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A 元素の分布と水素・希ガス
自然界の元素の分布
水素
►水素
►水素
水素には,軽水素1H(プロチウム),重水素2H(ジュウテリウムD),三重水素
3H(トリチウムT)の3つの同位体が存在する。その質量存在比は,
1H:D:T=1:1.6×10−4:1.0×10−18
である。水素の同位体は,他の元素の同位体に比べて質量比が大きく,1H2とD2の
物理的性質にかなり差がある。(液体水素を−259.06℃(三重点)で分留すると,重水
素D2が得られる。
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1H2とD2の物理的性質 |
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H2 |
D2 |
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比重(空気=1) |
0.0659 |
− |
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沸点
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−252.7℃ |
−249.5℃ |
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三重点
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71.75hPa |
171.6hPa |
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−259.06℃ |
−254.4℃ |
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臨界温度
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−239.9℃ |
−232℃ |
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臨界圧
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13152hPa |
19150hPa |
水素は,H2分子として存在し,室温・常圧で最も軽い物質である。紫外線など
の光エネルギーを与えると解離して,反応性に富む原子状水素になる。
H2=2H-436kJ
水素は,室温では比較的安定な気体で,F2以外とは直接反応しない。光を当て
るとCl2とも反応する。高温にすると,ほとんどの元素と直接反応する。
水素と酸素との体積比2:1の混合気体を酸水素爆鳴気といい,点火すると爆発
的に化合する。この反応は高温(約2700℃)が得られるので,酸水素炎に用いられ
る。
2H2+O2=2H2O+572kJ
水素は,非金属性元素とは共有結合で分子性化合物をつくる。電気陰性度が小さ
い金属元素とは水素化物イオンH-となってイオン性化合物をつくる。
工業的には,水の電解,水性ガスの変性,また石油類のガス化などで製造されて
いる。
►水素化合物
化合物中の水素の酸化数は,相手元素が水素より陽性であるか,または陰性であ
るかにより,+1または−1である。それらのうち,水素の酸化数が−1の水素化
合物を水素化物と呼んでいるが,明確な区別はない。
►水素化物
次の3種類に区別される。
塩類似水素化物;水素の酸化数は−1で,イオン結合的な結合をしている。
LiH,NaH,MgH2,CaH2など,1族,2族の水素化物に多い。
金属類似水素化物;水素の酸化数は−1が多い。金属結合的な結合をしている。
FeH,NiH,NiH2,CuHなど,遷移元素の水素化物に多い。
揮発性水素化物;水素の酸化数は+1または−1で,共有結合的な結合をしてい
る。CH4など,非金属元素の水素化物に多い。ハロゲン化物や硫化物は酸性,
アンモニアは塩基性,メタンは中性を示す。
以上のように,同周期元素では,原子番号が大きくなるにつれて,イオン性から
分子性へと変化する。次にいくつか例を示す。
水素化リチウムLiH,水素化ナトリウムNaH ともに白〜灰色のイオン結晶。密
度は0.82および0.93g/cm3。LiHの融点は680℃,NaHは約800℃で分解する。
どれも水と激しく反応してH2を発生し,還元剤となる。
LiH+H2O→LiOH+H2
LiHをNaOHと加熱したものは,金属の錆び落としに用いられる。
水素化カルシウムCaH2 白色結晶〜灰色塊状。イオン性化合物であり,カーバ
イドに似て取り扱いは容易である。金属酸化物の還元剤として用いられる。水と反
応して,1gあたり1lのH2を発生し,かん詰めにしてポータブル水素源に使われてい
る。Na,P4O10にまさる乾燥剤である。
水素化ランタンニッケルLaNi5H6 黒色粉末。水素解離圧は室温で数千hPaにもな
る。室温での水素化および分解反応の速度がかなり大きく,可逆性に優れているので,
水素吸蔵合金として注目されている。
水素化アルミニウムリチウムLiAlH4 無色結晶。エーテル,テトラヒドロフラン
に可溶。溶液は有機化合物の還元に用いられる。
►ホスフィン
リンの水素化物,及びそのアルキル,アリル置換体の総称であるが,通常,単
にホスフィンといえばPH3をいう。
PH3は無色,悪臭のある気体で,有毒である。融点−133℃,沸点−87℃,密
度1.53g/l(標準状態)。リンと水素を直接反応させたり,黄リンをNaOH水溶液
やKOH水溶液と煮沸して得られる。空気中で燃焼して十酸化四リンP4O10と水を
生じ,酸素中では爆発的に反応する。アンモニアよりはるかに弱い塩基である。
►シラン
