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資料4 気体の発生法とその性質

 

水素

水素には,軽水素1H(プロチウム),重水素2H(ジュウテリウムD),三重水素3H(トリチウムT)3つの同位体が存在する。水素の同位体は,他の元素の同位体に比べて質量比が大きく,1H2D2の物理的性質にかなり差がある。

水素の単体は,H2分子として存在し,室温常圧で最も軽い物質である。紫外線等の光エネルギーを与えると解離して,反応性に富む原子状水素になる。

H22H436kJ

水素は,室温では比較的安定な気体で,F2以外とは直接反応しない。光を当てるとCl2とも反応する。高温にすると殆どの元素と直接反応する。

水素と酸素との体積比21の混合気体を爆鳴気といい,点火すると爆発的に化合する。この反応は高温(2700)が得られるので,酸水素炎に用いられる。

2H2O22H2O572kJ

水素は,非金属性元素とは共有結合で分子性化合物をつくる。電気陰性度が小さい金属元素とは水素化物イオンH-となってイオン性化合物をつくる。

工業的には,水の電解,水性ガスの変性,鉄と水蒸気の反応,石油類のガス化等で製造されている。

 

窒素(融点−209.86℃,沸点−195.8)

窒素N2は空気中に多量に含まれ,安定である。酸素等他の元素との親和力は小さい。一方,アンモニウム塩や硝酸塩,尿素等重要で多量に消費される窒素化合物があるので,古くから空中窒素の固定は重要な課題だった。地殻中にはチリ硝石NaNO3,硝石KNO3等硝酸塩の形で存在している。

硝酸塩は,化学的に活発であり,例えば,黒色火薬は次の様に爆発する。

3CS2KNO3―→K2S3CO2N2

近年,大気汚染あるいは光化学的大気汚染が問題になっているが,これは,エンジンの排ガス中の窒素酸化物,あるいはそれが光エネルギーを受けて生じるオキシダントが原因となっている。

 

酸素(沸点−182.96℃,融点−218.4℃)

典型的な非金属元素である。原子の最外殻の電子配置はで,分子をつくるときは最外殻の電子数が8個になる安定な化学結合をしており,00で表される。また,の電子配置をとる状態も考えられる。これらの電子配置は02N2に比べて他の元素と反応し易い事を説明するのに役立つ。

酸素は化学的に活発で,ハロゲン,希ガス,白金,金,銀以外の元素を直接酸化する力をもつ。このとき,一般に発熱し,燃焼,爆発に至ることもある。

酸素は,主に液体空気の分留で得られ,液体や固体は淡青色である。液体酸素は常磁性の為,ネオジム磁石(等強い磁石)に引き寄せられる。

 

オゾン(沸点−111.3℃,融点−193℃)

酸素の同素体で,空気または酸素中の無声放電で製造されている。

3O22O3286kJ

気体は淡青色,液体は黒青色,固体は暗紫色で,特有の生臭い臭いをもつ。酸素は常磁性体だが,オゾンは反磁性体である。オゾンは光,熱等で分解して酸素になり,強い酸化作用を示す為,殺菌や漂白等に用いられる。

 

塩素

1774年,スウェーデンの化学者シェーレK.W.Scheeleは,軟マンガン鉱MnO2·nH2Oに塩酸を作用させ,初めて塩素をつくった。現在では塩化ナトリウム水溶液の電解で製造される。塩素は天然には単体として存在しないが,化合物としてはNaKMgCa等の金属化合物として広く多量に存在し,その種類は非常に多い。海水は塩素の宝庫だが,岩塩にはNaClの他にCaSOCaCl2MgCl2KCl等を含んでいるものが多い。

塩素の単体は,融点−101.0℃,沸点−33.97℃で,室温では黄緑色・刺激臭をもつ重い気体で極めて有毒である。液体は淡黄色,固体は黄白色である。

 

さらし粉

さらし粉は,消石灰粉末に塩素ガスを通じて製造される。

2Ca(OH)22Cl2Ca(ClO)2·CaCl2 · 2H2O138kJ

主成分はCaCl(ClO)· H2Oの複塩で,Ca(OH)2等が不純物として含まれている。カルキ,クロル石灰等とも呼ばれ,有効塩素量3537%で漂白剤,殺菌剤,消毒剤等に用いられている。さらし粉は過去大量に使用されていたが,不安定である事,沈殿物が生じ易い事等不便な点があり,近年はさらし液や高度さらし粉に置き換えられている。さらし液は,石灰乳に塩素ガスを通じたもので,液体として用いられる。高度さらし粉は,濃い石灰乳に塩素ガスを通じ析出するCa(ClO)2をろ別したものである。

 

