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第2節 地震

 

 

地震災害

震度階

震度域

地震のエネルギーとマグニチュード

マグニチュードの決めかた

発展 モーメントとマグニチュード

地震によるエネルギーの放出のしかた

余震

地震計

震源での断層運動と地震波の初動

地震の原因

P−S時間

世界の震央の分布(サイスミシティ・マップ)

日本付近の地震

深発地震面

地震の予知の問題

 

 

地震災害

 [液状化現象] 地下水位が高く,軟弱な砂地盤のところでは,強い振動を受けると,地盤全体が液体のような状態になることがある。これが液状化現象で,このとき水や砂が地表に流れ出す現象を噴砂現象という。1964年の新潟地震のときに液状化現象によってビルが沈下したり倒れたりして大きな被害が生じた。

 

[観測強化地域・特定観測地域] 地震予知連絡会は,過去の地震や最近の地震の研究をもとにして,南関東と東海地区を観測強化地域に指定し,そこでは地震予知のための観測,観測点の増設,観測体制の強化がなされている。また,それより観測体制のランクは低いが,ある程度以上地震が発生する可能性がある地域として,特定観測地域が指定されている。一方,各自治体でもそれぞれ地域の事情を考え特色のある対策がなされている。

図Vは,東京都の防災予防計画である。

 

 

 

 

震度階

 地震の規模はマグニチュードで表される。マグニチュードは地震それ自体の大きさを表す量である。これに対して,震度は,地震によるゆれの大きさを表す量であり,場所によって異なる。

 ゆれの大きさの表現は以前は人の感覚や被害の様子などによっていたが,199610月から気象庁は震度階を,現地の震度計が記録した地震動の数値(計測震度)に基づいて定義することにした。また,これまでの震度5と震度6をそれぞれ2分して震度5弱,震度5強,震度6弱,震度6強とし,合計11の震度階級に区分した。

 外国では日本の気象庁の震度階とは異なる改正メルカリ震度階が一般に用いられている(表T)。

 

震度域

震動が遠くまで人体に感じられる場合,有感範囲が広いといい,感じられる範囲が狭いと有感範囲が狭いという。震度は人体の感じ方などで定義されるので,その地点における周期1秒前後の波の強さで表されるものと考えられる。等震度の地点を結んでできる図を等震度()図とよぶ。一般に有感範囲が広いほど地震の規模も大きい。                         

また,震度は震央に近づくほど大きくなるものであるが,震央から遠いところで震度が大きくなる場合もある。このような現象は異常震域とよばれ,日本海下の深発地震によく見られる。太平洋沿岸の地震の場合は,有感範囲が太平洋沿岸に沿って長細く伸びる。異常震域は,深発地震面に沿って地震波の減衰しにくい層があるためと考えられる。

 

地震のエネルギーとマグニチュード

地震のエネルギーは,地震波が岩盤をゆらしたその総エネルギーである。グーテンベルク(B.Gutenberg)とリヒター(C.F.Richter)によると(1956),地震の規模を示すマグニチュードMとエネルギーE(ジュール)との間には

       log10E1.5M4.8

という関係がある。すなわち,Mが1階級大きくなると,E101.5倍,つまり約32倍になる。たとえばM6の地震の出す運動エネルギーは,その1つ下のM5の地震の32個分に相当し,またM4の地震の約1000個分に相当する。

 

マグニチュードの決めかた

 

地震の大きさと地震動の最大振幅との関係が,もし,地震波の経路や観測点の条件によらず,震央距離を媒介変数として表されれば,任意の地点で地震動の最大振幅を測ることで地震の規模の大小が決められる。このことを最初こ指摘したのは和達清夫であったが,カリフォルニア工科大学のリヒターはウッド・アンダーソン型地震計(振り子の固有周期T00.8秒,減衰常数h0.8,最大倍率Vmax2800倍)の記録を用いて,その可能性を実際に検討した。彼は1931年に南カリフォルニア地方で起こったいくつかの浅い地震について,記録された最大振幅A(ミリ単位)の常用対数と震央距離Δとの関係を調べた結果log10AΔによる減り方が,地震に関係なく,ほぼ平行していることに気づいた(上図)。そして,log10AΔのカーブ群に平行な基準カーブ(図中の破線)を描き,震央距離Δの地震についてウッド・アンダーソン型地震計の記

