トップ地学I 改訂版>第4部 宇宙の構成>第1章 太陽と太陽系>第3節 太陽系の天体

第3節 太陽系の天体

 

地球型惑星と木星型惑星
太陽系の諸惑星

冥王星

太陽系の天体の新しい定義と名称

惑星大気

衛星

小惑星

彗星

太陽系の成因

 

 

 星を大きく分けると恒星と惑星になる。恒星は核反応によってエネルギーを現在生成していたり過去に生成した天体である。一方,惑星はそうした恒星のまわりを回っている原子核反応を起こさない天体のことをいう。太陽のまわりには,8個の惑星があり,太陽からの引力によって太陽のまわりを回っている。これを太陽系というが,太陽系内での大きさの尺度としては太陽と地球の平均距離を用い,天文単位とよぶ。天文単位を用いることによって,太陽系内での特徴的な距離は,ほぼ1から10のオーダーの値で表現できる。太陽系内には惑星以外にも,火星と木星の軌道の間にたくさん存在する小惑星,惑星のまわりを回っている衛星やリング,離心率の大きな軌道をもつ彗星などが存在している。

 

地球型惑星と木星型惑星

 地球型惑星と木星型惑星の基本的な違いは,その大きさと密度である。しかしこれらの違いの原因は,太陽からの距離の違いにあるといわれている。地球型惑星は,太陽に近く,強い太陽放射のためHHeなど軽い元素が飛散し,木星型惑星では太陽から遠いためそれらの元素が残っていると考えられるからである。したがって,木星型惑星は太陽の化学組成に近く,また原始太陽の物質をそのままもっているともいえる。表に,これらのタイプの惑星の主な相違点を示す。

 

表 地球型惑星と木星型惑星の比較

 

太陽系の諸惑星

[水星] 1974年,惑星探査機マリナー10号が水星から700kmまで接近し,その表面像を地球に送ってきた。水星は一見月に似たクレーターをもっているが,月面の海にあたるものはほとんど見られず,クレーターの分布の様子は月とは異なっている。その他の地形的な特徴としては,ベースンとよばれる盆地状の凹地や裂片断崖(断崖地形)などがあげられる。裂片断崖は,水星がその早期において収縮した結果できたものと推定されるが,水星には大気がほとんどなかったため,そうした早期の地形がよく保存されていると考えることができる。

 マリナー10号は,水星のまわりを6か月ほどの周期で回る軌道をもち,数回にわたって水星の磁気圏の観測も行ってきた。その結果,水星の磁場の強さは地球磁場の約1%ほどで,地球にくらべるときわめて小さいが,火星や金星にくらべるとはるかに強い磁場をもつことが確認されている。こうしたことから,水星は地球のように鉄を主成分とする核をもつと考えられるが,その平均密度などから,水星では核の部分が比較的大きく,水星の質量の80%ほどを占めていると推定される。しかし,水星の自転周期は約59日であるので,その自転速度は地球のそれにくらべてきわめて遅く,水星の磁場の発生する原因についてはよくわかっていない。

 

[金星] 金星の大気組成の主成分はCO2で体積で97%を占める。そのほかには,NO2SO2H2Oなどが数%を占めている。全体の大気量は地球よりはるかに多く,地表での大気圧は90気圧になる。地球の100倍程度の多量のCO2による温室効果のため,表面温度は場所によっても大きな違いがなく約750Kにも達する。

 金星の大気は厚い雲におおわれていて,雲は急速な回転をしている。上層雲はわずか4日間で自転している。この雲の色は黄色で,地球の雲とは異なっている。これは雲粒が硫酸滴からできいるためといわれている。また,この雲の下では雷が起こっているらしいことを,ヴェネラ1112号が見いだしている。

