トップ化学II 改訂版6部 課題研究>第2章 課題研究の実践>第3節 その他のテーマ例

3節 その他のテーマ例

 

参考実験 1 周期表Webページの作成

【目標】 (1) インターネットに見られるWebページの特徴の1つにハイパーリンク機能がある。周期表はそのリンク機能を利用するのに適した教材である。各元素について自分なりのWebページを作る事で,元素の性質の理解を深める。

(2) 周期表と18種類の元素からなるWebページを作っても,1枚のFDに収まる。作成したFDを提出すると共に,生徒同士が交換し,ネット上での発表を体験する。

【準備】 コンピュータ,ワープロソフト,FDMOやフラッシュメモリー等

【作成上の留意点】 1.何を載せるか。

生徒はインターネットで数多くのWebページを見ている。周期表のWebページとして何を載せるか,その例を以下に示す。

(1) 表紙のページ

(a) 周期表…目次に相当し,リンクさせて各元素のページに移動できる様にする。

(b) 自己紹介…作成者のプロフィールを載せる。

(c) 更新記録…作成年月日,改訂年月日が判る様にする。

(2) 元素のページ

(a) 元素記号

(b) 原子番号

(c) 原子量

(d) 族番号…族の名称。ハロゲン,希ガス,アルカリ金属,アルカリ土類金属等。

(e) 単体の説明…単体の融点,沸点,状態,色,化学的性質等。

◆更に工夫できそうな事

() 単体の発見,分離の物語

() 単体の製造方法…工業的製法,実験室的製法

() 用途,身の回りでの使用例

() 単体の写真…多くの高校生はカメラ付き携帯電話を所持している。学校にある単体の写真を撮らせてもよい。

() 同位体の種類と組成…単一核種のものもある。放射性同位体迄含むと種類が増える。

() 化合物へのリンク

2.使用ソフト

現在日本で広く使用されているワープロソフトの『ワード』,『一太郎』にはHTML形式で保存する機能が付いている。ワードは「webページとして保存」,一太郎は,「他形式の保存/開く」という操作を行えばよい。ファイルの大きさは1/3以下になる。また,表計算ソフトの『エクセル』でも保存できる。保存の際に,ファイルの種類でwebページを選んで保存する。

Webページ作成ソフトにIBMの『Webページビルダー』がある。この様な専用ソフトを利用すると,レイアウトが自由にでき,写真やイラストも利用し易い。しかし,著作権の問題があり,学校で使用するコンピュータ全てにインストールされているとは限らない。

FDに保存した自分のWebページは,生徒が家庭で利用するパソコンで見たり,修正する事ができる。

3.使用ソフト

ハイパーリンクについては,上記のソフトでは,「挿入」をクリックすると,ハイパーリンクの表示がある。これを利用する。

4.現著作権の問題

インターネット上には周期表を公開しているWebページがある。その内容をコピーしたり,出版物の内容をそのまま自分のWebページに使用すると,著作権の侵害になる。この点を生徒に再認識させる必要がある。

【発表】 FDCD-R等で提出させる。校内LANが整備されている学校では,そのサーバー上に周期表のサイトを設け,皆が見る事ができる様にしてもよい。

◆メンデレーエフ

18341907年。シベリアのトボルスタの中学校長を父として,14人兄弟の末子に生まれた。幼くして父を失い,生活の苦労を味わいながら成長した。科学はシベリアへ追放中の政治犯から初めて教わった。母はメンデレーエフの素質を見抜き,彼に最高の教育を受けさせる為,首都のペテルスブルグに引越した。しかし,大学の学区制の為,シベリアで教育を受けた彼は,ペテルスブルグ大学に入学できなかった。

母の努力により,結局彼は教育大学に入ったが,間もなく肺結核にかかった。幾度も医者に見放される状態だったが,入院や転地療法により次第に健康をとり戻す事ができた。

その間も彼は熱心に勉強を続け,25歳の時,憧れのヨーロッパ留学が認められた。フランスとドイツで2年間を過ごした後,かつて入学できなかったペテルスブルグ大学で化学を教える事になった。

講義用教科書を書き始めた彼は,大きな問題にぶつかった。当時,60種程の元素が知られていたが,それらを体系的に取り扱う理論が欠けていたのである。原子量が1つの鍵になると思われた。ベルセリウスらの努力により,原子量はかなり正確に決められていた。彼は,元素を原子量の順に並べてみた。他にもこの様な試みをした化学者はいたが,彼の考えは一歩進んでいた。原子量の小さい元素から順に左から右へ配置し,しかも原子価の同じ元素が上下に並ぶ様に,何段にも重ねて並べた。こうして化学のバイブルといわれる周期表の最初の形ができた。彼はこの周期表を1869年に縦に並べたものをまず発表し,続いて横に並べたものを,1871年に化学学術雑誌Liebig’s Annalenに掲載した。

周期表をつくってみて,表に幾つかの空席ができる事に彼は気づいた。この空席には未発見の元素が入ると考え,彼は1871年,未発見元素の性質を予言した。1875年,ボアボードランにより発見されたガリウム,1879年,ニルソンによるスカンジウム,そして1886年,ウインクラーによるゲルマニウムは,その性質が彼の予言とほぼ同じだった。ここに,彼の名声は不動のものとなり,古代からの「元素とは何か」という大問題の解決に,周期表は大きな役割を果たす事になった。

また,彼の実験上の主な功績に溶液の化学,液体-蒸気系の研究,石油の性質と成因の研究がある。彼は,政治的出版物に自由主義的見解を述べた為,王立学士院会員に選ばれなかった。彼は1893年以後はロシアの度量衡標準局長になり,そこで研究を続けた。

 

参考実験 2 同素体をつくる ((A)オゾン,(B)リン,(C)硫黄)

【目的】同素体をつくり,理解と関心を高める。

【準備】 (A) オゾン  オゾン発生器,誘導コイル,蓄電池(6V),洗気瓶,ゴムふいご,濃硫酸,ヨウ化カリウムデンプン紙,ゴム管

(B) 赤リンと黄リン(白リン)  一端を封じた硬質ガラス管,スタンド,鉄板,蒸発皿,ピンセット,赤リン,黄リン(水中保存),二硫化炭素,ろ紙

(C) 硫黄  時計皿,漏斗,試験管はさみ,ビーカー,薬さじ,ルーペ,粉末硫黄,二硫化炭素,ろ紙

【操作】(A)オゾン

(1) オゾン発生器にゴムふいごを使って乾いた空気を送る。一方,誘導コイルを作動させて高電圧を掛け,無声放電させる。

(2) 湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙を排気口に近づけてみる。あまり近づかずに排気口から出る気体の臭いを嗅ぐ。

(3) 電源を一度切った後,排気口にゴム管をはめ,もう一度オゾンを発生させる。

(B) 赤リンと黄リン

(1) 一端を封じた硬質ガラス管に赤リンを少量入れ,スタンドにとめ,赤リンの入っている部分を熱する。

(2) 試験管に黄リン1粒をピンセットで取り,二硫化炭素を少量加えて振り,溶かす。蒸発皿にろ紙を入れ,黄リンの二硫化炭素溶液をふりかけ,暗くして観察する。赤リンについても,二硫化炭素に溶けるか試す。

(3) スタンドの輪の鉄板上に赤リンと黄リンを少量取り,熱する。どちらが先に発火するか,また燃焼の様子を観察する。

(C) 硫黄

(1) 粉末硫黄を小さじ1杯試験管に取り,二硫化炭素2cm3を加えてよく振り,溶かす。この溶液を,ろ紙の上端を指で押さえて広がらない様にして,漏斗でろ過する。ろ液は時計皿にとり,通風のよい所で放置して二硫化炭素を蒸発させる。析出した斜方硫黄の結晶を,ルーペで観察する。