録する最大振幅Aが,Δにおける基準カープの値A0の何倍になっているかによって,その地震の大きさMを次式のように定義した。

   Mlog10{A(Δ)/A0(Δ)}log10A(Δ)log10A0(Δ)  (1

 このMが,地震の規模を表すものとして,マグニチュードとよばれることになったのである。ところで,上図の基準カーブにはΔ200kmに対して

   log10A06.373log1OΔ

という実験式があてはめられる。記象紙上の最大振幅0を地震動の最大振幅a0になおすと

   log1O(2800a0)6.373log1OΔ   ∴ log10a02.923log10Δ

となる。さらに,地震計が描いた最大振幅Aと実際の地震動の最大振幅aの比が,Δに関係なく一定であるとすると

   Mlog1OAlog10A0log10alog10a0log10a3log10Δ2.92 (2

となる。このようにMを実際の地震動の最大振幅aと結びつけておけば,ウッド・アンダーソン型地震計以外の地震計でもその地震計の周期特性を考慮して地震動の最大振幅aを算出すれば,(2)式からその地震Mが求められる(ただしΔ600kmの浅い地震に限られる)。こうして求められたMは,リヒターのローカル・マグニチュードMLとよばれる。

 日本の気象庁は,次式によって,日本付近の浅い地震のマグニチュードを決めている

   MJlog10AH1.73log10Δ0.83

 ここで,AHは気象庁地震計(固有周期5秒前)水平成分による最大地動の片振幅(μm単位)であり,Δkmで表される。なお,地震動の最大振幅は,実際は地震波の経路や発震機構によっても左右されるため,マグニチュードの値は,同じ地震でも0.20.3程度のばらつきが見られる。

 

発展 モーメントとマグニチュード

 地震の規模を表すモーメントマグニチュードは,1977年に金森博雄により提唱された。

  地震モーメントMo=地震断層の面積×ずれの量×岩盤の剛性率

  logMo1.5Mw9.1

という関係式で,モーメントマグニチュードMwが定義されている。

 モーメントマグニチュードが地震のエネルギーを正しく反映することは,感覚的にもわかりやすい。

*地震のエネルギーは震源断層の面積に比例する:断層の面積が3倍になれば,同じ 面積の断層が3つ同時に活動したと考えればよい。→エネルギー3

*地震のエネルギーはずれの量に比例する:ずれの量が3倍になれば,同じずれの断 層が3回活動したと考えればよい。→エネルギー3

 1960年のチリ地震のモーメントマグニチュード(Mw)は9.5で過去最高だが,従来のリヒターの定義によるマグニチュードでは8.3にしかならず,地震のエネルギー規模を正しく表すことができていなかった。

参考:東京大学地震研究所Website

http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/Jhome.html

 

地震によるエネルギーの放出のしかた

 一般にマグニチュード(M)の大きな地震ほど,放出されるエネルギー()が大きく,MEとの間には次のような経験式がある。

     Log10E1.5M4.8

ただし,最近では巨大地震についてはこの式はあてはまらないと考えられている。

世界中で1年間に起こる地震の数をマグニチュード別に示すと表のようになる。数の上ではマグニチュードの小さい地震のほうが圧倒的に多いにもかかわらず,エネルーの総量ではたまに起こる大地震に及ばない。

 

表 地震のM別頻度および放出エネルギー(年間)

(MNの数値は主としてグーテンベルクとリヒターによる)

 一般に,ある一定期間中に,ある場所で,どれぐらいの大きさ(M)の地震がどれぐらいの数N起こるかについては,統計的に次の関係式

     log10Nab(8M)            

が出されている。

 この関係式を,グーテンベルク・リヒターの式という。定数のうちbの値については,日本などの環太平洋地域の地震帯では大体0.9前後になる。ということは,Mが1階級下がるごとに地震の回数は約8倍になることを意味する。

 これと内容的によく似た関係式が日本では独自に発見され,地震の統計的研究に広く用いられている。それは

     N(A)dAkA-mdA

という式で,石本・飯田の式とよばれる。kmはやはりある定数であって,Aは地震記象上での最大振幅,N(A)は振幅がAAdAとの間の値をとる地震の数を意味する。mはたいてい1.81.9程度の値になる。

 

