トップ地学I 改訂版>第2部 地球の歴史>第1章 地球史の読み方>第2節 地層と化石

第2節 地層と化石

 

 

地層

地質図

地層の走向と傾斜

地質断面図とそのつくり方

地質柱状図

古生物と化石

示相化石

示準化石

 

 

地層

[地層]  堆積岩の初生構造として地層面がある。地層の1枚1枚(単層)は,地層面で境されている。この地層面は過去の堆横面(ある時期の海底面)で,堆積の小休止,または堆積環境の急変を示す。この面の上に,漣痕(れんこん)や乾裂,雨痕,生痕(あし跡など)が残されていることがある。

 

[層 序]  岩体のできた順序を層序という。一般には,地層のできた順序,地層と地層との新旧関係を意味する。層序は,地層が重なっているときには,原則的にはその上下関係で知ることができる。これは層序を判定する場合の基本法則であって,地層累重の法則とよばれる。ただし,押しかぶせ構造(図I)や逆断層,洞穴堆積層などでは,この法則に従わないで古いものが新しいものの上に重なることがある。これらの場合に地層の新旧を確かめる1つの方法は,産出する化石の進化度である。たとえ地層の重なりが逆であっても,進化度の高い地層のほうが新しいことになる。そのほか,粒度の上下方向への変化,斜交葉理の模様(ラミナの切れているほうが古い),漣痕・乾裂・雨痕・生痕などを調べて,地層が逆転していることを確かめることもできる。

 

 

 [漣 痕]  地層の上面と下面にはそれぞれ特有の模様ができるが,漣痕(リップルマーク)は地層の上面にできる模様の1つである。水底の砂層の上を流れる水の速さが一定の速度に達すると砂粒が動きはじめ,砂層の表面には波形の凹凸が現れる。この波形の大きさにはいろいろあるが,比較的小さいものを漣痕とよんでいる。漣痕を断面で見たのが斜交葉理である。漣痕にはいろいろな種類があり,それぞれ砂層の上を流れた水流の状態をよく反映しているので,地質時代の水流の方向や速度を知るためによく研究されている。

 

地質図

 ある地域の地表における種々の岩体の分布や相互の関係(地質構造)を平面上に表現した地図が地質図である。この相互に関係をもった岩体は地下でいろいろな形の面で境されている。岩体間の境界面が等高線によって描かれた地表面と交わってなす境界線(地層境界線)は,地表面や境界面の形が変わるといろいろ変化する。

 

[地表面の形の違いによる境界線の変化]  いま,岩体と岩体との境界面がある方向に傾斜した平面であると仮定しよう。この場合,地表に起伏がなければ,その境界面は次の図T(a)に示すように,地表では走向の方向にのびる直線として現れる。しかし,地下における岩体相互の関係が同じであっても,地表が起伏しているときには,図T(b)のように,その起伏に応じた曲線となって現れてくる。

図T 地層境界線と水平面との関係(a)

および地層の境界線と起伏のある地表との関係(b)

 

図U 境界面が水平な平面の場合(a)と,

境界面が垂直な平面の場合(b)

 

図V 地表の起伏と地層面の傾斜 (a)の部分 (b)谷の部分

 

境界面の状態の違いにる境界面の変化]  地形が同じでも,岩体相互の境界面が地下で異なる状態にあれば,当然地表では違った形の境界線が現れるはずである。その最も簡単な2つの場合を考えると,次のようになる。

 (i)  境界面が水平な平面;この場合には,地表における境界線は地形を表す等高線に平行な曲線となって現れる(図U(a))。

 (A) 境界面が垂直な平面;この場合には,地表における境界線は等高線に関係なく,走向の方向にのびる直線となって現れる(図U(b))。

 実際には多くの場合,境界面は水平・垂直でなく,ある角度で傾斜しているので,地表における境界線は地形の等高線といろいろな角度で交わった曲線となる。

 

[地表の起伏と地層面の傾斜との関係]  この関係は,図Vに示すようにおよそ3つの場合に分けて考えることができる。

 (i) 境界面の傾斜が地表の傾斜と同方向で,境界面の傾斜のほうが大きいとき;

   境界線は等高線の開きと反対方向に開いた曲線となって現れる。

i’) 境界面の傾斜が地表の傾斜と同方向で,境界面の傾斜のほうが小さいとき;

