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第2節 造山帯と変成作用

 

 

鉱物の多形

変成作用と変成岩

プレートと地殻変動

アルプス造山帯

島弧型造山帯

発展 日本列島の土台となった大陸の成長

造山帯と安定地塊

 

 

鉱物の多形

結晶はそれぞれ特定の温度と圧力領域でだけ安定である。この温度・圧力領域をはずれると多形転移したり分解したりする。多形転移は,ある鉱物がその化学組成を変えることなく,異なった結晶構造に変化する現象であるが,互いに多形の関係にある鉱物を,同質異像ということもある。

 石墨とダイヤモンドは有名な多形転移の例である。その他,方解石−あられ石(CaCO3),α型石英−β型石英りん珪石(SiO2),珪線石−紅柱石−らん晶石(Al2SiO5)などの転移もよく知られている。

ベルマン−シモンによるダイヤモンドの安定領域(砂川,1959)

 

変成作用と変成岩

 変成作用は,岩石の周辺の温度や圧力の変化にともなって,既存の岩石が固体のまま,その岩石内の鉱物の種類や組織が変わる作用である。これには地表付近の常温常圧に近い場所で起こる風化作用は含まれない。変成作用には,その岩石が地下深所に埋没し温度や圧力の高い環境で起こる広域変成作用と,付近に貫入してきた深成岩マグマによる温度の上昇に影響されて起こる接触変成作用とがある。

 

[交代作用]  変成作用によって原岩の鉱物組成だけでなく化学組成も大きく変化することがある。この場合には化学成分の変化を促進する高温の流体が重要な役割をすると考えられている。このような流体として最も重要なものは水である。岩石を構成する物質の一部は水に溶け込んで他の場所に移動し,また同様にして他の場所から別の物質が運び込まれ,化学組成の変化すなわち物質の交代が起こる。このような化学的な置換が著しいとき,その作用を交代作用という。こうした交代作用は必ずしも水の媒介を必要としない。一般に結晶が新しくできるときには,このような物質の移動がミクロの範囲に起こっている。

 交代作用の例としては,接触変成作用にともなうスカルン化作用がある。これはマグマから由来した MgFe などを含む熱水や水蒸気が石灰岩中にしみ込んできて化学反応を行い,輝石,ざくろ石,緑れん石などの MgFeCa に富む鉱物からなる岩石(スカルン)を形成する作用である。これにともなって有用金属が集積して接触交代鉱床をつくることがある。

 

[変成岩に特有な鉱物]  ざくろ石のようにケイ素−酸素四面体が独立したタイプの造岩鉱物や,雲母のように四面体の層状構造をもった鉱物のなかには,変成岩に特有なものがある。この種の鉱物は,酸素の詰め合わせが密で,かなり高い圧力の下でも安定である。ざくろ石のほかに,紅柱石・珪線石・らん晶石および緑れん石のグループなどがある。層状構造をもつ鉱物としては,雲母グループ,緑泥石グループに属するものがきわめて一般的に見られる。

 そのほか,角閃石のグループに属する鎖状構造をもつ鉱物も変成作用でできる。これらは,かなり高温領域で生じたものである。

 石英や長石のように3次元的な立体網目構造で特徴づけられる鉱物も,変成作用で広く生じている。しかし,特に高い圧力下ではそれらは不安定で,他の鉱物に変化しやすい。これは,その結晶構造が,ゆるやかな酸素の詰め合わせからなっているためである。

 

[ホルンフェンス] 泥岩や砂岩を貫いて花こう岩などの大岩体が貫入すると,その熱のために,その周囲には片状組織や縞状組織をもたない,無方向性の変成岩ができる。これがホルンフェルスである。岩石中にはしばしば大きなきん青石の斑状変晶を含む。変成岩では固体の岩石中で再結晶作用が行われるので,火山岩の斑晶とは異なり,大きく成長した結晶も自形をとることは少ない。斑状変晶の間の細粒の部分をマトリックスとよんでいる。

 

[結晶片岩]

