Q&A

 

1部 第1章 第3

HCl分子の間に水素結合は形成されないのですか?」

 

 

HFの場合,Fの大きな電気陰性度が強い水素結合の原因となっています。HClの場合には,Cl原子の電気陰性度がFよりも小さい為,水素結合はHFの場合よりずっと弱いと予想されます。しかし,ClXH···Y型の水素結合のYとしての働きをする事が知られており,HClにおいてもごく弱い水素結合が生じていると考えるのが妥当でしょう。」

 

 

「なぜ金属は光沢をもっているのですか?」

 

 

「金属には自由電子があり,光が当たるとその光をはじき出すと考えられています。その反射する光が金属光沢として認識されるのです。アルミニウム等では90%以上が反射されるといわれています。」

 

 

 

1部 第3章 第2

「液体空気はどの様につくるのですか?」

 

 

「熱が入ってこない様に,断熱に工夫された容器に空気を入れ,加圧·冷却後,膨張させる(断熱膨張)と,空気の温度は初めよりも下がります。この操作を繰り返して冷却を重ね,液体空気とします。

 空気を構成する窒素や酸素の分子は,弱いながらも相互に引き合っています。膨張させるという事は,この相互の引力に逆らって分子間を引き伸ばす事であり,その為エネルギーを必要とします。このエネルギーに使用されただけの空気の温度が下がるのです。リンデの液化装置が有名です。」

 

 

 

 

2部 第1章 第1

「反応速度の定義は,単位時間あたりの『物質量』の変化量ですか,それとも『濃度』の変化量ですか?」

 

 

「基本的には,『単位時間あたりの物質量の変化量』ですが,体積一定の系における気相あるいは液相の均一反応を取り扱うときは,『濃度の変化量』が便利なのでよく使います。」

 

 

 

2部 第1章 第2

「触媒反応の仕組みのよい例を教えて下さい。」

 

 

「硫酸を触媒として,酢酸とメタノールから酢酸メチルを得るエステル化の反応機構を次に示します。」

 

 

 

 

 

2部 第2章 第2

「平衡移動を説明するとき,濃度や圧力の変化に対してはKKpが一定に保たれる様に移動すると説明できますが,温度の変化に対しては何か分かり易い説明方法はないでしょうか?」

 

 

N2O42NO57kJを例に考えてみます。エネルギー図は次の通りです。

 

 

N2O4  2NOの系では,AB2つのエネルギー状態が可能で,低温では安定なAの方に多く存在しています。温度を上げる (エネルギーを加える) と,Aにある分子はエネルギーを得てBに移る為,Bの割合が増します。この変化は,温度を上げたときその変化を和らげる吸熱反応への移動になっています。温度を下げた (エネルギーを奪われた)ときは,この逆になります。」

 

 

 

3部 第1章 第1

「無機高分子化合物というものもあるのですか。」

 

 

「炭素以外の原子が繰り返し結合してできる高分子には,縮合ケイ酸塩や縮合リン酸塩等のポリオキソ酸塩や,窒化ホウ素等があります。また,側鎖に有機原子団が含まれていても主鎖がケイ素と酸素であるシリコーン樹脂は無機高分子化合物です。炭素のみからなるダイヤモンドやグラファイトも無機高分子の範疇に入ります。」

 

 

 

3部 第2章 第1

「単糖類はどれもアルデヒド基があるので還元性を示すのは解りますが,ケトン基しか持たないフルクトースが還元性を示すのはなぜですか?」

 

 

「フルクトースの鎖状構造をよく見ると,通常のケトン基と違い,カルボニル基の隣の炭素にヒドロキシ基がついているのが判ります。このヒドロキシ基が還元性を示すのです。銀鏡反応やフェーリング液の反応はどれも塩基性下で行われ,この条件では,隣にヒドロキシ基をもつケトンは次の様に変化し,結局アルデヒド基を持っているのと同じ事になります。」

 

 

 

「セルロースには多数の-OH基があるのに水に溶けないのはなぜですか。また,アミロースと違ってセルロースが強い繊維になるのはなぜですか?」

 

 

「デンプンが熱湯に溶けてコロイド溶液になるのに,セルロースは熱湯によってコロイド溶液にならないのは,分子の大きさが違うからです。デンプンでも,アミロースはコロイド溶液になりますが,デンプン粒の外皮を形成しているアミロペクチンはコロイド溶液になりません。

 

 

分子量

グルコース単位数

アミロース

4×1046×105

2503750

アミロペクチン

2×1057×106

125043750

セルロース

1×1061×108

625062500

 

