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資料16 元素と単体の性質

 

1H43Tc元素の存在比()    *印は,長寿命放射性同位体を示す

11H

99.9885

 

3216S

94.93

 

 

 

 

5426Fe

5.845

 

7935Br

50.69

2H

0.0115

 

33S

0.76

56Fe

91.754

 

81Br

49.31

32He

0.000137

34S

4.24

57Fe

2.119

7836Kr

0.35

4He

99.999863

 

36S

0.02

58Fe

0.282

80Kr

2.28

63Li

7.59

3517Cl

75.78

5927Co

100

82Kr

11.58

7Li

92.41

 

37Cl

24.22

5828Ni

68.0769

83Kr

11.49

94Be

100

3618Ar

0.3365

60Ni

26.2231

84Kr

57.00

105B

19.9

38Ar

0.0632

61Ni

1.1399

86Kr

17.30

11B

80.1

 

40Ar

99.6003

 

 

 

62Ni

3.6345

8537Rb

72.17

126C

98.93

3919K

93.2581

64Ni

0.9256

87Rb*

27.83

13C

1.07

40K

0.0117

6329Cu

69.17

8438Sr

0.56

147N

99.632

41K

6.7302

65Cu

30.83

86Sr

9.86

15N

0.368

4020Ca

96.941

6430Zn

48.63

87Sr

7.00

168O

99.757

42Ca

0.647

66Zn

27.90

88Sr

82.58

17O

0.038

43Ca

0.135

 

67Zn

4.10

8939Y

100

18O

0.205

44Ca

2.086

68Zn

18.75

9040Zr

51.45

199F

100

46Ca

0.004

70Zn

0.62

91Zr

11.22

2010Ne

90.48

48Ca*

0.187

6931Ga

60.108

92Zr

17.15

21Ne

0.27

4521Sc

100

71Ga

39.892

94Zr

17.38

22Ne

9.25

4622Ti

8.25

7032Ge

20.84

96Zr

2.80

2311Na

100

47Ti

7.44

72Ge

27.54

9341Nb

100

2412Mg

78.99

48Ti

73.72

73Ge

7.8

9242Mo

14.84

25Mg

10.00

49Ti

5.41

74Ge

36.28

94Mo

9.25

26Mg

11.01

50Ti

5.18

76Ge

7.61

95Mo

15.92

2713Al

100

5023V*

0.250

7533As

100

96Mo

16.68

2814Si

92.2297

51V

99.750

7434Se

0.89

97Mo

9.55

29Si

4.67

5024Cr

4.345

76Se

9.37

98Mo

24.13

30Si

3.0872

52Cr

83.789

77Se

7.63

100Mo

9.63

3115P

100

53Cr

54Cr

9.501

2.365

78Se

80Se

82Se*

23.677

49.61

8.73

43Tc

0

 

 

 

 

 

 

 

5525Mn

100

 

 

 

 

 

 

 

2・第3周期の非金属元素の単体

18族の希ガスを除き,単体の反応性は非金属性が強い程大きい。したがって,同周期ではハロゲンが最も激しく反応する。例えば水との反応は,Cl2は室温で反応するが,SiPSは通常反応しない。

2・第3周期の非金属元素の単体

単体

融点

沸点

密度

(固体)

g/cm3

結晶

種類

電気
伝導

反応性

その他特徴

B

2300

3658

2.34

共有

300℃で酸化,少し両性

硬度9.3,半導体

C(黒鉛)

2.26

共有

450℃から酸化

硬度13

C(ダイヤモンド)

3.513

共有

700℃から酸化

硬度10

N2

209.86

195.8

1.2506*

分子

無味,無臭,無色

O2(酸素)

218.4

182.96

1.429*

分子

多くの気体と反応

気体は無色無臭

O3(オゾン)

193

111.3

2.141*

分子

02に分解,酸化力大

特異臭,有毒

F2

219.62

188.14

1.696*

分子

酸化力特大,反応性大

特異臭,有毒

Ne

248.67

246.048

0.8989*

分子

殆ど反応しない

ネオンサイン

Si

1410

2355

2.33296

共有

SiF4,塩基と反応

半導体

P4(黄リン)

44.2

280

1.82

分子

りん光,34℃から発火

有毒

P(赤リン)

2.20

共有

260℃で発火

マッチ箱側薬

S8(斜方)

112.8

444.674

2.07

分子

高温で燃焼

α硫黄

S8(単斜)