(2) 粉末硫黄を試験管に1/4とり,弱火でゆっくり熱して融かす。全部融解して黄色液体になった時,漏斗に水で張りつけたろ紙上に流し込む(A)

冷えて表面が固まりかけた頃,ろ紙を取り出して広げる。十分に冷えたら,生じた単斜硫黄の結晶をルーペで観察する。

(3) (2)で用いた試験管に粉末硫黄を1/3とり,振りながら強く熱して融解する。融解硫黄は,加熱を続けるとさらさらした状態から流動性のない状態に変わり,更に熱すると再び流動性をもち,やがて沸騰が始まる。この時,冷水を入れたビーカーに流し込む(B)。冷えてから生じたゴム状硫黄を取り出し,引き伸ばして観察する。

A 単斜硫黄の生成

B ゴム状硫黄の生成

【実験上の注意】 (A) T.オゾン発生器の作動中は,高電圧がかかっている。触れない様に注意する。生徒には臭いをかがすだけにして,近づけない様に注意する。

(B) T.黄リンは毒性が強いから,触れない様に注意する。生徒に黄リンの二硫化炭素溶液に関する操作をさせてはいけない。

U.実験終了後,ガラス管中の黄リンを除くには,希硝酸を加えて放置しておけばよい。酸化してリン酸に変わるので心配ない。

V.(2)は,暗い場所で観察すると,光を見る事ができる。

(C)  I.二硫化炭素は有毒かつ引火性である。火気から遠ざけて実験する。

U.(2)では,弱火で穏やかに熱する様に注意する。高温になると粘い赤褐色の液体になるので,その手前の黄色流動性の時にろ紙に流し込む。

V.観察終了後,つくった同素体は全部回収して瓶に保存する。1年後位には,磨り潰して粉末硫黄として再び使用できる。

【結果】 (A) (1)火花を出さずに放電する。

(2) オゾン特有の生臭い臭いがする。ヨウ化カリウムデンプン紙が青紫色に変わる。   2KI H2O O3 ―→ 2KOH O2 I2

(3) ゴム管が切れてぼろぼろになる。したがって,ゴム中に二重結合のある事が判る。(二重結合に対するオゾンの反応)

(B) (1) 徐々に黄白色に変わる(ガラス管の口が狭いので,空気が中に入ってリンが燃える事はない)

(2) 黄リンは二硫化炭素に溶けるが,赤リンは溶けない。ろ紙にふりかけた黄リンの溶液から二硫化炭素が蒸発すると伴に,黄リンは室温で酸化され,自然発火する。暗い場所で観察する。

(3) 黄リンの方が先に発火し,遅れて赤リンも燃え始める。火が点いた後の燃える様子は両者とも同じで,共に白煙を激しく出す。赤リンの発火点260℃,黄リンは室温で自然発火する。  4P5O2―→P4O10

(C) 斜方硫黄,単斜硫黄はルーペで観察し,結晶形が異なる事を理解する。ゴム状硫黄は無定形固体であり,弾性があって変形し易い事を確かめる。

C 斜方硫黄,単斜硫黄の結晶

参考実験 3 分子模型の製作

【目標】 実際の分子は,原子が結合して立体的な構造となる事が多いが,一般には,これを平面的に書き表している。正四面体・平面形・直線形等の分子構造が,果たして現実に可能かどうか,また,立体的構造から見て官能基の位置が可能なものかどうか,分子の極性の有無はどうなるか,等の考察は立体的な分子模型をつくる事でより明確になる。発泡ポリスチレン球(PS)を利用した分子模型を自作する事により,分子の構造について理解を深める。

【準備】 白色発泡ポリスチレン球(直径253035mm),カッターナイフ,水性ペン,木工用ボンド,円用テンプレート

操作の概要】 この分子模型は,実物の約1億倍の大きさである。

メタンCH4分子 @ メタン分子は正四面体構造である。35mm(炭素C原子用)に直径24mmの円をテンプレートで描く。

A @の円を基準に,各円の間隔が約6mmになるように全部で円を4つ描く。

B Aの球の各円に沿って切り落とす。

C 水性ペンで,黒く塗ぬり潰つぶす。

D 25mm(水素H原子用)2つを各半分に切り,Cの球の切断面に貼りつける。

エチレンC2H4分子 E 35mm球2つに角度120度で24mmの円を各3つずつ描き,各円に沿って切り落とし,黒く塗る。

F 25mm球2つを各半分に切り,Eの球2つと組み合わせてつける。

分子構造の検討 G メタンとエチレンの水素H原子1つを塩素Cl原子に取り替えて塩素置換体をつくり,異性体ができるかどうか調べる。

 

【準備上の留意点】 PS球は,DIYショップやWebセンターで購入できるが,大量に使用する場合は,“ホシノプレン”TEL/FAX03-3865-1723で購入すると安価である。

又,一度に同種の分子を大量に製作する場合は,カッターナイフで加工する前に塗装してしまうとよい。爪楊枝に刺したPS球を,発泡ポリスチレン板に刺して並べる。屋外又は大型の段ボール箱中で,水性スプレー塗料をまんべんなく吹きかけた後,乾燥させる。

原子のファンデルワールス半径と発泡PS球の大きさ

ファンデルワールス半径

PS(直径)

一般的な色

0.120nm

25mm

(無塗装)

0.170nm

35mm

0.155nm

30mm

水色()

0.152nm

30mm

0.180nm

35mm

0.175nm

35mm

 

【操作上の留意点】 1.メタン分子の製作1

正確な正四面体(sp3)構造を作成するには,専用の冶具を製作する必要がある。しかし,おおまかには正四面体構造を考えながら円形テンプレート等で印を付ければよい。切断はカッターナイフでよいが,ニクロム線で発泡ポリスチレンカッターを自作すると作業が捗る。

水素原子は,25mm球を真ん中で切断すると,2つできる。

球同士の接着は,木工用ボンドの他発泡スチロール用接着剤,ホットボンド等が利用できる。また,市販の分子モデルの様に原子の着脱を行いたい時は,接着面にマジックテープを貼り付けておけばよい。

2.エチレン分子の製作

炭素原子の正三角形(sp2)構造を作るには,製作時にできる型の接合部分の線(赤道)を利用して,テンプレートで印を付ける。

3.市販の分子模型

課題研究の時間が十分に確保できれば,この様にPS球を利用して分子模型を自作したい。しかし,それなりに多くの時間を要するので,市販の分子模型セットを購入して組み立ててもよい。分子模型セットにも種々のものが市販されている2。製作する分子の種類や考察の内容,研究用かプレゼンテーション用か,あるいは費用等を考慮して適切なものを選ぶとよい。

【発展実験】 炭素C原子を黒,水素H原子を白,酸素O原子を赤,窒素N原子を水色,塩素Cl原子を緑等ルールを定め,各原子の大きさも決めて,二酸化炭素CO2やアンモニアNH3等分子でできた無機物質をつくってみる。又,他の炭化水素やベンゼン,アルコール,セッケン等の分子模型を工夫してつくり,その構造や異性体について調べる。

<教材・参考資料等の紹介>

1 平尾二三夫・板倉聖宣,「分子模型をつくろう」,仮説社,(1992)

2 市販されている分子模型の例

(1) ボール&スティック型モデル

HGS分子構造模型,Aセット,1,400円,丸善(球数の多いBDセット等もある)

