トップ地学I 改訂版>第1部 固体地球とその変動>第2章 現在の地球の活動>第3節 火山活動と火成岩の形成

第3節 火山活動と火成岩の形成

 

 

火山災害

火山噴出物

火山の形と溶岩の性質

火山の分布とプレート

島弧−海溝系の火山(環太平洋の火山)

日本の主な火山

海嶺の火山

ホットスポット

大地溝帯の火山

火成岩の産状と組織

火成岩の分類

火成岩とその露頭

ケイ酸塩鉱物の構造

固溶体

地下の温度分布と玄武岩質マグマの発生

玄武岩質および安山岩質岩石においてアルカリ成分を重要視する理由

マグマの分化

花こう岩の成因

発展 マグマと鉱床

 

 

火山災害

[火山灰] 火山灰による直接の被害は農作物が中心となるが,成層圏のエアロゾルが増加することにより,地表に達する日射量が減少することもある。1980年のセントヘレンズ火山(アメリカ),1982年のエルチチョン火山(メキシコ),1991年のピナツボ火山(フィリピン)の噴火などでは多量の火山灰が噴出され,日射量が減ったとされている。

 

[火砕流(熱雲)] 高温の火山砕せつ物が高速で流下する現象。粘性の高いマグマで発生しやすい。山頂の溶岩ドームの崩壊から発生するメラピ型,爆発で溶岩ドームが吹き飛ばされて発生するプレー型,多量の火山灰の降下にともなって発生するスフリエール型などがある。流下速度は時速数十km以上ときわめて速く,破壊力が大きく,広範囲に火災を発生させることなどから,非常に大きな被害が発生する。モンプレー(西インド諸島)では1902年,28000人が死亡,浅間山では1783年の鎌原火砕流で厚さ20mにも達する火砕流堆積物に巻き込まれ,463人が死亡,1991年の雲仙の火砕流では高温のガスに焼かれるなどして40人余りが犠牲となっている。

 

[ベースサージ]  火口から環状に広がる横なぐりの噴煙で,低温の火砕流と考えられる。水蒸気爆発にともなって発生することが多い。19521953年に明神礁でベースサージが発生し,調査中の第五海洋丸が遭難した。

 

[火山泥流]  火山砕せつ物が多量の水と混ざり,泥流となって高速で流下する現象。時速60kmに達し,きわめて破壊的である。1985年,南米コロンビアのネバドデルルイス火山では火砕流にともない山頂付近の多量の雪が一気に溶け,泥流となって流下し,下流のアルメロの町などで,25000人の犠牲者がでた。

 

[溶岩流] 玄武岩質の低粘性の溶岩が広範囲にわたって流下し,被害をもたらす。人が逃げられないような速さではないが,町や港などを壊滅的に破壊することがある。アイスランドのへイマエイ島の1973年の噴火では溶岩流に海水をかけて冷却し,溶岩流で港が埋まるのを防いだことがある。

 

[山体崩壊]  火山活動にともない,山体が崩壊し,大きな被害をもたらすことがある。1888年に,磐梯山では山体の北半分1.2km3が崩壊し,461名が犠牲になっている。1980年のセントヘレンズ火山(アメリカ)では水蒸気爆発にともない,2.4km3が吹き飛ばされた。1792年雲仙岳の麓にある眉山が火山性の地震とともに崩壊し,崩壊物が海中になだれ込んで津波が発生,被害は対岸の肥後,天草にも及び,15000人が犠牲となった。この出来事は「島原大変肥後迷惑」とよばれている。

 

[火山ガス] 火山ガスに含まれる硫化水素などの濃度が高くなると被害が生じる。1986年カメルーンのニオス湖では火口湖から発生したCO2により1746人が犠牲になった。また,日本でも草津白根山などで火山ガスによる犠牲者が出ている。

 

火山噴出物

 マグマが地表に噴出してたまっているものや,地表を流動しているものを溶岩という。また,これが固結して岩石になったものも溶岩とよばれている。陸上の溶岩流は,その形態からパホイホイ溶岩・アア溶岩・塊状溶岩の3種に大別される。これは溶岩の粘性と密接な関係があるが,それぞれの特徴を表Tに示す。

 火山噴火にともなって地表に運び出される溶岩・火山砕せつ物・火山ガスなどを総称して火山噴出物という。塊状の溶岩は,安山岩質のような粘性の大きな溶岩によく見られ,流動中に溶岩の表面がかなりの厚さで固まり,流動しつづける溶岩内部の力によって割れて,岩塊の重なりを生ずるものである。これに対して,縄状の溶岩はパホイホイ溶岩のように,玄武岩質からなる粘性の小さい溶岩によく見られる