 境界線は等高線の開きと同方向に開いた曲線となり,しかも,その開きの角度は等高線の開きの角度より小さい。

 (ii) 境界面の傾斜が地表面の傾斜と反対方向のとき;境界線は等高線の開きと同  方向に開いた曲線となり,その開きの角度は等高線の開きの角度より大きい。

 

地層の走向と傾斜

 地層面の傾きの程度と方向を表現するには,走向と傾斜の2つの要素を使う。地層面と水平面とが交わってできる直線の向きを走向とよんでいる。傾斜とは走向に直角な平面上で,地層面と水平面とのなす角をいう。走向・傾斜によって面の方向を示すのは,地層面の場合のみでなく,断層面や火成岩などの節理面にも使用される。

 図Tは,等高線で表された地形図に傾斜した地層が描かれている。等高線とは地形面と一定の高度差(図では100m間隔)の水平面との交線である。したがって,等高線に囲まれた面は水平面である。等高線の定義からすると,地層の面と同一高度の等高線と交わった2つの点を結んだaa′,bb′,cc′は水平面と層面の交線であって,走向線である。

図T 地質図上での走向・傾斜の求め方

 

傾斜角(ρ)は,1つの高位または低位の等高線によって描かれた走向線までの距離(図Tのaa′とbb′とcc′の間の水平距離xm)と高度差(hm)から,次の式によって計算できる。

  tanρ=h/x

 傾斜の方向は,より高位の等高線の反対側で,より低位の等高線とは傾斜方向と同じ側で交わるように,地層は曲がって現れる。

図U 傾斜の求め方

 

[走行・傾斜の測定]  傾斜している層面にクリノメーターの長辺をあて,水準器の気泡が中央のマークにくるようにする。クリノメーターの各長辺は水平面と平行になり,長辺の示す方向が走向となる。クリノメーターの面は,短辺に平行した水準器がないので必ずしも水平面とはならない。しかし,クリノメーターの長辺は水平面にも含まれ,層面に接しているのであるから,同時に地層面にも含まれる。したがって,この長辺は水平面と地層面との交線に相当し,走向線の定義と一致する。走向は,北から何度東または西によっているかで表す。傾斜は,走向と直角の面内で地層と水平面とのなす角を測る。走向と直角になるようにクリノメーターの長辺をあて,ハート型の振り子の中央の位置を内側の目盛りで読む。

 

[傾斜の方向]  走向・傾斜を測り,地質図上に記入するには次図Wのような記号を使用する。いま,傾斜角20°とすると,走向に直角な方向に短い線をかいて,その先端に20と記入する。ところが,傾斜角がたとえば20°とわかっても,地層面は2つ考えられて定まらない。すなわち走向を軸として右回りに20°と左回りに20°の2つの面が存在する。そこで傾斜の大きさと方向が同時に必要となる。

図W 走向・傾斜の記号

 

走向がN(090°)Wのとき,傾斜の方向は,SW方向とNE方向との2つが考えられる。走向がN(090°)Eのとき,傾斜の方向は,NW方向とSE方向との2つが考えられる。ただし,走向がNSのときは,傾斜の方向は正確にW方向かE方向かであり,走向がEWのときはN方向かS方向となる。また,走向がN(090°)Wのときで,N(045°)Wの範囲では傾斜方向はSWNEのかわりにWEを使うことが多く,N(4590°)Wの範囲ではSWNEのかわりにSNを使うことが多い。走向がN(090°)Eのときも図を参考にして同じように考えればよい。傾斜の方向を知るには,クリノメーターの水準器のある側の短辺を走向にあてて,磁針の北が示す方向を読めばよい。

図X 走向・傾斜の記号表現法

 

地質断面図とそのつくり方

 地表で観察された多くの地点での地層がどんな地質構造をもって互いに関係しているかは,各地層面で測られた走向・傾斜を基にして,地層の境界面をつなぎ合わせ地質図に表現される。地質調査が進み地層の走向・傾斜もかなり測られ,各地層の層序的関係が明らかになると,地表における地質構造だけでなく,地下における地層の構造を推定することも可能となる。この地表に現れない岩体の地質構造を表現する方法に地質断面図がある。さらに,ボーリング資料や物理探査の資料のあるところでは,精度の高い地質断面図をつくることができ,金属鉱床・油田・炭田の開発に重要な役割を果たしている。地質断面図をつくるときの注意として次の点をあげておく。

