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第4節 太陽

 

光球

彩層・コロナ

太陽風と地球磁気圏

太陽の自転

黒点と白班

フレア

太陽活動の周期性

太陽活動の地球への影響

スペクトルの種類

フラウンホーファー線

太陽大気の元素組成

スペクトルと表面温度

太陽の放射

放射エネルギーと表面温度

 

 

 

光球

 可視光線で直接観測できる太陽の大気層を光球という。光球面より内側では,光と物質の相互作用が頻繁に起こり,光は直進できないため外部から見ると不透明である。光は物質との相互作用がほとんどなくなったところから外部に出てくるようになる。この面が光球面である。このように光球の内部では光が物質と衝突することによって,十分にかき混ぜられた状態,いいかえると熱平衡状態にある。したがって,太陽のような恒星から放出される電磁波は黒体放射であると考えてよいのである。

 

表 太陽に関する基礎定数

項目

数値

赤道半径

6.96×105km

平均視半径

959.63

質量

1.989×1030kg

平均密度

1.41g/cm3

脱出速度

618km/s

自転周期(赤道)

25.38

赤道面の傾斜

7.25°

実視等級

-26.7

絶対等級

4.9

スペクトル型

G2V

表面有効温度

5780K

太陽定数

1.37kW/m2

 

(1.96cal/cm2min)

全放射エネルギー

3.85×1026W

 

彩層・コロナ

 彩層とコロナは光球より外側の大気層で,皆既日食時に見ることができるほか,ふだんでも高い山ではコロナグラフを利用することで観測できる。

 彩層は水素のHα線やカルシウムのHK線などの強い吸収線の波長で撮影した太

陽の単色像によって調べることができる。そうした観測によると,彩層上部には太陽の外側に向かって細長くのびたスピキュールとよばれる突起が多数認められている。これは太陽物質が外へ放出されている様子である。その温度は1Kほどで,上部はコロナに達している。スピキュールとしてコロナに放出された物質は,コロナで暖められ,その99%は紫外線を放出しながら再び太陽面に流れ込む。地球に達する太陽風は,コロナから外へ放出された1%程度のコロナ物質である。

コロナは,その温度が約200Kで,密度の小さい電離ガスからできている。非常な高温のため,水素やヘリウムは完全に電離し,すべての波長の光が電離した自由電子によって散乱されるため,太陽光自身と同じ白色となっている。

 

 光球・彩層・コロナの物理量

 

太陽風と地球磁気圏

 コロナ大気はきわめて希薄で,かつ200Kと高温の状態にあるため,物質が電離して,正・負の荷電粒子の集まり,すなわちプラズマを生じている。太陽風は,これらのプラズマが,加速されて惑星空間に流れ出しているものである。その速さは平均450km/sほどで,温度は10万〜100Kほどである。また,粒子の密度は太陽からの距離の2乗に反比例し,地球付近では1cm3あたり10個ほどである。地球付近に達した太陽風は,地球の磁気圏によってさえぎられるため,磁気圏の前方に衝撃波を生じ,プラズマはさらに熱せられて地球の外側にはね返る。また,高速の電子は地球磁場の磁力線に沿って流れる。こうした太陽風の影響を受けて,地球の磁気圏は昼間側で狭く,夜側は彗星の尾のように長くなっている。地球には磁場があるため,大気は太陽風によってはぎとられることはないが,磁場のない金星,火星は常時,大気がはぎとられている。

ところで,コロナにはこうした連続光以外に輝線スペクトルがある。その中には鉄の原子が9回電離したイオンからの赤い輝線や13回電離したイオンから緑の輝線もあり,コロナが高温であることの1つの証拠になっている。ときにはカルシウムが14回電離したイオンからの黄色の輝線もあるが,この輝線は700万〜800Kに対応しているので,コロナが異常に加熱された状況があることを示唆する。