大型有機分子模型,GII70,000円,丸善(プレゼンテーション用)

(2) 空間充填(スペースフィリング)型モデル

分子模型,2,600円等,仮説社

テキスト ボックス: 準備に要する時間 約30分
実験に要する時間 製作する分子模型の種類や数による。
実験に要する消耗品の価格
  PS球は4〜6円程度/1個(ホシノプレン)

 

参考実験 4 第3周期元素の酸化物
【目的】3周期の各元素の酸化物または水酸化物をつくり,その水溶性・酸性・塩基性が,族の番号と伴にどう変わるか調べる。

【準備】ナトリウム(米粒大),マグネシウムリボン,アルミニウム片,ケイ素粉末,赤リン,硫黄粉末,過塩素酸,pH試験紙,6mol/L塩酸,1mol/L塩酸,0.1mol/L塩化水銀(U)水溶液,6mol/L水酸化ナトリウム水溶液,点火器具

【操作】(1) 試験管に水を5cm3入れ,ナトリウムの小片をピンセットで挟んで入れて反応させる。反応後の水溶液のpHを試験紙で調べる。

(2) マグネシウム片に点火し燃焼させ,白い酸化物をつくる。水が少量入った試験管に,この酸化物を加えて振り,その液のpHを試験紙で調べる。

(3) 試験管に6mol/L塩酸5cm3HgCl2溶液2cm3を入れて混ぜ合わせ,サンドペーパーで磨いたアルミニウム片を入れて振る。アルミニウム片を取り出して水洗し,水を拭き取って通風のよい場所に放置する。表面の白色粉末を集めて試験管に入れ,水を少量加えて煮沸し,冷却後pHを調べる。

(4)  NaOH5cm3にケイ素粉末を少量加え,振りながら熱して溶かす。反応後水を加えて3倍に薄め,3cm3を分け取り,1mol/LHClを少しずつ加えて振る。寒天状に固まったものを取り出し,水を加えては振って上澄み液を捨てる方法(デカンテーション)で繰り返し洗う。洗い終わった不溶物をろ別し,それを試験管にとり,水を加えて熱し,液のpHを調べる。

(5) 赤リン少量を蒸発皿にとり,点火して燃やす。燃焼後,生成物に水を加えて溶かし,その液のpHを調べる。

(6) 硫黄粉末を燃焼さじに取り,点火して集気瓶中に入れ燃やす。発生気体をなるべく逃がさない様に集気瓶に水を少量加え,ガラス板でふたをして瓶を振る。瓶の中の水溶液のpHを調べる。

(7) 過塩素酸を少量,試験管に取り,水を加えて振り,液のpHを調べる。

【結果】結果の例を次に示す。第3周期元素の原子番号が進むと伴に,生成物の水溶液のpHが小さくなり,酸性が増す事が判る。即ち,族の番号が小さい程金属性であり,族番号が進むと伴に非金属性が増大する。但し,各溶液の濃度が一定でない事やSの酸化物の水溶液がH2SO4でない事等から,説明は,大まかな傾向を示す程度。

元 素

Na

Mg

Al

Si

P

S

Cl

生成物の化学式

NaOH

Mg(OH)2

Al(OH)3

H2SiO3

H3PO4

H2SO3

HClO4

生成物の水溶液のpH

11.3

8.5

7.9

6.3

1.8

1.2

1.1

尚,各反応は,次の化学反応式で表される。

(1) 2Na2H2O―→2NaOHH2

(2) 2MgO2―→2MgO, MgOH2O―→Mg(OH)2

(3) 2Al6HCl―→2AlCl33H2, AICl33H20―→Al(OH)33HCl

(4) Si2NaOHH2O―→Na2SiO32H2, Na2SiO32HCl―→H2SiO32NaCl

(5) 4P5O2―→P4O10, P4O106H2O―→4H3PO4 (またはP4O102H2O) ―→4HPO3

(6) SO2―→SO2 SO2H2O―→H2SO3

 

参考実験 5 電離と電気伝導性

【目的】氷酢酸や純水には電気伝導性が殆ど無いが,混合すると電気伝導性が大きくなる事を理解する。

【準備】炭素電極,リード線,乾電池,乾電池ホルダー,電子ブザー,ビーカー,氷酢酸,純水

【操作】(1) 下図の様な装置をつくり,電極を接触させるとブザーが鳴る事を確認する。

(2) 50cm3ビーカーに酢酸20cm3をとり,電極を入れてブザーが鳴るか調べる。

(3) 50cm3ビーカーに水20cm3をとり,電極を入れてブザーが鳴るか調べる。

(4) (2)(3)のビーカーの液を混合し,電極を入れてブザーが鳴るか調べる。

【結果】(2)(3)ではブザーは鳴らないが(4)では鳴る。この事から,水溶液中の電離に気づかせる。尚,ブザーはトランジスタ回路を利用したもので,定格電流1020mA程度,動作電圧範囲1.110V程度のものが各種市販されている。電流,電圧や音量,音質等をよく調べて購入するとよい。

 

参考実験 6 鉄の腐食の研究

【目標】 乗り物や建築物の材料等に利用される鉄は,最も重要な金属の1つである。一方で,鉄は錆び易く,その錆は見た目も悪く,もろく崩れ易いという欠点を持っている。鉄が錆びる反応の本質は酸化だが,同時にその対となる還元も起こっている。ここでは鉄板を用いて,実際に鉄が錆びていく様子を観察しながら,酸化還元反応及び電池の原理について理解を深める。

【準備】 Fe(3cm×7cm),銅Cu線,アルミニウムAl箔,ガラス板,0.5mol/L塩化ナトリウムNaCl水溶液,0.1mol/Lヘキサシアノ鉄(V)酸カリウムK3[Fe(CN)6]水溶液,フェノールフタレイン溶液

【操作の概要】 @ 塩化ナトリウム水溶液10cm3にヘキサシアノ鉄(V)酸カリウム水溶液0.5cm3とフェノールフタレイン溶液23滴を加える。

A 鉄板4(AD)をガラス板の上に置く。

B Aの中央部に銅線を置き,Bの中央部にアルミニウム箔を巻く。Cは表面に傷をつけ,Dはそのままにしておく。

C @の溶液をBのAD34滴落として放置する。

【実験上の留意点】 1.鉄板の表面は均一な状態でないと実験結果に影響を与える。できるだけ新しい鉄板を用意する。既に錆びている場合は,6mol/L塩酸で表面を洗っ後水で濯ぎ水分を拭き取っておく。

2.鉄板Cに付ける傷は大きめにしないと,鉄板Dとの差が判り難い。

【操作と結果】 A:銅線の周囲の液体が赤色になる。CDに比べ,赤色になるのが速い。液滴に接する鉄板表面の所々が,斑点状に青くなる。

B:液滴の周囲から赤色になる。CDに比べ,赤色になるのが速い。青い部分は見られない。

CD:液滴の周囲から赤色になる。液滴に接する鉄板表面の所々が,斑点状に青くなる。Dの方が赤色が広がるのが速い。

【考察1】 この実験では,鉄板の表面で酸化還元反応が起こり,Fe2OHが生じている。

Fe―→Fe22e (E0=−0.440VvsSHE)

O2H2O2e―→2OH (E0=+0.401VvsSHE)    SHE:標準水素電極

酸化反応の方が,還元反応より負の電位で起こっているので,鉄板の表面で局部電池ができている事になる。

以上の理論を参考にすると,ADの実験結果は,次の様に理解できる。

CD:鉄が酸化されて生じたFe2が,ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液と反応し,ターンブル青の濃青色沈殿を生じる。一方,塩化ナトリウム水溶液中の溶存酸素が還元されてOHが生じる。このOH(塩基性)によりフェノールフタレインが赤色に変化する。

