トップ地学I 改訂版>第1部 固体地球とその変動>第1章 地球>第1節 地球の概観

第1節 地球の概観

 

 

エラトステネスの測定

地球の形

ジオイド

地球楕円体

地球表面の様子

重 力

地磁気

地球内部の温度

地殻熱流量

地球の熱源

 

 

エラトステネスの測定

シエネとアレキサンドリアの距離は5000スタジア(900km),アレキサンドリアでの太陽の傾きは7°12(7.2°)であるから,

円周の長さ:900360°:7.2°

として,円周45000kmを算出した。これは,半径で約7000kmとなり,現在の国際基準の極半径6357kmとくらべると約10%の違いとなっている。この誤差の原因としては, @  シエネとアレキサンドリアは,同一子午線上ではなく,約3°違っている。

A 太陽高度の測定の精度の悪さ。

B 2地点間の距離の測定の精度の悪さ(ラクダで50日の行程から計算した)。

などがあげられる。

 

地球の形

 地球の形が,赤道方向にふくれた楕円体であることがわかるまでの経過は次のようなものである。

 

参考地球の形・大きさを考えた科学者たち

ピタゴラス(紀元前530年)……地球が丸いと考えた最初の人。宇宙も地球も完全な形をしているはずであるから,球形に違いないと考えた。

 

アリストテレス(紀元前4世紀)……球形であることを事実によって証明しようとした。第1に高いところに登るほど遠くが見える,第2に北へ進むほど北極星の高度が高くなる,第3に水平線のかなたから近づいてくる舟の帆先の見え方,第4に月食のときに月面にうつる地球の影などをあげた。

 

エラトステネス(紀元前275頃〜194頃年)(前述)

 

ニュートン16431727年)……球形をしている理由を最初に明らかにした。地球のすべての粒子は重心に向かってひき寄せられるので,球形になると考えた。また,正確には自転による遠心力のため,赤道付近がつき出た回転楕円体になると考えたのもニュートンである。

 

ピカール1669年)……パリの南北2地点を測量し,緯度差1°に対する子午線の長さを求めた。

 

カッシーニ1683年)……パリ天文台長であった彼は,測量の結果,緯度差1°に対する子午線の長さは赤道から北へいくにしたがって短くなるとした。これはニュートンの考えと反するものである。

 

参考】 メートルの単位

1789年,フランス革命の後,政府は大自然を基準にした度量衡の制定をした。長さの単位としての1メートル(metre)は,1799年に完成した地球の大きさの測定結果をもとにして決められた。すなわち,地球の子午線の北極から赤道までの長さの10-7倍(1千万分の1)を1メートルの長さと定め,メートル原器をつくったである。

しかしその後の精密な測定の結果,最初の規定とメートル原器による定義との間に差異があることがわかり,1889年にはメートル原器による単位の大きさの定義が採用された。その後,メートル原器と光の波長との比較が行われ,メートル原器の温度による変化の欠点をなくするため,1960年には86Kr(クリプトン)原子の橙色のスペクトル線の真空中における波長(6.0578021059×10-7m)に基づき,その1650763.73倍を1メートルと定め,さらに1983年には,光の速度の測定精度の向上により,光が真空中を299792458分の1秒の間に進む距離を1メートルとするように改められている。

@ 17世紀後半,フランス学士院は,フランス北部と南部とでそれぞれ緯度差1°に対する子午線の長さを測ったところ,南部のほうが長い結果を得た。これより,地球は両極に長い楕円体であると考えた。

A フランスの天文学者リシェ(16301696年)は,パリ(北緯49°)で正確に合わせた振り子時計を南米のギアナ(北緯5°)にもっていくと,毎日230秒ずつ遅れることを知った。振り子の長さを短く調整した後,再びパリへもち帰ると,今度は毎日230秒ずつ進むので,これは時計の変化ではなく,重力加速度gが赤道付近では小さくなるためだと考えた。そして,赤道付近で重力加速度gが小さくなるのは,地球が赤道部分でふくれている回転楕円体であるためだと推定した。

B ニュートン(16421727年)は,@の測量が行われた頃,すでに赤道部のふくらんだ回転楕円体を地球の形であると考えていた。

C フランス学士院はニュートンの理論に反発し,真偽を確かめるため,1735年から1743年にかけて,ラップランド(66°20N)とペルー(01°31S)において,それぞれ緯度差1°に対する子午線の長さを測定させた。その結果,北部のラップランドにおける子午線弧のほうが長かったので,ニュートンの説の正しいことが認められた。

〔子午線弧1°の長さ〕

ラップランド

111.9km

66°20N

 