金星に関する大部分の知識は,惑星探査機ヴェネラやパイオニア,そしてマゼランによってもたらされたものである。ヴェネラ10号によると,地形は平らな平原状で,岩石は玄武岩に似ている。またヴェネラ1314号はカラー写真を地球に送ってきた。それによると,空は明るいオレンジ色で,地面にはいろいろな岩層が見え,かなり角ばった岩石もある。これは新しい火山活動の存在を示している。また,化学的侵食の証拠も見えている。1978年に打ち上げられたアメリカのパイオニア号,そして1990年のマゼラン号は,それぞれ長期間にわたって金星の表面地形の様子を送ってきた。これら探査機はレーダー反射によって地表の凹凸を調査し,全表面の98%の部分の地図ができている。これによると巨大な波状平原地形が7割を占め,残り20%が低地,10%が高地になっている。高地は北半球と南半球に1つずつあり,大陸とよんでいる。北の大陸はオーストラリアぐらいで,高さは平均3kmぐらいでいくつかの山脈をもっている。南の大陸はアフリカぐらいの大きさで山脈も高く起伏も大きい。両大陸にはカルデラの特徴をもった火山性地形もある。金星表面の年齢は5億年程度と考えられる。金星にもプレートテクトニクスに特徴的な地形や火山地形の存在があるにもかかわらず,表面に存在するクレーターの分布がランダムであることやその形状に変形が見られないという事実を説明する理論がいくつか提唱されている。

 

[火星] 1971年,マリナー9号は約1年間火星のまわりを回りつづけ,火星表面のほぼ全域の写真を撮影した。さらに1976年にはバイキング1号,2号が火星表面に軟着陸し,より詳細なデータを提供してくれた。火星の大気は非常に希薄で,大気圧は地球の100分の1以下である。その成分は,体積にして95%がCO2,3%がN212%がArからなり,そのほかにO2COH2Oなどがある。大気中のCO2の約20%は冬にはドライアイスとなり,極冠を発達させていて,このため夏と冬とで気圧変化が生じている。この気圧変化が大気の循環をひき起こしている。火星の大気は希薄であるが,大気中に凝縮雲と塵の雲がしばしば見られる。これらは水蒸気や二酸化炭素が凝縮してできたもの,あるいは地上の微小な粒子が強い風によって吹き上げられたものである。この塵の嵐はしばしば現れ,火星表面の大きな領域をおおう。

火星の北半球は,クレーターの密な部分と,比較的なだらかな平原の部分がある。南半球はクレーターが多く,いくつかの大きな盆地がある。クレーターは火山性のものと隕石の衝突によるものとの2種類があり,南半球のクレーターは北半球のものより古い。これは北半球の火山活動が古いクレーターを消してしまったためと考えられる。火星にはタルシスとエリシウムとよぶ巨大な火山性の盾状地があり,流動性に富む溶岩流が広く分布している。タルシス盾状火山群の中のオリンパス火山は,直径600km,高さは周囲の平原より2223kmも高い巨大な死火山で,頂上付近には直径80kmもあるカルデラが見える。この火山は地球で最大のマウナ・ロアの50100倍はある。一方,隕石の衝突によるクレーターも多い。微惑星の衝突によってできたクレーターが数多く残っているのは,地球より侵食作用が少なかったためであろう。火星の赤道の南側にある巨大なマリネス峡谷は長さ4000km,幅200km,最大の深さ7kmの大峡谷である。峡谷付近の地形には,流水の侵食・堆積作用によって形成されたと思われるものが多数ある。また,河床地形も多い。河床地形には,水流河床・氾濫河床・蛇行河床があり,地球の流水による地形と非常によく似ている。火星の歴史の中で,現在とは異なった大気と機構の時代があったのかも知れない。

 

[木星] 木星は地球型惑星と2つの点で大きく異なっている。1つはその化学組成で,平均密度1.33g/cm3という値がそれを示している。太陽と他の惑星が同じガスと塵から誕生したと考えられるので,木星のような大きな惑星は当初の化学組成をそのままもっているはずで,そういう意味からも太陽とほぼ同じ化学組成と考えられている。もう1つは,木星内部の熱源である。惑星探査機の赤外線観測によると,木星が放射する赤外線は,木星が吸収する太陽のエネルギーの1.52倍にもなっている。