広義には水素化ケイ素SinH2n+2の総称であるが,狭義にはn=1のモノシラン
SiH4をさす。
SiH4は無色,刺激臭のある気体で,ケイ化マグネシウムMg2Siに硫酸を作用さ
せて得られる混合気体を分留してつくる。融点−185℃,沸点−111.8℃。空気中
で自然発火し,また塩素とも激しく反応する。赤熱管に通すとケイ素と水素に分解
し,固体のNaOHやKOHと反応して水素とケイ酸アルカリになる。
希ガス
►希ガスの発見
空気は水蒸気と二酸化炭素がわずかに含まれた,酸素21%と窒素79%の混
合気体であると長い間考えられていた。1785年,キャベンディシュは,空気中の
窒素を酸化して得た酸化窒素をアルカリ溶液に吸収させると,最初の空気の1/120
以下の吸収されない気体の泡が残ることを見いだした。
1894年,イギリスのレイリーは,空気をアンモニアと混合して,赤熱した銅の
上を通過させた。
4NH3+3O2→ 6H2O+2N2
これを硫酸中に通して過剰のアンモニアを除くと,純粋な窒素が得られると考え
た。ところが,アンモニアと空気からつくった窒素の密度のほうが,酸化窒素ある
いは硝酸アンモニウムを分解して得た純窒素よりもわずかに大きいことに気づき,
ラムゼーとともにキャベンディシュの実験をくり返し行い,分光器で調べて,次々
と希ガスを見いだした。
►希ガスの性質
存在量が少ないことから希ガスと呼ばれるが,化学的に不活性で化合物をつく
りにくいため「不活性ガス」といわれることもある。単原子分子として存在する。
分子間力も非常に小さいので,融点・沸点ともに極端に低い。不活性であることな
どの性質を利用して,気球用安全ガス,ガス入り電球,不活性ガス中での熔接,極
低温の研究などに用いられている。
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希ガスの物理的性質
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2He |
10Ne |
18Ar |
36Kr |
54Xe |
86Rn |
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原子量 |
4.002602 |
20.1797 |
39.948 |
83.80 |
131.29 |
〔222〕 |
|
密度(0℃)〔g/l 〕 |
0.17850 |
0.89990 |
1.7840 |
3.7330 |
5.887 |
9.730 |
|
密度(沸点) 〔g/ml〕 |
0.1250 |
1.207 |
1.393 |
2.41 |
3.52 |
4.4 |
|
融解熱〔kJ/mol〕 |
0.021 |
0.33 |
1.18 |
1.64 |
2.30 |
2.90 |
|
蒸発熱〔kJ/mol 〕 |
0.084 |
1.80 |
6.519 |
9.03 |
12.6 |
16.4 |
|
臨界温度〔K〕 |
5.20 |
44.40 |
150.7 |
209.4 |
289.73 |
377 |
|
臨異圧〔hPa〕 |
2270 |
27256 |
48646 |
55019 |
58394 |
75284 |
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イオン化エネルギー (第一)〔eV〕 |
24.587 |
21.564 |
15.760 |
13.999 |
12.130 |
10.748 |
|
eV(第二) |
54.416 |
40.962 |
27.629 |
24.359 |
21.21 |
― |
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原子半径〔nm〕 |
0.140 |
0.154 |
0.188 |
0.202 |
0.216 |
― |
希ガスは何ものとも安定な化合物をつくらないと長い間考えられてきたが,カナ
ダのバートレットが1962年,Xe+PtF6−の合成に成功して以来,アメリカのアルゴ
ンヌ国立研究所のクラッセンらによってXeF4の固体化合物が合成され,最近では
いくつかの希ガス化合物がつくられている。
(1) 放電管中に生じる希ガスの2原子イオン:He2+,Ar2+,HeNe+など。
(2) 包接化合物:ヒドロキノン3分子あたり1原子の希ガスがファンデルワールス
力で収まり,結晶をつくる。その他,Ar(H2O)6,Kr(H2O)6,Xe(H2O)6などの水和
物,Ar(C6H5OH)4,Kr(C6H5OH)4などのフェノール包接化合物もある。
(3) 六フッ化白金と分子状酸素から得られるイオン結晶O2+[PtF6]-にヒントを得
て,バートレットがXe+PtF6- (黄色)を合成した。
(4) F2とXeを400℃でニッケル管中に通すとXeF6の固体が得られる。
►ヘリウム
空気中のヘリウムの存在量は少ないが,宇宙における存在量は水素についで多い。
クレーブ石,フェルグソン石,モナズ石などの放射性元素を含む鉱物には,α崩壊
によって生じたヘリウムが含まれている。また,テキサスやカンザスの天然ガスに
は1%程度含まれており,これらはヘリウムの重要な供給源になっている。
ヘリウムの臨界温度は5.2Kであるが,オランダのオンネスは1908年,初めて
ヘリウムの液化に成功した。このときの液化温度は4.2Kできわめて低い温度であ
るので,超低温を得る材料としてヘリウムは使われている。
(1) 超伝導現象 1908年に初めて液体ヘリウムが得られてから,1K付近の極低温
で金属の電気抵抗がどのようになるかの研究が,オンネスをリーダーとするグル
ープによって始まった。次の表に示す金属は,それぞれの転移温度以下では電気
抵抗がほとんどなくなる。
電気抵抗がほとんど認められないこの状態では,その金属の中を流れる電流は
ほとんど減衰しない。このような現象を超伝導と呼んでいる。そして,超伝導体