 光球から彩層までの2000km程度の大気はほぼ一様大気と見なしてよい。この大気中の温度は4000Kから1万Kである。この温度は比較的低温であるので,圧力が小さい。そのため大量の物質を支えることができなくて,密度は百万分の1から千万分の1へと急激に減少する。一方,コロナは非常に高温であるため,圧力はかなり大きく太陽から十分外側まで広がっている。日食時の観測からは,太陽半径の数十倍のところまでの広がりが測定されている。コロナのもう1つの特徴は,密度が小さいために熱伝導がよく,高温のコロナの底からの熱が非常に伝わりやすいので,全体がほぼ200Kの等温大気と考えられることである。したがって,圧力もかなり外側までゆっくりとしか低下しないため,コロナのガスは惑星空間へと押し出されることになる。これが太陽風で木星や土星にまでも達する。

コロナの観測は紫外線やX線のような短い波長の電磁波で行うと,1万K程度の温度の光球や彩層からの電磁波の影響がほとんどなくなるために,太陽表面を含めた全領域でのコロナの様子を調べることがそきる。X線の観測によると,磁場の強い領域では明るく,静穏な領域では暗くなっている。さらにくわしい観測によると,光球面に現れた双極磁場と密接に結びついていることがわかった。この磁場は太陽の全面に存在しており,黒点のように低緯度地域のみに限られていない。

 コロナでは,物質が磁力線に沿って分布していることが光学的にわかっていた。さらに紫外線やX線観測によると,活動領域のコロナはループの集合であって,このループは磁力線の形状を反映している。またX線放射の少ない領域が太陽面上でかなりの面積を占め,しかもその領域が太陽の自転にともなって東から西へ回転し数か月間存在するということもわかった。この領域をコロナホールとよぶ。密度はコロナの10分の1で温度もかなり低いが,ここから出た太陽風は速度が速い。コロナホールが地球方向を向くと,太陽風の速度が増し,地磁気へも強い擾乱を及ぼす。このコロナホールでは磁場は惑星空間に向かって開いた構造をしているため,物質が流出しやすい。このようにコロナの構造は太陽の磁場構造と密接に結びついている。

 

太陽の自転

太陽の黒点が東から西へ移動して行くことから,太陽は惑星の公転方向と同じ向きに自転していることがわかる。太陽の自転周期は太陽面上のどの点でも同じというわけではなく,緯度によって異なる。観測によると,赤道部で最も短く約25日,緯度45°では約27日である。このように一様でない回転を非一様回転とか微分回転という。太陽の自転速度は,光球の東縁や西縁のガスのドップラー効果からも知ることができる。これによると,黒点で求めた自転速度よりも4〜5%遅い。光球ガスは黒点よりも自転が遅いのである。それは,黒点が回転の速い内部と磁力線でつながっているためだといわれている。

 

黒点と白班

 黒点は太陽表面現象のなかでは最も顕著なものであり,約10002000ガウスの強い磁場をもつことで知られている。太陽面で黒点の現れるような場所を活動領域という。大多数の黒点は数時間で消滅してしまうが,なかには直径1000kmほどの小さなもの(ポアーとよばれる)から成長して直径10km以上の大黒点になるものもある。

黒点がある程度以上の大きさに成長すると,中心付近の暗部とそのまわりの半暗部に識別されるようになる。暗部の温度は約4100K,半暗部の温度は約5500Kほどである。黒点の温度が光球より少し低いのは,太陽内部からの熱対流が黒点の下部では磁力線によっておさえられているためといわれている。黒点は単独で現れることは珍しく,多くは対になって現れる。その場合,一方がN極,他方がS極になっている。

 太陽像を投影板に写すと,周縁部付近に,点状または細い線状に白く輝く部分が見られる。このように,まわりの光球よりいくらか明るくて輝いて見える部分を白斑という。白斑は黒点の周辺部には必ず存在している。白斑部も小さな黒点の磁場に匹敵する程度の,強い磁場をもっている。白斑の磁場がさらに強くなると,黒点になるといわれている。

 

フレア

 記録に残った最初のフレアは,1859年9月1日のものである。そのフレアは光球が白色光で光るというもので特別なフレアである。もともと,フレアはHα線で観測したとき,黒点近傍の暗条のまわりの明るい領域が,突然明るくなり数分から10分で最大の明るさと最大の面積に達し,その後数十分から数時間かかってゆっくりともとの状態に戻る現象を意味していた。その際に特徴的なことは明るさの減少時に,明るい2本のすじがゆっくりと間隔を広げていくことにある。このときの明るさの最大は,普通の状態の2〜3倍から10倍程度となる。