鉄の酸化され易い部位は,歪みのかかった所や不純物の存在する所なので,傷を付けた部分が青色になる事が多い。また,溶存酸素は液滴と空気の境界付近に多いので,液滴の周囲から赤色に変化し易い。いわゆる錆は,溶解したFe2OHが反応してFe (OH)2等になり,更にこれがO2等に酸化されてFeO(OH)Fe2O3等になったものである。赤色と青色の境界付近では,この様にして錆が生じ,褐色の濁りを生じる。

B:鉄に比べてアルミニウムの方が標準電極電位が低く,アルミニウムが負極,鉄が正極の局部電池が形成される。この為,アルミニウムが優先的に酸化され,鉄は酸化されないので,ターンブル青は生じない。また,溶存酸素が還元される畳も鉄だけの場合に比べて多くなるので,液滴が赤色になるのが速くなる。

Al―→Al33e (E0=−1.676VvsSHE)

A:鉄に比べて銅の方が標準電極電位が高く,鉄が負極,銅が正極の局部電池が形成される。この為,銅の表面で溶存酸素が効率よく還元されるので,銅線の周囲から液滴が赤色になり,その速さも大きい。

Cu―→Cu22e− (E0=+0.340VvsSHE)

【発展実験】 塩化ナトリウム水溶液の濃度を変えて,色の変化する速さを比べてみる。また,鉄と接触させる金属を銅やアルミニウムの代わりにマグネシウムMgや亜鉛Zn,ニッケルNi,スズSn,鉛Pb,銀Ag,白金Pt,金Au,水溶液を塩化ナトリウム水溶液の代わりに硫酸ナトリウムNa2SO4水溶液や硝酸ナトリウムNaNO3水溶液にして行ってみる。

<教材・参考資料等の紹介>

1 日本化学会編,「化学実験虎の巻」,丸善,p.119(1991)

 

 

参考実験 7 界面活性剤の合成と性質比較

【目標】 日常的に用いられる界面活性剤のセッケンと陰イオン系界面活性剤(合成洗剤)を合成し,各々の特徴及び界面活性作用を確かめる。セッケンと陰イオン系界面活性剤の分子構造を比べると,セッケンの場合,親水基の部分は弱酸であるカルボン酸の塩だが,陰イオン系界面活性剤では硫酸等強酸の塩となっている。これがセッケンと陰イオン系界面活性剤の性質の違いの主な原因である事を理解する。

また,合成洗剤には,陰イオン系界面活性剤を含むものの他,陽イオン系,非イオン系等,様々な種類がある。洗剤の使用に伴うリスクや環境への影響については,その名称や原料(天然か合成か)から判断するのではなく,分子構造や化学的な性質を知った上で,冷静で正しい判断ができる様に理解を深める1

【準備】 水浴器(ビーカーとガスバーナー等),蒸発皿,ガラス棒,駒込ピペット,pH試験紙(pHメーター),雑巾,赤インキ,白色毛糸,やし油,食用油,保護眼鏡,エタノールC2H5OH2mol/L水酸化ナトリウムNaOH水溶液,塩化ナトリウムNaCl飽和水溶液,希塩酸HCl,ドデカノールC12H25OH,濃硫酸H2SO40.1mol/L塩化カルシウムCaCl2水溶液

【操作の概要】 @ やし油5g,エタノール1cm3,水10cm3を蒸発皿に入れ,水浴でかき混ぜながら熱する。水酸化ナトリウム水溶液10cm3を加え,撹拌しながら熱し,十分に反応させる。その後撹拌しながら,pH8になる迄希塩酸を少しずつ加える。続いて塩化ナトリウム飽和水溶液を加え,遊離したセッケンを集める。

A 濡れた雑巾の上に蒸発皿を置き,ドデカノール15g,濃硫酸10cm3を注意深く加える。これを静かに撹拌し,十分に反応させる。その後撹拌しながら,pH4になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加える。

B 合成したセッケン及び合成洗剤について,次の実験(1)(3)を行う。

(1) 水道水及びこれらの洗剤の水溶液を赤インキで着色し,各々に白色毛糸を浸し,染み込む速さを比べる。

(2) 水道水及びこれらの洗剤の水溶液に,各々食用油を少量加え,振り混ぜる。

(3) 塩化カルシウム水溶液や希塩酸に食用油を少量加え,これをセッケン及び合成洗剤の水溶液に加えて振り混ぜる。結果を(2)の場合と比べる。

【実験上の留意2,*3

1.濃い水酸化ナトリウム水溶液は激しく皮膚を侵すので,保護眼鏡・白衣を着用し,十分に注意して実験を行う。万一付着した際,直ぐに多量の水で洗い流す。反応後の溶液中にもかなり水酸化ナトリウムが残っているので,注意が必要である。

2.時間に余裕がある場合,塩析されたセッケンを吸引ろ過し,更に飽和食塩水でよく洗うとよい。

3.操作@でエタノールを用いるのは,やし油と水が混合しないので,エタノールを加える事で混合し易くする為である。

4.操作@,Aにおいて,各々中和する時に,@では塩酸,Aでは水酸化ナトリウム水溶液を加える。この時,少しずつ加えながらガラス棒の先に反応物をつけ,pH試験紙で中和の程度を調べる様にする。@,Aで述べたpHになる迄この操作を行う。

 

【結果】 (1) 浸透 水道水は毛糸に染み込み難いが,セッケン液や合成洗剤液は容易に染み込む。洗剤分子が疎水基(分子間力小)を外に向けて水の表面に集まり,表面張力を下げる為である。

(2) 乳化 水道水では,振り混ぜるのを止めた途端に食用油が分離してしまう。しかし,セッケン液や合成洗剤液では,乳濁液となって混じり合う。油滴が,疎水基を内側に向けた洗剤分子に取り囲まれ,球状ミセルを形成する為である。

(3) 塩化カルシウム水溶液,希塩酸どちらの場合もセッケン液は乳化せず,食用油を分離してしまう。合成洗剤液は,(2)と同様に乳化する。セッケンが乳化しないのは,水に難溶の金属セッケンを生じたり,強酸による弱酸の遊離反応により高級脂肪酸を生じたりしてしまう為である。

2R-COOCa2―→(R-COO)2Ca

カルシウムセッケン

R-COOH―→R-COOH

高級脂肪酸

【発展実験】 􏤋 合成洗剤の種類や性質(洗浄能力や分解性,毒性等)と用途(配合されている物質)の関係を調べてみる。

 使用後の天ぷら油等,他の油からセッケンをつくってみる。

<教材・参考資料等の紹介>

洗剤一般についての参考書は,

1 井上勝也,「みんなで考える洗剤の科学」,研成社,(1987)

実験室でのセッケンの合成法を紹介した論文は,

2 結城春雄,「化学と教育」,48266(2000)

3 米沢剛至,「化学と教育」,49664(2001)

テキスト ボックス: 準備に要する時間 約1時間
実験に要する時間 約1時間30分
実験に要する消耗品の価格
やし油 2,200円/500g
l−ドデカノール(ラウリルアルコール)  2,700円/500g

 

参考実験 8 ボイルの法則

【目的】ボイルの法則を検証する。また,測定値をどの様に処理して,現象の中の規則性を見い出すかを学ぶ。

【準備】機密性のよい特大注射器(200cm3。浣腸器でもよい),上皿秤(4kg),スタンド,クランプ,自在ばさみ,支持環,ゴム栓(3cm),板(木又はプラスチック),書籍数冊

