トップMaster化学I1部 物質の構成>第2章 物質をつくる粒子>第2節 元素の性質と周期性

2節 元素の性質と周期性

 

A 元素の周期表

周期律

原子番号の順に元素を配列すると,周期的に性質の似た元素が現れるという内容の法則。原子番号と原子の電子配置の関係が明らかでなかった時代に,原子量の小さいものから順に元素を並べることにより発見された。原子番号の順と原子量の順が入れ替わっているのは,放射性元素を除いて3か所(18Ar39.94819K39.098327Co58.933228Ni58.693452Te127.6053I126.90447)である。

これは後に,若い原子番号の元素に質量数の大きい同位体が多く含まれる為と説明され,矛盾は解決した。そして,1914年に発見されたモーズリーの法則により,原子番号の正確な意味が判り,周期律は原子番号の順序で考えるべきであることが明らかにされた。

周期律を示す事柄はいろいろある。マイヤーは融点や原子体積等の周期性を1869年に見出した。また,メンデレーエフは原子価,化合物の形式等の周期性を見出した。その他,イオン化エネルギーや,典型元素の単体の融点等もその例である。




メンデレーエフの周期律の長所

メンデレーエフの周期律は,ある形式の表をまとめたというだけでなく,表をつくる基本的な考え方において,彼の名を輝かしいものとした。その理由に次の2点がある。

(1) 不正確な原子量を,表中の元素の縦・横の関係から訂正した。1863年に発見されたインジウムInは,当量が37.8と判っていた。ところが,原子価が2価と考えられていた為,原子量は37.8×275.6とされていた。彼は,周期表上の1価・2価の原子価の位置が,どこも既知元素で占められていることや,密度・融点・酸化物の性質等からIn3価ではないかと考え,37.8×3113.4を原子量とした。そうすると,ちょうどCdSnの間の空欄に当てはまった。

 

メンデレーエフの予測した元素と実際の元素との性質の比較

性質

エカアルミニウム

ガリウムGa

 

性質

エカボロン

スカンジウムSc

原子量

68

69.723

 

原子量

44

44.955910

比 重

6.0

5.907

 

比 重

3.0

2.989

融 点

低い

27.78°C

 

硫酸塩

Sc2(SO4)3

水に難溶

Sc2O3

水に難溶

空気中

の変化

変化しない

酸化され難い

 

酸化物

Sc2O3

Sc2O3

水との

反応

赤熱すると水

を分解

高温で水を分解

 

 

比重3.5

比重3.864

 

 

 

 

塩化物

弱塩基性

弱塩基性

化合物

一種のミョウ

バンをつくる

NH4Ga(SO4)212H2O

 

 

ScCl3

ScCl3

酸化物

Ga2O3

Ga2O3

 

 

昇華性固体

800°Cで昇華

塩化物

GaCl3

GaCl3

 

 

水に溶けて

分解

水に溶けて分解

 

同様の考察から,Ce92138に,U120240というように,数種の元素の原子量を訂正した。

(2) 当時,未発見の元素の性質を,周期表の縦・横の元素の関係から予測し,新元素発見の手がかりをつくった。上表は,エカアルミニウム(後に発見されガリウムと命名)とエカボロン(後に発見されてスカンジウムと命名)についての,彼の予測と実際のものの性質の対比である。

 

メンデレーエフ

18341907年。シベリアのトボルスクの中学校長を父として,14人兄弟の末子に生まれた。幼くして父を失い,生活の苦労を味わいながら成長した。科学はシベリアへ追放中の政治犯から初めて教わった。母はメンデレーエフの素質を見抜き,彼に最高の教育を受けさせる為,首都のペテルスブルグに引越した。しかし,大学の学区制の為,シベリアで教育を受けた彼は,ペテルスブルグ大学に入学できなかった。

母の努力により,結局彼は教育大学に入ったが,間もなく肺結核にかかった。幾度も医者に見放される状態だったが,入院や転地療法により次第に健康をとり戻すことができた。

その間も彼は熱心に勉強を続け,25才のときには憧れのヨーロッパ留学が認められた。フランスとドイツで2年間過ごした後,かつて入学を許されなかったペテルスブルグ大学で化学を教えることになった。

