トップMaster化学I>第4部 有機化合物>第3章 酸素を含む脂肪族化合物2節 アルデヒドとケトン

2節 アルデヒドとケトン

 

アルデヒドとケトン

 カルボニル基に,水素原子と炭化水素基が結合したものをアルデヒド,炭化水素基2個が結合したものをケトンと総称する。したがって,-CHOをアルデヒド基(ホルミル基)をケトン基ともいう。炭化水素基が脂肪族の時はそれぞれ脂肪族アルデヒド,脂肪族ケトンといい,芳香族の時はそれぞれ芳香族アルデヒド,芳香族ケトンという。

 カルボニル基C=Oには,C-O-の共鳴構造が考えられ,の様に分極していると考えられる。したがって,求核試薬とは炭素原子が反応し,求電子試薬とは酸素原子が反応すると考えられる。

 水素による還元では,アルデヒドは第一級アルコール,ケトンは第二級アルコールになる。

   RCHOH2 ―→ RCH2OH   RRCOH2 ―→ RRCHOH

 アルデヒド基は容易に酸化されるので還元剤になる(銀鏡反応やフェーリング液の還元反応)が,ケトン基は還元性を示さない。

   RCHO(O) ―→ RCOOH

 アルデヒドはシッフの試薬で赤紫色の呈色を示すが,ケトンは呈色反応を示さない。

 

A アルデヒド

アルデヒドの性質

 天然には植物精油中にC8H17CHOC9H19CHO等の高級アルデヒドとして存在する。また芳香族アルデヒドもベンズアルデヒドやサリチルアルデヒド,バニリンC6H3(CHO)(OCH3)(OH)等が植物精油中に存在する。

低級アルデヒドは,水溶性で刺激臭をもつが,C6C9のアルデヒドは芳香のある気体で香料に用いられる。芳香族アルデヒドには芳香のあるものが多い。

アルデヒドの性質

名   称

示 性 式

融点()

沸点()

水溶性

ホルムアルデヒド

HCHO

92

19.3

アセトアルデヒド

CH3CHO

123.5

20.2

プロピオンアルデヒド

CH3CH2CHO

80.05

47.93

ブチルアルデヒド

CH3(CH2)2CHO

99

74.774.9

グリオキサール

CHO-CHO

15

51(1035hpa)

ベンズアルデヒド

C6H5CHO

26

178

サリチルアルデヒド

o-C6H5(OH)CHO

0.91.0

195

 

銀鏡反応(silver mirror reaction)

還元性有機物の検出反応の1つ。試料を清浄なガラス器に取り,アンモニア性硝酸銀溶液を加えて温めると,Agが還元されてAgとなり,これがガラス器壁に付着して鏡の様になるので銀鏡反応といわれる。ジュワー瓶や鏡の製造はこの反応に基づいている。
   R-CHO2[Ag(NH3)2]OH ―→ 2AgRCOONH4H2O3NH3
 

尚,アンモニア性硝酸銀溶液や,酸化銀を濃アンモニア水に溶かした溶液,銀鏡反応させた溶液等を長時間放置すると,雷銀(窒化銀,一窒化三銀)Ag3Nや銀アミドAgNH2,雷酸銀AgOCN等の爆発性物質が生じる場合がある。これらの化合物は全て不安定であり,少しの摩擦や軽い衝撃,接触でも激しく爆発するので,アンモニア性硝酸銀溶液は,銀鏡反応の実験を行う毎に調製する必要があり,保存しない。

 また,銀鏡反応の実験後の溶液は速やかに回収し,塩化ナトリウムNaCl水溶液(食塩水)や塩酸HCl,硝酸HNO3等を加え,塩化銀AgClとして沈殿させるか,溶液を中性〜酸性雰囲気にしておく。その後,銀廃液溜めの沈殿物をろ過し,ろ液は重金属類を含まない事を確認後,中和して排出し,集めた沈殿物は廃棄物業者に処理してもらう。銀イオンの水溶液は,銀イオン濃度を1 ppm以下にすれば,そのまま下水として流してもよい。


フェーリング液(Fehlings solution)

アルデヒドや還元糖糖の検出に使われる試薬で,1848年,ドイツの科学者H.Fehling(18121885)により考案された。通常はA(CuSO4溶液)B(KNaC2H2(OH)2(COO)2NaOHの溶液)に分けて保存され,使用直前に混ぜて使われる。

フェーリング液は深青色で,これに糖を加えて煮沸すると,Cu2が還元されてCu2Oの赤色沈殿が生じる。反応は化学量論的ではないが,ヘキソース1分子は銅5原子を還元する。
   R-CHO2Cu25OH―→ R-COOCu2O3H2O
 尚,ベンズアルデヒドは,強塩基性の時はカニッツァーロCannizzaro反応によってアルコールとカルボン酸になり易く,フェーリング液とは反応し難い。
   2R-CHONaOH ―→ R-CH2OHR-COONa