【操作】(1) ゴム栓に小さな穴を開け,注射器の先端部を強く押し込む。注射器のピストンを強く押しても引いても先端部から空気が漏れない事を確かめる。

(2) 次の各物体の質量を,それぞれ上皿秤で測り,記録する。

T 注射器のピストン(注射器からゴム栓を外し,ピストンを引き出してピストンのみの質量を測る)

U 板

V 支持環(クランプ付き)

W 書籍数冊を1冊ずつ

(3) 注射器にピストンをさし込み,全体を水平に置く。内部の空気の体積が200cm3(用いる注射器や浣腸器等により任意に決めてよい)になる様にピストンの位置を定め,ゴム栓を先端部にはめる。

(3)で準備した注射器を立て,自在ばさみでスタンドに固定する(後に上部に物体を置くので,ゴム栓が多少縮む事になる。自在ばさみをスタンドに固定するクランプは,多少上下に動ける様に余裕を持たせる)。この時,注射器内の空気は,大気圧の他にピストンの重力による圧力を受けており,200cm3以下の体積になっている。

(4) ピストンの上に板を載せ,その上に支持環を載せる。支持環はスタンドに緩く止め,上下に自由に軽く動く状態にする。しかし,後で支持環に載せる書籍が落ちない様に,水平方向にはスタンドに固定される状態に保つ。空気の体積を読む。

(5) 質量の分かっている書籍を1冊ずつ支持環に載せていき,その都度注射器内の空気の体積を読む。

(6) 表に測定結果を記入する。大気圧を1034gw/cm2とし(水銀の密度を13.6g/cm3とすると,1013hPa(1atm)13.6×76.01034[gw/cm2]),表を完成させる。

実験
No.

注射器内の空気加えた力

(空気の圧力)

p

gw/m2

空気の体積V

cm3

の値

/cm3

pVの値

1

方法3の状態

(大気圧のみ)

1034

200

5.0×103

2.1×105

2

方法4の状態

(大気圧+ピストン)

 

 

 

 

3

方法5の状態

(大気圧+ピストン+板+支持環)

 

 

 

 

4

方法6の状態

(方法5の状態+書籍(1))

 

 

 

 

5

〃  

( 〃  +書籍(1)(2))

 

 

 

 

6

〃  

( 〃  +     )

 

 

 

 

(8) グラフ用紙の縦軸と横軸に,(a)pVをとった場合,(b)pをとった場合,のグラフを描き考察する。

【注意】 1.注射器やピストンは,よく洗浄した後乾燥したものを用いるのが,空気が漏れなくてよい。ワセリンを塗ったりすると,円滑に動かない事が多い。

2.注射器の先端部を傷つけない様に注意する。大きい注射器は高価である。

【結果の例】

(a)のグラフ         (b)のグラフ

【考察】表のpVの値は,ほぼ一定になる。グラフを描くと,pVとの関係は明確に判断できないが,pは直線関係になる(原点を通る直線になる)。したがって,pVとは互いに反比例する事が判り,ボイルの法則が検証される。

 

参考実験 9 気体のモル体積の測定

【目的】簡便に短時間に,気体のモル体積を求めてみる。

【準備】100cm3丸底フラスコ,1L三角フラスコ,1Lメスシリンダー,誘導管,ゴム管,ゴム栓,電子天秤,水槽,ドライアイス

【操作】(1) 表面の氷を拭い取ったドライアイスの塊1.7gを取り,上皿天秤を使って手速く測る。

(2) これを100cm3の丸底フラスコに入れて直ぐにゴム栓をし,下図の様な装置を組み立てる。

(3) 掌でフラスコを温め,ドライアイスを昇華させる。

(4) この方法で測り取った二酸化炭素の体積を求める。

(5) この時の大気の圧力と気体の温度を測り,状態方程式から分子量を求める。

【注意】 1.二酸化炭素は幾分水に溶けるが,本法ではそれは殆ど問題にならない。発生したCO2の気体は丸底フラスコや三角フラスコ中に存在する空気を追い出すので,水上に置換される気体はCO2ではなく,殆ど空気である。即ち,発生したCO2と同体積の空気が捕集された事になる為である。

2.ドライアイスは刻々と昇華するから,厳密な質量は求められない。本法はその程度の概略値を求める実験である。よって,メスシリンダーの内外の水面の高さを一致させる操作は特に不要である。

【実験結果】ドライアイスを1.5g用いたとすると,分子量CO244より,27℃,常圧での捕集気体の体積は,

となる。820cm3860cm3の結果なら標準状態のCO2のモル体積は21.922.9Lになる。

 

 

参考実験 10 都市ガスの分子量測定

【目標】 (1) 気体の質量,体積,圧力,温度を測定し,気体の状態方程式を利用して,都市ガスの分子量を測定する。

(2) 気体の質量を測定する過程で,空気による浮力により気体質量の測定値が小さくなる事を体験し,浮力について考える。

(3) 実験で求めた値と理論値を比較して誤差の原因を考える。

【準備】 ポリ袋(30cm×20cm),輪ゴム,ガスバーナー,電子天秤(精度0.01g),ゴム管,ガラス管,水槽,メスシリンダー,気圧計,温度計,都市ガス

【操作の概要】 @ ポリ袋と輪ゴムの質量w1g〕を量る。

A ガス栓に取りつけたガスバーナーを開き,都市ガスをポリ袋に詰め,輪ゴムで栓をして質量w2g〕を量る。

B ポリ袋にゴム管付きガラス管を差し込み,水上置換で都市ガスをメスシリンダーに捕集し,その体積vcm3〕を量る。

C 水槽の温度TK〕,実験室の気圧phPa〕を測る。

【実験上の留意点】 1.大気圧の測定は水銀気圧計を使用した方がよい。

2.気体の質量の測定は,0.01gまたは0.001g迄測定できる天秤を使用する。精度の高い質量測定を行うので,水滴や挨が付着しない様に注意する。水道の蛇口から飛んできた水滴が付着する事による誤差が結構大きい。

3.ポリ袋に都市ガスを入れる時,袋の中のガスの圧力と大気圧を等しくする為,ガスの袋に詰め過ぎない様にする。ポリ袋に入れる気体は1Lあればよいので,ポリ袋の内容積は2L程度のものがよい。

4.後の操作の為,輪ゴムは袋の端から5cm以上の所で止める。きつく締め過ぎると後の操作がやり難くなる。(下図1)

5.使用するガラス管は太めのものを利用した方が水上置換し易い。水上置換の際,ゴム管はメスシリンダーの奥まで差し込んでおく。袋からガスを導入する時,ゴム管の先端までガスが入ると,メスシリンダー内の水が落ちる力で袋内のガスはメスシリンダー内に吸い込まれる。メスシリンダーは1Lのものがよく,プラスチック製のものを用いてもよい。(下図2)

6.水温と気温を測定しておく。水上置換後のメスシリンダー内の温度は,水温を適用して計算する。

【結果と考察】 (1) ポリ袋と輪ゴムの質量測定後,都市ガスを入れて質量測定を行うと,自分達の測定結果に疑問を持つだろう。そして実験に興味を持ち,空気の浮力を実感する。

(2) ポリ袋と輪ゴムの質量をw1g〕,ポリ袋と輪ゴムとガスの質量をw2g〕,ガスの質量をwGg〕,空気の浮力をwairg〕,ガスを水上置換した時のメスシリンダーの読みをV1L〕 ポリ袋内のガスの体積をVGL〕,大気圧をp〔×102Pa〕,水蒸気圧をpH2O〔×102Pa〕,ガスの分圧をpGhPa〕,室温をT〔℃〕とする。また,求めるガスの分子量をMG空気の平均分子量をMairとする。