@ 地層の走向・傾斜の資料が豊富で褶曲の軸,断層の走向,地層の走向にできるだけ直角に近く分布する地層の,なるべく多くの相互関係が表現できるような断面の位置を選ぶ。そのために,ときには断面線をあまり大きくない角度だけ曲げて描くこともある。

A 切断位置に沿った地形断面を描く(下図)。自然縮尺では特徴が描かれにくい場合には高さを誇張するなどいろいろ試みる。この場合,実際の地層の傾斜をそのまま使用することはできないので,補正する必要がある。

 

地形断面図のかき方

 

B 切断面に直角でない地層面の傾斜は,切断面上には真の傾斜よりゆるい見かけの傾斜になおして示さなければならない。切断線から離れた位置での走向・傾斜は,走向線を延長して切断線上に移動させる。

 

地質柱状図

 地層や岩石の層序をはっきり示し,それらの間の関係や岩相の特徴,産出化石や採集された標本の層準(産出地層,その地層中の上のほうか下のほうか)を表すのに,地層を柱のように並べた地質柱状図を用いると便利である。

 地質柱状図には,岩石が連続して露出するような,いくつかの谷や道路に沿って露出する地層の,上下関係を決定し,それを柱状に重ねて層序関係を示す各個柱状図と,調査地域内でつくられたいくつかの各個柱状図を1本にまとめて,地層の厚さや岩相の変化などを表現できるように考えられた総合柱状図がある。

 柱状図における岩相の表現方法には,写実的なもの,模様・模式化したものなどいろいろある。図Uに総合柱状図の例を示す。

図T 地質断面図から地質柱状図をつくる

 

図U 釧路炭田の総合柱状図 層厚の単位はm(松井 愈による)

 

古生物と化石

 地質時代に生存した生物を古生物という。数億年,十数億年の長い地質時代に,種々の生物が発生し,多種多様なものに枝分かれをし,繁栄するもの滅亡するもの,いろいろな歴史的事件を経て現在という歴史の1断面にその姿を見せている。自然の観察や標本・図鑑によって知る現在の多種多様な動物・植物群はどんな道すじを通ってきたのだろうか。地質時代に現在すんでいるような高等な動物がいたのだろうか。また,見たこともないような驚くべき生物が実在しただろうか。生物の進化の事実はどんなにして確かめられるのだろうか。古生物に対して,いろんな疑問をもつ人が多い。しかし,地質時代にさかのぼって,古生物の進化などの種々の問題を物理や化学のように実験して確かめることは不可能である。これらの問題に答えていくただ1つの道は,地質時代に堆積したおのおのの時代の地層の中に化石となって保存されている古生物の遺がいや,足跡・はい跡・すみかなどの生痕から,古生物の形態や生態を復元し,新旧種々の地層からみつかった化石の変化から,古生物の進化を知るという方法である(最近では生化学的方法も使われるようになった)。化石ということばはラテン語の「掘り出されたもの」という意味であり,石に化したものだけを化石というのではない。化石は古生物の遺体や生活の証拠になる痕跡(生痕)をいうが,ときには層面にある漣痕・乾裂・雨痕なども広い意味で化石ということがある。次に化石について例をあげて考えてみる。

 

[遺 体]  生体の一部が,石灰質・ケイ酸質などのように,固くて保存されやすいものからできている場合(有孔虫・サンゴ・軟体動物などの殻や鳥の卵・脊椎動物の骨は炭酸カルシウム,放散虫はケイ酸)には化石になりやすい。また,酸化鉄・炭素・炭酸カルシウム・ケイ酸・黄鉄鉱などによって古生物の組織がおきかえられたもの,たとえばケイ化木や炭化した木の葉や茎などの化石もある。古生物の固い部分が(特に炭酸カルシウムによるもの),地質時代の長い間に,地下水などの作用によって溶解され,それらの印形だけが地層面などに残る場合(貝殻・木の葉)も化石である。その他,特殊な場合として,天然のタール池に落ち込んだ動物,木のやにの中に入った虫,シベリアで氷づけになっていたマンモスゾウなどの場合は,古生物の遺体の全体が保存されている。過去に栄えた生物の生き残りの例としてはメタセコイア・イチョウ・シーラカンスなどがあり,“生きている化石”などとよばれている。