したがって,木星は内部にかなりの熱源をもっていることになる。その熱源については十分な説明がなされていないが,木星が誕生した当時の熱が内部に閉じ込められそれが定常的に放出されているという考え方もある。

                                 

 

木星の表面は主に水素からなる厚い大気でおおわれているが,その内部は液体水素であると考えられている。地球を構成するような物質は,わずかに中心部の核に存在するだけで,あとはそれをとり巻く液体金属水素と液体分子水素である。金属水素は電気の良導体であり,これらが対流を起こすために木星の強い磁場が存在すると考えられている。

 木星の表面に見える暗い縞や明るい帯,大赤斑などはすべて雲である。1974年のパイオニア10号の観測によると明るい帯は暗い縞の部分より温度が低い。これは,帯の部分は大気の上昇によってつくられた雲(主にアンモニアの結晶)の上部を,暗い縞の部分は雲の消える下降気流の部分で,より低いところを見ているためであると考えられている。大赤斑は,それよりさらに温度が低いので,もっと強い反時計回りの上昇気流の領域であると思われる。これらの雲の様子は,木星大気運動についていろいろ教えてくれる。

 木星の大気の運動は,地球と異なっている。木星には,地球のように大気の動きに影響するような固体表面はない。したがって,極と赤道との間の温度差が少ない。また,地球の大気の動きのエネルギー源は太陽放射であるのに対し,木星では内部からの熱が太陽放射と同程度ある。さらに,自転速度が速く(周期10時間),そのための転向力も大きい。これらの要因により,木星での大気の循環は南北方向の流れはほとんどなく,東西方向の帯状の風が吹いている。木星の高圧域・低圧域における温度差がこの風の原因である。

 1979年,ボイジャー1号によって木星の表面から57000kmのところに薄いリング(環)のあることが確認された。このリングは非常にぼんやりしていて光に対してほとんど透明である。リングの内側には,さらにぼんやりした円盤状の雲の層があり,木星本体まで続いている。リングはオレンジ色で,半径4μmほどの小さな粒子からできていると考えられていて,その粒子は土星のリングのような氷状ではなく,岩石質の物質ではないかと思われている。

 

[土星] 土星は木星と同じように表面近くの大気はHHeで構成されている。しかし,木星よりも大気中のHeの割合が少ない点で異なっている。表面には,木星ほどはっきりしないが横縞模様があり,その数は30以上に達する。また雲状の模様もあるが,木星とくらべて数も少ない。

 土星の特徴は,そのリング(環)である。土星のリングは,木星や天王星にくらべて非常に明るく,土星本体よりも高い反射能(アルベド)を示す。土星のリングには3つの主なリングがあり,外側のA,B環が明るい。その間はカッシーニの間隙とよばれている。B環の内側がC環であるが,半透明でA,B環にくらべて目だたない。Cの内側にもD環があるが地球からは見えない。A環までの直径は約27kmもあるが,その厚さは数十mで非常に薄い。環は小さな粒子からなり,その粒子は氷または岩石のまわりに氷が付着したものと考えられている。

 ボイジャーによって,土星のリングは小さな間隙で仕切られた何千もの小さな環の集合であることがわかった。また,カッシーニの間隙にも多数の小さな環が発見された。さらに地球から見えない,A環の外側にF,G,E環が発見された。このような土星のリングの構造の新しい発見は,ボイジャーの大きな成果の1つである。

図W 土星の環

 