フランス

111.2km

45°N

 

ペルー

110.6km

01°31S

 

ジオイド

 地球の重力以外の力,たとえば月や太陽の潮汐力,風力の影響などを除いた場合に,地球をとり巻く静止海水面がとる面をジオイドという。海洋における海水面の長期間にわたる平均,すなわち平均海水面はまずジオイド面とみなすことができる。陸地については,重力に影響しないような細い水路を設けて海水をみちびき入れたときの水面を考えると,ジオイドは地球全体をおおう形となる。ジオイド上の各点における鉛直線の方向は,それぞれの点でジオイドへの垂線と一致しており,またジオイドに沿って物体を移動しても,重力のなす仕事はゼロである。このような性質をもった曲面を,一般に重力の等ポテンシャル面または水準面とよんでいる。ジオイドは理想的な海水面と一致する特別な等ポテンシャル面にあたる。

 

 ある地点の高さ(標高)は,普通,海抜いくらと表される。これは,その地点からのジオイドへの垂線の長さにあたる。原理的には,平均海水面からの高さを水準測量によって逐次測っていくことによって,各地点の高さとともに,ジオイドがどこを通るかもわかることになる。

 

地球楕円体

 ジオイドは,現実の地表面の凹凸よりもはるかになめらかであり,地軸の方向にわずかに偏平な回転楕円体にきわめて近い。このような楕円体を,地球楕円体という。地球楕円体の大きさと形を適当に選ぶと,これに対するジオイドの凹凸は,下図のように高々100m程度にすぎない。

各国の陸地測量において採用されている基準楕円体は,それぞれの国の測量事業が始まった頃に最適と考えられた大きさや形の地球楕円体であるため,1976年の国際天文連盟(IAU)で採択された地球楕円体(赤道半径 a6378.140km,極半径b6356.755km,偏平率=(ab)/ (a1/298.257)や,1983年に国際測地学協会(IAG)で決められた測地基準系とは多少くい違っている。

 

地球表面の様子

[大陸と大洋底] 陸地と海底とを地球表面と考えたときの,地球表面の凹凸を大地形という。下図はこの大地形の高さ(標高)と深さ(水深)の頻度分布を示している。

 

この図では2つの極大が現れている。すなわち高さ01000mと,深さ40005000mのところである。これは,地球表面が2つの部分(大陸と大洋底)からなりたっていることを示し,その境界は10002000mのところにある極小付近となる。この極小の部分より浅いところは海底であっても大陸として扱われる。また,極小付近より深いところは大洋底という。大陸棚や大陸斜面はこのような立場からよばれた名称で,地球科学的に見れば大陸の一部である。大陸と大洋底では次のような相違点がある。

@ モホ面の深さやプレートの厚さが異なる。地殻は大陸では3050kmのところが多く,大洋底では6kmくらいのところが多い。

A 大陸では大気や水の作用によって地表の変化が著しいが,大洋底では変化はほとんどない。堆積速度は大洋底では平均1mm/1000年くらいであるが,大陸では場所によってこれよりはるかに速い。侵食作用も大陸では1mm/10100年の速さであり,大洋底ではほとんど侵食作用はない。

B 地殻をつくる岩石の生成年代の範囲は大陸のほうが広く,大洋底は古くても2億年である。大陸では40億年前までのいろいろな時代の岩石が地表に露出している。

C 花こう岩質岩石は大陸にしか存在しない。

D 放射性同位体の崩壊で発生する熱の量が異なる(大陸のほうが大きい)。

E カルクアルカリ岩質のマグマに由来する火山は大陸にしかない(安山岩など)。 

F  岩石のSr等の同位体比のとる値の範囲が異なる。たとえば87Sr/86Srの比は ,大洋底より大陸のほうが広範囲である(0.700.72)。

 

重 力

 地球上の物体には,地球との間にはたらく万有引力と地球の自転による遠心力とが作用する。この2つの力の合力を重力とよぶ。

 

 [万有引力] 質量m1m2,重心間の距離rの2つの物体間には,重心を結ぶ直線上に引き合う力がはたらき,その大きさは次の式で与えられる。

 

したがって,地球上にある質量mの物体は

の引力を受ける。

 

遠心力 遠心力は円運動の慣性力である。質量mの物体が半径r,角速度ωの円運動をする場合の遠心力は次の式で与えられる。

 

  fmrω2

地球上の物体では,

  rcosφ (φ緯度)

