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E 電気分解とファラデーの法則

 

 

水溶液の電気分解

電気分解

 電気分解では,電極表面で溶液との間に生じる電位差のために強い電界が生じ,

電極と溶液の間で正負のイオンや電子の授受が起こる。電極間の電位差を0から少

しずつ上げていった場合,陽極では液中で最も電子を放出しやすい物質または電極

が酸化される。陰極では最も電子を受け取りやすい物質が還元される。

 水溶液の電気分解では,水とイオンおよび電極の反応を考えればよい。陰極では,

水と主に陽イオンを考えればよい。pH7.0における水の標準電極電位は−0.8281V

あり,このpHにおいてこれより標準電極電位の高い陽イオンがあれば,一般にはこ

の陽イオンが還元される。また,水より標準電極電位が低い陽イオンがあれば,水自

身が還元される。

   Zn22eZn        E0=−0.7626V

   2H2O2e20HH2()  E0=−0.8281V

   Al33eAl       E0=−1.676V

したがって,AlAlより標準電極電位が低い金属イオンがあれば水が反応し,

ZnZnより標準電極電位が高い金属イオンがあれば,イオンが反応する。

 陽極では,水,陰イオンの酸化を中心に考えればよい。この場合は,標準電極電

位の低い反応(酸化反応だから,反応式の逆反応について考える)のほうが進みやす

いので,この値が水より小さいときは,陰イオンが反応し,水より大きいときは水

自身が反応すると考えてよい。また,電極の標準電極電位がより低い場合は,電極

が酸化される。

 なお,[Fe(CN)6]3I3のように陰イオンであっても還元されやすいもの,V3+

Fe2+のように陽イオンであっても酸化されやすいものがあることにも注意を要する。

 

40H2H2OO24e-

E00.401V

2 II 22e-

E00.5355V

AgAge-

E00.7991V

2Br-Br22e-

E01.0874V

2H2OO24H4e-

E01.229V

2SO42S2O822e-

E01.96V

 以上,電気分解の反応を標準電極電位の値を中心に説明してきたが,実際の反応

では,濃度や温度,電気化学反応の過電圧などの影響により,必ずしも前述の通り

にはならない。化学反応にたとえれば,標準電極電位は標準状態の反応熱に似たも

のと考えることができ,活性化エネルギーや反応速度を考えると,反応熱が大きく

ても必ずしも反応するわけではないことが理解できるだろう。高校段階では,標準

電極電位を1つの基準と考え,実際の指導では代表例について理解させれば充分と

考えられる。

 

電気分解と電極

 電気分解は,電極表面に電位差を生じさせ,電気エネルギーによって化学反応を

起こさせるもので,電力(エネルギー)を消費して化学ポテンシャルの高い物質を生

産するという点で,電池と逆の変化に相当する。

 電気分解では,電源の負極と連結した電極を陰極といい,正極と連結した電極を

陽極という。しかし,反応は,負極・陽極で酸化反応,正極・陰極で還元反応が起

こり,電極の名称と反応の内容が一致せず,生徒にはわかりにくいので,電極の名

称については,充分な指導が必要である。

 電極の名称として,アノード,カソードを用いることもある。この場合には,上

記の負極・陽極をアノード,正極・陰極をカソードという。つまり,酸化反応が起

こる電極がアノードであり,還元反応が起こる電極がカソードである。

 

 

参考実験 電気分解

【目的】NaCl水溶液やCuSO4水溶液の電気分解を寒天ゲル中で行い,電気分解に

 おける物質移動を理解させる。

【準備】3%のNaClと少量のフェノールフタレインを含む寒天ゲル,0.1mol/l

 CuSO4水溶液の寒天ゲル,ステンレス棒2本,電源(乾電池),導線,ガラス板,

 OHP投影装置一式

【操作】(1) NaClの寒天ゲルを適当な大きさに切り,ガラス板上にのせてOHP

 投影台上に置く。電源と導線で結んだ2本のステンレス棒を寒天にさしこみ,変

 化を見る。

 0.1mol/l CuSO4寒天ゲルに(1)と同様の操作を行い,OHP投影台上で変化を

 観察させる。

【結果】(1)では,陰極付近が赤くなる。これは,OH生成によりpHが高くなり,

 フェノールフタレインが発色するためである。

(2)では,陰極に銅が析出することがわかる。

【参考】(1) 寒天ゲル中の塩の濃度は,1%程度でもよい。

(2) どちらの寒天ゲルにも少量のKIとデンプンを加えておくと,ヨウ素デンプン

 反応により陽極にも変化が見られる。  2II22e

(3) ガラス板に+,−の記号をかいておくと,反応が見やすくてよい。

 

電気分解の量的関係

ファラデーの法則

 この法則は,1833年ファラデーM.Faradayによって導かれた電気分解に関する法則

であって,電気分解の法則とも呼ばれている。

同じ物質については,電気分解において析出(または溶解)する物質量は,通じた電

気量に比例する。

 電気分解では電子1molあたりの電気量9.6485×104C/molを単位に用い,これをファ

ラデー定数という。この法則は,電気分解において変化する物質の量と電気量の関係

が,電解質・電極の種類や量,溶液の温度や濃度に無関係であることを示している。

 

ファラデー

イギリスの化学者,物理学者。1791922日生,1867825日没。1813年,

デービーH.Davyの助手として王立研究所に入り,1833年に同研究所の化学教授となる。

同年電気分解の法則を導く。他にも多くの業績がある。ベンゼンの発見(1825),ナ

フタレンスルホン酸の発見(1826)などは化学上のものであるが,塩素の液化(1823)

電磁誘導現象の発見(1831),電場・磁場の概念の確立(1837),真空放電におけるフ

ァラデー暗部の発見(1838),反磁性物質の発見(1845)など,物理学の上での功績が

大きい。

 

 








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