次に,セルロースが強い繊維になるのは,セルロースの構造から理解できます。即ち,セルロースでは,分子間が水素結合によって強く引きつけられている為,分子が直線状になり易くなっているからです。」

 

 

 

3部 第2章 第2

「二糖類のうちスクロースだけ還元性を示さないのはなぜですか?」

 

 

「グルコースやフルクトースのへミアセタールのヒドロキシ基がグリコシド結合を形成すると,鎖状構造に変化できなくなり,還元性を示しません。スクロースは,グルコースのへミアセタールのヒドロキシ基とフルクトースのへミアセタールのヒドロキシ基がグリコシド結合をつくるので,還元性を示しません。」

 

 

 

 

「グルコースでのフェーリング液の還元反応は次の様に表す事がありますが,水酸化銅(II)は水に不溶なはずです。これでいいのですか?」

R-CHO2Cu(OH)2NaOH―→R-COONaCu2O3H2O

 

 

「フェーリング液は,0.28mol/L硫酸銅(II)水溶液(A)と,酒石酸ナトリウムカリウム1.24 mol/L,水酸化ナトリウム2.53.5 mol/Lの混合水溶液(B)11で使用直前に混合する濃青色の溶液です。酒石酸イオンと銅(II)の錯イオンができていると考えられています。これにグルコースを加えて起こる反応は次のイオン反応式で表した方がいいでしょう。」

 R-CHO2Cu25OH―→R-COOCu2O3H2O
日本化学界編,「教育現場からの化学Q&A」,丸善,p.187(2002)

 

 

1つのタンパク質に一次構造,二次構造,三次構造,四次構造の4種類の構造があるのですか?」

 

 

「タンパク質をつくっているアミノ酸は20種類あり,遺伝情報に従って決まった順にペプチド結合してペプチド鎖がつくられます。これが一次構造です。ペプチド鎖内で水素結合によりα-ヘリックス構造やβ-シート構造がつくられます。これが二次構造です。二次構造が組み合わさり,アミノ酸側鎖間の相互作用(ジスルフィド結合-S-S--NH3-COOの間の弱い静電気力,弱い水素結合等)で,ポリペプチド鎖が折り畳まれ丸くなった構造をとります。これが三次構造です。複数の三次構造のポリペプチド鎖同士が相互作用し合い(金属イオンとの配位結合も含む),まとまった構造をとります。これが四次構造です。全てのタンパク質が四次構造をとるわけではありません。」

 

 

 

 

「ビウレット反応では,末端のカルボキシル基もCu2と配位結合しているのですか?」

 

 

「トリグリシンの場合は [CuN3O]錯体をつくると考えられていますが,テトラグリシンの場合は,錯体(Na2[Cu(C8H10N4O5) ]·10H2O)X線構造解析により,下図のような[CuN4]錯体をつくる事が判っています。水溶液中でもこの構造が保たれていると考えられています。

 

 

 

テトラグリシンと銅(U)イオンから生じる錯体の構造

 

 

 

4部 第1章 第1

「旨味調味料はL-グルタミン酸ナトリウムと表示してありますが,D-グルタミン酸ナトリウムはどんな味ですか?」

 

 

「グルタミン酸は酸性アミノ酸なので,L-グルタミン酸もD-グルタミン酸も,味は酸っぱいです。L-グルタミン酸ナトリウムは旨味調味料の味で,D-グルタミン酸ナトリウムは旨味がないといわれています。一般にD型のα-アミノ酸は甘みがあるそうです。この様に人間の舌は光学異性体を区別できます。」

 

 

 

4部 第1章 第2

「天然染料の藍の合成法と藍染めの原理を教えて下さい。」

 

 

「染料として使用されていた天然の藍は,現在は合成品が主になっています。アルカリの存在下でo-ニトロベンズアルデヒドとアセトンが反応すると次式に従ってインジゴが生じます。

 

 

インジゴは水,希酸,希アルカリには溶解しないので,そのままでは繊維を染められません。そこで,これを還元してアルカリ可溶性の白藍(Indigo-whiteNa)とした後に繊維を浸し,その後,空気で酸化して再びインジゴにすると青くなります。これを利用して染色を行うわけです。」

 

 

日本化学界編,「化学を楽しくする5分間」,化学同人,p.124126(1991)

 

 

 

4部 第2章 第1

「フェノール樹脂ができる反応は,単純な縮合重合ではなく,付加と縮合反応が繰り返し起こる反応であるという事ですが,反応の進み方を説明して下さい。」

 

 