 [天王星] 自転軸がほぼ90°ほど倒れていて,太陽系では特異な惑星である。1977年には,恒星の掩蔽を利用して9個の暗いリングが発見されている。しかし非常に遠い天体なので,1986年1月にボイジャー2号が接近するまでは表面の様子についてほとんどわかっていなかった。ボイジャー2号は,いままでのリングに加えて,2個のリングとリングまたは弧を発見した。しかしいずれも非常に淡く光学的に見えにくい。天王星の表面には,木星・土星と同様,雲が認められ,自転周期(約17時間)よりやや速い速度で回転している。これは,天王星にも自転方向と同じ向きの風が吹いていることを示している。天王星は自転軸が横だおしになっているにもかかわらず,地球・木星・土星と同じような風が吹いていることは注目される。雲以外にも帯状の模様も見いだされているがはっきりしたことはわからない。

 

[海王星] 1841年,イギリスのアダムス(J.C.Adams)は,未知の惑星が天王星の運動に摂動を与えていることから,新しい惑星を予測した。しかし彼の成果は注目されなかった。1845年,フランスのルヴェリエ(U.Le Verrier)がアダムスと同じ結果を得て,それをもとに1846年,ドイツのガレ(J.Galle)とダレ(H.DArrest)により新しい惑星が発見された。

 

冥王星 20世紀の初めには,ローウェル(P.Lowell)とピッカーリング(W.H.Pickering)が,天王星・海王星の運動に見られる摂動から,海王星の外側の惑星の存在を予言した。そして,1930年にトンボー(C.Tombaugh)によって冥王星が発見された。しかし現在では,冥王星の質量は小さく,天王星や海王星に摂動を与えることはできないことがわかっている。1978年,アメリカで冥王星の衛星(カロン)が発見され,質量が求められている。これによると,地球の400分の1ぐらいといわれ,これから平均密度を求めると1.6g/cm3ぐらいになる。したがって大部分,氷のような物質からできていると考えられるようになっている。

 

太陽系の天体の新しい定義と名称

 国際天文学連合(IAU)は20068月に開催された総会において,太陽系の天体に関する定義を決めた。これにより冥王星は惑星ではなく,冥王星型天体(下記)の代表として位置付けられることになった。

 冥王星は1930年にアメリカのクライド・トンボーによって発見された。当初は地球よりも大きな質量をもつと考えられていたが,1978年に発見された衛星カロンの観測から,地球の質量の1/400(月よりも小さい)に過ぎないことがわかった。

1992年に新天体1992QB1が発見されてから,冥王星のように海王星の外側を通る軌道をもつ天体が数多く発見されるようになった。これらの発見の背景には暗い天体(明るさの乏しい天体)や大きさの小さい天体を検出する観測技術の向上がある。これらの天体は,軌道長半径が海王星のそれより大きいのでTNO(trans-Neptunian objects),あるいはその存在を推定した2人の研究者の名からエッジワース・カイパーベルト天体などとよばれてきた。1990年代の終わりには,冥王星に小惑星番号10000番をつけるという提案がIAU内でなされたが,大多数に支持されることはなかった。

2000年代に入り,海王星以遠の領域には次々と比較的大型の天体が見つかり始めた。ついに,2005729日,後にエリスと名づけられた天体2003 UB313は冥王星より大きいことが発表された。そして,2年近い討議と特別委員会での検討をふまえ,2006年のIAUの総会で,惑星の定義を含めた太陽系内の天体についての決議が行われた。

日本学術会議では,研究者・学校教育関係者・社会教育関係者・報道関係者など20数名からなる小委員会をもうけて,新しい太陽系の天体に関する概念について検討を重ね,その成果を3つの報告にまとめた。それによると,太陽の周りを回る天体は次のの3つに分類されることになる。(ただし,衛星は除く。)

1.惑星 (planet):次の3つの条件を満たす天体。

(a)太陽のまわりを公転している,(b)自己重力が他の力を圧倒するほど質量が大きいため,流体力学的平衡状態の形状(ほぼ球形)になっている,(c)その軌道の近傍には同じくらい大きな質量をもつ他の天体が存在しない。

