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第3節 中和反応
A 酸・塩基の中和 ►中和と水 今日,中和反応に伴う水の生成は,中和の本質的内容と理解されている。しかし,酸塩基の研究の初期(18世紀末〜19世紀初)には,中和は「酸+塩基 ―→
塩」という型で理解されていた。このような考え方は,水の出入りに関心が払われる事なく,電離の概念も無かった時代の研究としては当然でもあった。 中和における水の生成に初めて注目したのは,フランスの化学者P.L.デュロン(デュロン-プティの法則で有名,1785〜1838年)であり,酸化カルシウムの様な酸化物と酸が反応すると塩と共に水が生じる事に注目し,酸と塩基の反応の際に水が生じる事を指摘した。 B 中和滴定 ►中和滴定(neutralization titration) 酸塩基滴定(acid-base titration)ともいい,酸,塩基の中和反応に基づく滴定で,酸の試料を塩基(アルカリ)標準液で滴定するアルカリ滴定,塩基(アルカリ)の試料を酸標準液で滴定する酸滴定があるが,普通,両者をまとめて中和滴定とよぶ。 中和反応は速やかに進む反応であり,当量点は酸塩基指示薬を用いて容易に,鋭敏に知る事ができるので,広く用いられている。 C 滴定曲線 ►中和滴定曲線 中和滴定の進行に従って,pH変化を示した曲線を中和滴定曲線という。 下図に,(1)強酸と強塩基,(2)強酸と弱塩基,(3)弱酸と強塩基,(4)弱酸と弱塩基,の滴定曲線をそれぞれ示した。同時に,よく使われる指示薬の変色域も示した。
(4)以外は当量点で明確なpHジャンプ(pH飛躍)が見られ,適当な指示薬で当量点を決定できる。尚,多価の弱酸や弱塩基では,中和点迄の中間点に小さなpHジャンプが見られる事がある。 また,炭酸ナトリウム等の塩も強酸で中和滴定される。この中和滴定では, 2段階で中和反応が起こる。 CO32−+H+ ―→ HCO3− HCO3−+H+ ―→ H2CO3 尚,特殊な環境を除き,H2CO3は水中でのみ存在し得る。 D 塩の性質 ►塩の生成 中和反応の観点から,正塩(中性塩),酸性塩(水素塩),塩基性塩に分類される。正塩は,酸と塩基が過不足なく反応した組成の塩である。酸性塩は,多価の酸が中和反応した時に生じる塩で,まだ金属原子と置換できる水素原子が残った組成をもっている。塩基性塩は,多価の塩基が中和反応した時に生じる塩で,まだ酸基と置換できるOH原子団が残った組成をもっている。 HCl+NaOH ―→ NaCl(正塩)+H2O H2SO4+NaOH ―→ NaHSO4(酸性塩)+H20 Mg(OH) 2+HCl ―→ MgCl(OH) (塩基性塩)+H20 陽イオンも陰イオンもそれぞれ1種類の塩を単純塩といい,単純塩が2種類以上含まれる形の塩を複塩という。 (単純塩) NaCI,K2CO3,Al2(SO4)3 (複塩) AIK(SO4)2,KNaCO3 その他,結晶に結晶水(水和水)を含む含水塩や,結晶水を含まない無水塩,イオンが錯イオンである錯塩等がある。 ►塩の加水分解(hydrolysis) 強酸と弱塩基からなる塩や弱酸と強塩基からなる塩が,水溶液中で水と反応し,他のイオンまたは分子に変わる事。溶液中にH+またはOH−を生じ,溶液は酸性または塩基性を示す。 エステルやアミド,酸無水物,ペプチド等の有機化合物の加水分解とは意味が異なるので注意する。 |
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