トップ地学I 改訂版>第4部 宇宙の構成>第2章 恒星の性質と進化>第3節 恒星の誕生と進化

第3節 恒星の誕生と進化

 

星間物質

恒星の誕生

主系列星から巨星へ

恒星の寿命

巨星以後の進化

星団

いろいろな星団のHR

星の種族と分布

脈動変光星と周期光度関係

 

 

星間物質

 星間物質は,水素を主成分とする星間ガスや,宇宙塵(星間塵)とよばれる大きさ0.1μm以下の固体微粒子からなる。固体微粒子を形成するような重元素は星間物質の約2%で,残り98%が水素(約70%)とヘリウム(約25%)からなる星間ガスである。星間ガスは主成分である水素の電離状態によって3種に大別されている。

 

[HT領域]  水素が電離しないで原子の状態で存在する領域をHT頃域という。HT領域のやや密度の高いところをHTガス雲とよび,雲と雲の間を埋めている密度の小さい領域を雲間媒質とよんでいる。HTガス雲より密度が高く,紫外線が通過できない領域では,水素は分子状態になっている。このような領域を分子雲とよぶ。分子雲中には有機分子を含む多くの種類の分子が存在することが各分子の放射する電波の観測からわかっている。HTガス雲と分子雲を総称して星間雲とよぶ。

 分子雲は電波以外に光学的に暗黒星雲や散光星雲として見えることがある。これは分子雲と恒星の位置関係によって生じる。地球から見て分子雲の前面に恒星がある場合,恒星の光が分子雲中の星間塵によって反射・散乱されて輝いて,散光星雲として見える。一方,分子雲の前面に恒星がない場合,背後にある恒星からの光は分子雲によって吸収されるため,暗黒星雲として観測される。

 

[HU領域]  スペクトル型がOB型の星は強い紫外線を出し,まわりの水素はほぼ完全に電離している。このような水素の電離領域をHU領域とよぶ。HU領域は分子雲に隣接していることも多く,分子雲中で恒星が誕生し,その恒星の放射によって電離されている状態と考えられる。

[プラズマ領域]  恒星が高速度でガスを放出すると,それが星間ガスと衝突するところで衝撃波が生じて,星間ガスは加熱され高温になる。超新星の残骸のガスやそれと衝突した星間ガスなどがこれにあたる。これらのガスはしだいに冷却するが星間雲と星間雲の間にかなり存在している。

 

恒星の誕生

 太陽の平均密度は,分子雲の1018倍もあり,恒星が誕生するためには分子雲がかなり収縮しなくてはならない。収縮する原因は,星間雲自身の重力である。星間雲は自分の重力で収縮しようとし,圧力,磁場,遠心力によって外向きの力を及ぼしてつり合い状態にある。しかし,ある限界値をこえた十分に大きな領域が収縮すると,重力の収縮の力が外向きの力に勝ってしまって,収縮を続ける。

しかし,自らの重力で収縮できる星間雲の質量は星の質量よりはるかに大きい。したがって,自己収縮の過程で星の質量程度のかたまりに分裂していかなければならない。このような分裂の過程には遠心力の効果が大きく作用していると考えられるが,この過程を定量的に示すことはまだ成功していない。しかし,そうした分裂によって恒星程度の質量のかたまりができ,それがさらに収縮を続け中心領域で原子核反応が起こるようになると,恒星が誕生すると考えることが一番もっともらしい。実際,恒星は多数の星が群落をなして存在していることが多い。こうした群落をアソシエーションとよぶが,オリオン座のOBアソシエーションやおおいぬ座のRアソシエーションのような例がある。

星間雲の収縮に始まって,原子核反応の開始までには,いろいろな現象が起きる。星間雲を収縮させるきっかけは,星間雲どうしの衝突,超新星爆発による衝撃波による圧縮などがある。収縮をしていくと密度が上がり,しだいに光に対して不透明になっていく。こうしてかたまりが不透明になった段階で原始星ができたという。一方,収縮は中心領域が速く外層部が遅いので,中心部に高密度な領域が形成される。この領域では重力を支えるだけの圧力が発生し,収縮はほとんど止まる。このほぼ静止した中心領域に外層部が落下してくる。したがって,落下するガスが中心部のコアに衝突して,衝撃波が発生する。この衝撃波が外層に伝わって行くと,エネルギーが大量に解放されて明るく輝く。この段階では中心領域で原子核反応を起こすだけの温度に達していないので,中心部はゆっくりと収縮することで,重力エネルギーによってしだいに温度を上昇させる。この温度が1千万K程度に達すると,水素の核反応が始まり恒星が生まれたといえる。この段階が年齢ゼロの主系列星といわれる恒星である。