これにより,太陽系の惑星は,水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8つになる。(冥王星は惑星ではなくなるが,その名称は変わらない。)

2.準惑星 (dwarf planet):惑星の条件の(a)(b)は満たすが(c)を満たさず,(d)衛星でない天体。

200710月現在,冥王星,エリス,ケレス(セレス)の3つ。準惑星の判定が難しく,定義に検討の余地があること,また高校までのレベルを超えることから,日本学術会議ではこの概念の使用を推奨していない。

3.太陽系小天体 (small solar system bodies):太陽のまわりを公転している他の天体。

惑星,準惑星,衛星以外の太陽系のすべての天体。すなわち,ケレス(セレス)を除く小惑星,冥王星とエリスを除く太陽系外縁天体(次の項を参照),彗星がこれに含まれる。

 

 そして,日本学術会議の小委員会は,さらに次の2つの用語を設けて,冥王星が準惑星として定義されたことよりも,太陽系の概念が広がったことの重要性を強調している。

4.太陽系外縁天体 (trans-Neptunian objects):外縁天体と略称。海王星を超えて非常に遠くまで分布する多数の小天体のグループで,冥王星もその一員である。1992年以降すでに1000個以上発見され,TNO,エッジワース・カイパーベルト天体などともよばれてきた。

5.冥王星型天体 (英語名称は未定):太陽系外縁天体でもあり準惑星でもある天体。すなわち外縁天体の中で大きなものに対応する新しい天体カテゴリーである。英語名称はなお検討中だが,日本での名称は「冥王星型天体」とすることを,日本学術会議の小委員会では決定した。200710月現在,冥王星とエリスの2つだけだが,増えていくと考えられている。

 

20086月,英語名称はIAU執行部において,plutoidとすることに決まった。

 

 

 今回の決議に対して,冥王星は惑星から外されたという報道が目立ったが,そこでとどまってしまうと,太陽系の果ては海王星になってしまう。ところが実際には,太陽系外縁天体の中には軌道が冥王星軌道のはるか外側まで広がっているものもあり,今後もたくさん見つかるはずである。また長周期彗星の軌道分布から,海王星軌道の1000倍以上の広大な領域にも多くの天体があり,太陽系を雲のように囲んでいるのではないかと考えられている。この仮想的な雲をオールト雲といい,太陽系外縁天体の広がりはオールト雲まで続いている可能性もある。

<参考>

 太陽系天体の名称等に関する検討小委員会

  http://www.scj.go.jp/ja/info/iinkai/bunya/buturi/wakusei.html

 第二報告:新しい太陽系像について−明らかになってきた太陽系の姿−

  http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t39-3.pdf

 

惑星大気

主な惑星の大気の化学組成は,次の表のようになっている。これによれば,惑星には3つのタイプの大気があることがわかる。1つは木星のようにH2Heからなる大気,2つ目は金星・火星のようなCO2を主成分とする大気,3つ目は地球のN2O2を主成分とする大気である。これらの大気の違いは惑星大気の進化と深い関連がある。原始太陽系は,濃い星間ガスの中でガスと固体物質の集積によってできた。原始太陽が生まれて約107年後には現在より103105倍も強いエネルギーを放出する時期(おうし座T型星段階)に達し,このときの強い紫外線や太陽風によって太陽系内の多量の星間ガスは散逸してしまったと考えられる。

 

表 惑星大気の化学組成

 

この時期,木星より太陽に近い惑星はほぼ成長を完了していた。惑星の誕生時の大気は,当然星間ガスすなわち太陽と同じ組成をもっていたはずであるが,太陽の強い放射によって,太陽に近い惑星の大気はすべて消失したと思われる。したがって,大気の散逸がなかった木星は当時の原始大気の組成をそのままもち続けているが,地球・火星・金星の大気は,その後2次的にできた大気であると考えられる。これらの惑星では,その後の火山活動による脱ガス作用により内部からCO2や水蒸気(H20)が多量に放出されたと考えられる。このうちの水蒸気は,地球では冷えて水になり海をつくった。金星でも一時的に海ができたかも知れないが,気温が高いため蒸発し,さらには紫外線によって分解して水はほとんどなくなってしまった。