 

[水底を流れる溶岩]  溶岩が水底を流れる場合には,溶岩の表面は水と接触して急冷される。高温の玄武岩質溶岩のように粘性の小さい溶岩の場合には,径数センチメートルから数メートルの楕円体状の溶岩塊からなる枕状溶岩となる場合もある。しかし,水底の溶岩流では表面から内部まで急激に固結し,体積の急激な減少によって溶岩の表面から急激な破砕が進むため,多くの場合,岩片の多い火砕岩のような溶岩流となる。

 

 

 [火山砕せつ物]  火山噴出物のうち固体・破片状のもの,またはその集合体を火山砕せつ物という。火山砕せつ物の固結したものが火山砕せつ岩である。火山砕せつ物・火山砕せつ岩などは,普通,成因を意味しないことばとして,破砕された火山岩の破片すべてを,このことばで表現している。火山砕せつ物および火山砕せつ岩は,その形態や構造・粒径によって,表U,Vのように分類されている。

火山砕せつ物は,降下火砕堆積物と火砕流堆積物に大別される。降下火砕堆積物は爆発的噴火によって空中へ吹き上げられた火山砕せつ物が降下したものであり,火砕流堆積物は爆発的噴火によって火口から噴出された火山砕せつ物が,粉体流となって山腹を流れ下り,そのまま堆積したものである。

 

 

 

[火山ガス]  マグマには揮発性物質が最大数パーセント含まれている。マグマが地表付近に達すると,揮発性物質がマグマからガスとして分離してくる。これが火山ガスである。火山の噴火にともなって放出される揮発性物質が,すべてマントルからきたものであるかどうかは疑しい。たとえば,火山ガスの主成分は表Wに見るようにH2Oであるが,このH2Oのほとんどは,地表水が地下にしみ込み,それが放出されたものと考えられている。また,火山ガス中に観測されるN2Arは空気中のものが混入したと考えられている。マントルから由来した始源物質が大部分であると確実にわかっているのはHeぐらいである。

 

火山の形と溶岩の性質

[マール]  地下から上昇してきたマグマによって地下水が加熱されて水蒸気爆発を起こしたり,マグマから分離した大量の水蒸気によって爆発が起こると,地表に丸い火口ができて,その周囲に砕せつ物が薄く堆積することがある。このようなものをマールというが,これは火山が新しく生まれるときの一番最初の形を示していると思われる。火口の中に水がたまり,湖となっていることも多く,秋田県の一ノ目潟,ニノ目潟,三ノ目潟はこの例である。

 

[火山灰丘] マール形成の後,さらに火山活動が続き,火山砕せつ物が火口の周囲に降り積もると,火山灰丘(火山砕せつ丘)ができる。成層円すい火山の寄生火山やカルデラ内の中央火口丘にこの例が多い。阿蘇の米塚はそのよい例である。

 

[火山岩尖]  粘性の高い溶岩が地下から押し上げられてくると,地表付近でほとんど固結してしまう。それでもなお下から押し上げられると,岩石の柱となって火口の中からせり上がり,火山岩尖となる。火山岩尖の中で,あるいはその直下で爆発が起こると火砕流が発生する。

 

[溶岩円頂丘] 火山岩尖になるほどには固まっていないが,粘性が高く,流れにくい溶岩が火口から押し出されると,火口の周囲に溶岩がもり上がって円頂丘状の火山ができる。このような溶岩円頂丘も,成層火山の寄生火山やカルデラ内の小火山として生じている場合が多い。雲仙普賢岳や昭和新山はこの例である。

 

[成層火山] 火山砕せつ物の噴出と溶岩の流出とが何回もくり返されると,円すい形の成層火山が形成される。成層火山の山腹の傾斜は,頂上に近いほど急であり,下に凸の山腹断面形をしている。日本の大きな火山は,大部分この形の火山に属する。

 

[盾状火山]  粘性の小さい溶岩が,中心火口や放射状の割れ目から噴出すると,盾状火山ができる。盾状火山の山腹の傾斜はゆるやか(10°以下)であり,上に凸の山腹断面形を示す。ハワイ島のマウナロアやマウナケアはこの例である。

 

