トップ新編化学I 改訂版>第3部 無機物質>第2章 金属元素の性質E 金属イオンの分離と確認

E 金属イオンの分離と確認

 

参考実験 金属イオンの定性分析

【目的】金属イオンの分離と確認を,実験を通して学習する。

【準備】0.5mol/L水溶液(AgPb2Cu2Fe3Ba2の硝酸塩)

 2mol/L塩酸,2mol/Lアンモニア水,2mol/L硝酸,0.1mol/L K2CrO4水溶液,

 0.1mol/LNa2CO3水溶液,FeSK3[Fe(CN)6]

操作と結果

 

 

参考 化学分析

物質中にどのような元素,イオン,あるいは化合物が含まれているかを調べることを定性分析といい,また,含まれている量や割合がいくらかを調べることを定量分析という。定性分析・定量分析を纏めて,広く化学分析という。

(1)   定性分析 定性分析の手段としては,化学反応を利用する方法を始めとして,各種の電気化学的,光学的,電磁気的方法が利用される。どの方法を利用するにしても,目的成分の含有程度は,多くの場合,大量・小量・微量・こん跡等,非常に漠然とした分類だが,推定可能なことが多い。
 無機物の定性分析は,水・酸・塩基等に溶かした上で,化学反応を利用して沈殿の生成,液色の変化,気体の発生等を観察して行う
(湿式法)。また,発光分光分析,蛍光]線分析等機器分析も有力な方法である(乾式法)有機物の場合もほぼ無機物と同様だが,機器的方法として赤外線吸収・紫外線吸収・質量分析等が有効な手段となる。

(2)   定量分析 物質中の各成分の量的関係を知ることがいかに重要なことであるかは,18世紀の後半,天秤が使われるようになって初めて化学の発達が軌道にのったのを見ても明らかなことである。
 定量分析を行うためには,最初にその物質の質量なり,容積なりを正確に量り,次に目的の成分だけを取り出して同様に量り,この
2つの測定から目的成分の含有割合を計算する。したがって,定量分析のポイントは目的成分をいかにして取り出し,いかなる手段を用いて量るかにある。
 古典的な化学分析は,もっぱら化学反応に頼っていたが,機器分析は化学反応のみならず,利用できるものは何でも使うという考え方である。化学分析を機器化することにより,それまでに比べ「より正確に,より迅速に,より微量まで」分析しうるばかりでなく,化学的方法では不可能あるいは困難だった成分のものが,極めて容易に分析できるようになった。機器分析は分析の自動化を可能とし,組成の変化を絶えず指示して,化学工場において工程の監視あるいは管理の役割を果たすに至っている。機器的な方法について主なものを列挙する。

@ 光吸収分析  A 炎光分析  B 電気分析

C ポーラログラフィ  D 放射化分析  E 発光分光分析

F 赤外線吸収分析  G 質量分析  H ガスクロマトグラフィー

I 高速液体クロマトグラフィー

 

錯イオン

 中心の金属イオンにいくつかの分子またはイオンが配位結合して,1つの原子集団のイオンとなったものを錯イオンという。これらの分子またはイオンを配位子といい,配位子の数を配位数という。錯イオンは水溶液中で,構成イオンや分子に殆ど解離せず,1つのイオンとして働く。

 錯イオンを形成する金属イオンは,主として遷移元素のイオンだが,マグネシウムやアルミニウム等も錯イオンをつくる。錯イオンの配位数は,金属元素の種類によって異なり,246等がある。

 錯イオンの構造は直線形,正方形,正四面体,正八面体等の形がある。また,配位子はNH3H2O等の分子か,CN-Cl-等の安定なイオンがよく知られている。どれも非共有電子対をもち,その電子対によって中心金属と配位結合で結びつく。配位子が水分子のときは,この水を特に配位水といい,その水和錯イオンをアクア錯イオンと呼んでいる。例えば,次のようなアクア錯イオンがある。