余震

大規模な地震は,その後に余震をともなう傾向がある。そして,地震の規模が大きいほどその数も多く,期間も長くなる。しかし,余震の定義は空間的にも時間的にもはっきりとは決まっていないし,また決めにくいことでもある。たとえば,下図は,南海地震(M8.1)が起こった19461221日の前後それぞれ6か月間の,震源地付近での地震活動の様子を震央分布で示した図であるが,本震の震央の北西部に数多く見られる地震群は,明らかにこの地震の余震といえる。しかし,九州や京都付近に見られる地震群がはたしてこの地震の余震であるかというと,これは何ともいえない。はっきりした定義がないのでしかたのないことである。時間についても,本震の何日後までに起こった地震を余震とよぶかという定義がないので,同様のあいまいさが残る。

南海地震前後6か月間の地震活動の比較 右図の矢印の先に見える二重丸印が本震の震央である。

 

 [余震の大きさと余震域] 地震が大きくなると余震の数は増加し,余震の起こる領域も広くなる。本震のマグニチュードMとそれにともなう余震域の面積Skm2〕との関係を,日本の浅発地震についての資料によって統計的に求めてみると,

    log10S1.02M4.01

となる。大規模な地震ほど余震面積は広く,M7の地震は103km2くらいの区域に,また,M8の地震は104km2ぐらいの区域に余震を起こす。地震の断層モデルの確立以来,本震後1日以内とか数日以内の余震域を断層面としたモデルが,地殻変動データや地震波のデータをよく説明することが指摘されている。この意味で,余震域は地震の空間的な大きさを表現していると考えることができる。

 

地震計

 地震計のしくみにはいろいろなものがあるが,最も多く用いられているのは振り子の原理を応用した地震計である。図Tのように,振り子のおもりは,その固有周期よりもずっと短い地面の動きに対してはその空間的位置を変えない。したがって,振り子の見かけの動きを地面に対して記録することにより(記録の向きは逆向き),地面の動きを知ることができる。地震動の振幅は,激震のときには数10cmもあるが,ごく小さい地震では1μm(10-6)以下である。その周期も,数十分にわたる長いものから,1/100秒以下の短いものまである。このような振幅・周期の範囲の広い地震を1台の地震計で記録することはむずかしいため,実際には目的に応じていろいろな特性の地震計を使いわけている。

図T 地震計のおもりと地面との相対的な動き

 

図Uにいろいろな地震計の倍率と,それらの地震計がどのくらいの周期の地震を記録することができるかを示した。

 

図U 地震計の倍率と記録される地震動の周期

 

震源での断層運動と地震波の初動

 地震発生時の震源の動き,すなわち発震機構は,地表面で記録した地震波の初動の押し引きの分布から知ることができる。震源における最初の動きとしてまず考えられるのは,図T(a)のようなものであろう。地震が断層の動きによって起こるものとすると,この動きは周囲に波及していって,地上に分布した地震計の描く初動の向きと振幅に,おのおのの震央に対する方向に従って,ある分布を与える。P波について震央を中心とした分布図でそれを示せば,図T(b)のように+が押し,−が引きを初動として記録する区域で,この分布を四象限型という。図U(a)は,1995年の兵庫県南部地震のとき,日本各地の地震計が描いた初動の分布を示したものである。初動が押し(赤丸)を示した地区と,引き(白丸)を示した地区とが,ちょうど震央で直交する2本の直線によって分けられ,四象限型に分布していることがわかる。図U(b)は,その推定された断層運動を模式的に表したものである。この例だけでなく,多くの地震についてP波の初動の押しと引きの方向性を調べてみると,図T(b)のようであることが多い。

図T 震源での衝撃によって現れる初動の押し引き分布模式

 

 

図U 兵庫県南部地震の初動分布(a)と推定された震源での断層運動の模式平面図(b) (a)の初動分布の2つの境界線のうち北東−南西方向の線が震源での断層運動の方向と推定されている。

 

地震の原因

[弾性反発説] 1906年のサンフランシスコ地震のときに生じた断層運動を説明するため,H.F.レイドが1911年に提唱した説である。その内容は次のようなものである。

@ 地震の原因となる岩石の破壊は,岩石のひずみが限界に達したときに起こる。

A 岩石のひずみは,地震の前に急に生じたものではなく,長期間にしだいに大きく なり,たくわえられていたものである。

B 地震のとき生じる運動は,岩石の破壊面すなわち断層面の両側がひずみを解消 する方向にずれる急激な弾性反発である。

C 地震動は断層面で発生し,断層面は初めのうちは小さいが急速に拡大する。

D 地震のときに解放されるエネルギーは,岩石に蓄積されていたひずみエネルギーである。

 

