ホーム新編化学I>第3部 無機物質>第2章 金属元素の性質A アルカリ金属とその化合物

A アルカリ金属とその化合物

 

 

アルカリ金属の単体

アルカリ金属

 アルカリ金属は,最も典型的な金属元素である。どれも類似した性質をもち,

単体は軟らかい銀白色の金属で,空気中では酸化されやすく,石油中に蓄えられ

る。沸点・融点は原子量が大きくなるほど低く,このことは,原子の電子配置や

原子半径からも理解することができる。

 アルカリ金属の原子の電子配置は,すべて最外殻のs軌道に電子を1個もつ点

で共通性がある。このs電子は放出しやすいもので,これを放出すると1価の陽

イオンができる。したがって,イオン化エネルギーは一般に小さく,原子番号の

増大とともに一段と小さくなる。

 NaKとは,デービーが白金皿の中でNaOHKOHを融解して電気分解する方

法で初めてつくった(1807)Liは,スウェーデンのアルフェドソンがぺタル石

の成分元素として1817年に発見し,その単体はブンゼンが融解塩電解でとり出し

ている(1855)

 RbCsは,ブンゼンらにより,1861年および1860年に,鉱泉水のスペクトル

分析でそれぞれ見いだされているが,単体はどちらもそれらの塩の融解塩電解で

得られた。Frは,1939年,フランスのキュリー研究所のベレーによって発見さ

れた放射性元素である。

 アルカリ金属元素のイオンが水溶液中で還元されて単体となることは難しい

ので,どれもその塩の融解塩電解で単体を得ている。

 

ナトリウムの製造法

 Naの製造に用いられる原料は,一般にNaClNaOHである。

1ダウンス法  J.C.ダウンスの発明による。NaClを原料とする方法で,1930

 年頃よりこの方法が主に用いられるようになり,1950年には95%をこの方法

 で生産している。

  NaClの融点は801℃と高いため,NaCl4142%に融点降下剤としてCaCl2

5859%加え,約600℃で融解し電解する。この方法によると,電流効率は

7580%,消費電力はNa 1t当たり10400kWhで,製品の品位もよい。

2) カストナ一法  H.Y.カストナーが1890年に発明した方法で,NaOHを溶融

塩電解する。

  NaOH310320℃で融解し,NiまたはFeの陽極とCuの陰極を用いて電

 解する。電流効率は45%程度で,Na1t当たり14600kWhの電力を消費する。こ

の方法は現在ではほとんど中止され,ダウンス法が主流となっている。

 

炎色反応

 一般に,塩化物のような揮発性化合物中の金属原子が,加熱で励起されて発する

輝線スペクトルのうちで,ある波長の光が特に強いために生じる発色現象。定性分

析の補助法として重要である。普通,白金線の先端に検体をつけて無色炎に入れて

観察するが,検体が水溶液の場合には,ろ紙片に十分浸して直接無色炎に入れても

十分観察できる。

 花火の色は,炎色反応によるものである。花火の閃光は,マグネシウムまたは

アルミニウムの燃焼による。現代の花火は酸化剤として塩素酸カリウムのような

能率のよいものを用いているので,燃焼温度が高く,炎色反応も非常に鮮やかであ

るが,江戸時代の花火は酸化剤として硝石(硝酸カリウム)を用いており,燃焼温

度が低いため色はあまり鮮やかではなかったと想像される。

炎色反応のまとめ

元素

炎色

コバルトガラスを
通して見た炎色

Li

赤紫

 

Na

無色

 

K

赤紫

赤紫

 

Ca

橙赤

橙緑

 

Sr

深赤

 

Ba

青緑

 

Cu

青緑

淡青

 

 

 

 

参考 炎色反応

 アルカリ金属,アルカリ土類金属などの塩類を無色の炎の中に入れて強熱すると,

炎が各金属に特有の色を示す。これを炎色反応といい,炎色からそこに含まれる

金属元素の種類を簡便に識別・確認することができる。この色は,揮発性の金属原

子が励起されて発する輝線スペクトルのうちで,ある波長の光が特に強いために生

じるものである。

 原子の輝線スペクトルは,原子中の電子が熱エネルギーを受け取って,高いエネ

ルギー準位のものになり,そこから低い別のエネルギー準位に移るとき,そのエネ

ルギー差が光となって放出されることで生じる。

 

金属の反応性一覧 温度については,カッコ内に示したが,単位℃は省いた。

元素名(記号)

気体に対する反応性

液体に対する反応性

特性

亜鉛Zn

湿気;灰白被膜

空気(高温);燃焼,ZnO

ハロゲン(湿)ZnX2

無機酸酢酸塩基aq [Zn(OH)4]2H2;溶H2Zn2

電解金属99.999%,めっき,電池,合金

アルミニウムAl

空気;(室温)酸化被膜,(高温)燃焼

ハロゲン(高温);燃焼

(高温)H2

無機酸(除濃HNO3)H2

塩基aq[Al(OH)4]-H2

展延性,電気伝導性,軽合金

アンチモンSb

空気;()光沢失う,(加熱)Sb203

ハロゲン;SbX3

王水硝酸,熱濃硫酸;溶

有毒

カドミウムCd

空気;(室温)表面酸化,(高温)CdO

ハロゲン(高温)CdX2

硝酸,熱硫酸HCl;溶

強塩基aq;不溶

有毒

カリウムK

空気;(室温)酸化(高温)KO2

H2(高温)KH

ハロゲン;KX

水;発火,H2

エタノール;エトキシド+H2

炎色;赤紫

カルシウムCa

空気;(室温)表面酸化,(高温)CaO

H2(高温)CaH2

ハロゲン;CaX2

水;溶,H2

酸;激しく反応,H2

エタノール;エトキシド+H2

炎色;橙

Au

Cl2Br2(高温)AuX3

王水;[AuCl4]-

KCN(02存在);溶

展延性金属中最大

Ag

03Ag202

硝酸,熱硫酸;溶

電気伝性金属中。ハロゲン化物;写真

クロムCr

N2(高温);窒化物

ハロゲン(高温)CrX3

HCl,希硫酸;溶,H2

硝酸,王水;不動態

VI価化合物有毒,耐食性(めっき)

ゲルマニウムGe

空気;(高温)GeO2

Cl2GeCl4

 

熱硫酸,硝酸;溶Ge(IV)

強塩基aq;徐々に溶,[Ge(OH)6]2-

半導体

コバルトCo

空気;(400500)Co304

O2(1100)CoO

ハロゲン;CoX2

希硫酸,希硝酸,HCl;溶,Co2

塩基aq;不溶

強磁性,III価の安定錯化合物多数

水銀Hg

空気;(300400)HgO

Cl2Hg2Cl2

硝酸,濃硫酸王水;溶

室温で液体,有毒,多くの金属とアマルガムを生成

スズSn

空気;(高温)SnO2

ハロゲン;激しく反応,SnX4

酸;溶,Sn2+H2

濃硝酸;SnO2(沈殿)

強塩基aq;溶,[Sn(OH)4]2-

めっき,合金

ストロンチウムSr

空気;(室温)灰白被膜,(高温)SrOSr3N2

H2;水素化物

水,希酸;激しく反応,H2

濃硝酸,濃硫酸;徐々に溶

炎色;紅

セシウムCs

空気;酸化,(高温)CsO2

H2CsH

ハロゲン;CsX

水,酸,激しく反応,H2

エタノール;溶

炎色;青。低融点。最も陽性な元素

タングステンW

空気(300);粉末酸化,WO3

F2Cl2Br2(加熱)WX6

硝酸WO3