   [Ni(H2O)6]2[Co(H2O)6]2[Fe(H2O)6]2[Cu(H2O)4]2

 したがって,これら金属イオンの水溶液の色は,イオンそのものの色ではなく,水分子が配位された状態のアクア錯イオンの色である。

錯イオンの例

中心イオン

d電子数

配位数

立体構造

Cr3

3

6

正八面体

[Cr(NH3)6]3

Fe2

6

6

正八面体

[Fe(CN)6]4-

淡黄

Fe3

5

6

正八面体

[Fe(CN)6]3-

Co2

7

6

正八面体

[Co(NH3)6]2

Co3

6

6

正八面体

[Co(NH3)6]3

Ni2

8

6

正八面体

[Ni(NH3)6]2

青紫

Cu2

9

4

正方形

[Cu(NH3)4]2

深青

Ag

10

2

直線形

[Ag(NH3)2]

配位子1個が2箇所以上で金属原子と結合し,金属原子を含む環状構造になるとき,生成化合物をキレート化合物という。エチレンジアミン銅(U)錯塩[Cu{C2H4(NH2)2}2]2はこれにあたる。

 

キレート化合物は,金属イオンの分析に利用されるものがある。また,非電解質で水に溶けてもイオンにならないものも存在する。

錯塩,錯イオン,キレート化合物等を総称して錯体とよぶ。

 

参考 ウェルナーの配位説

 錯塩の結合は,19世紀末頃まで説明がつかなかったが,1893Wernerがコバルトアンミンを研究して,解明の糸口を開いた。これをWernerの配位説という。

 Wernerによれば,塩化コバルト(III)とアンモニアからなる配位化合物(高次化合物)をコバルトアンミンという。コバルトアンミンには,色の美しい化合物が多くあって,その色によって下表のように名がつけられていた。

 これらのコバルトアンミンの水溶液に硝酸銀溶液を加えると,式中のClの数は同じなのに,AgClの沈殿量は異なる。

CoCl3 ·6NH3    からは 3AgClが沈殿

CoCl3 ·5NH3·H2O からは 3AgClが沈殿

CoCl3 ·5NH3    からは 2AgClが沈殿

CoCl3 ·4NH3    からは 1AgClが沈殿

 Wernerは,1887Arrheniusが発表した電離説を採用してAgClとして沈殿するClは,Cl-となっているもので,AgClとして沈殿しないものはCoと結合していると考えた。この考え方を基に,[Co(NH3)6]Cl3[Co(NH3)5H2O]Cl3[Co(NH3)5Cl]Cl2[Co(NH3)4Cl2]Clで表される式を導いた。

 Wernerは,このようにして数個の分子や基(イオン)が中心原子と結合すること,即ち配位の考えを明らかにした。

コバルトアンミン は,上がトランス形,下がシス形

組 成 式

名称(名称の示す意味)

現在の式

CoCl36NH3

ルテオ塩(luteoは黄色)

[Co(NH3)6]Cl3

CoCl35NH3

赤紫

プルプレオ塩(purpureoは赤紫)

[CoCl(NH3)5]Cl2

CoCl34NH3*

プラセオ塩(praseo)

[CoCl2(NH3)4]Cl

CoCl34NH3*

ビオレオ塩(violeoは紫)

[CoCl2(NH3)4]Cl

CoCl35NH3H2O

ロゼオ塩(roseoは赤)

[Co(NH3)5(H2O)]Cl3

 

チタン

 チタニウムともいい,砂鉄に含まれる金属元素の1つ。鉄より軽く,アルミニウムより強く,白金と同程度腐食され難いので,航空機材や耐食材料,合金成分としても広く用いられる。また,化合物として顔料や染料等にも広く用いられている。

 

酸化チタン(IV)

 チタニアともいう。白色顔料として有用で,陶磁器原料や研磨剤,医薬品,化粧品,製紙等に用いられる。紫外線を吸収して励起し,その電子的な励起状態を利用した有機物の酸化分解や水の還元分解用の光触媒としても応用されている。

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.