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第2節 地球の内部構造

 

 

地震波

地震波と地球の内部構造

アイソスタシー

地球内部を構成する物質

プレート(リソスフェア)

 

 

地震波

 弾性体中を伝わる波には縦波,横波の2種類があり,地震学ではそれぞれP波,S波とよんでいる。P波は地震計に最初に記録されるので第1番目の波,Primary waveP波),S波はその次ぎに記録されるのでSecondary waveS波)である。P波は媒質の体積変化(密度変化)が伝わる音波のような波で,その振動方向は波の進行方向(とその逆方向)である。P波は体積変化に対して反発するような性質(弾性)をもつ固体・液体・気体中を伝わる。一方,S波は媒質のねじれが伝わる波で,その振動方向は波の進行方向に対して直交方向である。S波は,ねじれに対する弾性をもたない液体や気体中は伝わらない。なお,媒質である弾性体が表面をもつ場合,表面に沿って伝わる2次的な表面波が生じる。表面波には,L(Love wave)R波(Rayleigh wave)があり,S波の後に現れる。

 

地震波と地球の内部構造

 [走時曲線と地球内部] 今世紀に入り世界の地震観測所が整備されるとともに, 走時曲線の研究が盛んになり,1930年末までにはおよその地球内部構造が明らかになった。地球の走時曲線の特徴の1つは,大陸内の浅い地震について震央距離100200kmの付近に,走時曲線の折れ曲がりが見られることである。これは,大陸では3060kmのところに地震波の速さが急に増加するところがあることを示している。これがモホ不連続面(モホロビチッチ不連続面)である。

次の図は震源が地球内部にある場合の波の伝わり方と走時曲線を示している。

 

震央距離rrre範囲では,最初に直達P波が,次いでモホ不連続面での反射波が到達するが,後者はモホ不連続面での反射率が小さく振幅は非常に小さい。rreはモホ不連続面への入射角iMが臨界ieiesin-1V1/V2)と等しくなるところである。rreではモホ不連続面にあたった波は全反射する(PMP)。また,rreでは直達P波やPMP波のほかに図TのPnの波が現れる。Pn波は,iieでモホ不連続面に入射した波で,モホ面のマントル側に沿って伝わる波である。マントル中の地震波の速さV2V1より大きいので,ある震央距離以上(rr0)ではPn波が直達P波より早く到達するようになり,走時曲線はrr0において折れ曲がりを示す。標準的な大陸地殻では,r0は百数十km程度である。

走時曲線のもう1つの特徴は,震央距離約103143°にP波の影が存在することである。これは深さ約2900kmに地震波の速度が急に遅くなる不連続面(グーテンベルク不連続面)があるためで,モホ不連続面とこの不連続面によって,地球は地殻・マントル・核の3つの層構造に分けられる。その後,P波の影の部にもP波が到達することがわかった図U(a)。これは,核の内部にP波の速さが急増する不連続面(レーマン不連続面)があり,その不連続面で折れ曲がって到着したP波であると考えられている。この不連続面よって,核は外核と内核に分けられる。P波の速さの急増は.内核が固体であるために生じるものと推測されている。

 

 [地球内部の密度分布] 一般に地球内部の密度分布は圧力・温度・組成によって決まるが,温度と組成の影響を考えなければ,密度は地震波の伝わる速さから推定できる。地震波の伝わる速さと密度の関係は,次の式

で表される。図Vは,このようにして求めた地球内部の様子である。

 

アイソスタシー

1889年にC.E.ダットンが提唱したもので,「等圧」とか「均衡状態」を意味する。すなわち,地上付近では,同一水準面でも地面の凹凸によって受ける圧力が異なるが,地下のある深さのところでは,圧力が一定の均衡状態になっているという考えである。

 これは,19世紀の中頃,ヒマラヤ山脈での重力の観測結果から考え出されたものである。観測結果によると,ヒマラヤ山脈の麓で観測された重力の方向(鉛直の方向)は,標準の場所より大きくずれていた。このずれは,山脈の質量にひっぱられているために生じたものと考えられた。ところが,そのように考えて,普通の密度を与えて山脈だけの影響を計算してみると,実際のずれよりも大きかった。すなわち,ヒマラヤの山々の引力は,予想されたほどには大きくないということである。つまり,山脈の下には平野部の下よりも密度の小さい物質が厚くなければならないことになる。

