円盤中でも特に渦巻きの腕のところで誕生するものが多い。渦巻きの腕のところには大量のガスやダストが存在し,銀河の回転と重力の作用で恒星を生み出しやすい環境になっている。また,銀河面の外側の領域には大質量の若い星が多く,高温の青い色の星として観測される。

 

銀河系内の水素の分布

中性の水素原子では,中心の陽子とそのまわりを回っている電子がそれぞれ自転しており,その自転の方向が同じ向きのものと逆向きのものとの2つの状態が存在する。その2つの状態の間を遷移する際に,電波を放出したり吸収したりする。この遷移で放出されるエネルギーに対応する電波の波長が21cmである。したがって,波長21cmの電波を観測することで,中性水素の存在とその運動や密度を知ることができる。

 この21cmの電波を使って銀河系内の中性水素原子の分布や密度が測定され,それをもとにして銀河系の構造を推定することがなされた。ある銀経lの方向で電波を観測すると,その方向に沿う各点の放射が重なり合って,図Tのような波長に対する電波強度の分布が求められる。

図T ある銀経方向の波長21cm電波の観測記録

 

ただし,この図では波長の21cmからのずれΔλのかわりに,それに相当する視線速度(=cΔλ/λ,c;光速度,λ;電波の波長=21cm)で表してある。ここで,銀河回転が円運動であり,この波長のずれがその回転運動の視線方向の成分に起因すると仮定する。すると,たとえば図Tの曲線上の点Aでは電波強度がaであり,また視線速度はυであるから,観測した方向がlであったとすると,

 

であり,V0R0はわかっているからV/Rが求められる。ただし,VRA点での速度と銀河中心からの距離,V0R0は太陽の位置での速度と銀河中心からの距離である。したがって,電波強度のピークを示す中性水素原子がどこにあるかがわかる。一方,電波強度aがどれだけの数の水素原子によって放射されたかは理論的に計算できるので,水素原子の密度も推定できるのである。

 

銀河系中心部

 アメリカのジャンスキー(K.G.Jansky)は,天の川に沿って帯状にとり巻く領域から電波がやってくることと,その電波強度のピークが赤経18h,赤緯−10°の方向にあることを発見した。これが銀河系の中心部の最初の観測であった。現在では,銀河系の中心は赤経17h45.7m,赤緯−29°00′にあるいて座Aであることがわかっている。波長の長い電波は主にシンクロトロン放射によるものであり,これは強い磁場と高エネルギー電子の存在を示している。一方,波長3.75cmの電波は熱放射が優勢であり,これによって銀河の中心部にはガスが密集していて,盛んに星が誕生していることが推測できる。また,CO2.6mm波のドップラー効果からガスの運動についても調べられている。これによると中心部には高速のガスがあり,大規模な爆発か高速のジェット現象があると考えられている。このジェット現象は,スケールは小さいがクェーサーや電波銀河に見られるジェットと共通の性質をもっている。このようなことから,銀河系の中心部でも,非常に活発な活動があることが考えられる。

 

銀河系の活動性

 銀河系はその形成後に進化して現在の姿になったものである。銀河の進化の理論は現在でも未知の部分が多く残されている。それは銀河系を含め銀河では数千億個の恒星と大量のガス雲を扱わなくてはならないため,理論的な計算ができないためである。しかし,観測的には現在の銀河系もさまざまなレベルで活動していることがわかる。可視光線で観測される典型的な活動性は渦巻きの腕における恒星の形成である。渦巻きの腕は,その腕の中にある恒星とガスは不変ではなく,時間とともに流れ込み流れ出している。その流れは銀河系の回転運動によるものであるが,腕そのものは流れの中にできたパターンである。そのパターンが可視光線で目だつのは,そこで恒星が生まれ明るく輝いているためである。この腕の部分には物質が集まっていて重力ポテンシャルのくぼみになり,銀河回転によって運動しているガスが音速をこえた速度で流れ込むために,そこに衝撃波が形成される。その衝撃波によって重力的に不安定なガス雲が収縮を始め,原始星をつくると考えられている。

 

 さらに,電波の観測が可能になってくると,銀河系の中心部にある分子雲の観測がなされ,中心部では激しい活動があることが示された。そうした観測はオランダのオールト(J.H.Oort)たちが1950年代の終り頃に最初に行った。その際に見いだされたのは,銀河中心から2000光年程度のところに200km/s程度の運動速度をもった中性水素雲で,回転している円盤であると考えられている。また,中心から50km/sの速度で膨張しているガス雲も観測されており,それは中心から1万光年程度のところにある膨張するリングで,3kpcアームとよばれている。

 その後分子雲の観測が進むとともに,一酸化炭素(CO)やホルムアルデヒド(HCHO)を使った観測から,半径が800光年程度のところに130km/sの速度で膨張しつつ50km/sの回転速度で回転している膨張分子リングが発見され,銀河中心でのなんらかの爆発的な現象によって形成されたと考えられるようになってきた。

さらに中心に近い領域でも活動性が見られる。最近の赤外線と電波の観測からは銀系の中心から5光年程度のところまで3本の電離ガスの流れがあることが見いだされ,ミニスパイラルとよばれている。またそのミニスパイラルをとり巻く半径6光年のリングも存在している。ネオンを使った赤外線の観測からは,銀河系中心付近の電離水素ガスの運動速度は700km/s以上という高速度であることが示された。そのことは,銀河系中心から1光年の距離の内側に,太陽の100万倍の質量が必要であることを意味する。そのような狭い領域に大質量があることは,それが巨大なブラックホールであると考えてよいのかも知れない。

 

 

 

 








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