 [震源域] 地震の震源は断層面である。普通,最初に断層が動き始めたときの断層面は小さく,その点を震源とよぶ。最初に発生した断層面は周辺に広がってゆき,結局ある範囲の断層面がずり動いたことになる。この範囲が震源域である。このときのずれの拡大してゆく速さは23km/sぐらいで,これを破壊伝播速度とよんでいる。大地震ほど震源域が広く,全震源域にずれが伝わるのに時間がかかる。すなわち大地震ほど地震動の続く時間が長いといえる。

 

[断層の大小と地震の規模] 断層運動の大きな地震ほど大地震であるといえる。すなわち断層面の大きさが地震の規模を決める。これまでに観測された最大の地震は,1960年のチリ地震で,断層面の大きさは,長さ800km,幅200kmに達した。下図は断層面の面積をいろいろな地震について比較したものである。

 断層運動の大小は,断層面の面積Sだけでなく,断層面上でのずれの大きさDにも関係する。そこで,断層運動の大小をくらべるために地震モーメントMoが用いられている。Moは次の式で与えられる。

  Mo=μSD (μは剛性率)

Moは断層を動かすためにはたらいた力なので,これの大小が地震の大きさを決める。すなわちMoが大きいほど地震の規模も,解放されたエネルギーも大きいといえる。

 弾性エネルギーの断層形成前後の変化量o

  

なのでMoからWoを求めることができる。このWoをもとにして次式により定義されたマグニチュードMwが最近用いられるようになった。

   Log10Wo1.5Mw118

これを用いると,チリ地震はMw9.5M8.3),アラスカ地震はMw9.2M8.5)となる。なおMw8ぐらい以下になると,MwMはほとんど変わらない。

 

PS時間

 PS時間(初期微動継続時間)Tは震源からの距離Dに比例するから,

D=kT

と表される。この式を大森の公式という。比例定数k

 

である。大森はk7.42km/sという結果を得ているが,kの値は岩石の性質によって異なり,49km/sぐらいの範囲で変わる。

 

 [震源を求める] 3点においてPS時間を測りkの値を仮定すると,震源の位置を求めることができる。下図において観測点ABCを中心として,DkTによって得られるRを半径とする円を描くと,3つの共通弦は1点Eで交わる。ここが震央である。次に1つの弦を直径とする半円を描き,E点を通りその弦に立てた垂線が円と交わる点をHとすれば,が震源の深さとなる。

 

世界の震央の分布(サイスミシティ・マップ)

 1900年代初めまでの地震分布図は,人間とその分布状態に左右され,大変に偏ったものであったが,それでも,地震は世界中に一様に起こるものではなく,太平洋周辺や,東南アジアから中近東を経て地中海に抜ける地帯に多いことがわかっていた。前者は環太平洋地震帯,後者はユーラシア地震帯である。

 1950年代の終わりに,地下核爆発の探知のために完成されたWWSSNWorld Wide Standardized Seismograph Station Network)による地震の検知能力はきわめて高く,数からみても精度からみても,わずか数年の間にそれ以前の半世紀の間に得られたものをはるかに上回る情報を与えている。記録された地震の数は1961年から1967年までの間に29533個であり,M5くらいの地震までが検知されている。海嶺に発生する地震はあまり大きくないが,下図では海嶺中軸部の位置が完全に見られる程度まで小さい地震の震源も決定されていることがわかる。

全世界について,地震の発生する主な地域をあげると次のとおりである。

1) 島弧およびそれに準ずる地域。環太平洋地震帯とユーラシア地震帯の大部 分がこれに含まれる。

 2) 中央海嶺およびそれの内陸への延長にあたる地域。

 3) 海嶺や島弧の間を結ぶ水平ずれの断層(トランスフォーム断層)

 4) 大陸の一部(中国,北米中部など)

 地域的特徴のうち最も注目すべきことは,ある場所にはいわゆる深発地震が発生しているが,ある場所にはまったくないということである。下図(b)には下図(a)と同期間中に発生した深さ100km以上の地震のみプロットしてある。下図(a)に見られる地震帯のうちわずかに残っているのは,環太平洋地震帯の一部,中央アジア,それに地中海東部ぐらいのものである。中央海嶺の存在を示す細い震央の帯は,東太平洋海嶺に発生している地震も含めて,すべて見えなくなっている。特に北米大陸の太平洋岸には1つの震央もない。すなわち,あるところには深い地震と同時に浅い地震(浅発地震)も発生しているが,浅い地震の発生しているところに,必ずしも深い地震も発生しているわけではないことを示している。