なので遠心力は

  fmRω2cosφ

となる。ここでωは地球自転の角速度である。それは

  ω=2π/(24×60×60) rad/s

   =7.27×10-5 rad/s〕

となる。したがって,遠心力が最大となる赤道上でも,1kgの物体につき3.37×10-2N〕にすぎない。極ではφ90°なので遠心力ははたらかない。

 

[重力加速度] 重力は,本来は力として定義されるべきものであるが,一般には単位質量にはたらく力,すなわち重力加速度としてとり扱われている。いま,地球を半径Rの球と考えると,緯度φにおける重力加速度g

で表される。

したがって,φ0°赤道で重力は最も小さく,φ90°の極で最も大きくなるが,その差は小さい(下図では遠心力の大きさを誇張してある)

 

 [標準重力] 実際の地球の形は回転楕円体に近い。この楕円体(地球楕円体)上での重力加速度は,緯度をφ,赤道における重力加速度をγeとすると,

  γ=γe(10.005279041sinφ0.0000232718sin4φ)

で表される。こうして得た重力加速度γを,標準重力(正規重力)という。その値は前述の式による値gと大きく違わない。重力加速度は,緯度や地殻構造の不均一その他によりわずかずつ異なるものの,地球上ではほぼ9.8/s2に近い値である。なお,重力加速度をいい表す場合,一般にはガル(cm/s2),ミリガル(10-3cm/s2),マイクロガル(10-6cm/s2)といった単位を用いることも多い。

ジオイド上の重力は,普通,標準重力とはやや異なっている。ジオイド上の重力と標準重力の差を重力異常という。重力の測定値からジオイド上の値を求めるための補正を重力補正といい,測定点の高さによる影響を補正するフリーエア補正(高度補正),測定点とジオイドの間にある物質の影響を補正するブーゲー補正,測定点の周囲の地形による影響を補正する地形補正がある。

 

地磁気

 地球に磁場があることは,数千年前から中国で知られていた。ヨーロッパでは,15世紀に磁気コンパスが航海用に用いられていたことがわかっている。方位を知るためには偏角を知る必要があり,E.ハレーは1701年に偏角磁気チャートを作成している。

 一方,伏角は16世紀中頃にはわかっていたらしい。W.ギルバートは,伏角が緯度によって異なることから,地球が大きな磁石になっていること,また,磁気コンパスを引く力が場所によって異なっていることを発見した。その後, 19世紀半ばには,F.ガウスによって初めて磁場の強さが観測され,地球磁場が地球内部でつくられていることを証明した。

 

[地磁気の原因] 地球内部起源の磁場は,核の内部を流れる電流によってつくられている。核は金属でできていて,電流は流れやすい。この電流の起電力は,外核の流体運動で,磁場の中で導体が動くと起電力が生じる。流体運動の原因は,外核の物質の密度差による浮力と地球自転による転向力と考えられている。

 

[世界の地磁気分布] 世界の偏角・伏角の分布は下図のようになる。

  I 2000年の偏角磁気図

(IGRF:International Geomagnetic Reference Field 2000年による)

 

図U 2000年の伏角磁気図

 伏角0のところを磁気赤道といい,低緯度や中緯度では等伏角線は緯度とほぼ平行になっている。

(IRGF 2000年による)                    

 

地球内部の温度

 地球深部の温度分布を推定する手がかりは次のようなものが考えられる。

@ 外核の温度は鉄の融点より高い。

A 深さ400kmおよび500kmにある地震波の速度の急増が,かんらん石のオリビン→スピネル転移に対応する(深さ400kmでは1400℃,500kmでは1530℃)。

B 上部マントルから噴出したゼノリス(捕獲岩)中の輝石の化学組成を用いて温度を決める(輝石温度計)。この方法は,輝石中のCa/CaMgの比が,温度が高くなるほど大きいことを利用したものである。

C 地球内部の電気伝導度の分布。

D 地殻・上部マントル中の放射性発熱量分布。

E 地殻熱流量。

 下図は,上のABなどの方法によって推定された温度分布である。

 

地殻熱流量

地下の温度は地表条件の支配を受けない深さ以深において,深さとともに増大している。そのために,わずかずつではあるが,地球内部から外に向かって流れ出す熱が観測される。この熱の流れを地殻熱流量という。単位面積・単位時間あたりの地殻熱流量をQとすると,QKdT/dhである。,Kは熱伝導率を表している。普通の岩石では,K1.3×10-44.2×10-4W/m・K0.0030.01cal/cmsK)という範囲の値をもっている。

 