ガスの質量は次の様に考えられる。

w2w1wGwair

wGw2w1wair …@

空気の浮力はポリ袋に掛かっているので,気体の状態方程式,大気圧pMairVGから求められる。またメスシリンダーの読みV1からVGが求まる。

 

 

 

 

 

これに式Aを代入すると,

 

 

測定結果

実験例

A

B

C

D

w1g

2.56

2.57

3.34

3.23

w2g

2.05

1.832

2.44

2.8

V1L

1.787

1.870

1.271

1.257

大気圧〔mmHg

760.0

752.4

758.2

758.2

大気圧〔×102Pa

1013

1002.9

1010.6

1010.6

気温〔

24.5

24

23

21

水温〔

19.5

19.5

18

19.8

 

水の飽和水蒸気圧

度〔℃〕

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

水の飽和水蒸気圧〔×102Pa

18.2

19.4

20.6

22.0

23.4

24.9

26.4

28.1

29.8

31.7

 

実験結果

実験例

A

B

C

D

水蒸気圧〔×102Pa

22.67

22.67

20.64

23.10

VGL

1.747

1.828

1.245

1.228

wGg

1.57

1.42

0.58

1.04

ガスの分子量MG

21.9

19.1

11.4

20.5

 

(3) 誤差について

 空気と都市ガスの組成(東京ガス13A)

()

都市ガス()

 

N2

78. 08

メタンCH4

88

 

O2

20.95

エタンC2H6

5.8

 

アルゴンAr

0.93

プロパンC3H8

4.5

 

二酸化炭素CO2

0.033

ブタンC4H10

1.7

 

ネオンNe

0.0018

 

 

 

ヘリウムHe

0.0005

 

 

 

平均分子量

29

平均分子量

18.819

 

都市ガスの平均分子量19(上表参照)を理論値とすると,実験例Bの分子量MGはほぼ理論値に近い。式Cより,理論値より小さい場合は,水上置換でガスが漏れ本来の値よりV1が小さくなったと考えてよい。理論値より大きい場合は,w2を測る迄にゴミ等が付着して (w1 w2)が本来の値より小さくなったと考えてよい。一方を正しいと仮定してガス漏れの仮想量とゴミ等の付着物の仮想量を計算できる。実験例Cでは1/3以上がガス漏れした事になるが,これは信じ難い。実験例Dの付着物の量は,天秤の精度を考えると大きなずれではない。実際は両方が同時に起こっているが,計算する事は難しい。

 

誤差の考察

実験例

A

B

C

D

V1L

1.787

1.870

1.271

1.257

仮想V1L

1.273

1.858

2.236

1.064

ガス漏れL

——

0.012

0.965

w1 w2g

0.51

0.74

0.90

0.43

w1 w2g

0.72

0.74

0.51

0.51

付着物g

0.21

0.00

 

0.08

 

これらより,自分達の操作ミスを考察して再実験を行うと,比較的よい値が求められる。

テキスト ボックス: 準備に要する時間10分
実験に要する時間30分

 

参考実験 11 凝固点降下

【目的】溶媒と溶液の凝固点を測定し,濃度と凝固点降下の関係を調べる。

【準備】大型試験管(内径20mm)500cm3ビーカー,10cm3ホールピペット,0.1℃目盛温度計,かき混ぜ棒,ゴム栓,時計,純水(蒸留水),氷,粗製食塩,尿素,塩化ナトリウム,グラフ用紙

【操作】T.純水の凝固点

(1) ホールピペットで,試験管に純水10.0cm3(10.0gWg)を入れる。

(2) 温度計とかき混ぜ棒をつけたゴム栓を試験管に取り付け,寒剤(氷に粗製食塩を加えたもの)の入ったビーカーに入れる(下図)。かき混ぜ棒を上下させながら,温度を10秒毎に測定する。

(3) 同じ温度が数回測定されるまで,測定を行う。

U.溶液の凝固点

(4) 純水10.0cm3と尿素w1g(0.6gを精密に測定したもの)を試験管に入れて溶かし,(2)と同様にして温度を測定する。

(5) 純水10.0cm3と塩化ナトリウムw2g(0.3gを精密に測定したもの)を試験管に入れて溶かし,(2)と同様にして温度を測定する。

【実験上の留意点】

1. 寒剤は,細かく砕いた氷に粗製食塩を混ぜてつくる。500cm3ビーカー八分目程度の氷に,試薬さじ()3杯の食塩を混ぜれば,温度は−10℃程度に下がる(NaCl22.4%,氷77.6%:最低温度−21.2)

本実験では氷浴中に直接試験管を入れるので,氷浴の温度は−10℃程度が適当である。また,ビーカーに代えて発泡ポリスチレン容器等を用いれば,より効果的である。

2. 温度計の目盛の読取りに習熟しておく必要がある。特に0℃以下の目盛は読み間違え易いので,実験を始める前に注意しておく。また,0.1℃目盛の温度計は,目盛が細かいので読み難い。ルーペ等を用いれば,正確に読み取れる。

3. 試験管はよく洗浄したものを用いる。綺麗に見えているものでも有機物等が付着していれば,誤差が生じる原因になると共に,試験管内部が曇って温度計の目盛が読めなくなる。

4. かき混ぜ棒は,直径1.5mm程度の銅線またはステンレス線を用いてつくる。

5. 温度計の目盛を読む時,試験管を氷浴から取り出さない様に注意する。試験管を氷浴中に入れたまま読み,かき混ぜ棒を常に上下させて,試験管内の液の温度が不均一にならない様にする。

6. 溶質の尿素,塩化ナトリウムの秤量は,上皿天秤では不十分である。秤量0.01gの電子天秤等,精密な質量計を用いたい。

7. 溶液の凝固点の測定,特に塩化ナトリウム水溶液の測定では,過冷却が大きく現れる場合があるので注意する。

【実験の結果】

実験例を示す(温度が6℃付近に下がった後,測定)

時間(10)

1

2

3

4

5

6

7

純 水〔℃〕

5.7

4.6

3.4

2.5

1.9

0.8

0.0

水溶液
〔℃〕

尿素

6.0

3.6

2.1

1.0

0.4

0.5

1.0

NaCl

5.5

3.2

1.0

0.2

0.8

1.1

1.7

時間(10)

8

9

10

11

12

13

14

純 水〔℃〕

0.6

1.0

1.0

0.5

0.1

0.1

0.1

水溶液
〔℃〕

尿素

1.4

1.9

2.3

2.6

2.2

1.8

1.8

NaCl

2.4

2.7

3.0

3.3

3.4

2.1

1.8

時間(10)

15

16

17

18

19

20

21

純 水〔℃〕

0.1

0.1

水溶液
〔℃〕

尿素

1.8

1.9

1.9

NaCl

1.8

1.8

1.8

1.9

 

純水と水溶液の凝固点

 

この実験例の結果をグラフにすると,上図の様になる。この図から凝固点が,水0.1℃,尿素水溶液−1.6℃,塩化ナトリウム水溶液−1.7 ℃,と求められる。したがって,凝固点降下度は,尿素水溶液1.7 K,塩化ナトリウム水溶液1.8 Kとなる。

凝固点降下度とモル質量の関係式から,尿素の分子量と塩化ナトリウムの見かけ上の分子量は次式の様に求められる。但し,水のモル凝固点降下は1.85Kとする。

 (真の分子量601.09)

 (真の式量58.50.53)