 

日本付近の地震

 震源の浅い地震についてみると,北海道・東北,および関東地方の太平洋岸と海溝の間に多くの地震が発生している。東海道から四国の沖合い,南海トラフの内側も歴史上M8級の大地震は多いが,常時活発ではない。日本の内陸部は海溝より内側の海底ほど地震活動は活発ではないが,深さ15kmよりも浅い場合が多いので,M6級の地震でもその真上付近では大きな被害を生じる。

 図Tは日本付近のM6以上の震央分布であるが,M8以上の地震はすべて太平洋側の海溝やトラフの内側に発生している。日本列島の日本海側でもM7クラスの大地震が発生しているが,これは日本海のほうから日本列島下にプレートが沈み込んでいるためという考え方があり,新しいプレートの境界が提案されている。日本海西部のM7クラスの地震は,いずれも深発地震で,ほとんど被害はない。

図T 日本付近のM6以上の地震の震央分布

 

[北海道] 南千島から北日本沖では,プレートの沈み込みによる巨大地震が発生する。

 図Uはこの地域に起こる巨大地震の震源域である。これらの地域では2030年くらいの間に巨大地震が次々と1つ1つの領域に発生する。その後3060年間静穏な時期があり,また次の活動がそれぞれの領域で始まっている。                     

図U 南千島−北日本沖の震源域(宇津による)

 

図V 南千島から北海道の太平洋岸に発生するプレート境界地震の最近の活動時系列

 

 [東北地方] 三陸地方はその地形の影響もあって津波の被害が多い。しかし,震動による被害はさほど大きくないという特徴もある。これまでに知られている大津波は,869年,1611年,1677年,1896年,1933年の各年の大地震にともなって起こっている。内陸部では1896年の陸羽地震などが知られている。また,1983年には秋田沖で発生した日本海中部地震も大きな津波被害を出している。図Wは,東北日本下の震源分布を表しているが,沈み込むプレートの内部の二重の深発地震面がよく見える。

図W 東北地方の東西断面での震源分布と深発地震面

 

[関東地方] 関東地方沖には深さ数十kmの地震が多い。相模トラフに沿っては,関東大地震(1923年),元禄の関東地震(1703年)が起こっている。沖合いの日本海溝・伊豆小笠原海溝・相模トラフが交わる付近では,房総沖地震(1953),それより陸側の明治の房総沖地震(1909),延宝の房総沖地震(1677年)など,M8級の大地震が起こっている。

 

[東海道−南海道沖] 東海道から南海道沖の南海トラフ内側(図X のAEのうちACCEの領域など)には,M8級の巨大地震がくり返し起こっている。そして,その後100年あるいはそれ以上の間,静穏であるという性質がある()

 

図X 東海道−南海道沖における大地震の震源域

 

表 東海道〜南海道沖(図X)の巨大地震発生年

 

[中部・近畿地方] 中部・近畿地方の内陸部では,古文書などによって古くから多くの被害地震が起こっていることがわかっている。特に岐阜・美濃・飛騨地方は大地震が多く,745年,1586年,1891年(濃尾地震)と3回のM8クラスの地震があった。内陸でM8クラスの地震が起こったのはこの地方だけである。

近畿地方では,大地震は琵琶湖周辺に多い。琵琶湖付近の大地震として,1185年(M7.4),1662年(M7.6),1819年(M7.4),1909年(M6.9)がある。

 

[中国・四国・九州地方]  これらの地域は他の地域にくらべて地震は少ない。中国地方では,880年出雲(M7.4),1819年浜田(M7.1),1905年安芸灘(M7.1)1943年鳥取(M7.4)などが知られている。四国では,内陸の被害地震はほとんどないが,南海トラフ沿いの大地震は周期は長いが対策が必要である。九州北部は地震が少ないが,宮崎県沖ではM7.5クラスの地震が多い。

 