[カルデラ] 円形またはそれに近い形の火山性のくぼ地をカルデラというが,これはポルトガル語の“大鍋”という意味のことばに由来している。カルデラは,噴火によって直接吹き飛ばされてできたくぼ地ではなく,火山体の下に存在していたマグマが,大量に失われたために,火山体の下に急激な圧力の減少が起こって,火山体の頂部が陥没してできたと考えられるものが大部分である。普通,火口とよばれているものは直径1km以下のものが多いが,カルデラはそれよりも大きく,カルデラのなかでも特に大きなものは,大量の火砕流堆積物を噴出して形成されたと考えられている。

 

表 カルデラの型・大きさの例

 

火山の分布とプレート

世界の火山(活火山)の分布を見ると大部分は特定の地域に密集し,火山帯や火山群・火山列などを形づくっている。このような火山の分布は,プレートの動きと密接な関係がある。すなわち,プレートの沈み込みに関係してできる島弧型の火山,プレートの生産に関係してできる海嶺型の火山,およびマントル中のホットスポットに関係してできるホットスポット型の火山に区分することができる。日本列島などに分布する火山は第1のものに相当し,アフリカのリフトバレーなどに分布する火山は第2のものに相当する。また,ハワイなどに分布する火山は第3のものである。下表に世界の火山の分布を示した。

 

 

島弧−海溝系の火山(環太平洋の火山)

 環太平洋にはアリューシャン,カムチャツカ,日本,伊豆・マリアナなど新生代に発達した島弧が分布し,火山活動が盛んである。これらは,プレートの沈み込みによって生じる火山活動である。

 南アメリカ大陸西岸にも,プレートの沈み込みによる火山活動がある。環太平洋地域や南アメリカ大陸西岸の火山は,中心噴火による成層火山が多く,火砕流台地やカルデラも発達している。また,一般に爆発的であり,火山噴出物中の砕せつ物と溶岩層の割合(爆発指数)も大きく,大部分80%をこえる。岩石は,玄武岩−安山岩−石英安山岩−流紋岩で,特にカルクアルカリ岩系の安山岩が多い。

 海溝から50400kmのところに火山前線(火山フロント)があり,その内側の火山には安山岩質マグマの噴出が多く見られる。火山前線は深発地震面(和達−ベニオフ帯)の深さが90150kmの部分の真上にある。火山前線の内側(陸側)にいくほど,噴出物はアルカリ成分に富み,アルカリ玄武岩−粗面安山岩−粗面岩などの岩石が現れる。

 アルプス周辺からヒマラヤ周辺にかけてもいくつかの火山がある。これらの火山も島弧の火山に似ており深発地震も見られることからプレートの沈み込みによる火山と考えられる。

 

日本の主な火山

 日本列島は典型的な島弧型火山の分布しているところである。その分布は北海道から東北日本,伊豆・小笠原列島へと続く東日本火山帯と,西日本の日本海側から九州中央部,トカラ列島へと続く西日本火山帯とに分けられる。東日本火山帯は太平洋プレートの沈み込みと,また西日本火山帯はフィリピン海プレートの沈み込みと密接な関係にある。

 

海嶺の火山

 海嶺の軸の付近では,泥などの堆積物がなく溶岩や火山砕せつ物が直接露出している。溶岩の表面は枕状溶岩やピローブレッチャー(主に枕状溶岩の破片からなる角礫岩)でおおわれていて,水中に溶岩が流れ出したことを示している。海嶺の火山活動は,アイスランドを除いて噴火の記録は少ない。これは,火山活動が少ないためではなく,深海での噴火のため海面上に異常が現れにくいためと考えられる。しかし深海調査船は海嶺付近に激しい熱水の噴出を観測していて,火山活動が顕著であることを認めている

 アイスランドは,大西洋中央海嶺上にある火山島で,海嶺における火山活動の様子を知る手がかりになる。ここでの火山活動の大部分は,ソレアイト質玄武岩マグマの割れ目噴火である。

 

ホットスポット

海洋プレートの内部にも,ハワイを代表とする火山島がある。火山島は,まず海底噴火によって枕状溶岩などの山体ができ,海面上に現れるとパホイホイ溶岩,アア溶岩を流出してしだいに成長し,盾状火山となる。古い火山島を見ると,岩石は,ソレアイト→弱アルカリ玄武岩→強アルカリ玄武岩と,初期から末期へと化学組成が変化している。