なお,主系列星になる前の段階の天体としては,星間雲にとり囲まれた低温の赤外線星や,ハービック・ハロー天体(光や星風によって星間雲が吹き飛ばされ,星の光がしだいに見えるようになったもの),不規則な変光をするおうし座T型星などが観測されている

 

いろいろの質量の星が生まれてから主系列に達するまでにかかる時間

   

                       

 

主系列星から巨星へ

力学的に平衡状態にある主系列星は,かりに中心部の温度が上昇あるいは下降しても,星全体の膨張や収縮によって,表面から出ていくエネルギーを増減し,温度と圧力を変化させる。そのため,中心部の温度は下降あるいは上昇してもとにもどるため,恒星は非常に安定した状態にある。

核反応は中心部の温度のわずかな変化に対してその能率を大きく変えることができる。したがって,質量の異なる恒星の光度が大きく異なっていても,その中心温度にはあまり違いがない。

恒星の中心部で,核反応によって水素がヘリウムに変わっていくと,4個の水素から1個のヘリウムが形成されるので,圧力をになう原子の数が少なくなって圧力が低下する。そのため,恒星の中心部は収縮する。この収縮の際に原子核反応は殻状の領域で行われている。前に述べたように,この原子核反応は安定なものなので,殻燃焼の位置はほぼ一定のところにとどまり,温度もほぼ一定である。この燃焼殻より内側は収縮するので,密度が低下し,そのため圧力も低下する。したがって,燃焼殻の外側の領域はつり合いを保てなくなり,弱くなった圧力で支えるためには膨張して弱い重力のところまで広がることになる。こうして外層部は膨張して巨星へと進化する。

 ヘリウムのコアが収縮をして温度が1億K程度に達すると,ヘリウムの核反応が始まって,CONなどが生成される。この反応で発生するエネルギーは水素の反応の10分の1で,単位時間あたりに放出するエネルギーは主系列段階にくらべて,変化しないか増大するので,ヘリウム燃焼の段階にとどまる時間は短い。このヘリウム燃焼の後の過程は,水素燃焼の後の過程と同じようなメカニズムのくり返しで起こる。中心領域に形成された炭素は,10K程度になると核反応を起こし始める。

 

恒星の寿命

 恒星の放出するエネルギーの総量は核反応に関与する質量に比例する。これは核反応によるエネルギーが反応前後の質量差に起因するからである。そして,核反応に関与する質量は恒星の質量m10%程度である。したがって,恒星の1秒間に放出するエネルギーが光度Lであることを考えると,恒星の寿命t

となる。一方,質量光度関係から

    Lm4

を使うと,

が得られる。つまり,恒星の寿命はその質量の3乗に反比例することになる。この場合,星の寿命というのは主系列星に滞在する時間である。すなわち主系列星としての寿命は,質量の大きい明るい星ほど短く,質量の小さい暗い星ほど長くなっている。

 

巨星以後の進化

巨星では中心部にヘリウムのコアができているが,水素燃焼殻ではヘリウムが形成され続けるので,コアは発達していく。ヘリウムコアを支える圧力は電子の縮退圧で,コアは白色矮星と同じような状態である。電子の縮退圧で支えられる質量には上限があり,それはチャンドラセカール質量といわれる太陽の1.46倍の質量である。この質量以下であれば,縮退圧でコアを支えることができ収縮は止まる。しかし,チャンドラセカール質量より大きい場合には,収縮が続き密度・温度が上昇する。温度が1億Kになると,ヘリウムの原子核反応が始まる。縮退圧は温度にあまり依存しないので,ヘリウム燃焼が始まっても膨張は起こらない。したがって,中心温度は上昇を続けヘリウムの爆発的な反応が起こる。これを,ヘリウムフラッシュという。この暴走反応による温度上昇は縮退状態が解消されるまで続く。縮退がなくなると,ヘリウムの燃焼は安定化する。このときの温度は2億Kをこえている。このような高温状態では,光子・電子・陽電子の相互作用によってニュートリノが発生して,恒星から放射される。