 フレアについての別の波長の電磁波での研究は,19731974年のスカイラブ実験で進展した。紫外線やX線でのフレアの観測はその構造に関する新たな知見を与えた。Hα線で見えた2本のすじを,X線ではループの列がつないでおりそのループの根本がHα線で見えていたのである。こうしたループ構造は,コロナの中に突出した磁力線の形を反映し,その磁力管の中に500万〜2000Kの高温のプラズマがあると考えられている。このように,太陽の外層大気中で起こる磁場と関連した爆発現象がフレアである。

フレアの高さは1万〜10kmで,フレアにともなって放出されるエネルギーは,1021Jから1025Jであり,最大1016g程度の物質の放出がともなう。このエネルギーの放出率は毎秒108W/2で太陽の普通の放射量6×107W/2と同程度であるが,フレアが核反応ではないこと,密度の希薄なコロナ中でのエネルギー放出であることを考慮すると大変大きな値である。また,フレアは高エネルギーの電磁波のみではなく,高エネルギーの電子や陽子をつくり出す。これらの粒子は太陽風として惑星間空間に流れ出し,地球上にも影響を及ぼす。

 

フレアとループ構造

 

こうしたフレアのエネルギーは直接的には磁場のエネルギーに起因する。フレアの起きる直前の磁場の構造を調べると,磁場がねじれる運動をすることがわかる。この磁場のねじれにエネルギーが蓄えられるのである。このエネルギーがどのように解放されてフレアを形成するかについては,いくつかの理論が提出されている段階である。

 

太陽活動の周期性

 太陽活動の周期性は,黒点の数の増減として,ドイツのシュワーベ(S.Schwabe)により発見された。その周期は11年である。ウォルフ(J.R.Wolf)は黒点数を表すために,黒点相対数を用いた。黒点相対数Rは,個々の黒点総数をf,黒点群の数をg,観測者や望遠鏡の性能などによる補正定数をkとすると,Rk(10 gf)で表される。

 黒点は磁場の現象であるから,黒点数の増減は磁場の増減になる。ヘール・ニコルソンの法則によると,1対の黒点があるとき,その磁場の極性は異なり,2つを結ぶ双極軸はほぼ赤道に平行になっている。先行する黒点と他方の黒点の極性関係は,1つの太陽周期(11年)中同一であり,極性は南北各半球で逆になっている。11年たつと,この関係はすべて逆になる。黒点の磁場は,各黒点別々のものではなく,太陽全体を支配する磁場によるものであり,太陽全体の磁場が11年ごとに逆転していることになる。これを考慮すると,太陽活動の周期は22年ともいえる。

 

 

太陽活動の地球への影響

 フレアの際には,太陽風の密度と速度が強まる。太陽風は地球の磁気圏に衝突していることになるので,強まった太陽風によって地球のまわりの磁場の分布や強さが変化する。

 オーロラは,磁気緯度6570°あたりに見られる超高層大気の発光現象である。オーロラは低いものでは地上8090kmのところで,高いものでは300500kmのところに現れる。その光は酸素や窒素の分子や原子,イオンの発するスペクトルで,特に強いのは酸素原子の緑と赤,窒素分子の青と赤である。これらの原子や分子を発光させるのは,地球近くで大きなエネルギーをえた太陽風の電子であり,太陽風のイオンで発光するオーロラは極めて少ない。

磁気嵐という言葉は,もともとは地球磁場の北向き成分が1〜2日にわたって1%程度減少する効果を意味していた。しかし,広い意味では地球磁場の急激な増減のような非定常的な変化に対して使用する。磁気嵐は基本的には地球の電離層(磁気圏系)を流れる電流の変動による。太陽フレアにともない,太陽風による衝撃波が強まって地球磁気圏の変形が起こる。このとき,磁気圏境界面等での電流が変動して磁場を変化させるのである。

 また,太陽フレアの際の紫外線やX線の増大は,電離層下部の電離度を高め,電波の吸収を増大させるので,電離層で電波を反射させることが困難となって通信に障害を与える。これをデリンジャー現象という。

 

