トップMaster化学I1部 物質の構成>第2章 物質をつくる粒子>第1節 原子の構造と電子配置

1節 原子の構造と電子配置

 

A 原子とその構造

原子(atom)

元素の特性を失わない範囲で到達し得る最小の微細な粒子を原子という。自然界には極めて多種の物質が存在するが,それらを構成する原子の種類は僅か100余りであり,原子そのものも原子核つとそれを取り囲む電子から成り立っている。

 

原子核

陽子と中性子を主に,他の素粒子からなる。原子の中心部にあり,原子自体の大きさに比べて極めて小さい。原子核の半径は,原子の質量数をAとすると,約1.5×3A×1013cmとなる。原子と原子核の大きさを,例えば2311Naで比べると次のようになる。

 

 

したがって,2311Naの原子核は2311Naの原子に比べ,半径で5万分の1,体積で100兆分の1となり,極めて小さい。

一方,原子の質量の大部分は,原子核に集中している。そこで,2311Naの原子核の密度を計算すると,極めて大きな値となる。

 

 

 

原子力(核エネルギー)は,原子核が分裂したり融合したりするとき,原子核の質量の一部を,エネルギーとして取り出すものである。

 

陽子

正の電気素量をもち,静止質量は1.67262171×1027kg1.00727646u(1u126Cの質量の12分の1)で,電子の1836.15倍である。中性子と共に,原子核の重要な構成要素である。また,原子核中の陽子数は,元素の種類を決め,その元素の原子番号になる。

 

中性子

電気的に中性なのでこの名が与えられている素粒子。その質量は陽子よりも僅かに大きく1.67492728×1027kg1.008664910uである。中性子の存在は,1920年にラザフォードによって予想され,1932年にチャドウィックによって確認された。

 

電子

負の電気素量をもち,静止質量9.1093826×1031kgの素粒子。電子が原子を離れて自由な状態で初めて見出されたのは,1859年,プリュッカーによって行われた真空放電実験における陰極線の発見だった。しかし,陰極線の発見を直ちに電子の発見と結びつけることは,少し飛躍がある。

電子がelectronと呼ばれるようになったのは,1891年,イギリスのストーニーによる。ストーニーは,新しい物理単位として,電気に最小の量(電気素量)があることを唱え,この素量に対してelectronという名を与えた。

電気素量の測定は,多数の人によって,いろんな方法で試みられた。ミリカンが1917年に行った油滴実験の測定結果が正しいとされていたが,現在では別の方法で求められており,その値は,e4.80321×1010esu1.60217653×1019C

 

質量数

原子核中の核子(陽子と中性子)の数をいう。質量数は,原子質量単位で表した核種の質量に近い値となる。

質量数と原子質量単位で表した原子の質量が異なるのは,核エネルギーによる質量欠損の程度が核種により異なる為だが,原子の質量(u)質量数±0.1の範囲にあり,質量数を原子の相対質量と見なすことができる。

 

B 同位体

同位体

1906年にボルトウッドがイオニウムIoを発見したが,これはトリウムの同位体23090Thに相当する。その後,1912年,トムソンが放射能を持たないネオンに2010Ne2210Ne2種類がある事を発見した。同位体は同位元素とも呼ばれていたが,現在では同位体の名称に統一されている。同位体は殆ど化学的性質が同じである。しかし,原子番号の小さい元素では,中性子の数の差が原子全体の質量に占める割合が大きく,化学的性質の差が多少大きくなる。

同位体を分離するには,質量の違いから生じる物理的性質の差を利用する。同位体の分離に初めて成功したのはイギリスのアストンで,気体拡散法によって1913年,20Ne22Neを分離した。235U238Uの大量分離にも,気体拡散法が使われている。これは,ウランの気体化合物をつくり,多孔質の隔膜中を拡散させ,化合物の質量の違いにより拡散速度が僅かに異なることを利用するものである。1回の操作で濃縮される量は極めて少なく,同じ操作を何度も繰り返す必要がある。同位体の分離には,その他遠心分離法等も用いられている。

自然界では,同一元素の同位体の存在比はほぼ一定である。このことが長い間16O17O18Oの混合物である酸素の原子量を16として,原子量の基準にできた理由だった。しかし,詳細に存在比を追究すると,高精度でも存在比が一定であるケイ素の様な元素と,産状によって存在比に差があるホウ素の様な元素のあることがわかってきた。

 

放射性同位体

放射能をもつ同位体をいう。88Ra92Uの様に,天然に存在する同位体の全てが放射性同位体であるものもあるが,大部分の元素の天然に存在する同位体は,放射能を持たない安定同位体である。しかし,原子炉やサイクロトロン等を利用して,全ての元素について人工的に放射性同位体がつくられている。

放射性同位体は,極微量でも,検知器を使って検出することができ,その移動を追跡することができる。そこで,放射性同位体を含んだ化合物を使って化学反応を行わせると,原子の交換反応等が追跡でき,反応機構を明らかにすることができる。

いま,元素に少量の放射性同位体*を混ぜておくとする。化学反応や生物体の代謝でが移動したところには,必ず*を伴って移動するので,検知器や写真等で*を検出すれば,の行くえを追跡することができる。このような役割をする*を追跡子(トレーサー)と呼んでいる。

 

放射性同位体を用いた年代測定

天然放射性同位体を年代測定に利用することもある。例えば,146Cの量から炭素化合物の年代を知ることが,地質学,考古学等で行われている。

大気上層では,宇宙線中の中性子により,窒素原子が核反応を起こして14Cがつくられている。14Cは半減期5730bを放射して崩壊していく。

 

147N+10n ―→ 146C+11H

  (中性子)     (プロトン)