火山島や海山は特別な配列をしている。特にハワイ−天皇海山列は,北へいくほど古い火山島・海山になっていることが知られている。この海山列は延長6000km,火山の数約百個に達する。このような事実が,1963年のウイルソンのホットスポット説の根拠である。これは地下のマントルの深部にある固定されたマグマ源からマグマが上昇し,その結果できた火山が次々と年数cmの速さでプレートの移動方向に動いて火山列をつくるという考え方である。下図は,太平洋の火山列を示している。折れ曲がり付近の火山の年齢が4300万年頃なので,太平洋プレートはその頃から現在と同じように西北西へ移動するようになったことがわかる。

太平洋の火山列 図のような火山島の並びは,太平洋プレートの移動方向の変化によって説明できる。(モルガン(W.T.Morgan)1972年による)

 

大地溝帯の火山

アフリカ東部に見られる火山はアフリカプレートの内部の火山である。この部分は古い大陸が正断層によって切られて地溝帯になっている。インド洋の海嶺はアデン湾から紅海にのびていて,アフリカプレートとアラビアプレートの境界となっている。紅海北部には,海嶺の活動による火山が見られる。地溝帯はこの紅海の入り口付近のアファー三角帯から南西にのびていて,多数の火山活動が見られるところである。アファー三角帯は,海洋地殻からなる陸地で,紅海の中軸に平行な割れ目から多量の玄武岩の噴火が生じていて,海嶺の活動が陸地で見られるところといわれている。したがって,これに続く地溝帯も大陸が海嶺型の活動帯に発達したものと考えられていて,大陸地殻が断裂する過程ではないかと推測されている。

 

火成岩の産状と組織

 顕微鏡下で見られる岩石の構造的性質を,岩石の組織という。岩石をつくる鉱物の大きさ・形・並び方などがこれにあたる。岩石がほぼ等しい大きさの鉱物の集まりからなるとき,等粒状組織という。岩石が大小のはっきり異なる2群の鉱物からなるとき,火成岩であれば,斑状組織という。この組織において,大きいほうが斑晶,小さいほうが石基である。石基には,非結晶質の部分(ガラス)を含む場合もある。

 岩石の組織について,粗粒・細粒という場合,平均直径およそ1mmを境としている。粗粒で等粒状の組織をもつ岩石を,一般に深成岩という。しかし,これは必ずしも深いところでできたというわけではなく,ゆっくりと冷えた岩石という意味である。また,細粒な組織をもつ岩石を火山岩というが,これも,火山から噴出したというよりは,急冷した岩石という意味である。底盤をつくる岩石や,岩床,大きな岩脈の内部は深成岩の場合が多いが,岩床の縁や小さな岩脈などは火山岩のようになったり,厚い溶岩では内部が深成岩のようになっていることもある。

 

火成岩体の形 貫入岩体は,その形や貫入のしかたによって類別される。たとえば,マグマが,地層を貫ぬくように大きな角度で入り込んだものを岩脈,ほぼ水平に地層面に平行に入り込んだものを岩床という。両者ともにその形は大部分板状である。他方,下方に向かうほど大きな広がりをもつ巨大な貫入岩体を底盤とよんでいる。

 

火成岩の組織 マグマがゆっくり冷却すると深成岩となるが,その中のすべての鉱物が同時にでき,同じように成長するわけではない。したがって先にできた鉱物は自形をするが,後からできたものは半自形や他形となる。また,火山岩の石基では斜長石は短冊状に,輝石は粒状になることが多い。

 

火成岩の分類

 下図に示した火成岩の組成と分類は,正確な分類の基準を示したものではなく,従来命名されてきた岩石がおよそどのような性質をもっているかを示したものである。火成岩の命名法は,長い間,国により研究者により種々のものが用いられ,混乱した状態であったが,1972年にモントリオールで行われた国際地質学連合の会議で,深成岩に関する命名法が勧告・承認された。また,火山岩についても1979年に命名法が国際地質学連合の火成岩命名委員会から発表されている。

 SiO2の質量%をはじめ,火成岩の化学組成と,鉱物組成や色指数との間には,密接な関係がある。しかし,細かにいえば,化学組成・鉱物組成・色指数は必ずしも対応しない。そのため,それらのうちのどれに重きをおくかによって,同じ岩石でも名称が違ってくる。この図は,日本に普通に産し,従来一般に命名されてきた火成岩について,それらがおよそどのような性質をもつかを,模式的に示したものである。

 

 

火成岩とその露頭

 

●玄武岩(兵庫県玄武洞)