119.0

444.674

1.957

分子

高温で燃焼

β硫黄

Cl2

101.0

33.97

2.21*

分子

反応性大,酸化力大

刺激臭,有毒

Ar

189.2

185.7

1.784*

分子

殆ど反応しない

空気中に0.934

*は気体で,単位はg/L

 

 

同周期非金属元素の化合物

非金属元素の酸化物は元素の非金属性が強い程酸性が強い。したがって,同周期では原子番号が大きくなる程,酸性の強い酸化物になる。水酸化物やオキソ酸も同様の性質を示す。

2・第3周期非金属元素の化合物

元素

水素化合物

酸素化合物

水酸化物・オキソ酸

水を含む反応

5B

B2H6 分子性

B2O3

H3BO3 弱酸性

2H3BO3―→B2O33H2O

6C

CH4 分子性

CO2

H2CO3 弱酸性

CO2H2O―→H2CO3

7N

NH3  分子性

N2O5

HNO3 強酸性

N2O5H2O―→2HNO3

80

H2O 分子性

――

――

――

9F

HF  分子性

OF2

――

――

14Si

SiF4  分子性

SiO2

H4SiO4 弱酸性

H4SiO4―→SiO22H20

15P

PH3  分子性

P4O10

H3PO4 中程度の酸性

P4O106H2O―→4H3PO4

16S

H2S 分子性

SO3

H2SO4 強酸性

SO3H2O―→H2SO4

17Cl

HCl 分子性

Cl2O7

HClO4 強酸性

Cl2O7H2O―→2HClO4

 

2・第3周期の金属元素の単体

金属元素の単体の反応性は金属性(陽性)が強い程大きく,第3周期ではNaが最も激しく反応する。例えば水とはNaは室温,Mgは熱水,Alは高温水蒸気で反応する。

 

2周期・第3周期の金属元素の単体

単体

融点

沸点

密度(固体)

g/cm3

結晶の
種類

電気伝導

反応性

その他特徴

Li

 180.54

1347

0.534

金属

200℃で燃焼,水と反応

軽い,比熱大

Be

1282

2970

1.8477

金属

室温で酸化膜,両性を示す

有 毒

Na

97.81

883

0.971

金属

空気酸化,水で発火

強い還元性

Mg

 648.8

1090

1.738

金属

室温で酸化膜,熱水と反応

塩素と激しく反応

Al

 660.32

2467

2.6989

金属

室温で酸化膜,両性を示す

酸化膜で耐食性

 

2・第3周期の金属元素の化合物

金属元素の酸化物は,元素の金属性(陽性)が強い程塩基性が強い。したがって同周期では,原子番号が小さくなる程塩基性の強い酸化物になり,非金属元素との境界付近に存在する元素の酸化物は両性を示す。水酸化物も同様の性質を示す。

 

2・第3周期の金属元素の化合物

元素

水素化物

酸化物

水酸化物

水を含む反応

3Li

LiH イオン性

Li2O

LiOH 強塩基性

Li2OH2O―→2LiOH

4Be

BeH2 イオン性

BeO

Be(OH)2 両性

Be(OH)2―→BeOH2O

11Na

NaH イオン性

Na2O

NaOH 強塩基性

Na20H2O―→2NaOH

12Mg

MgH2 イオン性

MgO

Mg(OH)2 弱塩基性

Mg(OH)2―→MgOH2O

13Al

AIH3 分子性

Al2O3

Al(OH)3 両性

2Al(OH)3―→Al2O33H2O

 

両性,両性化合物

周期表で,非金属元素と金属元素の境界付近に存在する元素には,非金属性(陰性)や金属性(陽性)の曖昧なものが存在し,場合により両方の性質を示す。両性とは,単体や化合物の酸・塩基に対する性質が,典型的な金属元素や非金属元素とは異なり,両方の性質を示す性質をいう。AlZnSnPb等は,単体が強酸・強塩基のどちらとも反応する。また,酸化物や水酸化物が弱い酸・塩基の両方の性質をもち,塩基・酸のどちらとも反応する。したがって,これらは両性化合物をつくる元素である。両性化合物をつくる元素には,その他BeCdBGaInSiGeAsSbBi等がある。

 

