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E 金属と金属結合

 

金属結合

 ナトリウムを例に,金属結合を考えてみる。隣接するNa原子2個の間では,それぞれの3s軌道から2個の分子軌道がつくられる(一般に,分子軌道は用いられた原子軌道の数だけできる)。そして,それぞれの3s軌道の電子は対となって,エネルギー準位の低い分子軌道に入る。更にNa原子が増加して3個,4個,5個,となると,Na原子の3s軌道からつくられる分子軌道の数も345と増加する。そして,Na原子の3s軌道の電子は,エネルギー準位の低い分子軌道から順に2個ずつ配置される。

ナトリウムの単体1molでは,原子の3s軌道から6.02×1023個の分子軌道がつくられ,その数が多いので各エネルギー準位の間隔は極めて小さくなり,事実上連続した帯のようになる。このような帯をエネルギー帯やバンドとよんでいる。エネルギー帯を構成する全ての分子軌道は,全原子に行き渡っている。したがって,どの電子も特定の原子に属することはないので,金属結合は,全原子が全電子を共有する1種の共有結合だといえる。

 ナトリウムでは,3s軌道から構成されるエネルギー帯の半分が空なので,電圧をかけると電子は容易く移動し,電流が流れる。Mg3s軌道に2個の電子をもち,3s軌道から構成されるエネルギー帯に電子が充満するので,Naとは電気伝導の仕組みが異なる。この場合は,3p軌道から構成されるエネルギー帯の一部が3s軌道によるエネルギー帯と一部重なり,電子は空の3p軌道を使って移動でき,電気が流れる。

 

 

参考 半導体(金属・不導体・半導体)

 原子中の電子のもつエネルギーは不連続であり,価電子を上のエネルギー準位に上げるのにエネルギーが必要である。原子が多数集まって結晶をつくるときは,原子が互いに作用し合う為,多くのエネルギー準位が密に集まって,帯のように幅のあるエネルギー準位が形成される。これをエネルギー帯とよび,原子にいくつかのエネルギー準位がある様に,エネルギー帯にもいくつかの段階がある。エネルギー帯とエネルギー帯の間に,電子の存在することができないエネルギーの範囲があるとき,これを禁制帯とよんでいる。

 結晶中の電子は,エネルギーの低いエネルギー帯から順に配置され,価電子はエネルギーの大きい部分に配置される。価電子が入るエネルギー帯は,特に価電子帯とよばれている。そして,電子が全部エネルギー帯に配置されたとき,電子が入っていない部分との境界になるエネルギーを,フェルミエネルギーという。

 

 金属とは,(A)のように,フェルミエネルギーが価電子帯の中にくる結晶である。この場合,価電子帯のフェルミエネルギーより上の部分は空だから,結晶に電圧をかけると,フェルミエネルギーの値に近い電子から次々とこの空の部分に移動し,電流が流れる。これが,金属の電気伝導現象で,このとき電子が移動できるエネルギー帯を伝導帯とよんでいる。

 不導体は,図(B)のように,価電子帯に電子が充満した結晶である。伝導帯は,禁制帯を挟んだ直ぐ上のエネルギー帯になり,フェルミエネルギーはこの禁制帯にある。したがって,結晶に電圧をかけても,電子の運動エネルギーが増すだけで,電子は容易に伝導帯に移動することができず,電流は流れない。

 半導体は,図(C)のようなエネルギー帯をもち,その基本構造は不導体と同じである。ただ,価電子帯と伝導帯とのエネルギー差が不導体よりは小さいので,より少ないエネルギーで電子が価電子帯から伝導帯に移動することができ,ある程度電流が流れる。

 ケイ素やゲルマニウムにリンやヒ素を少量加えると,電気伝導率が大きくなる。これは,禁制帯の途中に不純物のエネルギー準位ができ,そこに存在する電子が比較的容易に伝導帯に移動できる為である。このような不純物半導体をn(negative)半導体という。一方,ホウ素やアルミニウムを少量加えると,同様に禁制帯にエネルギー準位ができ,ここに価電子帯から電子が容易に移動するので,価電子帯に電子の存在しない部分ができる。これを正孔といい,正孔が移動して電流を通し,電気伝導率が大きくなる。このような不純物半導体をp(positive)半導体という。

 

金属の結晶構造

 結晶格子における原子の配列を結晶構造という。

(1)  面心立方格子(面心立方構造,立方最密構造) 大きさの同じ球を,なるべく密に規則正しく並べる方法の1つに次図のような方法がある。第2段の球Bは,第1段の球Aがつくるくぼみに1つおきに入る。第3段の球Cは,球Bが埋めた球Aのくぼみのうち,残ったくぼみの真上にくるように配置される。第4段は,第1段の上にくる。このようにABCの順に次々と球を重ねた構造が面心立方格子である。単位格子を構成するのは,第1段のA1個,第2段のB6個,第3段のC6個,第4段のA1個の14個の粒子で,2個のAを結ぶ線が格子の対角線にあたる。BCの球は,それぞれ3個が格子の頂点,残りの3個が格子の面の中心に配置される。

 この構造では1個の球は12個の球と接し,球は空間の74%を占める。

面心立方格子の球のつまり方

 

(2)  六方最密構造 面心立法格子の第3段を第1段と同じ位置に配置したのが六方最密構造である。単位格子は,第1段および第3段の球A4個,第2段の球B1個で構成される。

 この構造も,球は他の12個の球と接し,球は空間の74%を占めて最密構造となる。

六方最密構造の球のつまり方

 

(3)  体心立方格子(体心立方構造) 次図の様に,同じ大きさの球をABの順に次々と積み重ねた構造が体心立方格子である。ABの球は接しているが,A同士やB同士の球は接していない。したがって隙間が多く,球は空間の68%を占める。1つの球は,8個の球と接し,次に近い球は6個である。

体心立方格子の球のつまり方

 

 

 

 








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