スペクトルの種類

 高温の物体から放射される電磁波は熱放射とか黒体放射とよばれる。この放射のスペクトルは連続スペクトルとよばれ,すべての波長で強度をもつ。このときに波長ごとの強度の分布は温度のみによって決まっている。可視光線の領域では赤から紫までの連続光がこれに対応する。

 一方,たとえばNaガスを熱してやると,ある特定の波長のところのみが明るくなる。このようなスペクトルを線スペクトルという。特に,ある波長で明るい場合を輝線スペクトル,暗い場合を吸収スペクトルという。こうした線スペクトルは連続スペクトルと重なって現れる。連続スペクトルの光を,低温のNaガスの中をくぐらせると,連続スペクトル中に暗線が現れる。このような暗線は,その部分の波長の光がNa原子によって吸収されたために現れるのである。

線スペクトルは原子中の電子のエネルギー準位を反映したものである。たとえば,水素は1個の電子が中心にある原子核である陽子のまわりを回っている,簡単な原子である。原子中の電子は古典的な軌道運動しているものではない。電子のように微視的な粒子は量子論的なふるまいをする。量子論的な粒子は粒子性と波動性をもち,そのために軌道半径やとりうるエネルギー状態が整数で指定できるとびとびの値のみしか許されなくなる。こうした状態を量子化された状態というが,特にエネルギーはエネルギー準位という。それは

 (123,…)

 

で表される。ここでkは元素ごとに異なる定数である。n1の状態を基底状態,nが2以上を励起状態という。

 原子の中の電子のエネルギーはエネルギー準位の値のみが許される。電子は,したがって,エネルギー準位の差のエネルギーを放出したり吸収することによってのみ軌道をかえることができる。このエネルギー差は元素によって異なっている。

 一方,光は波動であるとともに粒子性をもつ。光の粒子を光子というが,1個の光子のもつエネルギーは,振動数にプランク定数をかけた値の整数倍というとびとびの値しか許されない。

 そこで,電子のエネルギー準位の差に相当するエネルギーの光のもつ振動数は決まったものとなる。このようにして,吸収や放出される光の波長は原子の構造を反映することになり,吸収または放出される光を測定することによって,元素を特定することができる。

図T 水素原子中の電子エネルギー準位と水素のスペクトル

 

たとえば,水素の場合吸収できる光の波長λは次の式で示される。

     

ここで,

  n123‥‥‥

  n'n1n2

       n3,‥…

で,Rはリュードベリ定数といわれ

  R1.0968×107/

である。この式でn1のときの波長の光は,紫外部にありライマン系列とよばれ,励起状態の電子が基底状態に落ち込むときに出る光である。またn2の励起状態に落ち込むときには可視部の波長の光でバルマ一系列という。

図U 水素原子の線スペクトル(バルマー系列)

 

 なお,水素原子に13.6eV以上のエネルギーをもった光があたると,水素原子中の電子は自由電子となって陽子の束縛を受けなくなる。この状態が電離した状態である。

 

フラウンホーファー線

 太陽のスペクトルをくわしく調べたのは,ドイツの物理学者フラウンホーファー(J.Fraunhofer)である。彼は太陽のスペクトル中に多数の暗線の存在を発見し,その主なものに赤いほうから紫にかけてABCD,……のようにアルファベットをつけた。この命名は今日でも使われており,太陽のスペクトル中の暗線のことを,フラウンホーファー線という。太陽スペクトル中には数万本のフラウンホーファー線が認められている。

 なお,Na原子による最も強い吸収線は0.589μm付近に現れるもので,ナトリウムD線とよばれている。これは0.5890μmと0.5896μmの2本の吸収線に分かれて現れる。

 

太陽大気の元素組成

太陽大気中にどのような元素が存在するかは,太陽スペクトルに現れる吸収線の波長を調べ,実験室で求められている種々の原子やイオンによる吸収線の波長と比較することによって知ることができる。それによると,地球にある元素のうち60種類以上の元素は,太陽大気にも存在することがわかっている。しかし,それらの元素がどのような比率で含まれているかは,元素の種類を決定するよりはるかにむずかしい。たとえば,天文台で大口径望遠鏡に大分光器をつけて夜ごと観測している目的の1つは,恒星の大気に含まれる原子の相対含有量を決定することなのである。