講義用教科書を書き始めた彼は,大きな問題にぶつかった。当時,60種程の元素が知られていたが,それらを体系的に取り扱う理論が欠けていたのである。原子量が1つの鍵になると思われた。ベルセリウスらの努力により,原子量はかなり正確に決められていた。彼は,元素を原子量の順に並べてみた。他にもこのような試みをした化学者はいたが,彼の考えは一歩進んでいた。原子量の小さい元素から順に左から右へ配置し,しかも原子価の同じ元素が上下に並ぶように,何段にも重ねて並べた。こうして化学のバイブルといわれる周期表の最初の形ができた。彼はこの周期表を1869年に口頭で発表し,1871年に化学学術雑誌Liebig’s Annalenに掲載した。

周期表をつくってみて,表に幾つかの空席ができることに彼は気づいた。この空席には未発見の元素が入ると考え,彼は1875年,未発見元素の性質を予言した。1875年,ボアボードランにより発見されたガリウム,1879年,ニルソンによるスカンジウム,そして1886年,ウインクラーによるゲルマニウムは,その性質が彼の予言とほぼ同じだった。ここに,彼の名声は不動のものとなり,古代からの「元素とは何か」という大問題の解決に,周期表は大きな役割を果たすことになった。

彼の実験上の主な功績に溶液の化学,液体-蒸気系の研究,石油の性質と成因の研究がある。彼は,政治的出版物に自由主義的見解を述べた為,王立学士院会員に選ばれなかった。1893年以後はロシアの度量衡標準局長になり,そこで研究を続けた。

 

族の名称

1(Hを除く)はアルカリ金属,2族のCaRaはアルカリ土類金属,17族はハロゲン,18族は希ガス(不活性気体)と呼ばれる。3族では,第6周期のLaLuをランタノイド,第7周期のAcLrをアクチノイドと呼ぶ。また,3族全体,あるいはこれからアクチノイドを除いて希土類とぶこともある。

 

B 周期表と元素の性質

典型元素

典型元素とは,遷移元素に対してつけられた名称で,一般に周期律に従って,典型的に周期性を示す元素である。典型元素では,最外殻の電子数が族番号の一の位の数と一致しており,価電子を除いた内側の電子殻は,s2p6の希ガスの電子配置か,s2p6d10の電子配置をとる。例えば,第3周期元素では,ネオンの電子配置(1s22s22p6)の外側の電子殻(3s3p)に電子が順次入っていく。

典型元素に属する金属元素では,化合物は一般に無色のものが多く,単体は融点が低く,あまり硬くない。これらは,遷移元素との際立った相違点である。非金属元素は,全て典型元素に属する。

 

遷移元素

不完全に電子が満たされたd軌道をもつ元素,またはそのような陽イオンを生じる元素と定義され,周期表の311族の元素を指す。

遷移元素の電子配置の特徴は,原子番号の増加と伴に,それまで空席のまま残されていた内殻のd軌道またはf軌道に電子が順次入っていくことである。

このように電子の充填の順序が逆になるのは,電子軌道のエネルギーの高低と関係がある。例えば,21Scから29Cuまでの元素の電子配置については,K殻・L殻を除き下表の様になる。このような電子配置になるのは, 3d軌道の方が4s軌道よりエネルギーが高いからである。即ち,低エネルギーの軌道から電子が順に満たされる原則に従い,まず4s軌道,次に3d軌道に電子が満たされていく。

尚,電子軌道のエネルギー準位は,実際には固定したものではなく,原子番号の増加につれて下の電子軌道のエネルギー変化の図のように変化する。

12族の30Zn 48Cd80Hgは,厳密には遷移元素ではないが,電子配置や化学的性質が遷移元素に似ており,従来は遷移元素に含めて扱ってきた。

4周期遷移元素の電子配置

原子
番号  

元素  

M 殻

N 殻

3s

3p

3d

4s

4p

21

Sc

2

6

1

2

 

22

Ti

2

6

2

2

 

23

V

2

6

3

2

 

24

Cr

2

6

5

1

 

25

Mn

2

6

5

2

 

26

Fe

2

6

6

2

 

27

Co

2

6

7

2

 

28

Ni

2

6

8

2

 

29

Cu

2

6

10

1

 

 

 

電子軌道のエネルギー変化

 

 

 

 

 








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