恒星の進化はその質量によって異なる。質量によって到達できる最高温度が異なるためである。恒星の質量が0.08M以下の場合には,水素の燃焼に必要な1千万Kに到達できない。0.46M以下の星では,ヘリウムフラッシュを起こす前に外層の水素が燃えつきて,ほとんどがヘリウムのコアになって,最終的には白色矮星となる。質量が4M以下の場合,ヘリウムの燃焼を起こして炭素を生成するが,外層をゆっくりと放出して最終的には白色矮星になる。太陽の8倍以下の質量では,ヘリウムの燃焼で生成した炭素が燃焼を始めるが,この燃焼は爆発的で超新星爆発を起こす。その爆発は非常に激しく,星全体が吹き飛び星間物質へともどっていく。太陽の8倍以上の星でも超新星爆発が起きる。このときの爆発では中心部に中性子星やブラックホールを残すと考えられているが,理論的な計算によってこの過程を示した人はいない。

星の進化の終末

 

星団

 星団はもともとばらばらに散らばっていた恒星が多数集まったのではなく,同じ場所でほぼ同時に生まれた恒星の集まりである。星団は星の見かけの中心集中度や,星の数によって次のように分類される。

 

[アソシエーション(群落)]  OB型星のような若い恒星に着目すると,これらの星は部分的に集まっている。このような集まりは,1つの星団とみなされるほど密なまとまりではないが,明らかに同じ起源のものであるため,星の群落すなわちアソシエーションと名づけられている。群落は,それ自体が安定な系ではなく,分解しつつある過程の系である。オリオン座は,若い恒星・散光星雲・暗黒星雲などが集まった場所であるが,オリオン座全体が1つの群落であると見ることもできる。

 

星団の種類と特徴

 

[散開星団]  散開星団は1001000個の星の集まりである。肉眼で見えるものと

しては,プレヤデス星団がある。球状星団と違って,星団全体の形も不定で,星の密集度も小さい。

 一般に散開星団は,NGC188(年齢5×109年)やM16(年齢3×109年)などを除くと若いものが多く,ほとんどのものは誕生後数億年もたつと分解してしまう。誕生直後の若い星団では,濃い星間物質をともなっていることが多く,分布も銀河面に集中している。このため銀河星団とよばれることもある。

 

[球状星団]  数万から数百万の恒星が,半径1050光年の球状空間内に中心ほど密に集まっているのが球状星団である。球状星団内の恒星に対するHR図は,いずれも青い主系列星はなく,黄から赤の主系列星と赤色巨星が大部分を占めている。また,どの球状星団内の恒星の化学組成も,若い散開星団内の恒星や太陽などにくらべると重元素がはるかに少ない。したがって,球状星団の年齢は,いずれも100億〜150億年であって,銀河系の中で最も古い天体であることが知られる。なお,球状星団は銀河系の中心を中心とする半径約5万光年の球状空間内に分布している。

 

いろいろな星団のHR

 

 星団は,同じ場所で同時にできた恒星の集まりであるが,恒星はさまざまな質量をもって生まれる。質量の大きい星は,表面温度が高く明るい星で,O型やB型のスペクトルを示すが,反対に質量の小さい星は,暗い低温度星であり,スペクトル型もK型やM型にあたる。したがって,生まれたばかりの星団のHR図は,上図のHR図内に描かれた太い実線(ゼロ年齢の主系列線)に沿ったものとなる。しかし,星の進化はその質量が大きいほど速く,主系列に滞在する時間も短いので,恒星の年齢が進むにつれて,絶対光度がより大きく,スペクトル型がより早期の星が主系列からしだいに離れていくことになる。そのため,HR図において主系列から折れ曲がる点にある恒星,すなわち主系列に沿った最も明るい星は,主系列での滞在時間の終わりの段階にあるわけで,その年数がすなわち星団の年齢でもある。

 上図の3つの星団についてその年齢を考えてみる。主系列上で最も明るい星と最も早期型の星は本来同じ星であるはずだが,種々の誤差が含まれるので,別々に推定して,図からその年齢を読みとると次のようになる。

  プレヤデス(M=−1SpB6)→(M108Sp7×107〔年〕)

  プレセペ(M=−1.5SpA5)→(M7×107Sp109〔年〕)

  M3M4SpF6)→(M1010Sp;>1010〔年〕)