このことを説明する地下構造として,J.B.エアリーは,地表に凹凸があれば下部もそれに応じた深さの違う軽い物質からなる根があり,その根はより下層の物質(マントル)の中に入り込んでいるとした(図T)。高地でも平地でもそれを構成している物質の密度は同じであると考えた。

 一方,A.プラットは,上にのる軽い物質の密度は高地ほど小さく,その下層の深さは高地でも低地でも等しいと考えた(図U)。

 

その後,地震波の伝わり方の研究などから,地殻の厚さがわかり,地殻均衡の姿はエアリー説に近いことがわかってきた。すなわち,地殻がマントルの上に浮かび,山脈の下では,その山脈の高さに応じて地殻がマントル内に深く入り込んでいる。

 

図W 東北日本の構造断面     数字はP波の速さ〔km/s〕を示す。 

 

 水平規模が100kmくらいより小さいスケールの地形は,その重量を地殻の弾性によってささえるので,アイソスタシーは成り立たない。それ以上の水平規模の地形については,おおよそアイソスタシーが成り立つ。これは,地殻に加わる応力が大きくなると,岩石が塑性変形をして,流動的な性質を示すためであると考えられている。図Vは北アメリカ大陸およびユーラシア大陸の構造断面である。また,図Wは東北日本の構造断面で,地形の水平規模は約400kmである。図V,Wともに,おおよそアイソスタシーが成り立っていることがわかる。

図Xに,スカンジナビア地域での氷河時代以降の土地の隆起を示した。このバルト海付近は,バルト盾状地とよばれ,安定した大陸(先カンブリア時代にできた岩石からなっている)に分類されるが,現在は海になっており,年々隆起している。これは,もともと大陸であったところに氷河が厚く発達したときのアイソスタシーが,氷河がとけてしまった状態の現在のアイソスタシーになるために起こっていると考えられる。

図X スカンジナビア地域での氷

河時代後の土地の隆起 約1万年

前頃から土地が隆起している。

 

 

バルト海付近以外にも,アイソスタシーへ向かう動きの見られるところがある。図Yはその1つのローレンタイド氷床とよばれる氷床があった付近の,氷床の厚さと過去6000年間の地殻の隆起量を表している。

 

地球内部を構成する物質

 [地殻] 地殻のデータは,およそ次の表Tに基づいている。地核を構成する岩石は,火成岩(65%),変成岩(約27%),堆積岩(約8%)の順である。これを,岩石の化学組成からみると,花こう岩質に相当するもの(花こう岩・閃緑岩・花こう閃緑岩・閃長岩・片麻岩)が約43%,玄武岩質に相当するものが42.5%で,両者を合わせると地殻全体の約86%に達している。すなわち,地殻の大部分は火成岩,とりわけ花こう岩質岩石と玄武岩質岩石とから構成されていることが注目される。

 

これらの地殻の構成物質は,地震波の速さと,岩石の高圧実験により推定できる。すなわち,実験室内でいろいろな岩石に圧力をかけ,P波とS波の速さを測り,実測した地殻内での速さと比較する。図Tはその結果である。大陸地域での地震波の速さは上部で6km/s,下部で6.8km/s前後なので,地殻の構成岩石は上部は花こう岩質岩石,下部は玄武岩質の塩基性岩になる。

海洋地域では,地震波の速さは大陸下部と同様であるから,玄武岩質岩石からできていることになる。このように,大陸地殻と海洋地殻との間には化学組成上の差異が認められている。

 

[マントル] 上部マントルについては,地殻と同様にして構成岩石を推定することができる。それによると,かんらん岩のような超塩基性岩か,エクロジャイトのような岩石が考えられる。その他,下部マントル(深さ900kmより下部)も含めて以下のような方法で構成物質の推定が行われている。