尿素はほぼ分子量に近い値となり,塩化ナトリウムについては式量の半分(29.3)に近い値となる。これからNaClがほぼ完全に電離している事が判る。

 

参考実験 12 疎水コロイド溶液の調製

【目的】種々のコロイド溶液をつくる。また,これらを用いてコロイド溶液の性質を調べる。

【準備】硫黄粉末,エタノール,0.2%チオ硫酸ナトリウムNa2S2O35H2O,希塩酸,0.2%硝酸カドミウムCd(NO3)2,硫化アンモニウム(NH4)2S,硫化鉄(II),亜鉛,希硫酸,ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムK4[Fe(CN)6]3H2O,塩化鉄(III) FeCl36H2O1%硝酸銀AgNO3,希アンモニア水,タンニン酸

【操作】(1) 硫黄のコロイド  粉末硫黄0.1gをエタノール3cm3に温めて溶かし,これをろ過する。ビーカーに入れた水200cm3に,ろ液をよくかき混ぜながら加えると,白い硫黄のコロイド溶液ができる。また,チオ硫酸ナトリウム溶液に希塩酸を少しずつ加えていく方法でも,硫黄のコロイド溶液ができる。

(2) 硫化カドミウムのコロイド  硝酸カドミウム溶液に硫化アンモニウムを少量加えると,硫化カドミウムCdSが沈殿する。この沈殿の一部を水50cm3に溶かし,硫化鉄(II)と希塩酸で発生させた硫化水素を通じると,黄色の硫化カドミウムのコロイド溶液ができる。これに,亜鉛と希硫酸で発生させた水素を吹き込みながらかき混ぜ,余分の硫化水素を追い出す。

(3) 紺青のコロイド  水100cm3にヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムの飽和溶液0.5cm3を加えてから,塩化鉄(III)の飽和溶液1滴を加えると,紺青のコロイド溶液ができる。

(4) 銀のコロイド  硝酸銀溶液に,希アンモニア水を滴下していき,一度できた沈殿が丁度溶け終わった所で止める。この溶液を蒸留水で20倍に薄め,新しくつくったタンニン酸溶液を23滴加えて温めると,褐色の銀のコロイド溶液となる。

(5) (1)(4)で生じたコロイド溶液を用いて,チンダル現象,透析,凝析,電気泳動等の実験を行う。

 

参考実験 13 酸・塩基の中和反応における導電率の変化

【目的】中和反応に伴う導電率の減少から,HOH―→H2Oの反応に注目させる。

【準備】電源装置(610V),電流計,マグネチックスターラー,導線,200cm3ビュレット,ステンレス鋼,割箸,輪ゴム,200cm3ビーカー,0.1mol/LNaOH水溶液,0.01mol/L塩酸

【操作】(1) 下図の装置をつくり,塩酸100cm3をビーカーに入れ,ビュレットにNaOH水溶液を入れる。

(2) 電極を塩酸中に入れ,電流値が100mAになる様に電圧を調整する。

(3) ビュレットからNaOH水溶液を滴下し,電流値の変化を見る。

【結果】滴下量と電流値の関係は上右図の様になる。Hはよく電流を導く事から,最初の電流値の減少は,Hが中和により減少した為である。後の増加はNaOHの増加による。

 

 

参考実験 14 海水電池(塩化銀電池)の原理

【目的】海水電池(正極に塩化銀,負極にマグネシウム合金,電解液に海水を用いた電池)の原理を,より簡略化した実験で理解する。

【準備】3%食塩水,Mgリボン,銅板,銀板,炭素棒,電子ブザー,発光ダイオード,導線,ペトリ皿

【操作】(1) ペトリ皿に食塩水を入れ,Mgリボンと銀板を入れて導線で結び,ブザーが鳴る事や発光ダイオードが光る事を見せる。

(2) 電極の組み合わせをいろいろ変え,(1)と同様の実験を行う。

【結果】ブザーはほぼ鳴るが,発光ダイオードは2V近くないとよく光らない。

 

参考実験 15 電気分解

【目的】NaCl水溶液やCuSO4水溶液の電解を寒天ゲル中で行い,電解における物質移動を理解する。

【準備】3NaClとフェノールフタレイン少量を含む寒天ゲル,0.1mol/LCuSO4水溶液の寒天ゲル,ステンレス棒2本,電源(乾電池),導線,ガラス板,OHP投影装置一式

【操作】(1) NaClの寒天ゲルを適当な大きさに切り,ガラス板上に載せてOHP投影台上に置く。電源と導線で結んだ2本のステンレス棒を寒天にさし込み,変化を見る。

CuSO4寒天ゲルに(1)と同様の操作を行い,OHP投影台上で変化を観察させる。

【結果】(1) 陰極付近が赤くなる。これは,OH生成によりpHが高くなり,フェノールフタレインが発色する為である。

(2) 陰極に銅が析出する事が判る。

【参考】(1) 寒天ゲル中の塩の濃度は,1%程度でもよい。

(2) どちらの寒天ゲルにも少量のKIとデンプンを加えておくと,ヨウ素デンプン反応により陽極にも変化が見られる。  2I―→I22e

(3) ガラス板に+,−の記号を書いておくと,反応が見易くてよい。

 

参考実験 16 液体窒素の性質

【目的】液体窒素を用いて,低温を必要とする実験を行う。

【準備】液体窒素用タンク,ビーカー,アルミニウム缶,ゴム管,線香,着火器具,L字形ガラス管付きゴム栓,大型試験管,ハンマー

【操作】(1) 液体窒素をビーカーに入れる。

(2) 草木の葉やゴム管を液体窒素につけた後引き上げ,ハンマーで叩いてみる。

(3) 図の装置を用いて,天然ガスを液体窒素で冷やして凝縮させる。試験管の底に液体が少し溜まったら,元栓からコックを外す。液体窒素のビーカーを取り去り,Bに点火してみる。

(4) 液体窒素を入れたアルミニウム缶を持ち上げ,落ちてくる液体を,液体窒素で冷やした試験管に受ける。液体が少し溜まったら,液体窒素から試験管を取り出し,中に点火した線香を入れる。

【結果】(1) 液体窒素はビーカー内で沸騰している。

(2) 粉々に壊れるが,室温に戻ると再び軟らかくなる。

(3) Aで天然ガスの流量を少な目にすると,Bでガス臭がせず,かつ試験管の底に液体が溜まり出す。Aを外してBに点火すると,一度凝縮した天然ガスが再び蒸発し,液体がなくなる迄燃える。

(4) ビーカーに入れた時とは異なり,液体窒素をアルミニウム缶に入れて持ち上げるとアルミ缶の底から液体がぽたぽたと落ちる。これを,冷やした試験管に受けて点火した線香を入れると,線香は激しく燃える。(沸点O2183℃,N2196)

【考察】(4)では,アルミニウム缶の熱伝導がよいので,空気中の酸素が液体窒素で冷やされ凝縮したのである。但し,空気中の水分等も混じる為少し濁っている。

これとは別に,下図の様にして,酸素だけを凝縮すると,純粋な液体酸素が得られる。淡青色で,ネオジム磁石等強い磁石に引きつけられる事も判る。

他に,Y-Ba-Cu-O系の高温超伝導体とフェライト磁石を用いて,マイスナー効果を見る事もできる。

 

参考実験 17 硫酸の製造(接触法)

【目的】簡単な装置で,接触法により硫酸ができている事を調べる。

【準備】NaHSO3H2SO4による二酸化硫黄発生装置,広口ガラス瓶,硬質ガラス反応管,二連球,白金石綿(白金懐炉用),濃硫酸,塩化バリウム水溶液,リトマス紙,ガスバーナー,魚尾灯