 太陽に関しては,その主な元素の割合を下表に示したが,水素とヘリウムが大部分を占め,他の元素はほんのわずかであることがわかっている。なお,このようなスペクトル線の観測から求められた原子の含有率は,直接観測のできる太陽表面層の値であり,太陽全体の含有量ではない。事実,中心部では水素がヘリウムに変わりつつあるので,水素は減りヘリウムは増えているであろう。しかし,太陽の場合,核反応の起こっているのはごく中心部に限られているので,全体としては表面の含有量と大差はないと考えられる。

 

スペクトルと表面温度

 天体のなかで,連続スペクトルを放出する典型的な例は太陽である。太陽のような恒星の出している電磁波は,前述のように,物体を熱した際に出る電磁波である。電気ストーブや電気ごたつが赤っぽく光っていたり,溶鉱炉中の高温の鉄塊が白っぽく輝いて見えるのは,それぞれの温度に対応した電磁波を放出しているためである。

 高温状態のストーブや鉄からのスペクトルは,同じ温度にしておいてもまったく同じではない。物質の特性による違いが存在する。しかし,その違いは全体の振舞いの共通性からすると,わずかな違いでしかない。

 物体を熱したときに出る電磁波の共通な性質を扱うために,状況を理想化して熱平衡状態にある完全黒体というものを考える。普通は物体に光が入射すると,一部は反射し一部を吸収したり透過したりする。黒っぽい物体ほど光を吸収しやすく,反射の割合が小さい。完全黒体とは,入射する光を反射することなくすべて吸収する理想化された物体のことである。このとき注意すべきは,「吸収する」というのは,外部から入射する光を完全に吸収するという意味である。後述するように,黒体自体が光を放射することを許さないという意味ではなく,有限の温度の黒体からは電磁波が放射される。

 ある物理系を考えその系と周囲との間に熱のやりとりをさせないよう,また物質を出入りさせないようにして孤立させる。たとえば,温度の異なる金属片を2つ接触させて,周囲を断熱材でおおったものを考えてもよい。それを長時間放置しておくと,金属片は同じ温度となり,それ以上の変化は起こらない。また,たとえば断熱壁で囲まれた容器の内部に仕切りを入れ,仕切りの両側に異なる温度の異なる種類の気体を入れ,ある時刻に仕切りをはずす。この状態で長時間放置しておくと,容器の内部の温度は一定になるとともに,異なる気体の分子の分布も一様化する。このような状態は巨視的に見ると変化のない状態である。このような熱的につり合っていてそれ以上変化のない状況を,熱平衡状態という。熱平衡状態にある物質は,温度・圧力・化学組成等の少数の物理量のみで指定できる。

 熱平衡状態にある完全黒体からは,その黒体の温度のみによって定まるスペクトルをもった電磁波が放出される。この電磁波を黒体放射といい,そのスペクトルを黒体放射分布とか,最初にこの分布を導いたプランク(M.Planck)の名をとってプランク分布という。またそのスペクトルが黒体放射スペクトルである。

黒体放射分布の特徴は,温度と波長(あるいは振動数)を指定すると強度が一意的に定まることである。このことは波長と強度から温度が一意的に定まることをも意味する。実際,黒体放射分布の強度を波長の関数としてグラフをかくと,温度の違う分布はお互いに交わることがない。

 また,温度の違う分布をくらべると,強度の最大となる波長は温度と反比例していて,最大の強度を与える波長をλ〔μm〕,温度をTK〕とすると,

        λT2900

となっていて,これをウィーンの変位法則という。低温の黒体放射と高温の黒体放射をくらべると,強度の最大となるのは低温のものが長い波長で,高温のものが短い波長となっている。恒星は高温状態の気体であり,輻射は内部にほぼ閉じ込められている。これは,光は恒星内部で物質と何度も相互作用をするために,直進して表面から抜け出ていってしまわないことを意味していて,不透明であるという。したがって,恒星からの光はほぼ表面から出ていて,しかも黒体放射であると考えてよい。恒星の色はその表面温度に対応する黒体放射の可視光の波長範囲での強度の最大付近の波長に対応する色なのである。したがって,恒星の色の違いはその表面温度の違いであるといえる。青い星は表面が高温であり,赤い星の表面は低温なのである。