 

[生 痕]  海岸にいくと,干潮のときの海辺の砂の上に,いろいろな動物の穴が掘られており,泥質の場所ではカニ・貝・水鳥などの足跡が明瞭に残っている。このような生物がすんでいたことを示す生痕は,地層の中にもかなり残されている。最近はこの生痕の研究が盛んになり,生痕と動物の種類や生態との関係がしだいに解明されつつある。

古生物の遺体や生痕が化石として保存されるためには,地上の細菌類などによる分解,移動などの物理的作用による破壊や溶解,あるいは酸化などの化学的作用から保護されるように,地層中に埋没されることが必要である。また,当然のことではあるが,個体数の多いものほど化石として保存される確率は高い。

 

示相化石

 古生物を現世の同種同類またはそれに近いものと比較できると,生存当時の生活環境もかなり知ることができる。古生物の中でも,種の生存期間が長くて,現生種の生態と比較でき,気温・水温・塩分・深度・高度など生存の生理的諸条件が一定の範囲に限られて,生活環境を指示するのに特に有効な化石を示相化石という。化石の研究には,現在の生態学の知識が重要な役割を果たす。一般に植物は,動物にくらべて種の生存期間が著しく長く,気温や湿度などの気候的要素に敏感なので,重要な示相化石が多い。最近では化石として保存されにくい草木類も,花粉化石の研究が進み,古気候の重要な指示者の役割を果たそうとしている。造礁サンゴは,その生存範囲が水温 20.5℃以上の浅い海水に限られているので,サンゴ礁を含む地層の生成環境を知ることができる。

 生物の遺がい(貝殻・骨・歯・葉・木片など)は,砕せつ物質の礫や砂と同じように運搬作用・淘汰作用・堆積作用などの諸作用を経て地層の中に混入されるから,同じような形や比重をもったものが特定の場所に集められて化石層を形成することがある。化石層中の化石種は,生活圏のうちで化石となる現地性のものと,そうでなく,かなり遠くから運搬されてきた異地性のものとが混合する。示相化石として利用するときには注意が必要である。たとえば,陸上の古生物の化石が陸成層のみでなく海成層から発見されるし,極端な例ではいったん地層中に埋没していた化石が洗い出されて,より新しい地層中に含まれている場合もまれではない。この化石1つ1つは示相化石として使用できないがこれら古生物の遺がいを堆積物の一員と考えると,その化石の集まり方から,地層生成の環境が推定できる。化石層をなす化石は,地下水などで石灰質の貝殻が溶解されても,大量の貝殻の一部が溶解されると,まわりの砂が石灰によって固められ,それ以上の溶解が進行しなくなり,それ自体によって溶解が防がれるので長く保存されやすい。

 二枚貝の殻が離れずに合わさって地層の中にちらばっている場合や,生痕のあるときなどは,生活の場所と埋没の場所が一致しているので,最も信頼のおける示相化石となりうる。生成環境による堆積物の区分は現在の海・陸・川・湖などの知識をもとにして行われる。

 

示準化石

 生物は進化するが,進化の速いものもあれば遅いものもある。進化の遅いものは示相化石として役だつ場合が多い。進化の速いもの,すなわち,種の生存期間の短いもので,かつ分布範囲の広いものの化石は,地質年代の時刻をきざむ役を果たすことができる。このような化石を示準化石(標準化石)という。

化石は地層が堆積した当時,古生物がその中に混入して形成されたものであるから,少なくとも,一定の期間生存した古生物の化石を含む地層は特定の年代のものに限られる。すなわち,一定の生存期間をもっている化石はそれを含む地層の形成時間を示す。地層累重の法則と組み合わせて,離れた地域の地層に含まれる化石群との間の新旧を判断すれば,かなり広い地域での層序を編むことができる。このような操作を対比という。示準化石は,対比に最も有効な化石であり,古生代のサンヨウチュウ類・フデイシ類・フズリナ類,ある種のサンゴ類や腕足類,中生代の爬虫類・アンモナイト類,新生代の哺乳類,ある種の有孔虫類や二枚貝類などが代表的なものである。

 

 

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.