原子量

原子量の概念は,1803年ドルトンによって導入され,1805年に最初の原子量表が発表された。これは誤差の大きなものだったが,彼の原子説を支持する上で大きな役割を果たした。初めて精密な測定を行い,原子説に実験的支持を与えたのは,スウェーデンのベルツェリウスだった。彼が1826年に発表した原子量表は,現在と大差のない立派なものであった。しかし原子量の決定に確たるよりどころがなく,その後,原子量の基準は二転三転する事となった。

原子量は長い間,天然の酸素原子の相対質量,即ち16O17O18O3種の同位体が一定の割合で混合しているときの平均相対質量を16として,これを基準に定められてきた(化学原子量)。天然に存在する同位体同士の割合が世界中どこでも不変であると考えられていたので,この方法で国際的に同一の原子量を定める事ができたのだった。しかし,同位体の研究が進みその知識が増すにつれ,質量数16の酸素原子16Oだけをとり出し,この相対質量を16とする基準(物理原子量或いは同位体原子量)も必要となってきて,2種の原子量が用いられる時代となった。

しかし,2種の原子量が存在することは不便であるという声も大きくなり,IUPACで種々検討の結果,質量数12の炭素原子12Cを基準にとり,この相対質量を12とする新基準の国際原子量表が1961年に発表された。

新基準に従えば,ある元素の原子量は,12C12g中に含まれている原子の数(アボガドロ数に等しい)と同数のその元素の原子の集団(1mol)の質量を,グラム単位で示したときの数値であると定義される。従来の化学原子量は,新基準による原子量の1.000043倍にすぎず,実用的には旧来の原子量を用いてもよい。

自然界に存在する各元素の同位体の割合はほぼ一定だから,各元素の原子量は,その同位体の相対質量に存在比を掛けたものの平均値として算出される。

12Cを基準に選んだ理由は,従来の原子量値を大きく変えないですむ事や,他の同位体との質量比較が正確である事等であった。1H160は従来の化学原子量を大きく変える点で不合格であり,19Fは天然同位体を持たない点では優れているが,他の原子との質量比較が不正確になる点で不採用となった。

 

希ガスの性質

存在量が少ない事から希ガスと呼ばれるが,化学的に不活性で化合物をつくり難い為に不活性ガスといわれる事もある。単原子分子として存在する。

分子間力も非常に小さく,融点・沸点共に極端に低い。不活性である事等の性質を利用して,気球用安全ガス,ガス入り電球,不活性ガス中での熔接,極低温の研究等に用いられている。

 

希ガスの物理的性質

 

2He

10Ne

18Ar

36Kr

54Xe

86Rn

原子量

4.002602

20.1797

39.948

83.80

131.29

222

密度(0)g/L

0.17850

0.89990

1.7840

3.7330

5.8871

9.730

密度(沸点) g/mL

0.1248

1.207

1.393

2.41

3.54

4.4

点〔℃〕

――

248.67

189.3

156.66

111.9

71

沸点〔℃〕

268.934

246.05

185.8

152.3

107.1

61.8

第一イオン化エネルギー

24.587

21.564

15.760

13.999

12.130

10.748

第二イオン化エネルギー

54.416

40.962

27.629

24.359

21.21

――

原子半径〔nm

0.140

0.154

0.188

0.202

0.216

――

希ガスは何ものとも安定な化合物をつくらないと長い間考えられてきたが,カナダのバートレットが1962年,XePtF6の合成に成功して以来,アメリカのアルゴンヌ国立研究所のクラッセンらによってXeF4の固体化合物が合成され,最近では幾つかの希ガス化合物がつくられている。

(1) 放電管中に生じる希ガスの2原子イオンHe2Ar2HeNe等。

(2) 包接化合物:ヒドロキノン3分子当たり1原子の希ガスがファンデルワールス力で収まり,結晶をつくる。その他Ar(H2O)6Kr(H2O)6Xe(H2O)6等の水和物,Ar(C6H5OH)4Kr(C6H5OH)4等のフェノール包接化合物もある。

(3) 六フッ化白金と分子状酸素から得られるイオン結晶O2[PtF6]-にヒントを得て,バートレットがXePtF6- (黄色)を合成した。

(4) F2Xe400℃でニッケル管中に通すとXeF6の固体が得られる。

 

ヘリウム

空気中のヘリウムの存在量は少ないが,宇宙における存在量は水素に次いで多く,恒星内の核融合に重要な役割をしている。

クレーブ石,フェルグソン石,モナズ石等の放射性元素を含む鉱物には,α崩壊によって生じたヘリウムが含まれる。また,テキサスやカンザスの天然ガスには1%程度含まれており,これらはヘリウムの重要な供給源になっている。