 なお,黒体放射分布は波長ではなく振動数について表現することもある。その場合には強度の最大値を与える振動数は上記のウィーンの法則の波長には対応しない。

 

太陽の放射

 太陽表面からのエネルギーはほぼ等方的に広がっていく。そのため,単位面積あたりにやってくる太陽からの放射は,距離の2乗に反比例して小さくなる。したがって,地球の位置で測定する太陽からの放射量から,太陽の出す放射の総量を計算することができる。太陽から1天文単位のところで単位時間に単位面積あたり受けるエネルギーを太陽定数という。太陽定数を1.4kW/2とすると,太陽放射エネルギーは

 1.4×4πa23.9×1023kW〕 (ただし,a1 天文単位=1.5×1011m)となる。

 

 [太陽のエネルギー源]  太陽を含め恒星のエネルギー源が何かという問題は,古くから考えられてきた。天体は大量の物質がかたまったものであるので,その重力エネルギーが1つの候補と考えられた。星間空間中の星間雲が収縮することによって,重力エネルギーの低い状態へと収縮することで,最初のエネルギーとの差に相当するエネルギーをなんらかの形で光に転換しているのではないかという考え方である。広がった星間雲が現在の太陽程度の大きさに収縮したときに放出するエネルギーは1041J程度である。したがって,太陽が現在と同じ程度の光度を保っていれば1015秒,いいかえると数千万年程度しか輝きえないことを意味する。太陽を含む太陽系の年齢は46億年程度であるので,エネルギー的には重力収縮によるエネルギーではまったく不十分であることになる

 太陽のエネルギー源が解明できたのは,1930年代以降になって,原子核反応が考えられるようになったためである。1938年に,ベーテ(H.A.Bethe)とワイゼッカー(F.von Weizsaker)が,水素の核融合からヘリウムのできる核反応によって恒星の中心部でエネルギーが生み出されている可能性を示唆した。

 アインシュタイン(A.Einstein)の相対論によると,質量mの物体はエネルギーcは光速度)と同等なので,核反応によって生じる質量欠損のぶんだけ,エネルギーとして放出される。すなわち,太陽の内部で4個の水素が1個のヘリウムに変わるとき,

   4×1.00804.00260.0294

の質量が減少する(原子質量単位)。すなわち,質量の約0.7%がエネルギーに変わる。1kgの水素が反応したとすると,

   

のエネルギーが放出されることになる。

 太陽が誕生以来放出したエネルギーの総量は3×1043J程度であるので,

   

程度の質量が原子核反応に関与すればよく,これは太陽の質量2×1030kgの数%であって,エネルギー的に十分まかなえる量である。

 なお,水素の核反応には2つの道すじがあり,1つはpp反応,もう1つはCNOサイクルとよばれている。pp反応は

   1H 1H 2D e++ν 

  2D 1H 3He

  3He3He 4He21H

CNOサイクルは

   12C1H 13N

   13N 13Ce++υ

  13C 1H 14N

   14N 1H 15O

   15O 15Ne++ν

  15N1H 12C4He

という反応である。結果的には,pp反応もCNOサイクルも4つの水素から1つのヘリウムになる反応である。

 水素の核反応が起きるためには,107Kの温度以上になる必要がある。ただ,温度が2×107K以下では,pp反応が有効なエネルギー源であり,それ以上の温度ではCNOサイクルが主たるエネルギー源となる。

 

放射エネルギーと表面温度

 黒体放射をする物体の単位面積からは,温度の4乗に比例したエネルギーが単位時間あたり放出される。これをシュテファン・ボルツマンの法則といい,

   EJ=σT4  (σ=5.67×10-8W/(m2K4)

と表される。このときの温度を有効温度という。したがって,この式を使うと天体の有効温度を知ることができる。放射が完全な黒体放射であれば,ウィーンの変位法則から求めた温度と,この有効温度は一致する。しかし,現実の天体では完全な黒体とは限らないので,これらの温度は一般には一致しない。

 

 

 

 

 








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