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E 電気分解とファラデーの法則

 

電気分解

 電気分解では,電極表面で溶液との間に生じる電位差の為に強い電界が生じ,電極と溶液の間で正負のイオンや電子の授受が起こる。電極間の電位差を0から少しずつ上げていった場合,陽極では液中で最も電子を放出し易い物質または電極が酸化される。陰極では最も電子を受け取り易い物質が還元される。

 水溶液の電気分解では,水とイオンおよび電極の反応を考えればよい。陰極では,水と主に陽イオンを考えればよい。pH7.0における水の標準電極電位は−0.828Vであり,このpHにおいてこれより標準電極電位の高い陽イオンがあれば,一般にはこの陽イオンが還元される。また,水より標準電極電位が低い陽イオンがあれば,水自身が還元される。

   Zn22e ―→ Zn        E0=−0.7626V

   2H2O2e―→ 20HH2()  E0=−0.828V

   Al33e―→ Al      E0=−1.676V

したがって,AlAlより標準電極電位が低い金属イオンがあれば水が反応し,ZnZnより標準電極電位が高い金属イオンがあれば,イオンが反応する。

 陽極では,水,陰イオンの酸化を中心に考えればよい。この場合は,標準電極電位の低い反応(酸化反応だから反応式の逆反応について考える)の方が進み易いので,この値が水より小さいときは陰イオンが反応し,水より大きいときは水自身が反応すると考えてよい。また,電極の標準電極電位がより低い場合は,電極が酸化される。

 尚,[Fe(CN)6]3I3のように陰イオンであっても還元され易いもの,V3+Fe2+陽イオンであっても酸化され易いものがあることにも注意を要する。

 

40H2H2OO24e-

E00.401V

2 II 2()2e-

E00.5355V

AgAge-

E00.7991V

2Br-Br2()2e-

E01.0874V

2H2OO24H4e-

E01.229V

2SO42S2O822e-

E01.96V

 以上,電気分解の反応を標準電極電位の値を中心に説明してきたが,実際の反応では,濃度や温度,電気化学反応の過電圧等の影響により,必ずしも前述の通りにはならない。化学反応に例えれば,標準電極電位は標準状態の反応熱に似たものと考えることができ,活性化エネルギーや反応速度を考えると,反応熱が大きくても必ずしも反応するわけではないことが理解できるだろう。高校段階では,標準電極電位を1つの基準と考え,実際の指導では代表例について理解させれば十分と考えられる。

 

電気分解と電極

 電気分解は,電極表面に電位差を生じさせ,電気エネルギーによって化学反応を起こさせるもので,電力(エネルギー)を消費して化学ポテンシャルの高い物質を生産するという点で,電池と逆の変化に相当する。

 電気分解では,電源の負極と連結した電極を陰極といい,正極と連結した電極を陽極という。しかし,反応は,負極・陽極で酸化反応,正極・陰極で還元反応が起こり,電極の名称と反応の内容が一致せず,生徒には解り難いので,電極の名称については,十分な指導が必要である。

 電極の名称として,アノード,カソードを用いることもある。この場合には,上記の負極・陽極をアノード,正極・陰極をカソードという。つまり,酸化反応が起こる電極がアノード,還元反応が起こる電極がカソードである。

 

参考実験 電気分解

【目的】NaCl水溶液やCuSO4水溶液の電気分解を寒天ゲル中で行い,電気分解における物質移動を理解させる。

【準備】3%のNaClとフェノールフタレイン少量を含む寒天ゲル,0.1mol/LCuSO4水溶液の寒天ゲル,ステンレス棒2本,電源(乾電池),導線,ガラス板,OHP投影装置一式

【操作】(1) NaClの寒天ゲルを適当な大きさに切り,ガラス板上に載せてOHP投影台上に置く。電源と導線で結んだ2本のステンレス棒を寒天に差し込み,変化を見る。

(2) 0.1mol/L CuSO4寒天ゲルに(1)と同様の操作を行い,OHP投影台上で変化を見る。

【結果】(1)では,陰極付近が赤くなる。これは,OH生成によりpHが高くなり,フェノールフタレインが発色する為である。(2)では,陰極に銅が析出することが判る。

【参考】(1) 寒天ゲル中の塩の濃度は1%程度でもよい。

(2) どちらの寒天ゲルにも少量のKIとデンプンを加えておくと,ヨウ素デンプン反応により陽極にも変化が見られる。  2I―→ I22e

(3) ガラス板に+,−の記号を書いておくと,反応が見易くてよい。

 

ファラデーの法則

 この法則は,1833年ファラデーM.Faradayによって導かれた電気分解に関する法則であって,電気分解の法則とも呼ばれている。

同じ物質については,電気分解において析出(または溶解)する物質量は,通じた電気量に比例する。

 電気分解では電子1mol当たりの電気量9.6485×104C/molを単位に用い,これをファラデー定数という。この法則は,電気分解において変化する物質の量と電気量の関係が,電解質・電極の種類や量,溶液の温度や濃度に無関係であることを示している。

 

ファラデー

イギリスの化学者,物理学者。1791922日生,1867825日没。1813にデービーH.Davyの助手として王立研究所に入り,1833年に同研究所の化学教授となる。同年電気分解の法則を導く。他にも多くの業績がある。ベンゼンの発見(1825),ナフタレンスルホン酸の発見(1826)等は化学上のものだが,塩素の液化(1823),電磁誘導現象の発見(1831),電場・磁場の概念の確立(1837),真空放電におけるファラデー暗部の発見(1838),反磁性物質の発見(1845)等,物理学上での功績が大きい。

 

 

 








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