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第2節 恒星の性質とHR

 

HR

分光視差

恒星の大きさ

連星とその質量

質量光度関係

発展 連星の質量

 

 

 

HR

 

HR図は,ヘルツシュプルング(E.Hertzsprung18731948年)とラッセル(H.N.Russell18771957年)の頭文字をとって名づけられたもので,本質的には縦軸に恒星の明るさを,横軸に表面温度をとって,個々の恒星がその図表上でどの位置にくるかをプロットしたものである。恒星の明るさは,単位時間に放出されるエネルギーであるが,実際には,われわれは限られた波長域のエネルギーしか測定できないので,観測量からHR図をつくる場合は,可視光線のエネルギー領域(λ=0.50.6μm)で測定した実視絶対等級を用いる。また,恒星の表面温度も,われわれは直接観測で知ることはできない。しかし,恒星の表面温度は恒星の色やスペクトル型と密接な関係をもっている。したがって,恒星のスペクトル型が観測されている場合は,横軸に表面温度の高い順に並べられたスペクトル系列OBAFGKMをとって

恒星の温度のかわりにする。

 一方,スペクトル型のかわりに色指数(BVを用いる場合もある。恒星の表面温度が高くなるにしたがって,星の色は赤から青白色になる。これは,V等級に対してB等級が小さく(明るく)なることを示すから,温度が高いほどBVが小さくなる。このような,横軸にBVを用いた図を色一等級図とよんでいる。色指数は,暗い星でも観測できるので,特に星団などの場合はHR図のかわりに色一等級図を用いている。

 

分光視差

 HR図からわかるように,同じスペクトル型であっても,主系列星と巨星では明るさが異なっている。しかし,恒星のスペクトル中の線スペクトルは,主系列星や巨星,超巨星で異なっている。巨星や超巨星では大気の圧力が小さいため,電離度が大きくなったり,スペクトルの線の幅が狭くなるというような特徴がある。そこで,同じスペクトル型の恒星を,スペクトル線の幅や強さの違いで分類することで,絶対光度を推定することができる。この分類を光度階級という。光度階級はTからZまであり,次のように分けられている。

 

Ta  ;非常に明るい超巨星

Tab  ;明るい超巨星

Tb  ;普通の超巨星

U   ;明るい巨星

V   ;普通の巨星

W  ;準巨星

X  ;主系列星

Y  ;準矮星

Z  ;白色矮星

こうして,恒星のスペクトル観測によって,スペクトル型,光度階級がわかると,恒星の絶対等級を推測できる。したがって,年周視差を測定できないような遠い星でも,スペクトル観測が可能であれば,絶対等級と見かけの等級の関係から視差を求めることができる。このようにスペクトル観測によって求められる視差を分光視差とよんでいる。

 

恒星の大きさ

 恒星の物理量は,一般に太陽を単位とする大きさ(太陽単位)で表すことが多い。太陽が平均的な恒星であるためである。恒星の半径をr,太陽の半径をrとすると,太陽単位の半径Rr/rで表される。EEをそれぞれ恒星および太陽が毎秒1cm2あたりに出すエネルギー,TTをそれぞれ恒星と太陽の表面温度とすると,シュテファン・ボルツマンの法則によって,

   

であり,太陽と恒星の光度をLLとするとL4πr2EL4πr2E

光度と等級の関係より,太陽と恒星の絶対等級をMMとして

 

 

この式に T6000KM4.7〔等級〕を代入して整理すると

  log10R8.50.2M2log10T

となる。したがって,恒星の半径も,絶対等級と表面温度の測定により求めることができる。また,この式からわかるように,同じ絶対等級であれば,表面温度が低温の恒星ほど半径が大きいことがわかる。いいかえると,明るくて表面温度の低い恒星は半径の大きな巨星であり,逆に,暗くて表面温度の高い恒星は半径の小さい矮星である。

 

恒星の視直径(理科年表より)

 

 

一部の近距離にある大きな恒星については,その大きさを干渉計を用いて直接測定することができる。表は干渉計で測定された恒星の視直径である。

 