「酸を触媒に用いる場合,ホルムアルデヒドは水溶液中でHによってCH2OHになります。フェノールはo-位とp-位の反応性が高いので,CH2OHがフェノールのo-またはp-の位置で置換される事になります。

 

 

これらを1つの反応式にまとめると,ホルムアルデヒドへのフェノールの付加反応という事ができます。

 

 

この化合物が次々とフェノールのo-位で縮合していきます。

 

 

この様にして生じるノボラックは分子量1000程度の中間物質です。

以上の様に,付加と縮合が繰り返されて高分子が合成されるので,付加縮合ともいわれます。

尚,塩基を触媒に用いた場合はフェノラートイオンが生じるので,o-位だけでなくp-位の反応性も高くなり,レゾールが中間物質となります。」

 

 

 

4部 第2章 第2

「天然ゴムがイソプレンの付加重合によって容易に合成できないのはなぜですか?」

 

 

「イソプレンを付加重合させると,シス形とトランス形のポリイソプレンの混合物が生じてしまうからです。一般に,天然の化合物では立体的に一方のもののみでできていますが,実験室で合成してみると,両方の可能性のものが混合物として得られる事が多いものです。ゴムの場合,1955年になって,イソプレンをラジカル重合させるとグッタペルカ(トランス-14-ポリイソプレン)ができ,チーグラー触媒を用いて重合させると天然ゴムと同じシス形重合体が合成できる事が明らかになりました。」

 

 

 

5部 第1章 第1

「コレステロールって何ですか?」

 

 

「コレステロールは,構造式から判る様に炭化水素基と親水性のヒドロキシ基からなり,界面活性剤としての性質があります。

 

 

コレステロールは,細胞膜のリン脂質の間に入り込んでいます。コレステロールを含んでいない膜は,コレステロールがあるときと比べると,温度を変えたとき固体から液体へよりはっきり変化します。これは凝固点降下として理解できます。この様に,コレステロールは生体膜の流動性を下げる機能をもっているといえます。例えば赤血球の細胞膜の25%がコレステロールです。

コレステロールは,いろいろな生理作用をもったステロイドといわれる仲間の代表的な化合物です。性ホルモンもステロイドの−種です。」

* W.H.Elliott他,清水孝雄他訳,「生化学・分子生物学」,東京化学同人,p.71

 

 

「必須脂肪酸って何ですか?」

 

 

「生体内で合成されない,または合成されても足らない脂肪酸を必須脂肪酸といいます。通常はリノール酸,γ-リノレン酸,アラキドン酸の事です。ただγ-リノレン酸とアラキドン酸はリノール酸から合成できるのでリノール酸だけをいう事もあります。リノール酸はオレイン酸にC=C1つ追加した構造ですが,オレイン酸からは生体内で合成できません。リノール酸とγ-リノレン酸は植物油に多量に含まれているので,不足する事はないので,必須アミノ酸ほど強調される事はないようです。」

 

 

 

 

 

5部 第1章 第2

DNARNAはどう違うのですか?」

 

 

DNAは細胞内の核の中にあって,ポリデオキシリボ核酸2本が水素結合でまとまり,二重らせん構造をとっています。これによって,DNA2本鎖のそれぞれを鋳型として,同じ塩基配列の二重らせんを2組つくる事ができます。

RNAはリボースとリン酸が重合した1本鎖のポリリボ核酸で,異なる働きをする3種類のRNA,メッセンジャーRNA(m-RNA),転移RNA(t-RNA),リボソームRNA(r-RNA)があります。

DNARNAの唯一の違いはリボースの-OH基の有無であり,-OH基のないDNARNAよりも加水分解に対して安定です。この事や,DNAがウラシルの代わりにチミンという塩基をもつ事から,DNARNAよりも正確な遺伝情報の保持に有利だと考えられます。」

 

 

 

 

5部 第2章 第1

「酵素の反応の反応速度を調べて何が判るのですか?」

 

 

「反応速度を調べると,酵素の触媒としての能力=酵素活性が判ります。また,反応条件をいろいろ変えて詳しく実験すると,平衡定数や速度定数,活性化エネルギーが判り,酵素-基質複合体の形成,阻害剤の働き方が予想できます。

そして質量分析や]線構造解析等の結果等と合わせると,酵素反応の全体像が浮かび上がってきます。

 

 

 

 

5部 第2章 第2

「生物の教科書を見ると,光合成は次の反応式で表されています。

  6CO212H2O  C6H12O66O26H2O

 一方,化学の教科書では次の様になっています。

  6CO26H2O  C6H12O66O2

この違いはどうしてなのですか?」

 