ヘリウムの臨界温度は5.2Kだが,オランダのオンネスは1908年,それまで永久気体と呼ばれていたヘリウムの液化に初めて成功した。この時の液化温度は4.2Kで極めて低い温度なので,超低温を得る材料としてヘリウムは使われている。

(1) 超伝導現象  1908年に初めて液体ヘリウムが得られてから,1K付近の極低温での金属の電気抵抗の研究が,オンネスをリーダーとするグループによって始まった。次表に示す金属は,それぞれの転移温度以下では電気抵抗が殆どなくなる。

電気抵抗が殆ど認められないこの状態では,その金属の中を流れる電流は殆ど減衰しない。この様な現象を超伝導(超電導)と呼び,超伝導体の中を流れる電流を永久電流と呼んでいる。1年以上も永久電流が流れ続けた実験もある。

近年,超伝導物質の研究が急速に進み,転移温度が窒素液化温度(195.8)や室温のものも報告されている。( YBa2Cu4O8 層状ペロブスカイト構造80K(193)で抵抗0)

超伝導の転移温度

金 属

転移温度〔K

アルミニウム

1.175±0.002

亜    鉛

0.85±0.01

ス    ズ

3.722±0.001

水    銀

4.154±0.001

7.196±0.006

 

(2) 超流動現象  2.18Kより温度の低い液体ヘリウムIIでは,奇妙な現象が起こる。液体ヘリウムIIを入れた容器を傾けなくても,ヘリウムは器壁を伝わって器外へ流出する。また,ヘリウムに空の容器を接触させると,ヘリウムが器壁を伝わって容器内へ流入する。この様な流出・流入は,容器の内外の液面の高さが等しくなるまで続く。液体が重力に無関係に容器の内外に出入りするこの様な現象を超流動という。超流動は量子力学を用いなければ説明できないが,全原子のエネルギー状態がほぼ同一になり,1つの原子のもつ流動性が巨視的なスケールに拡大された現象として説明される。

 

ハロゲン

FClBrTAtは周期表17族元素で,ハロゲンと総称される。Atは人工的に1940年につくられた。放射性があり,天然に極僅かしか存在しない。それで,普通Atを除いた4元素についてハロゲンを論じることが多い。ハロゲンの語源はギリシア語のHalo(造塩)gen()に由来し,「造塩元素」の意味をもつ。

それぞれの元素名の由来は,フッ素fluorineが蛍石fluorite,塩素chlorineが単体の色(ギリシャ語の黄緑chloros),臭素bromineが単体の臭い(ギリシャ語の悪臭bromos),ヨウ素iodineが単体蒸気の色(ギリシャ語のスミレ色ioeides),アスタチンastatineが放射性による不安定さ(ギリシャ語の不安定astatine)である。

 

ハロゲンの単体と化合物

(1) フッ素  フッ素は,天然に蛍石CaF2,氷晶石Na3AIF6  (溶融塩はAIF33NaF),フッ素リン灰石CaF2·3Ca3(PO4)2等の化合物として存在する。植物の灰からは平均0.1%見出され,哺乳動物の歯に0.3%含まれている。

フッ素は,フランス人のモアッサンH.Moissanによって初めて単体として取り出された。彼は1886年,液体フッ化水素にフッ化カリウムを溶解し,白金イリジウムの容器と電極を使って電解を行い,フッ素の遊離に成功した。その後,アルゴW.L.Argoは,1919年にフッ化カリウムの溶融塩電解でこれを取り出している。

フッ素は淡黄色の気体で激しい刺激臭があり,空気よりも重い。沸点−188.14℃,融点−219.62℃で,液体は淡黄色,固体は無色。電気陰性度最大で,殆どの元素と室温で反応する。水とは激しく反応し,HF02の他03H2O2OF2等が生じる。PtAu500℃以下で反応するが,NiAlCuは表面にフッ化物をつくり,侵され難い。

(2) 臭素  臭素はフランスのバラールA.J.Balardによって1924年に発見された。

塩素に比べると存在量が少なく,海水中には僅か0.015%しか含まれていない。

工業的には,海水のにがり中にある臭化物を塩素で酸化して製造する。

MgBr2 Cl2 ―→ MgCl2 Br2

臭素は水に比較的よく溶け(3.5),臭素水になる。臭素水は塩素水より安定で,水を分解する作用も弱い(Br2 H2O ―→ HBr HBrO)