ここは,玄武岩の産地として昔から有名な場所である。玄武岩や安山岩には,  一般に直径数十cmの六角形の柱状節理が発達していることが多い。また,それに直交した板状節理もよく見られる。これは,玄武岩や安山岩が急速に冷却し,体積が急に減少したためにできたもので,柱状節理は冷却の面に垂直に発達し,板状節理は冷却面に平行に発達している。

 玄武洞は柱状節理が美しいので,現在国の天然記念物となっており,岩石の採掘は禁止されているが,この洞窟は自然のものではなく,庭石の採掘によってできたものである。玄武洞はまた,1929年に松山基範によって第四紀の初めに地磁気の逆転があったことが初めて発見された記念すべき場所でもある。

 右上の写真は,この露頭の岩石の実物写真である。玄武岩のような火山岩では,マグマが急冷したものであるため,鉱物はすべて細粒であり,肉眼で造岩鉱物を判定することはほとんどできない。

 右下の写真は,同じ岩石の十字ニコル下での顕微鏡写真である。写真のまん中の六角形で美しい色をした鉱物はかんらん石である。斑晶はマグマがまだ地下にあり,ゆっくりと冷却していたときにできたものであるため,大きく成長できた結晶である。石基はマグマが急冷したときにできたもので,そのために十分大きく成長できなかったものである。石基には火山ガラスを含む場合もある。石基中の黄色がかった色に見える鉱物は普通輝石,灰色に見える細長い鉱物は斜長石である。斜長石には一定の配列があるように見えるが,これはマグマが流れながら冷え固まったことを示しており,流理構造の一種である。

 

花こう岩(長野県寝覚床)

 この露頭は長野県上松町の南,木曽川の河床に露出しており,昔から有名な場所である。岩石は黒雲母花こう岩で,上松−苗木型花こう岩とよばれている。この花こう岩は,白亜紀末から古第三紀の初めにかけて貫入したもので,領家帯の花こう岩類の最後の貫入岩といわれている。しかし,この花こう岩体が領家帯の花こう岩類に属するものであるかどうかには異論があり,広島花こう岩で代表される山陽帯の花こう岩類の一員とする考えもある。それは,この花こう岩には片状構造がなく,鉱物組成ではチタン鉄鉱系に属する特徴を示し,またその化学組成では親石元素に富んでいるからである。

 花こう岩の中にはこの写真に見られるような四角な割れ目が発達している場合が多い。これは花こう岩が冷却していく過程でできた割れ目で,節理,特に方状節理とよんでいる。

 右上の写真は,黒雲母花こう岩の実物写真である。花こう岩のように,マグマがゆっくりと冷え固まった岩石では鉱物が大きく成長し,粗粒で等粒状の岩石となる。黒色に見えるのは黒雲母,白色は長石,灰色は石英である。カリ長石と斜長石とは同じくらいの量が含まれているのだが,肉眼では区別できない。

 右下の写真は,同じ岩石の十字ニコル下での顕微鏡写真である。茶色に見えるのが黒雲母,白黒で同心状の模様の見えるのは斜長石で累帯構造をしているもの,白黒で平行な縞模様の見えるのは,同じく斜長石で双晶をしているものである。灰色で不規則に割れているように見えるのは石英である。カリ長石もあるのだが,この写真では判別できない。

 

ケイ酸塩鉱物の構造

 SiO4正四面体の酸素−ケイ素の結合は,大変強固であり,すべてのケイ酸塩鉱物中に普遍的に存在している。したがって,ケイ酸塩鉱物は,酸素−ケイ素正四面体が結晶中でどのように組み合わさっているかによって,下表のように区分される。

@            ネソケイ酸塩;SiO14である。一般にNaKに乏しいが,希元素を含むことがある。また,一般に硬度・密度ともに大で,屈折率も比較的高い。かんらん石,ざくろ石,などがこのグループに属する。

A ソロケイ酸塩;SiO27である。これは2つの酸素−ケイ素四面体が1  つの頂点を共有して結合したものが基本となっている。例として異極鉱や緑れん石がある。

B シクロケイ酸塩;酸素−ケイ素四面体の2つの酸素を共有して環状体をつくり,これが基本となったものである。SiO13である。このグループには3つの四面体で1つの環をつくったもの(たとえば珪灰石)4つの酸素−ケイ素四面体で環をつくったもの(たとえばおの石),6つの四面体で環をつくったもの(たとえば緑柱石)が知られている。