アンモニア

アンモニアは,極めて水に溶け易い。アンモニア水は濃度が大きくなる程密度が小さく,軽くなる特色がある。アンモニアは凝縮し易い。液体アンモニアは蒸発熱が大きく(23.35kJ/mol),製氷等に利用されている。また,アンモニアは水と似た極性分子であり,液体アンモニアは溶媒としても使われている。市販のアンモニア水は28%水溶液(比重0.9014.5mol/L)である。

アンモニアは,酸素中では黄色の炎をあげて燃え,窒素と水を生じる。

4NH33O2―→2N26H2O

また,種々の金属と反応し,ナトリウムとはナトリウムアミドNH2Na,マグネシウムとは高温で窒化マグネシウムMg3N2を生じる。

2NH32Na―→2NH2NaH2

2NH33Mg―→Mg3N23H2

ハロゲンと反応すると,窒素を遊離する。

8NH33Cl2―→N26NH4Cl

酸とはアンモニウム塩をつくり,金属イオンとは錯イオンをつくる事が多い。アンモニアの合成法には,装置や触媒,反応温度の違いで様々な方法がある。

 

硫化水素(融点−85.5℃,沸点−60.7℃)

無色・腐卵臭の悪臭をもつ気体。分子は二等辺三角形で∠H-S-H87.77°。水に溶けた硫化水素水は弱酸で,電離度は25℃の0.1mol/L水溶液で0.00007である。

H2SH+HS    HSHS2

硫化水素水を空気中に放置すると,空気中の酸素によって徐々に酸化され,硫黄を遊離する。これは硫黄よりも酸素の方が水素と化合し易い為である。また,硫化水素水を熱したり,過マンガン酸カリウムや二クロム酸カリウムの酸性溶液あるいは硝酸等と反応させれば,硫黄を析出する。

3H2S8HClK2Cr2O7―→2KCl2CrCl37H2O3S

これらの変化は,硫化水素に還元作用がある為に起こる。この他,濃硫酸を分解させたり,ハロゲンと反応したりする性質も,全て硫化水素の還元作用による。

H2SO4H2S―→SO22H2OS

SO22H2S―→2H2O3S    Cl2H2S2HClS

 

二酸化硫黄

気体を亜硫酸ガスという。工業的には硫黄の燃焼,実験室では銅と濃硫酸で熱するか亜硫酸水素ナトリウムに強酸を加えて発生させる。無色で刺激臭の気体(融点−75.5または72℃,沸点−10)。溶解度39cm3/1 cm3(20)。水溶液中には亜硫酸を含み,還元性を示し,漂白に用いられる。

 

塩化水素

天然には火山の噴出ガス中に存在し,ヒトの胃液中にも塩酸として存在する。かなり液化し易い気体である。湿った空気中で発煙し,水によく溶けて塩酸となる。アンモニアにあうと塩化アンモニウムの白煙を生じる。市販の塩酸は37%,密度1.19g/cm3の塩化水素水溶液が一般的であり,濃度c()と密度dg/cm3〕との関係は,c200(d1)の様になる。

20.24%の塩酸(6mol/L)は常圧で110℃の沸点を示す。そして,これより濃度が大きくても小さくても,塩酸の沸点は下がる。この20.24%以上の濃度の塩酸を濃塩酸と呼んでいる。塩酸は代表的な強酸で,その電離度は約1である。

塩化水素の工業的製法では,塩素と水素を直接化合させる。

H2Cl2―→2HCl

塩酸の主な用途は,食料品(L-グルタミン酸ナトリウム,醤油)の製造や,化学工業,製鉄工業等である。

 

炭素酸化物

一酸化炭素COは,融点−205.0℃,沸点−191.5℃の無色気体。水1 cm3の溶解度は0℃で0.035 cm3であり,殆ど溶けない。引火性で,還元性がある。有毒で,濃度500ppm以上では危険である。メタノールの合成原料や,金属酸化物の還元剤として用いられている。ギ酸に濃硫酸を加えて熱するとCOが発生する。

二酸化炭素CO2は昇華点−78.5℃の無色気体。三重点は−56.6℃,5269hPaである。固体はドライアイスといわれ,冷媒に用いられる。水に少し溶け弱酸性を示す。水1cm3への溶解度は0℃で1.71 cm320℃で0.88 cm340℃で53 cm3。濃度が大きくなると窒息するが毒性の仕組みは未だ判ってない。

HCOOH―→COH2O

 

窒素酸化物

窒素の酸化物には,一酸化二窒素N2O,一酸化窒素NO,三酸化二窒素N2O3,二酸化窒素NO2(低温・液体では二量体の四酸化二窒素N2O4),五酸化二窒素N2O5等がある。