臭素は融点−7.2℃,沸点58.78℃,室温では赤褐色で不快な刺激臭のある重い液体。

(3) ヨウ素  ヨウ素は1811年にフランスのクールトアB.Courtoisによって発見された。これにiodineと命名したのはゲーリュサックGey–Lussacである。

ヨウ素は動物・植物・鉱物の3界を通じて広く分布しているが,その存在量は非常に少なく地殻の0.0001%,海水には0.001%含まれているに過ぎない。海草の灰の中には1%程度存在している。日本では千葉県大多喜その他の地方で海草からヨウ素を採取している。ヨウ素の一般的な製法は,塩素によるヨウ化物の酸化である。

2NaI CI2 ―→ 2NaCl I2

融点113.5℃,沸点184.3℃。固体は黒紫光沢,液体は赤色,気体は紫色で,昇華し易い。

 

セレン,テルル

セレンとテルルは硫黄によく似た性質を示す。同素体に金属性のものがあり,これは半導体となる。共に有毒である。

セレン,テルルの単体の性質

元 素

セレン Se

テルル Te

同素体

結 晶

金 属

無定形

金 属

形・結晶

単斜晶系

六方晶系

——

六方晶系

灰 黒

銀 灰

 密度〔g/cm3

4.4

4.79

——

6.24

融点〔℃〕

144

217

——

449.5

沸点〔℃〕

684.9

684.9

——

990

水・塩酸

不 溶

不 溶

不 溶

不 溶

硝酸

 

硫黄

同素体では斜方硫黄Sαと単斜硫黄Sβがよく知られ,SαSβは互いに変化する。Sβを室温に放置すればSαに,Sαを融解して徐々に冷やすとSβになる。また,Sα95.5℃以上に保ってもSβになる。この温度を,硫黄の転移点という。

転移点(95.4)

Sα(低温)  Sβ(高温)

硫黄を熱すると119.0℃で融解して黄色流動性の液体Sλになり,更に熱すると黒褐色粘稠性の液体Sμに変わる。これは445℃で沸騰して赤褐色の蒸気を出す。Sμを冷水中に入れるとゴム状硫黄が得られる。

硫黄は水に溶けないが,アルコールには少し溶け,二硫化炭素にはよく溶ける。但しゴム状硫黄は高分子になっており,二硫化炭素にも溶け難い。

水酸化ナトリウム水溶液や石灰水等のアルカリには,温めると溶ける。

6S6NaOH―→2Na2S2Na2S2O33H2O

 

アルカリ金属

アルカリ金属は,最も典型的な金属元素である。どれも類似した性質を持ち,単体は軟らかい銀白色の金属で,空気中では酸化され易く,石油中に保存する。沸点・融点は原子量が大きくなる程低く,これは原子の電子配置や原子半径からも理解できる。

アルカリ金属の原子の電子配置は,全て最外殻のs軌道に電子を1個もつ点で共通性がある。このs電子は放出し易いもので,これを放出すると1価の陽イオンができる。したがってイオン化エネルギーは小さく,原子番号の増大と伴に一段と小さくなる。

NaKは,イギリスのデービーH.Davyが白金皿でNaOHKOHを融解して電気分解する方法で初めてつくった(1807)Liは,スウェーデンのアルフェドソンJ.A.Arfwedsonがぺタル石の成分元素として1817年に発見し,その単体はブンゼンが融解塩電解で取り出している(1855)RbCsは,ドイツのブンゼンR.W.Bunsenらにより,1861年及び1860年に,鉱泉水のスペクトル分析で各々見い出されているが,単体はどちらもそれらの塩の融解塩電解で得られた。

Frは,1939年フランスのキュリー研究所のペレーM.Pereyによって発見された放射性元素である。

アルカリ金属元素のイオンが水溶液中で還元されて単体にはなり難いので,どれもその塩の融解塩電解で単体を得ている。

 

アルカリ金属の反応

水との反応は原子番号が大きい程激しく,水酸化物と水素を生じる。Liを除いて反応時は融解し,Naでは時折,K以下では常に発火する。

2M2H2O―→2MOHH2

アルコールとも反応し,アルコキシドとH2を生じるが,エーテルや灯油とは反応しない。

空気中では湿気があれば水酸化物となり,乾燥空気中ではLiを除いて酸化される。高温にすると燃焼してLi2ONa2O2KO2RbO2CsO2等が生じる。ハロゲンとも同様に反応し,ハロゲン化合物MXが生じる。水素とは高温で水素化物MHを生じる。窒素,炭素,ケイ素等とは反応しないが,Liだけは例外で,窒化物や炭化物,ケイ化物になる。