地殻熱流量の測定は,地球の全域にわたって平均して行われているわけではなく,まったく観測されていない広範な地域もある。しかし,表は1000以上の測定の平均を示すものであり,現在までに測定された地殻熱流量の平均値は,大陸部でも海洋部でも6.9×10-2W/21.65×10-6cal/cm2s)である。なお,地殻熱流量を表す場合, 1×10-6cal/cm2s1HFUとする地殻熱流量単位を用いることも多い。これまで得られたデータから,地殻熱流量の分布の様子を整理してみると次のようになる。

地殻熱流量の平均値は,大陸部でも海洋部でも6.9×10-2W/21.65HFU)であり,ほとんど差がない。

A 大陸部の場合,新生代の造構造帯において熱流量が高く,盾状地では熱流量が低い。いいかえれば,−般に地質時代の若い地域ほど熱流量が高い。

B 海洋部の場合,海嶺地域で熱流量が高く,海溝地域で熱流量が低い。深海盆地域の値はほぼ平均的な値と等しい。

図Tは,全世界で5000以上もある地殻熱流量測定点から求めた地殻熱流値の頻度分布を示している。この図によると地殻熱流量の平均値は大陸でも海でもほとんど変わらないことがわかる。

図Uは,東太平洋海嶺(30°S90°W)からハワイを通って日本にいたる,太平洋を横断する大円に沿って,海底の深さと観測された熱流量を示している。

熱流量の変化は,この図でも図Tと同程度であることがわかる。海嶺付近では熱流量のばらつきが大きいが,これは堆積物が少ないため,海水が地殻内に入り,循環しているため,と考えられている。事実,海嶺付近では熱水が噴き出しているところが潜水船で確認されている。図Uでは、熱水の循環のため熱流量が見かけ上小さくなっている地域が,海嶺とハワイの中間地域まで広がっていることを示している。

 

参考

地下増温率の測定は,陸地では主に深井戸,坑道などの地下深く掘った場所で行われる。地下約30m以深では,外温の影響は1/1000以下と小さい。しかし,陸地ではどうしても外部の温度の影響を受けやすく,精密な測定には多くの困難がともなう。それに対して,深海底では外温(海水温)の変化がきわめて小さく,正確なデータの入手が期待できる。しかし,深海底での測定にもいくつかの難点があり,その測定のためには,耐圧・耐水装置が必要であり,かつ深海底での遠隔操作をしなければならない。(a)は海底での熱流量を測定する温度差計(東大型)である。

実際の原理は長い棒の中にサーミスタとよばれる温度計を棒の先端,中ほど,根元といった具合に何か所かにつけて,それぞれのサーミスタの温度差を抵抗値に変え,記録させる。(b)は,東大型海底温度計の構造を示してある。

地球の熱源

[地球形成時の重力エネルギー]  重力エネルギーは衝突によって熱エネルギーに変換される。このときの熱エネルギーの一部は宇宙へ放射されるが,残りは地球内部にとらえられ,地球を暖めるのに使われたと考えられる。また,地球が層構造をつくる際に,核の物質(主に鉄)が中心部に沈むとき,やはり重力エネルギーが熱エネルギーに変換される。これらのエネルギーが現在の地球内部の高温部をつくり,その熱がしだいに外側に運ばれている。

 

[放射性同位体による崩壊熱] 地球を構成する岩石中には,微量ながら放射性同位体が含まれている。その主なものはUThKで,これらが自然崩壊するときに熱を発生する。特に花こう岩や玄武岩は,超塩基性岩(かんらん岩など)にくらべて発熱量が多く,放射性同位体は地殻に濃集していることがわかる。

 放射性同位体は時間とともに減少していく。したがって過去の発熱量を知るためには,半減期を考慮して現在量から逆算する必要がある。地球全体に含まれる放射性同位体量が,コンドライトに含まれるものと同じであると仮定すると,現在では1年に9.5×1020J/年,45億年前では7.2×1021J/年となる。現在の発熱量は,実際の観測値から推定される地殻熱流量の総量とほぼ等しい。

 

[地球内部の熱収支] 地球の熱源は,地球形成時の熱と放射性同位体の崩壊熱である。一方,この熱は,地殻熱流量・火山活動・温泉・地熱・地震エネルギーなどとして放出される。表は,その収支を示してある。

 

表 地球内部の熱収支

 

 

参考文献・引用文

メイスン(松井義人訳)「地球科学概論」岩波書店    

岩波講座 地球科学1「地球」岩波書店

○友田好文・壇原毅 地球科学講座5「測地・地球物理」共立出版

○長谷川博一・大林辰蔵 現代の太陽系科学()「太陽系の起源と進化」東京大学出版会

東京天文台編「理科年表」丸善株式会社  

杉村新・中村保夫・井田喜明編「図説地球科学」岩波書店

 

 

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.