 

「化学Iで学んだヘスの法則を思い出してください。ヘスの法則は次の様になっています。

『物質が変化するとき出入りする熱量は,変化する前の状態と変化した後の状態だけで決まり,変化の過程には無関係である』

一方,生物の教科書によく見られる反応式は,光合成の全反応過程で反応に関与する各分子の分子数を考慮しています。反応の始めと終わりだけを考えたときの反応式では,両辺に同じものがあると差し引く事にしています。このルールに従って表すと,両辺の水分子を相殺して化学の教科書での式になります。」

 

 

「合成されたATPはどんなエネルギーに代わるのですか?」

 

 

「例えば筋肉の動くのも,デンキウナギが電気を発生させるのも,ATPが作用しています。」

 

 

 

 

5部 第3章 第1

「医薬品(薬剤)はどの様に分類されていますか?」

 

 

「分類の仕方にはいろいろあります。例えば,治療法から分類すると次の様になります。

原因療法薬:病気の原因を根本的に取り除く治療法 を原因療法とよび,その為の薬が原因療法薬,いわゆる特効薬です。ドイツのポール=エーリッヒと日本の秦佐八郎が開発したサルバルサンが,合成特効薬第1号になります。抗生物質も特効薬の1つです。

対症療法薬:熱が出たときに解熱剤を飲んだり,咳が出たときに咳を沈める薬(鎮咳薬)を飲む事があります。薬を飲まなくても自然に治る(自然治癒)場合もありますが,薬を飲んだ方が早く治ります。この様な治療法が対症療法です。

補充療法薬:体の中には色々なホルモンの存在が知られています。そのホルモンが不足した場合にホルモンを投与する方法が補充療法です。これは,原因療法と対症療法との中間的な療法になります。

また,販売方法から分類すると次の様になります。

処方箋薬:日本では,抗生物質を自由には薬局で買えません。医師の処方箋を持っていくと買える薬が処方箋薬です。

市販薬:処方箋がなくても薬局で買える薬が市販薬です。薬剤師の指導助言下で購入します。例えば,市販薬として身の回りに多くの消毒薬があります。ヨーチンが有名ですが,これはヨードチンキで,I 2-KIのエタノール溶液です。うがい薬(イソジン等)は,ポリビニルピロリドン,I2-KIのエタノール溶液です。これらは,I2に殺菌作用があるので用いられています。最近では,薬局以外でも医薬品が販売される様になりました。

水・アルコール・クロロホルム等に

可溶,ベンゼン・ヘキサンには不溶

この他,薬理学的な分類等,色々な分類方法があります。」

 

 

「貧血の薬とお茶を一緒に飲んではいけないのですか?」

 

 

「貧血(鉄欠乏症)にはクエン酸鉄(II)等が鉄剤として処方されています。一方,緑茶には,タンニンという加水分解されるとタンニン酸等多価フェノールを生じる物質が含まれています。これらが鉄イオンと結合して水に溶け難い複合体をつくる為,体に吸収され難くなると考えられていました。

しかし,実験によると,お茶を飲んでも鉄剤の効果が低下した結果は出ませんでした。1回に飲む鉄剤に含まれる鉄の量は100mg前後で,この量は通常の食物から体内に吸収される量の100倍程度になります。多量の鉄イオンに対して緑茶に含まれるタンニンの量は非常に少なく,タンニンが鉄イオンと結合しても十分な量の鉄イオンが残っているので,薬効は低下しないのです。

化学では,濃度と絶対量の両方から考える事を学びます。お茶と鉄剤については,その量を比べる事で,一緒に飲んでもよいと予想され,臨床試験でも,一緒に飲んでもよいという結果になっています。」

 

 

 

5部 第3章 第2

「酸性の土や塩基性の土といわれますが,土は水に溶けないのに,土のpHはどうやって測るのですか?」

 

 

「土のコロイドは負に帯電していて,Ca2Hが回りに吸着しています。土を水中に入れても,Hは水中に溶け出しません。土の回りに付着していた水溶性の物質がpHに影響します。

土のpHの測定は,土を取り,それに2.5倍の純水を加えてよく混ぜ,水のpHpHメーターで測定します

土壌粒子に吸着している水素イオンを水中に取り出すには塩化カリウム水溶液を使います。土をKCl水溶液中に入れると,HCa2Kと置き換わって水中に出てきます。

 

 

 


稲松勝子,「土をはかる」,日本規格協会,p.60(1987)

 

 










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