6Li N2 ―→ 2Li3N

 

2族元素,アルカリ土類金属

2族元素は,以前はアルカリ土類金属と同義だったが,IUPACは無機化学命名法においてCaSrBaRaをアルカリ土類金属と呼ぶと定義したので,今日ではBeMgはアルカリ土類金属に含まれない。BeMgは,Ca以下の他の元素に比べて塩基性(金属性)が弱く,12族のZnCdHgと似た性質があるので,この様に区別して扱われる。

2族元素はイオン化傾向が大きいので,単体として産出しない。アルカリ金属に次いで軽く軟らかい。原子価は2価で,金属性が一般的に強いので陽イオンになり易く,その水酸化物はアルカリ金属に次いで強塩基性を示す。アルカリ土類の「土」には,水に溶け難く,熱に強いという意味がある。

マグネシウムの製造は,カーナライトMgCl2 ·KCl·6H2O,マグネサイトMgCO3,にがりMgCl2 ·6H2O等から純粋な無水MgCl2をつくり,これを融解し電気分解する方法で行う。その時,融点を下げる為塩化ナトリウムを加える。

(鉄陰極) Mg2 2e- ―→ Mg  (炭素陽極) 2Cl- ―→ Cl2 2e-

カルシウムは,CaCl2の融解塩電解で製造される。

ベリリウムは,フッ化ベリリウムをMgで還元するか塩化ベリリウムをアルカリ塩化物と混合して溶融塩電解して製造される。

バリウムは,バリウム酸化物を高温真空中でアルミ還元して製造される。

 

2族元素の反応

2族元素は,どれも標準酸化還元電位が水より低く,水と反応できる。

M2H2O―→M(OH)2H2

しかし,Be(OH)2Mg(OH)2は溶解度が小さくこれが金属表面を覆うので,Beは反応せず,Mgは熱しないと反応しない。CaCa(OH)2の保護膜をつくるので,冷水での反応は穏やかであり,熱水では激しくなる。アルコールに対する反応も水と同様である。

希酸とはどれもよく反応するが,Beは濃硝酸と反応せず,SrBaは濃硫酸や濃硝酸とは徐々に反応する。

空気とは,どれも表面が酸化され,熱すると燃焼して酸化物MOになる。この時,Mgでは明るい光を出す。また,同時に窒化物M3N2のできている事が多い。窒化物の生成は,酸素量が少なくなる程多くなる。

2MO2―→2MO3MN2―→M3N2

Beは両性を示し,強塩基に溶けて水素を発生する。他の2族元素は塩基と反応しない。

Be2NaOH2H2O―→Na2[Be(OH)4]H2

 

亜鉛

天然に単体で産出する事はないが,地殻中に広く分布している。主要鉱石は閃亜鉛鉱ZnS,菱亜鉛鉱ZnCO3である。硫化物は焼いて酸化物とし,これを炭素と混ぜて熱すると亜鉛が蒸発して出てくる。精製は蒸留,電解によって行う。青みを帯びた銀白色の金属光沢がある。融点419.53℃,沸点907℃,密度7.13g/cm3室温ではややもろく加工し難いが,100115℃で展性・延性が著しく増大するので,薄板や線に加工できる。200℃以上でまたもろくなり,粉末にする事ができる。

湿った空気中で塩基性炭酸亜鉛の被膜を生じ,内部を保護する。酸素又は空気中で高温に熱すると光を出して酸化物になる。赤熱状態で水と反応し,分解して水素を発生する。乾いたハロゲンとは室温で反応しないが,水分があれば容易に侵される。希酸及び濃塩基溶液と反応し,水素を発生して塩を生じるので,希酸か濃塩基溶液と共に還元剤として用いられる。アンモニア水,シアン化カリウム水溶液には,水溶性錯塩をつくって溶ける。トタン板,電池の製造の他,黄銅,洋銀等重要な合金の材料となる。

 

