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3節 イオンからできた物質

 

 

A イオン

電解質(electrolyte)

水等の溶媒に溶解すると,電離して陽イオンと陰イオンを生じ,電気伝導性を示す物質を電解質という。電離の大小によって,強電解質と弱電解質に分類される。電離の程度は溶媒によっても異なり,電離して生じたイオンは,その周りに溶媒分子を引き付けてエネルギー的に安定な状態にある。

 

非電解質(nonelectrolyte)

極性溶媒に溶かしてもイオンに電離しない物質を非電解質という。イオンに電離しているかどうかは,その溶媒が電気分解を受けるようになるかどうかで判る。

 

イオン(ion)

電荷をもつ原子または原子団のことであり,正の電荷を有するものをカチオン,負の電荷を有するものをアニオンという。イオンからなる固体はイオン結晶と呼ばれる。

 

B イオンの生成

原子やイオンのモデル

原子核と電子の間には,距離の2乗に反比例する静電気力が働いている。これは,太陽と惑星の間に働く引力の関係と同じである。したがって,惑星と同様に電子も原子核の周りを回っていると考えられる。古典力学の考え方では,電子がスペクトルに示す光を放射するとエネルギーを失って速度が遅くなり,やがて電子と原子核が結合して安定な原子は存在できなくなる。この矛盾を解決する為,ボーアは次の様に考えた。例えば,水素原子は,陽子1個と電子1個からできているが,この電子はある特別の軌道上しか運行せず,それ以外の軌道はとれないと考えた。原子核に最も近い軌道の半径をrとすると,その外側にある軌道の半径は,22r32 r42 rであるとした。電子はこれらの軌道間を移り換わり,そのとき固有のスペクトルを示すと考え,スペクトルを定量的に説明した。彼が計算で求めた水素のスペクトルの波長は,実測値と完全に一致した。この考え方は,その後の量子力学の発達によって更に発展した。

C イオン式とイオン結合

イオン式(ion formula)

イオンを表す化学式をイオン式といい,Na+SO42-の様に,元素記号の右上に各イオンの価数と正負の符号を添えて表す。

 

イオンの価数(charge number)

イオンがもつ電荷の大きさを,イオンが生じる際にやり取りする電子の数で表した数をイオンの価数という。

 

イオン化エネルギー(ionization energy)

原子や分子,イオンから電子1個を取り去るのに必要なエネルギーをイオン化エネルギーまたはイオン化ポテンシャルという。原子から電子を1個取り去る為のエネルギーを第一イオン化エネルギー,次に1価の陽イオンからもう1個電子を取り去る為のエネルギーを第二イオン化エネルギーとよぶ。

イオン化エネルギーは原子や分子,イオンの種類によって異なり,それらに対して電子軌道のエネルギーの値を知る上で重要である。

 

イオン結合(ionic bond)

電荷Q1C〕をもつ陽イオンと電荷Q2C〕をもつ陰イオン間の引力は,イオン間距離をrとすると,クーロン力Q1Q2/r2またはポテンシャル(エネルギー)Q1Q2/rに比例する。また,イオンが相互に接近し過ぎると,原子核間の反発力が目立ってくる。この反発ポテンシャルは,ber /aの形で表される(abは定数)。したがって,引力と反発力の和を計算すると,イオン結合のポテンシャルエネルギーが求められる。

気体状のNaCl分子についてポテンシャルエネルギーを計算すると,下図のようになる。図の曲線の極小点が,安定な核間距離を表す。共有結合によるポテンシャルエネルギーも同時に示したが,その値はイオン結合より大きく,イオン結合の方が安定である事が判る。

NaCl分子のポテンシャルエネルギー(ムーア著,新物理学より)

 

D イオン結晶

イオン結晶のイオンのつまり方

イオン結晶では,陽イオンと陰イオンが規則的に配列され,クーロン力で結合している。各イオンは,反対電荷をもつイオンに囲まれている。この取り囲むイオンの数を配位数といい,主として陽イオンと陰イオンの半径比によって決まり,結晶型も変わってくる。

(1) NaCl型結晶  NaClの結晶は, Cl-がつくる面心立方格子の八面体間隙にNaが配置された構造をしており,それぞれのイオンは異なるイオン6個に取り囲まれ,配位数は6である。この構造でCl-が互いに密着しているとするとき,Cl-がつくる八面体間隙よりNaが小さいときは,Naは全てのCl-と密着できず,不安定となる。したがって,安定な結晶をつくるには,Cl-に対してNaの半径が一定以上の大きさでなければならない。

NaCl型結晶の陽イオン半径をr,陰イオン半径をrとして,r/ r -限界値を計算すると,三平方の定理より,

(2 r -)2(rr -)2×2

2 r -=√2(rr -)

したがって, r/ r -=√210.414

つまり,r/ r -0.414ならば,NaCl型結晶は安定となる。

(2) セン亜鉛鉱ZnS型結晶  S2-が面心立方格子をつくり,その四面体間隙の半分(8個中4)Zn2が配置された構造である。それぞれのイオンは4配位で,SZnを区別しなければダイヤモンドと同じ構造となる。

NaCl型と同様の考え方で,半径比を考えると,

 rrr

したがって,r/ r -10.225

つまり,r/ r0.225ならZnS結晶は安定となる。

(3) CsCl型結晶  Cl-が単純立方格子をつくり,その立方体の中心にCs1個が配置される構造である。それぞれのイオンは8配位である。

NaCl結晶型と同様に半径比を考えると,

したがって,10.732

つまり,0.732ならば,CsCl型結晶は安定となる。

ここまで説明した3つの結晶型以外にもいろんな結晶型があり,配位数にも212までいろんなものがある。そして,それぞれに適当な半径比がある。

ここで説明した3つの結晶型について考えると,r +/ r -の半径比の値で可能な結晶型は次のようになる。

半径比0.2250.414  ZnS

半径比0.4140.732  ZnS型,NaCl

半径比0.732以上   ZnS型,NaCl型,CsCl

また,イオン結晶では,配位数の多い程安定である。したがって,半径比が0.732以上では,ZnS型やNaCl型の結晶型も可能だが,配位数の多い方が安定であり,CsCl型となる。勿論例外もあり,単純には結晶型が決まるものではない。実際に,r +/ r -を計算してみる。

NaCl  NaCl

CsCl  CsCl

 

 

 

イオン結晶の格子エネルギー

イオン結晶のイオン間の結合エネルギーは格子エネルギーとよばれ,結晶1molをばらばらの構成イオンにするとき必要なエネルギーで表される。

格子エネルギーの大きさは,当然,結晶の融点に関係する。下表にその値を示し,格子エネルギーの比(NaCl1とする)を示す。

イオン結晶の溶解熱は,その結晶の格子エネルギーとイオンの水和熱の差として,大まかな値を知ることができる。

 

格子エネルギー〔kJ/mol〕と融点〔°C 全てNaCl型結晶

化合物

イオン

イオン半径

中心間距離

格子エネルギー

とその比

融点

°C

〔×10-1nm

〔×10-1nm

NaCl

Na+
Cl-

1.16
1.67

2.827

771

1

801

KCl

K+
Cl-

1.52
1.67

3.138

701

0.909

770

NaI

Na+
T-

1.16
2.06

3.421

697

0.904

651

MgO

Mg2+
O2-

0.86
1.26

2.016

3760

4.877

2826

CaO

Ca2+
O2-

1.14
1.26

2.330

3371

4.372

2572

BaO

Ba2+
O2-

1.49
1.26

2.738

3019

3.916

1918

 

 

 








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