(1) マントルから直接由来したと考えられる岩片が玄武岩やある種の超塩基性岩の岩体中に発見されることがある。そのような岩片からマントルの化学組成を算出する。

(2)  マントルの部分溶融によって地表にもたらされた超塩基性岩や玄武岩の成因などを考慮して,仮想マントルの化学組成を理論的に算出する。

(3)  隕石の化学組成をもとにした地球のモデルから,マントルの化学組成を算出す る。

これらの中で,代表的なものを表Uに示す。3つの異なった方法によって推定されているにもかかわらず,その結果はよく似た化学組成が得られている。なかでも,次の3つの点で共通した特徴をもっていることが注目される。

 

 

@ マントルの90%以上はFeOMgOSiO2で占められている。

 A Na2OCaOAl2O3の合計は510%程度で,これを@の3つの組成に加えるとマントル全体の98%にも達する。

B 他の酸化物で0.6%以上に達するものは存在しない。

 

 [] 地球内部の深さ5000km付近にはレーマン面とよばれる不連続面があって,内核と外核に区分されている。外核はS波が伝わらないことや,弾性率・密度などから,とけた鉄を主成分としていると推定されている。内核についてはよくわかっていないが,固体であるという見方が強い。核をつくる物質については,衝撃波を用いた高圧実験により,地球の核内と同じ圧力をつくり出して,そのもとでのFeなどの密度を測定して推測することができる。核が鉄・ニッケルからなることは多くの研究者の一致した意見であるが,核上部の密度は,同じ温度・圧力条件下においた鉄の密度よりも約10%小さい。これを説明するには,SiSなど,軽元素の存在も考えなければならないが,何が含まれるかについては意見が一致していない。表Vに,代表的な2つの考え方による核の化学組成を示した。

 

 

参考 隕石

 隕石は次のように分類される。大部分(93%)は石質隕石で,かんらん石・輝石・斜長石などケイ酸塩鉱物からなる。このほかに,鉄・ニッケル合金からなる鉄隕石(6%),中間的な石鉄隕石(1%)がある。

 

石質隕石には,コンドルールとよぶ球状の粒を含むものが多い。これは地球上の岩石中からは発見されていないが,太陽系内の原始的な物質,すなわち地球をつくった原料ではないかと考えられている。これに対し非コンドライト隕石は,惑星内部で分化を受けた結果のものと思われれる。

 

プレート(リソスフェア)

くわしい走時曲線の解析によると,震央距離10°くらいのところにも地震波の影がみつかっている。これは,深さ100kmくらいのところにある低速度層のためと考えられている。

 図Tは,地殻と上部マントルにおけるS波の速度分布である。これによると,低速度層の深さや速度の減少の程度は,海洋部・造山帯・盾状地など,地域によって異なることがわかる。

 

 低速度層でのS波の速度低下は,温度上昇か部分溶融のために生じたやわらかい物質によるものと考えられ,低速度層の深さは,プレートの厚さを定義するものとみなすことができる。海洋部でのプレートの厚さは約70kmくらいで,これより上部をリソスフェア(プレート),下部をアセノスフェアという。

 リソスフェアとアセノスフェアの違いは,地殻とマントルのような岩質の違いではなく,状態の違いで,冷たくてかたいリソスフェアに対して,アセノスフェアは高温でやわらかく,流動的な性質をもっていると推定されている。

 

 [プレートの厚さと海洋底の年齢]  海洋底におけるいろいろな観測結果と海洋底の年代との間には,図Uのような規則的な関係が見られる。すなわち,海洋底の年代の増加にともなう水深の増加,熱流量の減少,地震の表面波速度の増加は,プレートが時代の経過とともにしだいに冷却し,重くなっていくことを示している。

 

 このように,プレートは冷却とともにしだいに厚くなっていくという考え方があり,図Vにその成長モデルによる計算例を示す。このモデルでは,アセノスフェアを部分溶融層と仮定し,その上部の固結化によってプレートの厚さがしだいに増すと考えられている。

 大陸の場合,海洋のプレートほどはっきりしないが,図Tでわかるようにやはり低速度層が存在していることは,プレートとアセノスフェアの区分ができることを意味していると考えられる。

図V 成長するプレートの熱的モデル

(Kono & Yoshii.1975年による)

 

 

 

 








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