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D 窒素・リンとその化合物
窒素
►窒素(融点−209.86℃,沸点−195.8℃)
窒素N2は空気中に多量に含まれ,安定である。酸素など他の元素との親和力は
小さい。一方,アンモニウム塩や硝酸塩あるいは尿素など重要で多量に消費される
窒素化合物があるので,古くから「空中窒素の固定」は重要な課題であった。地殻
中にはチリ硝石NaNO3,硝石KNO3など硝酸塩の形で存在している。
硝酸塩は,化学的に活発であり,たとえば,黒色火薬は次式のように爆発する。
3C+S+2KNO3→K2S+3CO2+N2
近年,大気汚染あるいは光化学的大気汚染が問題になっているが,これは,エン
ジンの排ガス中の酸化窒素,あるいはそれが光エネルギーを受けて生じるオキシダ
ントが原因となっている。
►参考実験 液体窒素の性質
【目的】液体窒素を用いて,低温を必要とする実験を行う。
【準備】液体窒素用タンク,ビーカー,アルミ缶,ゴム管,線香,L字形ガラス管
つきゴム栓,大型試験管
【操作】(1) 液体窒素をビーカーに入れる。
(2) 草木の葉やゴム管を液体窒素につけたのち引き上げ,木づちでたたいてみる。
(3) 図のような装置を用いて,天然ガスを液体窒素で冷却し凝縮させる。試験管の
底に液体が少したまったら,元栓からコックをはずしてしめる。液体窒素のビー
カーを取り去り,Bに点火してみる。

(4) 液体窒素を入れたアルミ缶を持ち上げ,落ちてくる液体を,液体窒素で冷やし
た試験管に受ける。液体が少したまったら,液体窒素から試験管を取り出し,中に
点火した線香を入れる。
【結果】(1) 液体窒素はビーカー内で沸騰している。
(2) 粉々にこわれるが,室温に戻ると再び軟らかくなる。
(3) Aで天然ガスの流量を少な目にすると,Bでガスのにおいがせず,かつ試験管
の底に液体がたまり出す。AをはずしてBに点火すると,いったん凝縮した天然
ガスが再び蒸発し,液体がなくなるまで燃える。
(4) ビーカーに入れたときとは異なり,液体窒素をアルミ缶に入れて持ち上げると
アルミ缶の底から液体がぽたぽたと落ちる。これを,冷却した試験管に受け点火
した線香を入れると,線香は激しく燃える。(沸点O2−183°C,N2−196°C)
【考察】(4)では,アルミ缶の熱伝導がよいため,空気中の酸素が液体窒素で冷やさ
れ凝縮したのである。ただし,空気中の水分なども混じるため少し濁っている。これ
とは別に,下図のようにして,酸素だけを凝縮すると,純粋な液体酸素が得られる。
淡青色で,ネオジム磁石など強い磁石に引きつけられることもわかる。
他に, Y-Ba-Cu-O系の高温超伝導体とフェライト磁石を用いて,マイスナー効果
を示すことも可能である。