ホルムアルデヒド(formaldehyde)

 メタナール,メチルアルデヒドともいう。有機物の不完全燃焼で生じ,煙や炎中に含まれ,大気中にも微量存在する。実験室では,メタノール蒸気の酸化や,塩化メチレンの加水分解で得られる。融点92℃,沸点19.3℃の刺激性のある無色の可燃性気体で,還元力が強く,酸化されるとギ酸になる。
   
HCHO(O) ―→ HCOOH

フェノール樹脂や尿素樹脂等の原料の他,消毒剤や防腐剤等の医薬品に,ホルマリンとして用いられる。

ホルムアルデヒドの37水溶液をホルマリンという。重合を避ける為,またホルムアルデヒドの溶解性を高める為1015のメタノールが含まれている。最近では60のものもつくられている。

アセトアルデヒド(acetaldehyde)

エタナール,エチルアルデヒドともいう。工業的には,以前はHgSO4を触媒にしてアセチレンと水の付加反応で合成されていたが,現在ではエチレンの直接接触酸化で合成している。

C2H4PdCl2(触媒)H2O ―→ CH3CHOPd2HCl
   2CuCl2Pd ―→ Cu2Cl2PdCl2  2Cu2Cl24HClO2 ―→ 4CuCl22H2O
   (全体)2C2H4O2 ―→ 2CH3CHO (ヘキストワッカー法)
 実験室では,エタノールの酸化により得られる。
   C2H5OH(O) ―→ CH3CHOH2O
 融点−123.5℃,沸点20.2℃,密度0.80g/cm3の揮発性のある無色の液体で,水やエタノール,ジエチルエーテルと任意の割合に溶ける。還元性を示す。酢酸及びその誘導体の原料や,防腐剤,カビ止め剤,写真現像用,溶剤,還元剤等に用いられる。

B ケトン

ケトン(ketone)

低位の脂肪族ケトンは特有の臭いをもつ液体で,水やアルコール,エーテル等に溶ける。炭素原子数が増えると水に溶け難くなり,固体となる。
 酸化剤に対してはアルデヒドよりも安定だが,硝酸等で強く酸化するとカルボン酸になる。

   RCOCH2R3(O) ―→ RCOOHRCOOH

メチルケトンRCOCH3は,ヨードホルム反応を示し,酸化される。

   RCOCH34NaOH3I2 ―→ RCOONaCHI33NaI3H2O

カルボニル基の隣の水素原子は活性で,ハロゲン等で置換される。

   RCOCH2RBr2 ―→ RCOCHBrRHBr

 

ケトンの性質

名   称

示 性 式

融点()

沸点()

水溶性

アセトン

CH3COCH3

94.82

56.3

エチルメチルケトン(2-ブタノン)

CH3COC2H5

87.3

79.53

メチルプロピルケトン(2-ペンタノン)

CH3COC3H7

77.75

101.92101.94

ジエチルケトン (3-ペンタノン)

C2H5COC2H5

39.8

101.70

シクロヘキサノン

(CH2)5CO

32

156

8

アセトフェノン

C6H5COCH3

19.65

202

ベンゾフェノン

C6H5COC6H5

4848.5

305.9

 

アセトン(acetone)

 ジメチルケトン,プロパノンともいう。最も簡単なケトンで,古くは酢酸カルシウムの乾留によって得られた。融点−94.82,沸点56.3,密度0.7908g/cm3,揮発性でエーテル臭をもつ無色の液体で,水やエタノール,ジエチルエーテルによく溶ける。溶剤や化学工業原料に利用される。引火爆発性があり,火気に注意する。

 

ヨードホルム反応(iodoform reaction)

 アセチル基-COCH3および酸化されてアセチル基を生じるCH3CH(OH)-等に陽性の反応で,極めて鋭敏であり,これらの基をもつ化合物の確認に用いられる。ヨウ素と水酸化ナトリウムを加えて熱すると,酸化反応によりCHI 3の黄色沈殿が生じる。

   R-CO-CH34OH-3I2 ―→ R-COO-3I-3H2OCHI3

   R-CH(OH)-CH36OH-4I2 ―→ RCOO-5I-5H2OCHI3

 一般に-CO-基がある方が反応し易く,水に不溶性のものは反応し難い。ヨードホルム反応は,エタノール及びアセトンの検出に用いられる。エタノールでも反応するのは,反応条件でアセトアルデヒドになる為である。

 

 

 








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