C イノケイ酸塩;このグループは,単鎖構造と複鎖構造の2つに区分される。  前者ではSiO13であり,後者ではSiO411となる。単鎖構造のグループには輝石が入り,複鎖構造のグループには角閃石が入る。輝石と角閃石とのへき開角の相違は,主としてこの構造様式の相違に由来している。

D フィロケイ酸塩;酸素−ケイ素四面体の3つの酸素を共有して層状構造ができたものである。角閃石に見られる複鎖構造を2次元的に延長していったものと考えれば考えやすいだろう。SiO25となり,このグループには雲母や大部分の粘土鉱物が入る。雲母などのようなへき開は,この層状構造に由来している。

E テクトケイ酸塩;酸素−ケイ素四面体の全部の酸素を共有して,立体網目を形成したものである。石英もこのグループに入る。このグループのケイ酸塩では,四面体中のSiAlによって置換されることもあり,この場合は,部分的にAlO四面体が形成される。カリ長石や斜長石は,その例である。この場合,(SiAl)O2では全体としての電価がつり合わなくなるので,配位数の大きな位置に正イオン(たとえばNa+K+Ca2+)が入り,全体としてのバランスをとることになる。

 

 

表 ケイ酸塩の構造的分類

 

固溶体

 造岩鉱物のほとんどは固溶体をつくる。石英は,固溶体をつくらないごく普通に見られる造岩鉱物という点で特異である。固溶体は,端成分ABとが,あらゆる割合で混合したようにみえる組成をもち,結晶化学的には,結晶内部で占めうる位置が同等なイオンが,いろいろの割合で互いに交換することにより生じるものである。

たとえば,斜長石は,曹長石 NaAlSi3O8 と灰長石CaAl2Si08とが,いろいろの割合で混合してできた固溶体鉱物のように見えるが,結晶化学的には,NaSi CaAl とが互いに置換し合うことによって得られる。つまり,CaNaとは,結晶内部で同等な位置にあるが,この交換と,SiAlとの交換とが同時に起きているのである。その他,輝石ではMgFeAlの間で,またCaNaなどの置換で複雑な固溶体がつくられている。

 

地下の温度分布と玄武岩質マグマの発生

 地震波などの研究によると,マントルは通常は岩石の融点よりも低温であり,固体であると考えられている。その部分の岩石の融点に近い温度をもつマントル上部では,適当な圧力・温度の変化によって岩石がとけてマグマが発生する。たとえば,中央海嶺の下やホットスポットにおいては,マントル内に上向きの流れが生ずることにより,岩石の上昇とともにしだいに低圧の状態に移り,ついには岩石がとけてマグマを発生する。この場合,マントル内での対流が続くかぎり,そこでは同じ条件下で同じ化学組成のマグマを生ずる。また,ホットスポットのように温度が上昇するところでもマグマが発生する。

 一方,プレートの沈み込むようなところでは,沈み込むプレートから供給される水分によって,その上のマントル物質の融点が下がり,とけてマグマを発生する。沈み込むプレートから分離される水分は,ほとんど連続的に分離されていくため,浅いところから深いところまで,その深さに応じて,マグマの組成にも強い影響を与える。

 

玄武岩質および安山岩質岩石においてアルカリ成分を重要視する理由

 玄武岩質岩石の主要造岩鉱物は斜長石と単斜輝石であり,これに少量のかんらん石,かすみ石,メリライト,斜方輝石,石英が加わっている。したがって,いま,単斜輝石(透輝石),かんらん石(苦土かんらん石),かすみ石,石英を端成分とする四成分系を考えれば,第1近似として玄武岩質岩石はこの四成分系内に点示される。つまり,次の化学反応式が示すように斜長石はかすみ石と石英との間に点示される。

1NaAlSiO4 + 2SiO2 ⇔  NaAISi308

 (かすみ石) (石英) (斜長石)

2Mg2 SiO4 + SiO2 ⇔  2MgSiO3

 (かんらん石) (石英)(斜方輝石)