►窒素酸化物
窒素の酸化物には,一酸化二窒素N2O,一酸化窒素NO,三酸化二窒素N2O3,二
酸化窒素NO2(低温・液体では二量体の四酸化二窒素N2O4),五酸化二窒素N2O5な
どが知られている。
N2Oは麻酔性があり,これを吸入すると笑いの表情を起こすので笑気ともよぶ。
室温では安定である。300℃以上でN2とO2に分解し始め,酸化剤となる。
NOは空気中で酸化されやすく,NO2になる。高温では分解してN2,N2O,O2を
生じる。
N2O3は分解しやすく,気体ではNOとNO2の平衡混合物になると考えられる。
水溶液では亜硝酸となり青色となるが,さらに分解して硝酸とNOを生じる。
NO2は空気中では比較的安定であるが,高温ではNOとO2に分解する。水に溶
けると,亜硝酸と硝酸を生じる。酸化剤となる。
N2O5は室温でもNO2とO2にゆっくり分解する。水に溶けると硝酸になる。固
体中では,NO2+,NO3−になっている。強い酸化剤になる。
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窒素酸化物の性質 |
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酸化物 |
N2O |
NO |
N2O3 |
NO2 (N2O4) |
N2O5 |
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融点〔℃〕 |
−90.8 |
−163.6 |
−102 |
−9.3 |
30 |
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沸点〔℃〕 |
−88.5 |
−151.8 |
3.5分解
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21.3 |
分解45〜50 |
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色 |
無 |
無(気) |
赤褐(気) |
赤褐(気) |
無 |
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青(液,固) |
青(液,固) |
黄(液),無(固) |
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水溶性 |
微溶 |
不溶 |
溶,分解 |
溶,分解 |
溶,分解 |
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生成熱 |
−82.05(気) |
−90.25(気) |
−83.72(気) |
−33.18(NO2気) |
−11.3(気) |
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〔kJ/mol〕 |
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−50.3(液〉 |
−9.16(N204気) |
43.1(固) |
►硝酸
硝酸は,無色・揮発性の刺激臭の強い液体で,熱や光のために分解してNO2が
でき,これが硝酸中に溶けるので黄味を帯びる。特に,熱すると分解しやすく,
酸素を発生する。還元剤が共存しておれば室温でも容易に分解する。
4HNO3→4NO2+2H2O+O2
工業的には,硝酸は,アンモニアの酸化でNOをつくり,これがO2とH2Oによ
りHNO3に変わるので,結局,空気と水とから硝酸が得られることになり,化学工
業界で画期的な改革がなされた(1998年の生産高約64.36万t)。
オストワルト法の製法を詳しくみると,次のようである。
(1) 体積で約10%のアンモニアを含む空気を白金触媒(通常ロジウム10%を含む
合金で用いる)に通す。NO生成反応はきわめて速く完結する。
4NH3+5O2→4NO+6H2O+1169kJ
(2) 得られた生成物を冷やし,生成水分は希硝酸として分離する。さらに空気を加
えて酸化する。平衡的には,NOの生成する800℃の温度ではNO2はほとんど
存在しないが,100℃程度になればNO2が大部分になり,反応は完結する。
2NO+O2→2NO2+114kJ
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k=8/(atm2・s) (約100℃) |
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k=1/(atm2・s) (約600℃) |
(3) 生成したNO2は水に吸収されて硝酸となる。
3NO2+H2O
2HNO3+NO
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( |
aHNO3は硝酸の活量 |
) |
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aH20は水の活量 |
この平衡定数は硝酸濃度が70%近くになると急激に小さくなる。オストワル
ト法は操作圧力によって大別されるが,すべて1013hPaで行うと,得られる硝酸は
濃度45%までである。部分的に3000〜4000hPa,8000〜9000hPaに加圧したと
きは,濃度 60〜65%の硝酸が得られる。
(4) 硝酸は濃度70%に共沸点(121℃)があるので,オストワルト法で得られた希
硝酸から蒸留法でこれよりも高濃度の硝酸をつくることができない。それで,
濃硫酸や硝酸マグネ シウムなどの脱水剤を加えて蒸留し,98〜99%の濃硝酸を
製造している。
純硝酸は,吸湿性の強い発煙性液体で,融点は−42℃,沸点は83℃である。
比重は約1.5で重い。市販の濃硝酸は,通常70%(約16mol/l)または61%(約
13.5mol/lである。純硝酸にNO2を溶かしたものは発煙硝酸と呼ばれる。濃硝
酸は強酸でありまた強い酸化剤でもあるので多くの金属を溶かすが,Fe,Cr,
Ni,Alは不動態となり反応しない。
►参考実験 硝酸製造(オストワルト法)
【目的】オストワルト法による硝酸製造の様子をみせ,反応のしくみを理解させる。
【準備】吸収びん,気体乾燥管,ガラス管,反応管,ゴム栓,三角フラスコ,水流
ポンプ,濃アンモニア水,白金石綿(白金懐炉用),ソーダ石灰,リトマス紙
【操作】(1) 下図の装置をつくり,バーナーに点火後,水流ポンプを作動させる。

(2) Fの液にリトマス紙をつけて,赤変するのを確認する。(これは硝酸の確認反
応であり,褐色環試験を行えばなおよい)。
【解説】Aから入る空気は,NH3を伴って流れ,Bで乾燥されて,Cで加熱され,
Dに入る。DでNH3が酸化されてNOが生じる。NOはEへ送られる途中で冷や
され,空気中に余分にあるO2で酸化されてNO2になるので,Eの三角フラスコ
内はしだいに赤褐色になる。NO2は,次のFの水に入り,水と反応してHNO3に
なる。
実験11 アンモニアを発生させてみよう
►アンモニア
アンモニアは,きわめて水に溶けやすい。アンモニア水は濃度が大きくなるほど
密度が小さく,軽くなる特色がある。アンモニアは凝縮しやすく,0℃,4256hPa,
あるいは−33℃,1013hPaで凝縮する。液体アンモニアは蒸発熱が大きいため
(23.35kJ/mol),製氷などに利用されている。また,アンモニアは水と似た極性分
子であり,液体アンモニアは溶媒としても使われている。
市販のアンモニア水は約28%水溶液(比重0.90,14.76mol/l)である。
アンモニアの空気中の発火点は651℃で,酸素中では黄色の炎をあげて燃え,
窒素と水を生じる。
4NH3+3O2→2N2+6H2O
また,いろいろの金属と反応し,ナトリウムとはナトリウムアミドNH2Naを,
マグネシウムとは高温で窒化マグネシウムMg3N2を生じる。
2NH3+2Na→2NH2Na+H2
2NH3+3Mg→Mg3N2+3H2
ハロゲンと反応すると,窒素を遊離する。
8NH3+3Cl2→N2+6NH4Cl
酸とはアンモニウム塩をつくり,金属イオンとは錯イオンをつくることが多い。
アンモニアの存在は,17mg/m3でも臭気によって感知される。
アンモニアの合成法には,装置や触媒,反応温度の違いで様々な方法がある。
一般に30398hPaでの合成では,1tの触媒で1日あたり10〜20tのアンモニアが得
られ,その寿命期間中に合計2000〜10000tのアンモニアを合成することができる。
触媒はFeに2〜5%のAl203,0.5〜1%のK2Oとさらに石灰を加え,3〜6メッシュに
したものが使われている(1998年の生産高約