トップMaster化学I>第2部 物質の変化>第1章 化学反応と熱>1節 熱化学方程式

1節 熱化学方程式

 

A 熱量と比熱

熱量(heat quantity)

熱を数量的に表した,測定される量を熱量という。単位は力学的な仕事の単位と同じジュール〔J〕を用いるが,カロリー〔cal〕を用いることもある。

1calは常圧下で温度14.5℃の水1gを温度15.5℃まで1Kだけ上昇させるのに必要な熱量だが,単に水1g1K上昇させるのに必要な熱量として使用させることが多い。

 

比熱(specific heat)

単位質量あたりの物質の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のことで,より正しく比熱容量(specific heat capacity)という。

教科書では,絶対温度を定義せず,単位温度はセルシウス温度で通している。

 

B 反応熱

反応熱(heat of reaction)・発熱反応(exothermic reaction)・吸熱反応(endothermic reaction)

化学反応に伴って物質系に出入りする熱量を反応熱という。反応が等温等圧で行われた場合は定圧反応熱,等温定容で行われた場合は定容反応熱という。前者は反応物と生成物とのエンタルピー変化で,一般にDHの記号で表され,後者は反応物と生成物との内部エネルギー変化で,一般にDEの記号で表される。

通常は,常圧下で測られたエンタルピー変化DHを,単に反応熱と呼ぶ。反応で熱が吸収されると,生成物の方がエンタルピーが大きくなるのでDHは正になり,吸熱反応と呼ばれる。一方,逆に反応で熱が放出されると,生成物の方がエンタルピーが小さくなるのでDHは負になり,発熱反応と呼ばれる。反応熱は,反応の種類によって燃焼熱・中和熱・溶解熱等と呼ばれる。

C 熱化学方程式

熱化学方程式(熱化学反応式thermochemical equation)

化学反応に伴う反応熱の出入りを付記した化学方程式(化学反応式)をいう。例えば,塩素爆鳴気の反応は,熱化学方程式は次式で表される。

H2()Cl2()2HCl()185kJ

この式で,185kJは,水素と塩素各1molが反応して塩化水素2molを生じた時の反応熱であり,反応熱の符号が+だから発熱反応になる。符号がもし−なら吸熱反応となる。より一般的には,次式で表される。

H2()Cl2()  2HCl()   DH=−185kJ

ここで,エンタルピー変化DHの符号が熱化学方程式の符号と逆であることに注意する。

熱化学方程式では,一般に物質をmol単位で示す。また,物質の状態を示す為に,化学式に状態を示す記号を付記する。気体では()または(g),液体では()または(),固体では()または(s),希薄水溶液では(aq)等とする。

 

D いろいろな反応熱

燃焼熱(heat of combustion)

物質が完全に燃焼する場合に発生する熱量で,普通,物質1gまたは1molについての熱量で表される。定圧下と定容下での値は異なるが,化学上の目的には,定容下における燃焼熱をボンベ熱量計で求めた後,定圧下の値を計算で出すことが多い。

 

有機化合物の燃焼熱kJ/mol25℃,105Paの値。

 

生成(heat of formation)

物質1molを,その成分元素の単体(25°C105Paで最も安定な同素体)から作る場合の反応熱を,特に生成熱という。例えば,二酸化炭素の生成熱は,次に示した反応の反応熱に等しい。

C(黒鉛)O2()CO2()394kJ

生成熱という概念の最大の利点は,非常に沢山ある熱化学の資料を,化合物の生成熱という形で整理できる点にある。任意の反応の反応熱は,その反応に関与する物質の生成熱からヘスの法則に基づき計算によって簡単に求めることができる。即ち,生成物の生成熱の総和と反応物の生成熱の総和との差が,反応熱に等しくなる。例えば,COの燃焼反応の反応熱は次式で求められる。

2COO22CO2Q kJ

Q 2×(CO2の生成熱) {2×(COの生成熱)(O2の生成熱)}

 

溶解(heat of dessolution)

物質が溶媒中に溶ける時に発生または吸収される熱量で,一般に発熱する場合が多いが,硝酸カリウム,硝酸アンモニウム等の場合には熱を吸収する。これらの塩では,水和エネルギーよりも結晶の凝集エネルギーの方が大きく,吸熱反応になると考えられる。

溶解熱は,結晶中の原子・分子・イオン等の間の結合の切断と,水和等の溶媒和の結果生じる熱なので,広義の反応熱に属するが,もっと限定すれば混合熱の一種である。溶解に際して,無水物が酸や塩基になる時の発熱は,化学変化に伴う熱であり,水和水 (結晶水)が配位して水和物をつくる時の発熱も単純な溶解熱とはいえないが,普通これらも溶解熱として扱う。

溶解熱は,普通溶質1molを多量の溶媒に溶かして希薄溶液をつくる時の値で示す。溶媒が少ない時は,希釈熱の分だけ差が生じる。

 

中和熱(heat of neutralization)

酸と塩基の中和反応に伴い,水1molが生じる時の反応熱を中和熱という。即ち,HOHの各1molからH2O 1molが生じる時の反応熱である。25℃で希薄な強酸・強塩基の中和熱は,酸・塩基の種類によらず一定で,約56.5kJである。この理由として,希薄溶液では強酸・強塩基は完全電離していて中和反応は,

HOH ―→ H2O

となり,他のイオンの存在に一応無関係であることが考えられる。

 濃厚溶液や,弱酸または弱塩基の中和熱では,希釈熱や電離に要する反応熱が関係し,上記の様なことは成り立たない。

 

希薄溶液の中和熱(25°C)    単位はkJ/mol

塩 基

中和熱

塩 基

中和熱

HCl

NaOH

56.40±0.21

安息香酸

NaOH

55.30±0.06

H2SO4

NaOH

56.57±0.25

フェノール

NaOH

33.05±0.25

ギ 酸

NaOH

57.03±0.17

HCl

アニリン

28.20±0.38

酢 酸

NaOH

56.36±0.06

HCl

ピリジン

23.85±1.26

 

濃度と中和熱kJ/mol

HClNaOHを等濃度で中和(25°C)

濃 度

mol/kg

中和熱

濃 度

mol/kg

中和熱

16.390

86.32

8.993

69.56

13.689

79.94

6.987

65.73

12.519

77.30

4.887

62.22

10.988

73.87

3.014

59.62

 

蒸発熱(heat of vaporization)

一定温度下で液相と気相が熱平衡状態にある時,液体が温度を変えること無しに蒸発するのに必要な熱量であり,蒸発の潜熱,気化熱ともいう。

逆に気体が液体に変わる時放出する熱量を凝縮熱(heat of condensation)といい,その大きさは蒸発熱に等しい。

 

融解(heat of fusion)

固体を融解させるのに要する熱量であり,各物質に固有である。融解の潜熱ともいい,凝固熱(heat of freezing)の符号を変えたものに等しい。

融点は凝固点と一致する。

 

 

 








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