鉱物が一定方向に並んだ片状組織がよくわかり,この結晶片岩は高い偏圧下での再結晶作用でできたことを示している。広域変成岩では鉱物組成や構造の違う薄層が重なっているような平行組織をもつ場合がある。これを縞状組織という。縞状組織は片理をともなっている場合が多い。しかし,縞状組織は顕著でも片理が弱いかまたはない場合がある。これを片麻状組織という。片麻状組織をもつ変成岩が片麻岩である。

 

[広域変成作用の変成条件]  広域変成帯の岩石を調べることによって,造山運動の際の地殻内の温度・圧力の分布が推測できる。広域変成帯での温度・圧力関係の指標には,図に示されたような鉱物が用いられる。これによると,広域変成作用は高圧型(ひすい輝石−らん晶石型),中圧型(らん晶石−珪線石型),低圧型(紅柱石−珪線石型)に分類できる。したがって,似たような化学組成をもつ変成岩でも,変成帯ごとに鉱物組成が異なるということは,変成帯によって温度・圧力の関係が異なるということである。ある鉱物組成で表される温度・圧力の範囲を変成相という。各変成相は,普通,その相に属する代表的な塩基性岩の名前をとって,緑色片岩相・エクロジャイト相などとよばれている。

 

プレートと地殻変動

 造山帯のおいたちについては,20 世紀の中頃まで地向斜造山論という考えが有力であった。これは造山帯は地向斜から生まれ発展するという考えである。造山帯の発生の段階には,まず地向斜の時期があってそこで厚い地層ができる。玄武岩の噴出も著しい。そして次に造山の時期になる。この時期に激しい褶曲作用や広域変成作用が起こる。花こう岩質マグマもできてその貫入が起こり,造山帯の内部構造がほぼできあがる。その後(後造山期)に造山帯全体が上昇し山脈ができる。細かい波長の褶曲は起こらなくなり,地殻はしだいに安定してくる。図はこの3段階を模式的に示したものである。

プレートテクトニクスによると,造山運動は海洋プレートの沈み込みやその結果起こる大陸どうしの衝突にともなって生じるので,海洋プレートの沈み込みが造山帯の位置を決める。プレートテクトニクスでは,造山運動が始まるためには,地向斜造山論のように地層が厚く堆積することや地殻が深く沈降すること(すなわち地向斜の誕生)は,必要条件ではない。しかしながら,中央海嶺で生産され移動を開始した海洋プレートがいつどこで,沈み込みを始めるかの問題は未解決といってよい。

 

アルプス造山帯

 アルプス造山帯には古生代から中生代,さらに古第三紀にわたる海の地層が堆積している。漸新世から新第三紀中新世にかけて,それらの地層が隆起して山ができ,堆積域はさらに北側(モラッセ帯)に移動した。中新世以降に押しかぶせ断層ができ,いくつもの岩体が隆起した山地の高所からモラッセ帯に向かって移動した。このようなアルプス変動は,南側のアフリカプレートが北側のヨーロッパのプレートの下に沈み込むことと,その後の衡突とによって起こった。図にアルプス山脈の地質断面をあげたが,その地質構造の概略を次に示す。

 

1) ペンニン帯;アルプス山脈の中軸部に露出する変成帯である。大規模な褶曲 や押しかぶせ断層がある。中生代の地層が変成作用を受けて結晶片岩や片麻岩になっている。結晶片岩中には,塩基性海底火山噴出物などからなる,オフィオライトが含まれている。

2) ヘルヴェト帯;中生代および古第三紀の海成層からなり,横臥褶曲構造や押しかぶせ断層が発達している。ジュラ紀・白亜紀の地層には大陸南縁の浅海性ないし沿岸性の石灰岩に富む地層が多く,古第三系にはフリッシュ層(主に泥岩と砂岩が互層する厚い堆積物)が発達する。ペンニン帯とは異なり,オフィオライトをともなわず,変成作用もほとんど受けていない。