水銀

主要鉱物はHgSで,自然水銀として産出する事もある。室温常圧で液体である唯一の金属。融点−38.87,沸点356.58,密度13.546g/cm3空気中では変化しないが,300400に熱すると酸化水銀(U)HgOとなる。塩素と作用して塩化水銀(I)Hg2Cl2を生成。塩酸・希硫酸とは反応しないが,硝酸・濃硫酸・王水に溶ける。また,多くの金属とアマルガムをつくる。単体・無機化合物とも皮膚吸収,煙・蒸気を吸い込むと猛毒。有機化合物は大部分が有毒。

スズ

スズは天然には錫石SnO2として産し,これをCSiO2CaCO3等で還元し,粗スズをつくり,更に電解法等により精製する。低温型のaスズと高温型のスズが知られている。転移温度は18℃だが,この温度付近では転移速度は小さいが低温では速い。aスズは灰色スズともいい,ダイヤモンド型構造,格子定数α0.649nmbスズは白色スズともいい,普通の銀白色の金属スズはbスズである。融点231.97,沸点2270da205.75db207.31加工性はよいが,棒状のものを曲げると表面は何も変化がないのに竹を折る様な音がする(錫声と呼ぶ)bスズを−30以下に保つとaスズになる。この時金属スズは膨張し,崩れ易くなる。寒冷地で見られる錫ペストはこれである。空気中では安定だが,高温では燃焼し酸化スズ(II)となる。両性を示し,ブリキ(鉄板にスズメッキ),各種合金に使われている。化合物のスズの酸化数は+2か+4である。スズ(II)化合物は酸化され易く,還元剤として働き,スズ(IV)化合物となる。

 

方鉛鉱PbSから粗鉛をつくり,これを電解法,乾式法等により精製する。帯青白色の軟らかく重い金属。構造は,面心立方格子,格子定数a0.495nm融点327.502沸点1740密度11.35g/cm3(20)熱により次第に酸化されPbOPb3O4等となる。希酸には侵され難いが,酸化力のある酸(硝酸等)には溶ける。両性を示し,板,管等として,また蓄電池の電極等に用いられる他,各種合金の成分となる。可溶性鉛化合物は全て有毒。酸化数+2の化合物が多く,+4のものもあるが+2のものに比べて不安定である。

 

遷移元素の性質

遷移元素の融点が高く硬いのは,d軌道電子を含む多数の電子が金属結合に参加するからである。遷移元素はまた,幾つかの酸化数を示すものが多い。これは,結合に関係する電子の全てが,常に使われるわけではないからである。例えばマンガンは最高7個の電子が結合に関与するが,実際には26個が使われる事もあり,+2〜+7の酸化数を示す。

4周期遷移元素の性質

元素

Ca

Sc

Ti

V

Cr

Mn

Fe

Co

Ni

Cu

Zn

融点〔℃〕

839

15411

1660

1887

1860

1244

1535

1495

1453

1083

420

沸点〔℃〕

1484

2831

3287

3377

2671

1962

2750

2870

2732

2567

907

密度g/cm3

1.55

2.99

4.54

6.11

7.19

7.44

7.87

8.90

8.90

8.96

7.13

原子半径〔×1010m

1.97

1.63

1.45

1.31

1.25

1.12

1.24

1.25

1.25

1.28

1.33

M2半径〔×1010m

1.14

---

1.00

0.93

0.87

0.81

0.75

0.79

0.83

0.87

0.88

結晶構造

面立

六最

六最

体立

体立

立方

体立

六最

面立

面立

六最

電気陰性度

1.00

1.36

1.54

1.63

1.66

1.55

1.83

1.88

1.91

1.90

1.65

標準電極電位

2.84

2.03

1.63

1.13

0.90

1.18

0.44

0.277

0.257

0.340

0.763

主な酸化数

2

3

24

25

26

27

24,6

14

14

13

2

面立は面心立方構造,六最は六方最密構造,体立は体心立方構造

 

遷移元素の特色

遷移元素の一般的な特色は次の様になる。

(1) 周期表の第4周期以後に位置し,311族に属する。

(2) 原子の電子配置は,原子番号の増加につれて,最外殻ではなく内殻のd軌道,f軌道に電子が満たされていく。

(3) 一般に密度が大きく,Scを除き重金属である。融点・沸点も高く,融解熱も大きい。比較的硬い。

(4) 有色の化合物が多い。

(5) 単体のイオン化傾向は比較的小さく,また反応性も小さい。

(6) 同一元素で,幾つかの酸化数をもつものが多い。

(7) 錯イオンをつくる。

 

 








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