 また火星では水は凍結してほとんどが氷になってしまっている。したがって,地球だけが海をもち,大気中の二酸化炭素が多量に水に溶け,現在では石灰岩中に固定されている。また,海で発生した生物によりつくられた酸素が増加し,現在の大気になったと考えられる。

 このように各惑星の大気は見かけ上異なっているが,これらの違いは,各惑星の太陽系内の位置の違いによって異なった進化をしたことが1つの大きな原因となっている。

 

衛星

[] 1969年から1972年まで続いた6回のアポロ宇宙船による月面探査によって,月についての知識は飛躍的に増大した。アポロがもち帰った岩石の総量は381kgにも達している。月の岩石を構成する鉱物は,地球よりかなり少なく,その主なものは単斜輝石,斜長石,かんらん石,イルメナイトの4つである。月の“海”の岩石は黒っぽい玄武岩で,地球の溶岩に似ている。これは,月の平らな地形は溶岩の流出によってできたことを示している。これらの玄武岩は,いずれも30億年以上の古い年齢をもっていて,新しい火山活動はなさそうである。一方,月の高地の岩石も火成岩ではあるが,海の岩石とは異なった化学組成をしている。高地の岩石は,CaAlに富み,斜長石を多く含む白っぽい岩石である。斜長岩とよばれる斜長石を90%以上含むものも多い。その年齢は海の岩石よりも古く,4042億年を示す。

また,月の高地の岩石のほとんどが角礫岩質であり,一度破壊された岩石片が再び集合して固結したものと考えられる。これは隕石の衝突の際の衝撃によってつくられたものと推測できる。月には岩石以外に泥も存在する。その泥の年齢は,岩石よりも古く,46億年に達する。月の年齢が46億年と考えられているので,この泥の古さは注目されるが,明快な解釈はまだできていない。

 アポロ計画では月に5台の地震計を設置し,月の地震の観測も行われた。月の地震の様子は,地球のものとかなり異なっていて,地球のようにS波,表面波がはっきり見られない。また,マグニチュードは小さいが,振動の続く時間は長い。図Tは月に設置された地震計の記録,図Uは地震観測から推定された月の内部構造である。

 

 [火星の衛星] 火星には,フォボスとダイモスの2つの小さな衛星が火星に近い軌道(a9270kma23400km)を高速で回転している。フォボスの大きさは, 20×23×28kmで,球ではない。表面には多くのクレーターがあり,直径が10kmの巨大な(フォボスと比較して)クレーターもある。ダイモスは,フォボスよりさらに小さく,その大きさは10×12×16kmである。この衛星にはフォボスのように大きなクレーターはなく,その数も少なく,表面はフォボスよりも滑らかである。表面はフォボスと同様に細かい塵でおおわれていることもわかっている。

 

[木星のガリレイ衛星] イオは,木星の衛星のうち最も内側にある半径1800kmの衛星である。ボイジャーは,この衛星に9つの大きな活火山を発見した。この火山活動は,地球の火山より激しい噴火をしているが,その原因は,地球の火山と異なって,木星に近いため大きな潮汐力が内部に摩擦熱を発生させるためではないかと考えられている。イオには,他の衛星に見られるクレーターがなく,多くの火山が見られる。エウロパはガリレイ衛星のうちでは一番小さい天体である。この衛星の表面にもクレーターは見られず,互いに交差した明暗線の模様が見られる。表面は非常になめらかで,氷におおわれている。