3) モラッセ帯;アルプス山脈が隆起しはじめた頃に,その山麓(主に北麓)に堆積した礫岩などの粗粒な新第三系(主に中新統,モラッセとよばれる)の地帯。厚さは34kmに達し,海成層と淡水成層が交互し,褐炭層を含む。

 

島弧型造山帯

 海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでできた造山帯。その結果,マリアナ弧のような島弧ができる。図は東北日本弧の横断面であるが,典型的な現在の造山帯と考えることができる。

 

[造山帯の構造] 造山帯の構造の特徴を以下にあげる。

(1) 地図上で細長い形をしている。普通長さ数千km,幅数百km

(2) 基本的には,外形に平行な次のような各帯からなる。

(a) 高圧低温型の変成岩や超塩基性岩〜玄武岩が多く分布し,地層にはチャートなどの遠洋性堆積物を含み,ひどく褶曲している地帯。

(b) 花こう岩や安山岩その他各種の火山岩が多く,しばしば高温低圧型の変成岩をともなう地帯((a)とともにユー地向斜帯とよばれたことがある)。

(c) 浅い海で堆積された地層が多く,火山活動のなかった地帯(ミオ地向斜帯とよばれた)。

(3) 一般に,圧縮された地質構造が卓越している。しかし,主な造山運動の終わった後には,(b)の地帯などに地溝などの地殻の伸長で生じた構造もできる。

(4) 造山帯を横切る断面で見たとき,地質構造は基本的には左右非対称である。「造山帯の中軸部」という言葉は造山帯内部の(b)の地帯(または(b)(a))を指すが,その場合いつでも(b)が中心でその両側に対称的に(a)(c)があるという意味ではない。このような造山帯の内部構造の非対称性(極性)ということもある)は,海のプレートが非対称的に(斜めに)沈み込むことと関係がある。

 

 

発展 日本列島の土台となった大陸の成長

 地学IIのページ参照

 http://keirinkan.com/kori/kori_earth/kori_earth_2/contents/ea-2/2-bu/2-2-2.htm

 

 

造山帯と安定地塊

図T 安定地塊の分布

 

 全世界的にみると,大きな造山運動は,少なくともヨーロッパでは先カンブリア代以後2回あった。それは,古い時代(主に古生代),新しい時代(主に顕生代)の各造山運動である。図T中の「古い時代の造山帯」は,前一者の地帯であり,「安定地塊」はそれ以前(先カンブリア時代)の造山帯の集まった地帯である。

次の図Uと図Vは,それぞれヨーロッパと北アメリカ東部の大陸内部の造山帯の分布を示したものである。最も時代の新しいアルプス造山帯とアパラチア造山帯が,最も明瞭に山脈の姿を保持している。図Vは,北アメリカ大陸について測定された各岩石の年代の地理的分布を示したものである。古い時代にできた岩石を核として,次々と新しい造山運動を受けた岩石がつけ加わっていき,大陸が成長していった様子がよく表れている。

図U ユーラシア大陸西部の造山帯の分布

 バリスカン造山帯の現在,図のように分かれているが,これは後の時代に起こったアルプス造山運動によって分離したり,新しい地層におおわれたりしたためである。

 

図V 北アメリカ大陸での岩石の帯状分布

 

 地球の歴史の上で同じような造山運動の過程が何度もくり返されてきたと考えて,それを造山輪廻とよぶこともある。図Wは,1960年までに測定された世界各地の鉱物の生成年代を統計的に意味があるように処理して,年代別に頻度分布を示したものである。測定された鉱物の多くは造山期にできたものであるから,この図は,大規模な造山運動がほぼ周期的に起こっていること,そしてここ 30億年の間に7回あったことを示している。各造山運動は,350×106500×106年の周期でくり返し,そのうち,175×106250×106年は活動期,他の半分は静穏期である。

図W 北アメリカおよび全世界の火成岩・変成岩の鉱物年代測定値の頻度分布

北アメリカの白抜き曲線は暫定的なデータを加味した値。(ガスティル(Gastil)1960年による)

 

 

 

 

 








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