玄武岩質マグマが低い圧力の下で結晶分化作用を行う場合には,図Tにおける面Cpx Pl Fo が温度的な障壁となり,結晶分化作用の化学組成上の経路が,この面を横切ることはできない。つまり,図Tで面 Cpx PlFo は,玄武岩質岩石を成因上2つのグループに区分していることになる。この面よりかすみ石(Ne)側が,いわゆるアルカリ岩の系統となり,(Q)側がいわゆるソレアイトの系統となる。したがって,アルカリ岩の系統となるかソレアイトの系統となるかは,主としてSiO2とアルカリの相対的な量比の関係となる。アルカリ岩の系統とソレアイトの系統とは,地殻内におけるような低圧の下での結晶分化作用を考えているかぎり,親娘の関係にはなりえないのであるから,玄武岩質岩石をとり扱う場合には,SiO2とアルカリの相対的含量比というのが重要な意味をもってくる。

図T 単純化した玄武岩質岩石の四成分系

 

 一方,島弧に分布する安山岩中のK2O含量は,その火山の下の和達−ベニオフ帯までの深さと密接な関係をもっている。島弧−海溝系における火山前線は,和達−ベニオフ帯の深さ約100kmのところに相当し,その付近からマグマの生成が始まっている。和達−ベニオフ帯で発生したマグマは上方へ移動してゆくが,図Uは,島弧における火山の帯状配列と,それを横断する方向での安山岩中のK2O含量の規則的変化とは,和達−ベニオフ帯に沿う温度−圧力の変化に応じて,組成の異なったマグマが生じていることを示している。

 

マグマの分化

 グリーンランド東海岸のスケルガード岩体は,岩体の下部から上部に向かって,鉱物組成,岩石の化学組成が系統的に変化している。層状構造のもつパターンと鉱物組成の変化から見て,まずかんらん石が,続いて輝石・長石が晶出し,次々に岩体下部に集積して層状構造をつくったことは確かである。先に晶出した鉱物ほどマグネシウム・カルシウムに富み,後に晶出した鉱物ほど鉄に富んでいる。したがって,この岩体では上位の層準ほど鉄に富み,下位の層準ほどマグネシウム・カルシウムに富むのである。

 

参考】 スケルガード岩体

1923年,当時イギリスで組織されたグリーンランド探険隊に参加した2人の若い岩石学者ウェイジャー(L.R.Wager)とディア(W.A.Deer)が,最初にグリーンランド東海岸でスケルガード(Skaergaard)岩体を望見したときには,とても火成岩体とは考えられなかった。スケルガード岩体にはみごとな層状構造が発達していた。スケルガード岩体は堆積岩からできた地層であるように見られた。

いよいよ岩壁にとりついて岩肌をくわしく観察してみると,やはり,みごとに層理の発達していることがわかった。この層理には,堆積岩に一般的に見られる層理構造はすべて存在している。ところが,このような特徴にもかかわらず,それは火成岩であった。

ウェイジャーとディアとは,約2年をかけて,この岩体を徹底的に調査した。

その後,もち帰ったサンプルについての詳細な鉱物学的・地球化学的な研究が進められた。1930年代は,ボーエン(N.L.Bowen)が,マグマの結晶分化作用説を提出し,それに基づいた火成岩の成因論を体系化して間もない時期である。スケルガード岩体は,この分化作用の過程を示すみごとな例であった。今日においても,スケルガード岩体は,鉱物学や岩石学の研究の宝庫となっている。

層状構造をつくっている鉱物の配列模様を調べると,この火成岩体をつくったマグマ溜りの中で対流のあったことが推定される。とすると,それはマグマ溜りの上下の温度差を小さくする効果をもつ。実は,これが分別作用を促進する役割を果たしたのである。つまり,マグマ溜りに対流があると,対流によって下降したマグマから鉱物が吐き出されて下底に集積される。それは,図に示すように,岩体内部の温度が岩体の下層部のところで鉱物の晶出温度以下になるためである。マグマ溜りの下部でかんらん石をとり去られたマグマは対流によって上昇するが,その化学組成は,初めにくらべてかんらん石に乏しくなっている。

 

 

ところで,かんらん石は一般に Mg2SiO4Fe2SiO4との固溶体であるが,あるかんらん石組成をもった液から,かんらん石が晶出するときには,その液の化学組成よりも Mgに富むものから晶出が開始される。したがって,岩体の下層部でとり去られたかんらん石は,Mgに富むことになる。つまり,このような過程を通じて,残りのマグマにはしだいに Fe が濃縮されていくことになる。実は,斜長石もNaAlSi3O8(曹長石)CaAl2Si2O8(灰長石)からなる固溶体であるが,この場合には,灰長石に富む斜長石のほうが,高い温度で晶出してくる。