連星とその質量

[実視連星]  北斗七星の「ひしゃく」の柄にあたる部分の端から2番目の星(おおぐま座ζ星)は,注意して見ると2つの恒星からできている。2つの恒星がごく接近して存在しているものを二重星という。二重星では,実際は互いになんら関係がないが単に方向が偶然同じであるため二重星となったということはまれで,大部分はわれわれから同じ距離にあり,互いの引力によって公転している。このように,物理的に関係のある2つの恒星を連星といい,望遠鏡で識別できる連星を実視連星という。連星の識別は,公転軌道のはっきりしないものでもエイトケンの検定式

 log10ρ2.80.2m (ρ;2星の角距離,m;主星の等級)

を用いて簡単に行うことができる。現在,実視連星は約700個ほど観測されているが,なかにはケンタウルス座のプロキシマのように,公転周期が40万年もあり,2つの星が大変離れているものもある。

 

[分光連星]  2つの恒星がごく接近しているときには,大望遠鏡を用いても1つの星にしか見えない。分光器を用いたスペクトルの観測により,初めて連星であることがわかるとき,このような恒星を分光連星という。

 

[ドップラー効果]  ドップラー効果は,1842年ドップラー(C.Doppler)によって発見された。光源と観測者が相対的に近づいているときには,光源から出る光の波長は,光源と観測者が相対的に静止しているときにくらべて青いほうに,また光源と観測者が遠ざかっている場合には赤いほうにずれて観測される。光源と観測者の相対速度の視線方向の成分速度をυとする。光に関するドップラー効果の式は,静止しているときの波長をλ0,運動しているときの波長をλとすると,

である。ここで,cは光の速度で,υがcにくらべてずっと小さいときには,上の式は

  

となる。波長の変化を

    Δλ=λ−λ0

とすると,

が得られる。速度υは近づくときを正,遠ざかるときを負にとってある。この式から,波長のずれが相対速度に比例することがわかる。また 

とかき,このzを赤方偏移という。相対速度が光速にくらべて無視できない状況では,もとの関係式を使わなくてはならない。

 ある恒星が太陽に対して静止しているときに0.5μmに観測されるべき吸収線が0.5001μmのところに観測されたとする。Δλ=0.0001μmであるから,

であって,秒速60kmで遠ざかっている。

 

[食連星]  1783年,イギリスのグッドライク(J.Goodrike)はペルセウス座の2等星アルゴルが2日と20時間49分ごとに光度が3分の1に減り,数時間後,通常の明るさに回復することを確かめた。その後,この星のスペクトルを撮影したところ分光連星であることが確かめられ,その光度変化は一方の星が他の恒星の前面を通過するために光の一部がさえぎられて起こることがわかった。このように,食を起こすために変光する連星を食連星または食変光星という。その数は4000個以上も知られているが,変光の光度曲線によりいろいろなタイプに分類されている。なお,食変光星の光度曲線は,脈動変光星の光度曲線とは明らかな違いがある。

 

質量光度関係

 恒星の質量は連星の観測以外では直接求めることはできない。実視連星では観測によって軌道周期と軌道半径がわかると,ケプラーの第3法則によって連星の質量の和が求まり,軌道半径の比を使って,個々の星の質量を求めることができる。分光連星では両星の視線速度と軌道面傾斜角がわかると,質量を求めることができる。

 こうして求められた恒星の質量mと光度Lの関係を質量光度関係という。両者を対数目盛りで表すと,ほぼ直線で近似され,恒星の質量mと明るさLは次の関係にあることがわかる。

  log10L3.5log10m+定数  より  Lm3.5 

この関係を用いると,恒星の絶対等級を知ることによって,連星以外の恒星の質量も推定できる。ただし,巨星や白色矮星ではこの質量光度関係が成立しない。

 

発展 連星の質量

 万有引力の法則から,惑星と太陽との引力と惑星の円運動による向心力とが等しいとしてケプラーの第3法則を導くことができた。しかし,これは惑星の質量が太陽の質量に比べて無視できるくらい小さい場合であり,連星のように片方の天体の質量が無視できないぐらい大きい場合には次のようになる。

 質量の天体Aと質量の天体Bが,共通重心Oのまわりを,半径がそれぞれの円運動をする場合,

     

 

a:平均距離,p:公転周期,G:万有引力定数)

となる。一方,であるので,を消去すると,

   

 

の式が得られ,さらによりそれぞれの質量が求められる。


 

 

 








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