146C ―→147N+10e

            β線)

このような変化が太古から同じ状態で続き,地表上の14Cの濃度は殆ど一定で,平衡状態になっていると考えられる。

14Cは,大気中の二酸化炭素とこれと短時間に交換できる炭素化合物,即ち生物体や海水中の炭素化合物中に広く分布しており,生存中の生物体内の14Cの濃度(A0)は太古から一定と考えられる。また石炭や泥炭,貝殻,骨,化石等の生物遺体中の14Cの濃度(A)は,14C崩壊の為,死骸が古い程少なくなる。したがって,A/A0の値から死骸の生存年代を知ることができる。測定は,試量から分離した炭素の一定量から放射されるb線の量で行われる。

 

C 原子中の電子配置

電子殻

ラザフォードとボーアの原子模型では,原子核の周囲を回る電子が一定半径の球殻面にあると考え,電子殻と呼んだ。内側からKLMN殻と名づけられているが,これは量子力学における原子模型で,主量子数n1234に対応する。各電子殻には各々電子軌道があり,spdfと名付けられているが,これは方位量子数l0123に対応する。主量子数nの電子殻には,ln1までのn種類の電子軌道が存在する。また,方位量子数lの電子軌道は,磁気量子数mlによって更に2l1種類に分かれる。例えば,p軌道はl1に相当するから3(2×11)種に分かれ,pxpypzの様に区別される。そして1個の電子軌道は2個まで電子を収容できる。

したがって,主量子数nに収容できる電子数は次のようになる。

 

方位量子数

磁気量子数による軌道数 

収容電子数

l0

 

2×011

 

1×22

l1

2×113

3×26

 

 

 

ln-1

 

n-1+1=2n-1

 

2n-1×2=4n-2

n種類

 

合計 n2

 

計 2n2

 

電子殻と電子軌道,および収容電子数

電子殻

K

L

M

N

O

P

Q

電子軌道

1s

2s

2p

3s

3p

3d

4s

4p

4d

4f

5s

5p

5d

5f

5g

6s

6p

6d

6f

6g

6h

7s

電子軌道数

1

1

3

1

3

5

1

3

5

7

1

3

5

7

9

1

3

5

7

9

11

1

最大電子数

2

2

6

2

6

10

2

6

10

14

2

6

10

14

18

2

6

10

14

18

22

2

 

電子配置

一般に,原子番号Zの原子にはZ個の電子がある。これらの電子が,原子の各電子軌道にどのように配置されるかは,次のような原理や法則による。

まず,「1つの電子軌道には,2個の電子しか入ることができない」。これをパウリの原理という。量子力学によれば,電子のもつスピンに2種類あり,同一の電子軌道にはスピンの異なる電子が1対しか入れないという原理である。

更に,原子の最も安定な状態は,エネルギーの低い電子軌道から順に電子を満たした状態である。一般に,内側にある電子殻の電子軌道程エネルギーが低い。同じ電子殻では,方位量子数lの小さい程エネルギーが低く,spの順に電子が配置される。また,lの値が同じ電子軌道では,電子は異なる電子軌道から順に配置される。例えば,N原子の2p軌道の電子配置はpx1py1pz1となる。これは,同一の電子軌道に入るより電子間の反発が小さい為と考えられる。

 

最外殻電子と原子の性質

元素の化学的性質の類似性は,最外殻電子の配置の類似性から説明できる。即ち,反応に関係するのは最外殻電子であり,その配置が似ている元素は同様の性質を示す。どの元素が類似した性質を持つかを生徒に考えさせ,周期律の学習の準備としたい。

 

価電子(valence electron)

原子の電子構造の外側の殻にあり,化学結合をつくるときに主として寄与する電子を価電子といい,固体中では伝導帯を占める電子である。金属の伝導電子,自由電子理論では自由電子に相当する。

尚,電子軌道のエネルギー準位は,実際には固定したものではなく,原子番号の増加につれて下の電子軌道のエネルギー変化の図のように変化する。

12族の30Zn 48Cd80Hgは,厳密には遷移元素ではないが,電子配置や化学的性質が遷移元素に似ており,従来は遷移元素に含めて扱ってきた。

4周期遷移元素の電子配置

原子
番号  

元素  

M 殻

N 殻

3s

3p

3d

4s

4p

21

Sc

2

6

1

2

 

22

Ti

2

6

2

2

 

23

V

2

6

3

2

 

24

Cr

2

6

5

1

 

25

Mn

2

6

5

2

 

26

Fe

2

6

6

2

 

27

Co

2

6

7

2

 

28

Ni

2

6

8

2

 

29

Cu

2

6

10

1

 

 

 

電子軌道のエネルギー変化

 

遷移元素の化学的性質と電子配置の関係

周期表の同族元素の化学的性質が類似しているのは,最外殻電子の配置が類似していることによる。遷移元素では,最外殻の電子配置は,同族即ち縦のグループよりも隣り合う横の元素と類似しているので,その化学的性質の類似性は,隣り合う同周期元素の方が大きい。

 

金属元素と非金属元素

周期表で,ホウ素とアスタチンを結ぶ線の,左側が金属元素,右側が非金属元素である。但し,Hも非金属元素である。

金属元素は一般に陽性で,共有結合を作り難く,非金属元素とイオン結合性の化合物や塩を作り易い。金属元素の酸化物や水酸化物は塩基性を示し,酸と反応し易い。単体は金属の性質を示す。一方,非金属元素は,単体が室温で気体のものが多く,化学結合を作り難い希ガスを除き,一般に陰性で,非金属同士で共有結合して分子性化合物を作り易い。非金属元素の酸化物や水酸化物は酸性を示し,塩基と反応し易い。

 

 

 








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