N2Oは麻酔性があり,これを吸入すると笑いの表情を起こすので笑気とも呼ぶ。室温では安定である。300℃以上でN2O2に分解し始め,酸化剤となる。

NOは空気中で酸化され易く,NO2になる。高温では分解してN2N2OO2を生じる。

N2O3は分解し易く,気体ではNONO2の平衡混合物になる。水溶液では亜硝酸となり青色となるが,更に分解して硝酸とNOを生じる。

NO2は空気中では比較的安定だが,高温ではNOO2に分解する。水に溶けると,亜硝酸と硝酸を生じる。酸化剤となる。

N2O5は室温でNO2O2に徐々に分解する。水に溶けると硝酸になる。固体中ではNO2NO3になっている。強い酸化剤になる。

窒素酸化物の性質

酸化物

N2O

NO

N2O3

NO2  (N2O4)

N2O5

融点〔℃〕

90.8

163.6

102

9.3

30

沸点〔℃〕

88.5

151.8

3.5分解

21.3

分解4550

()

赤褐()

赤褐()

(液,固)

(液,固)

(),無()

水溶性

微溶

不溶

溶,分解

溶,分解

溶,分解

生成熱

82.05()

90.25()

83.72()

33.18(NO2)

11.3()

kJ/mol

9.16(N204)

 

メタン

メタン系列(パラフィン族)炭化水素で最も簡単な構造をもつ無色無臭,引火性の気体。常圧の水には溶け難いが加圧下では溶ける。各種有機溶媒には溶ける。燃料の他,化学工業原料として使われている。

 

アルケンの製法

エチレンやプロピレンは,主にナフサの熱分解で合成している。主反応は,アルカンの分解及び脱水素反応である。

(1) C4Hl0―→CH2=CH2C2H6  (分解反応の例)
(2)
 C2H6―→CH2=CH2H2   (脱水素反応の例)

(1)の反応は94kJ/molの吸熱反応で,平衡は300°C以上で生成系に有利となる。

(2)の反応は136kJ/molの吸熱反応で,平衡は670°C以上で生成系に有利となる。実際の反応は,7001400°C,常圧で行われ,種々のアルケンやアセチレンが生じる。生成物は急冷され,低温加圧蒸留で各々の成分に分離精製される。

エチレンの生産量の半分はポリエチレン製造に用いられる。その他,塩化ビニルやアセトアルデヒド,エチレンオキシド,エチレングリコール,スチレンの製造原料等に利用される。プロピレンの用途はポリプロピレン,アクリロニトリルの製造原料等である。

 

アセチレン

融点−81.8°C,沸点−74°Cの気体。分子は直線構造で,CC0.12024nmC-H0.10625nm。無色無臭だが,カーバイドから発生させたものはホスフィン等を含むので悪臭をもつ。加圧下では単体に分解して爆発し易い。アセチレンは,溶接切断用やクロロプレン等の原料に用いられている。

不飽和結合(三重結合)による付加反応を起こし易く水素,ハロゲン,ハロゲン化水素との付加反応は,2段階に起こる。

CHCHH2―→CH2CH2

CH2=CH2H2―→CH3-CH3  (触媒NiPtPd)

水銀(U)塩を触媒として水を付加させると,アルデヒドになる。

C2H2H2O―→CH3CHO

オゾンと反応するとオゾニドを生じ,これを水で分解するとカルボン酸となる。

C2H2O3H2O―→2HCOOH

加熱あるいは触媒の作用で付加重合を行う。

3C2H2―→C6H6 (ベンゼン)

ドイツのレッペは,第2次大戦中に,高圧アセチレンを用いた合成反応を研究し,3×106Pa以下,100200°Cの条件で種々の化合物の合成に成功した。これらの合成反応をレッペ反応といい,ビニル化,エチニル化,環化重合,カルボニル化等がある。

ビニル化の例:C2H2ROH―→CH2=CH-OR  (触媒アルカリ)

カルボニル化の例:C2H2COROH―→CH2=CH-COOR  (触媒NiBr2)

アセチレンのH原子は,種々の金属で置換されてアセチリドをつくる。アルカリ金属やアルカリ土類金属と熱するとアセチリドになる。

C2H22M―→M2C2H2 (Mはアルカリ金属)

銀や銅(I)は,そのアンモニア性溶液にアセチレンを作用させると,アセチリドを生じ,これらのアセチリドを乾燥させたものには爆発性がある。

C2H22[Ag(NH3)2]―→Ag2C22NH4

アセチレンの検出は,臭素水や過マンガン酸カリウム溶液の脱水で行うが,これらは他の不飽和結合と同じなので,独自の検出法としては銀や銅のアセチリドの沈殿反応を用いる。銀では白色だが,銅では赤褐色沈殿が生じる。

 

 








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