深発地震面

 地球は内部にいくほど水平方向に均質となるため,地震は厚さ数十kmの地殻の中でしか発生しないと考えられていた時代もあった。しかし,今日では600kmもの深いところでもかなりの頻度で地震の発生することが知られている。上に東北日本での震源の分布を示した。深い地震は海溝付近から大陸側に斜めにもぐり込む面に沿って分布している。このような面を深発地震面,または和達・ベニオフ帯という。深発地震面は場所により長さも形も異なるが,深いものでは約700kmの深さに達しているため,面の長さは1000kmにも達する。深発地震は,そのような面に沿って沈み込むプレートの上面付近に発生している。

地震の発生頻度は,200kmまでは深さとともにほぼ指数関数的に減少する。アリューシャンや中米のように,200300km以深では活動がなくなってしまう地域もあるが,深さ300400kmで再び活発になる地域がある。千島弧の南半分では,南端を除き深さ200km台の地震はほとんど発生しないが,300kmよりも深くなると再び地震が増加する。南米やニューへプリジーズ諸島付近では300500kmで活動がまったくとぎれ,深さ600km前後で再び活発になる。このような違いは,沈み込んだプレート(スラブ)が途中で切れていたり,また,スラブが平らな板ではなく,場所によりいろいろな型をしているためと考えられている。

いろいろな型の深発地震面

 

地震の予知の問題

 地震の予知は,多くの人々の願いである。政府は1965年に,地震予知計画を発足させた。それ以来今日まで30年間,大学や気象庁・国土地理院などの関係政府機関によって,土地変動(地殻変動)の精密な観測,微小地震の観測,電磁気の測定,地下水の観測など,各種の調査・観測が行われてきた。

 1970年代には東海地震の発生が遠くないという予測から,その直前に現れると期待される前兆現象をとらえるため,静岡県を中心に各種の観測が強化され,防災対策も進められ,現在にいたっている。

 この間に各地で生じたいくつかの地震では,その直前に一部で観測値にやや異常な変化が現れたこともあったが,多くの地震では前兆らしい異常は観測されず,直前予知はできなかった。予知の情報が公式に発表されたこともなかった。1995年に兵庫県南部地震が突如発生し,阪神・淡路の大震災となった。この場合にも観測網が比較的密にあったにもかかわらず,前兆らしい異常は事前にまったくとらえられていなかった。

 神戸−淡路地域には,過去にくり返し大地震を発生させた活断層がある。このことなどから,専門家は20年あまり前から何度か阪神地域で大地震が発生する可能性があることを指摘していた。しかし,阪神地域の多くの人々は,最近の過去に大地震に見舞われたことがなかったので,大地震が自分の地域で起こるとはまったく考えていなかったという。地震調査の結果や防災についての情報が一般社会のものにはなっていなかったのである。

 このような地震予知の現状,特に突然の阪神・淡路の大震災に鑑み,大震災後,直前の前兆現象の検出を最重点にしてきたこれまでの地震予知のやり方が見なおされた。そして,地震発生のより長期的な予測や,地震活動や地殻変動の広域的な観測をよりいっそう充実させること,そしてその調査研究結果を広く社会に広報することになった。政府はそのために,総理府に科学技術庁長官を長とする地震調査研究推進本部を19957月に設置した。同本部は,数年のうちに全国に地震観測施設とGPS観測施設をいずれも約1000に拡充し,詳細な活断層調査を全国の約100の主要活断層を対象に行う,などの計画を発表し実施しつつある。

 同本部は19969月に,糸魚川−静岡構造線活断層系が今後数百年以内にマグニチュード8程度の大地震を発生する可能性が高い,という調査結果を公表した。また,19978月には神奈川県西部の国府津−松田断層についてもほぼ同様,数百年以内にマグニチュード8程度の大地震が起こる可能性があると発表した。

 このように,兵庫県南部地震後,地震の予知は数日程度の直前の予知から数十年あるいはそれよりもさらに長期の地震予測にその重点が移った。

 

参考文献・引用文献

 ○宮村摂三「地震・火山・岩石物性」共立出版

 ○岩波講座 地球科学8「地震の物理」岩波書店

 ○友田好文 海洋学講座4「海底物理」東京大学出版会

 ○宇津徳治「地震学」共立出版

 ○嶋悦三「わかりやすい地震学」鹿島出版会

 ○松田時彦「動く大地を読む」岩波書店

 ○中村一明ほか「火山と地震の国」岩波書店

 ○「地震の事典」三省堂

○杉村新・中村保夫・井田喜明編「図説地球科学」岩波書店

 

 

 








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