そこで,かんらん石の場合と同じようにして,岩体の下層部に集積される斜長石はCa に富んでいる。輝石についても,輝石の固溶体では,一般にMg に富むもののほうが晶出温度が高く,Feに富むもののほうが低いから,同じ理由で,集積された輝石のほうにMgが集まり,残った液のほうにFeが濃縮される。こうして,スケルガード岩体では次々に鉱物がとり去られて,最後に残った少量のマグマは一種の花こう岩になっている。

 しかし,その量は,もとのマグマの0.2%程度である。また,分別結晶作用の途中の段階で,閃緑岩のような岩石はできていない。

 

 

花こう岩の成因

 花こう岩質マグマの発生は,マントル内での熱的および構造的過程と関係していると思われている。しかし,花こう岩質マグマが,マントルそのものの中だけで生ずるものであるとは考えにくい。確かに,花こう岩質マグマの中には,マントルから由来した物質がかなりの量含まれていると考えなければならないが,その主要な生成の場は大陸地殻の中であると考えるほうが妥当である。大陸地殻と関係ない海洋中の弧状列島や,海嶺状の火山岩の中にはある種の流紋岩(花こう岩質)が産出してはいるけれども,それらは少量であり,大陸地域に大量に産出している花こう岩類と同一に論ずることはできない。花こう岩質マグマの成因に関しては,ここ2世紀にわたって激しい論争がくり返されてきたが,まだはっきりした結論は得られていない。これまでに提唱されてきた花こう岩質マグマの成因論を整理すると,次の3つにまとめられる。それは,@既存の岩石の部分融解によるというもの,A閉系の中での結晶と液との分別作用によるというもの,B分別作用と既存の岩石の融解との両方が作用しているというもの,または,塩基性あるいは中性マグマがマグマ溜りの屋根や壁部の岩石と激しく反応するという,いわば開系での分別作用によるというものである。表にこれら3つの考え方の主要な点を要約した。

 

発展 マグマと鉱床

 マグマが地下深部から地表へと移動してくるのにともない,多くの有用元素も地表へと移動してくる。有用な元素が濃集し,採掘して経済的になりたつようになったものが鉱床とよばれている。玄武岩質マグマがマグマ溜りの中で結晶分化作用を始めると,かんらん石や輝石が晶出してくるのと同時にクロム鉄鉱や白金が結晶作用や液体不混和によって晶出し,マグマ溜りの下部に集積することがある。これが正マグマ鉱床とよばれている鉱床である。マグマの結晶分化作用が進み,または花こう岩質マグマの結晶作用の末期には水蒸気圧の高まった部分に大きな石英や長石など,あるいは希元素鉱物などができる場合がある。これはガラスの原料や窯業原料として,また,希元素の原料として採掘される(ペグマタイト鉱床)。福島県の阿武隈山地にはこのような鉱山が見られた。

 花こう岩質マグマの国籍が進むと岩体の中から有用成分を含んだガスや熱水が岩体の上にしみ出してくる。このガスや熱水は花こう岩体の上の岩石中にしみ込んで冷却し,岩脈状になって有用元素を含む鉱床となる。気成鉱床や熱水鉱床とよばれているものがこれである。また鉱床の分布形態から鉱脈鉱床とよばれる場合もある。日本の金(自然金),銀(輝銀鉱),銅(黄銅鉱),鉛(方鉛鉱),亜鉛(閃亜鉛鉱),銀(錫石)など多くの金属元素が熱水鉱床から採掘されてきた。兵庫県にあった生野鉱山などはこの例である。

 また海底火山の噴気孔の周辺では火山ガス中に含まれていた有用成分が海水と接触して濃集堆積する場合もある。東北日本の各地で採掘されていた黒鉱鉱床とよばれているものはこうしてできたと考えられている。この鉱床からは,金,銀,銅,鉛,亜鉛など多くの金属元素の原料が採掘されていた。

 岐阜県にあった神岡鉱山や岩手県にあった釜石鉱山は石灰岩の近くに花こう岩質マグマが貫入してできたスカルン鉱床であった。日本の鉱山の多くは経済的な困難に直面し,今ではほとんどが廃鉱となっている。

 

参考文献・引用文献

 ○久野 久「火山及び火山岩」岩波書店

 ○町田 洋「火山灰は語る」蒼樹書房

 ○岩崎岩次「火山化学」講談社

 ○上田誠也・杉村 新「弧状列島」岩波書店

○都城秋穂・久城育夫「岩石学」T,U,V 共立出版

 

 


 

 

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.