 木星の衛星のなかで一番大きな衛星ガニメデは,一見月に似たクレーターの多い表面をしている。しかし表面は岩石ではなく氷らしい。カリストにも表面にクレーターが見られる。カリストのクレーターは非常に密で,一様な分布をしている。

 

[土星の衛星] 土星には17個の衛星と軌道要素の確定しない微小衛星が多数見つかっている。最も内側のミマスは直径が350kmしかない小衛星であるが,表面には直径130kmもある巨大なクレーターがある。その他の衛星にも多くのクレーターが見られるが,半径2600kmの衛星タイタンは,表面が大気におおわれていて,表面の様子が見えない。大気は大部分がN2であり地球に似ている。

 

小惑星

ボーデの法則によると,火星と木星の間に他の惑星が存在することになる。そのため,1800年からシュレー夕ー(J.H.Schroter)を中心とする天体捜索隊が組織され,新しい惑星を捜索した。そして1801年,ピアッツイ(G.Piazzi)が初めて小惑星ケレス(セレス)を発見した。1898年までは,小惑星は火星と木星の間にしかないと考えられていたが,その年に火星よりも内側の軌道をもつエロスが発見され,その後,次々と小惑星が発見された。1932年には地球軌道を横切るアポロが見つかっている。2006年6月までに軌道が確定し登録された小惑星は12万個以上ある。小惑星は,原始太陽系内に多数存在した微惑星と同じものではないかと考えられている。

 

彗星

 彗星の軌道はおよそ楕円・放物線・双曲線のいずれかであるが,つねに一定ではなく,木星や土星などの大惑星の影響で大きく変化することがある。たとえば,オテルマ彗星は周期8年であったものが,木星に近づいたとき軌道が変わり,19年周期になってしまった。また,彗星の周期はまちまちで,1973年に現れたコホーテク彗星は100万年もの周期をもつと考えられている。彗星のうち典型的なものは頭と尾の部分で構成され,頭はさらに核(彗星の本体)とそのまわりのコマに分けられる。たとえばハレー彗星の核は16km×7km×7kmのじゃがいも型で,球ではなかった。その反射能は非常に小さく,4%しかないため黒い物体に見える。また,核は周期53時間で公転面に直角な軸のまわりを回転している。

彗星が太陽に近づくにつれて,核のガス成分が気化し,ガスと塵の雲が核のまわりをほぼ球形にとり巻くようになったのがコマである。彗星の尾は,このコマの一部が太陽風などによって吹き飛ばされたものである。1997年に地球に接近したへールボップ彗星では2つの尾がはっきりわかった。一方はプラズマの尾で,直線状に1000万〜1億kmの長さをもち,青い光を出している。これをタイプTの尾という。この尾の中のプラズマは,電子と原子分子のイオンからできており,コマの一部が太陽風によって吹き飛ばされたものである。他方,黄色に光る尾は,太陽の反射光で光っており,ダスト(塵)の尾またはタイプUの尾とよばれている。この尾はタイプTの尾とくらべてやや短く,湾曲していることが多い。小さな固体粒子が太陽の放射圧によって吹き飛ばされたものと考えられている。ハレー彗星の塵は,その大きさが0.1/μm以下のものが多く,多量の有機物を含んでいる。すなわち予想よりはるかに多くの炭素を含んでいた。また,コマをつくっているガスでは,H2Oが多く,次いでCOという結果が出ている。

 

太陽系の成因

最近,太陽系外の惑星の形成の現場が,主に赤外線や電波観測によってしだいに明らかにされつつある。これによって,太陽系形成過程の研究がかなり進んできた。

 

[星間ガスから太陽の形成過程] 密度の高い星間ガスで,水素が分子の状態で存在する低温の領域を分子雲とよぶ。太陽質量程度の星の誕生は,図Tのような過程で形成される。分子雲の特に密度の大きい部分(分子雲コア,水素分子密度が104/cm3以上)が,超新星爆発による衝撃波などによって圧縮されると重力収縮を始める。105106年たつと,中心部は圧力と重力がつり合った状態の原始星が形成される。