 最も早期型のスペクトル型から求めた年齢と最も明るい絶対等級から求めた年齢との違いは大きいが,平均をとるとプレヤデスは8×107年,プレセペは4×108年,M31010年となる。なお,上図内に示した年齢は最新の資料に基づく数値であり,ここに掲げたHR図から導いたものではない。

 

星の種族と分布

 第2次世界大戦中,ウィルソン山天文台のバーデ(W.H.W.Baade)はアンドロメダ銀河の恒星を観測して,銀河の周辺部の最も明るいものは青色巨星,中核部で最も明るいのは赤色巨星であることを発見した。この違いは,2つの領域の恒星のHR図の違いを示している。すなわち,周辺部の星のHR図は,散開星団や太陽付近の星のHR図に似ていて,中心部の星のHR図は球状星団のそれに似ている。そのためバーデは,両群の星にはなにか本質的な差異があると考えて,前者を種族T,後者を種族Uと名づけた。

 種族Tの星は,その年齢が比較的若く50億年以内で,重元素の割合も大きい。また,その分布は銀河面に集中している。一方,種族Uの星は,年齢は50億年以上と古く,重元素の割合も非常に小さい。分布は銀河中心に向かってしだいに増加するような球状分布をしている。一般に種族Tの星にくらべて,種族Uの星の速度分散は大きく,銀河回転の速度と同じ程度となる。なかには銀河回転と反対向きに運動している星もある。これは,種族Tの星は銀河円盤に落ち着いたガス成分から形成されたのに対して,種族Uの星はガスの運動が乱れている銀河系の初期の時代に形成されたからであると考えられている。

 

脈動変光星と周期光度関係

 恒星のなかには光度の時間変化を示すものがある。光度の変化が周期的な変光星には,食連星のように連星の軌道運動によるもの,パルサーのように回転に同期した周期的変光を行うもの,恒星の脈動によって変光するものがある。この最後のグループに属する恒星を脈動変光星という。

 脈動の原因は恒星内部の不安定性にある。特に,恒星の大気中には電離した領域があり一種の相変化があることが不安定をひき起こす。脈動変光星で重要なのは主として3つのグループで,ケフェウス座δ型・おとめ座W型・こと座RR型である。ケフェウス座δ型とおとめ座W型をあわせてセファイドということもある。

 セファイドが重要なのは,1912年にハーバード天文台のリーヴィット(H.Leavitt)が,マゼラン星雲中にあるセファイドの変光周期と平均光度の間に1対1の関係があることを発見したことにある。この関係を,周期光度関係という。周期光度関係の光度の絶対値のゼロ点は,シャプレー(H.Shapley)が恒星の固有運動の観測から定めた。この関係を使うと,脈動変光星が観測されるかぎり,観測しやすい周期の測定から絶対等級がわかり,見かけの等級との比較から距離を決定できる。したがって,宇宙のかなり広い範囲までの距離決定に重要な手段が見いだされたことになる。

 この関係を使って,ハッブル(E.Hubble)はそれまでに距離の確定していなかった「渦状星雲」までの距離を求め,それらがわれわれの銀河の外にあって,銀河系と同程度の大きさの系であることを示した。しかし,バーデは1950年にセファイドには2種類あって,光度が1〜2等級異なっていることを明らかにした。種族Tに属する古典的セファイド(ケフェウス座δ型)が,種族Uに属するおとめ座W型よりも明るいのである。

 ケフェウス座δ型変光星は種族Tの恒星で,銀河系に700個以上存在する。分布が銀河面上であるため,星間物質による吸収を受けやすいので,銀河系での距離を推定するのには使いにくい。変光周期は1〜70日,変光範囲は0.12等級である。この型の変光星は明るいので,1000万光年程度の距離まで決定できる。

 それに対し,おとめ座W型変光星は種族Uであって,球状星団中やハロー,比較的銀河の中心部に分布する。変光はケフェウス座δ型とよく似ているが,絶対光度が1.5等級ほど暗い。周期は2〜45日,変光は0.21等級である。

こと座RR型変光星は種族Uに属すので,球状星団中やハロー,比較的銀河の中心部に分布し,星団型変光星ともいわれる。変光周期は1.5時間〜1日で,変光範囲は12等級以下である。この変光星は絶対等級が0.6等級前後で一定と考えられるので,球状星団の距離を調べるのに使用される。現在までに4500個以上みつかっている。数十万光年までの距離決定に用いられる。

 

 

 

 

 








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