 

原始星にはまわりからガスが降り積もり,このとき解放されるエネルギーが放出されるが,実際には原始星は見ることはできない。原始星から放出されたエネルギーは,外層に存在するガス(降着ガス)内にある固体微粒子によって吸収されるからである。しかし,固体微粒子は吸収したエネルギーを赤外線で放出するため,原始星は赤外線星として観測される。

 図UのAが原始星の誕生で,その後光度はしだいに下がる。この進化の段階を林フェイズという。降着ガスがしだいに減少し,中心星が光学的に観測できるようになった段階(図Uの105年以後)の星をTタウリ型星とよぶ。太陽程度の質量の星は,その後徐々に進化し約108年で主系列星になる。

星のまわりのガスは,Tタウリ型星では原始惑星系円盤となり,主系列星になる頃には原始惑星系が形成される。このように原始星の進化と並行して惑星形成も進行していくと考えられている。

 

[Tタウリ型星の観測] 1980年代に赤外線衛星(IRAS)が打ち上げられ,全天の遠赤外線観測を行った。これによって,Tタウリ型星には異常に強い遠赤外線があることが発見された。この放射の源は原始惑星系円盤ではないかと考えられ,いろいろな方法でTタウリ型星の観測が行われるようになった。Tタウリ型星の大きな特徴は,多くの輝線が存在することで,特にHαの輝線が強い。これは星の外側に高温領域があることを示している。図Vはいろいろな観測結果から推測されたTタウリ型星の想像図である。

 

中心星は可視光線で観測されるので,円盤は中心星を隠さない程度に薄く,これが暖められて赤外線を放射している。この熱源は円盤内のガスが内側に降着するための重力エネルギーであると考えられ,このガスは中心星のすぐ外側で減速し高温な境界層をつくり,この部分の放射により輝線が観測される。

図V Tタウリ型星の想像図

 

最近,X線観測衛星アインシュタインによって,輝線の弱いTタウリ型星がぞくぞくと発見された。円盤内に降着流が存在しないTタウリ型星である。これは,輝線の強いTタウリ型星がさらに進化したもので,原始惑星系円盤内で,固体微粒子の成長が進んだためと考えられている。このようにTタウリ型星は,惑星系の形成が進行しつつある天体であるといえる。

 

[太陽系形成論] 惑星は,Tタウリ型星のまわりの原始惑星系円盤から形成された。現在の太陽系形成論は,この原始惑星系の質量が太陽質量程度はあったという説(キャメロンモデル)と,太陽の1/100程度の質量しかなかったという説(京都モデルやサフロノフモデル)の2つに分かれている。前者は,太陽(中心星)と同じ質量をもつ星雲が重力分裂を起こし,木星質量程度の大きなガス状原始惑星を誕生させるという説で,地球型惑星は,この外層が散逸したものと考えられている。

図W キャメロンモデルの惑星の形成

 

 図Xは後者の説のモデルである。この説では,太陽系(太陽も含む)をつくった星雲の質量が太陽質量程度であり,このごく一部(太陽の1/100くらいの質量)から惑星が形成されたと考えられている。原始惑星系円盤の質量は小さいので重力的に安定で,物質はしだいに赤道方向に沈殿し,合体成長して微惑星を形成する。この微惑星がさらに合体成長して,惑星の岩石核をつくっていく。木星型惑星はこの後にまわりのガスをひき寄せて大きくなる。京都モデルは,内惑星はガスの存在する中でつくられたとする考え方で,サフロノフモデルは,内惑星領域ではすでにガスは吹き飛ばされてしまって,その中で内惑星が形成されたとする考え方である。

図X 太陽系形成のモデル これは原始太陽系星雲の質量が太陽の100分の1程度であったとするモデル(京都モデル)である。

 

 

 

 








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