【操作と結果】(1) 下図の様に装置を組み立て,二酸化硫黄を送り込む。

(2) 二連球から空気を送り,乾燥したSO2O2の混合気体を白金石綿を入れた反応管中に送る。この時,SO2と空気の体積比は12が適当なので,洗気瓶中のガラス管から出る泡の量を見て調整する。

(3) 反応管を熱し,白金石綿が赤く光る状態を保つ。この程度に熱しないとSO2O2の反応は進まない。反応管から出る気体(白煙)を試験管の水に通す。

(4) 試験管中の液にリトマス紙をつけて赤くなる事を見る。また,少量分け取り,塩化バリウム水溶液を加え,BaSO4白色沈殿の生成を確かめて硫酸ができた事を知る。

 

 

参考実験 18 アンモニア合成(ハーバー法)

【目的】ハーバー法によるアンモニア合成を,実験を通して定性的に理解する。

【準備】硬質ガラス(石英管),塩化カルシウム管,鉄製スタンド,18L広口瓶,ガラスコック,ゴム管,ガラス管,水素,窒素,スチールウール,濃塩酸

【操作と結果】(1) 下図の装置をつくり,水素と窒素とを体積比31で集気瓶に入れる。

(2) 硬質ガラス管中の酸化鉄をバーナーで強熱した後,水道管につないだゴム管を通して集気瓶の中に少しずつ水を送り,混合気体を反応管に押し出す。

(3) 硬質ガラス管から出てくる気体に,ガラス棒の先についた濃塩酸を近づけ,白煙NH4Clが生じる事を観察する。

 

参考実験 19 硝酸製造(オストワルト法)

【目的】オストワルト法による硝酸製造と反応の仕組みを理解する。

【準備】吸収瓶,気体乾燥管,ガラス管,反応管,シリコーンゴム栓,三角フラスコ,水流ポンプ,濃アンモニア水,白金石綿(白金懐炉用),ソーダ石灰,リトマス紙,ガスバーナー

【操作】(1) 下図の装置をつくり,バーナーに点火後,水流ポンプを作動させる。

(2) Fの液にリトマス紙をつけて,赤変するのを確認する(硝酸の確認反応であり,褐色環試験を行えば尚よい)

【解説】Aから入る空気はNH3を伴って流れ,Bで乾燥され,Cで熱され,Dに入る。DNH3が酸化されてNOが生じる。NOEへ送られる途中で冷やされ,空気中に余分にあるO2で酸化されてNO2になり,Eの三角フラスコ内は次第に赤褐色になる。NO2は次のFの水に入り,水と反応してHNO3になる。

 

参考実験 20 銅錯塩の合成

【目的】銅のアンモニア錯塩を合成する。

【準備】濃アンモニア水,硫酸銅(II),エタノール,蒸留水

【操作】(1) 試験管に濃アンモニア水8cm3を取り,蒸留水5cm3を加える。

(2) 硫酸銅(II)CuSO4の結晶0.5gをビーカーに取り,これが溶け終わるまで(1)のアンモニア水を加える。この時の色の変化を観察する。

(3) エタノール8cm3を,(2)のビーカーに壁に沿わせて流し込む。時計皿でふたをして一晩放置する。この時,混合物をかき混ぜない様にする。

(4) ビーカーの上澄み液を傾けて捨て,濃アンモニア水とエタノールの等体積混合溶液を5cm3加えた後,ろ過する。

(5) 得られた結晶は,5cm3のエタノールで洗浄し,ろ紙上で乾燥する。

【結果】@ (2)では,深青色溶液となる。

    CuSO45H2O4NH3―→[Cu(NH3)4]2SO425H2O

A (5)の結晶は,テトラアンミン銅(II)硫酸塩一水和物[Cu(NH3)4]SO4H2O(式量245.7)である。青紫色で,水に溶け,エタノールには不溶である。水に溶けると深青色が次第に薄くなり,青色になる。これは次の平衡の為である。

[Cu(NH3)4]2xH2O[Cu(NH3)4x(H2O)x]2xNH3(x14)

 

参考実験 21 金属イオンの定性分析

【目的】金属イオンの分離と確認を,実験を通して学習する。

【準備】0.5mol/L水溶液(AgPb2Cu2Fe3Ba2の硝酸塩)2mol/L塩酸,2mol/Lアンモニア水,2mol/L硝酸,0.1mol/LK2CrO4水溶液,0.1mol/LNa2CO3水溶液,FeSK3[Fe(CN)6]

操作と結果

 

 

参考実験 22 ポリアミドの生成

【目的】二塩基性酸ジクロリドとジアミンによる縮重合で,ポリアミドを合成する。

nClCO-R-COClnH2N-R'-NH2―→-[-CO-R-CONH-R'-NH-]-n2nHCl

【準備】二塩基性酸ジクロリド溶液(A):アジピン酸ジクロリド (CH2)4(COCl) 227.4gをヘキサン100cm3に溶かしたもの。

ジアミン溶液(B):ヘキサメチレンジアミン(CH2)6(NH2)224.6gと水酸化ナトリウムNaOH 3.2gを水100cm3に溶かしたもの。

50cm3ビーカー,ガラス棒,ピンセット

【操作】ビーカーにA液を入れ,その上に静かにB液を注ぐ。両液の境界面で縮重合が起こり,ポリアミドの膜が生じる。この膜をピンセットでつまみ上げ,ガラス棒に巻きつけて徐々に引き上げる。

 

 

参考実験 23 タンパク質の分析

【目的】 小麦粉(強力粉)から,タンパク質の一種であるグルテンを取り出す。次に,これを加水分解して,薄層クロマトグラフィー(TLC)により構成アミノ酸を調べる。

実験1 グルテンの加水分解 【準備1】 ボウル,メスシリンダー,シリコンゴム栓,還流冷却器,ガスバーナー,丸底フラスコ,吸引ろ過装置,ゴム栓,水浴器,強力粉(小麦を挽いて得られる粉が小麦粉で,メリケン粉ともいう。硬質小麦から得られ,グルテンを多く含むため水を含むと強く粘るものを強力粉といい,パン等に適する。また,軟質小麦から得られ,グルテンが少なく水を含ませても粘りが弱いものは薄力粉といい,天ぷらやビスケットに適する。)9mol/L塩酸HCl,活性炭C,炭酸ナトリウムNa2CO3

【操作の概要1】 @ 強力粉40gをボウルに取り,水22cm3を少しずつ加えながら,30分間よく練る。

A ボウルに水を入れ,@で練った強力粉を揉み洗いする。水が白濁しなくなるまで68回水を換えながら繰り返し洗う(淡黄色ゴム状残留物がグルテン)

B フラスコに塩酸を100cm3入れ,冷却器を取り付けて穏やかに熱する。

C グルテン10g を少量ずつBに入れ,しばらく振り混ぜて溶かす。

D 加水分解する為に半日間煮沸した後(黒色溶液になる),放冷する。

E Dで得られた反応液に活性炭を加えて水浴上で減圧しながら,1/31/4になる迄濃縮する(この黄褐色透明の濃縮液に,炭酸ナトリウムを二酸化炭素が発生しなくなるまで加えて中和後,ろ過したろ液を実験2の試料とする)

実験2 グルテンの構成アミノ酸の分析 【準備2】 ビーカー,メスシリンダー,集気びん,ガラス板,TLC(シリカゲル602cm×9cm),毛細管,霧吹き,ホットプレート,1-ブタノールC4H9OH,酢酸CH3COOH,蒸留水H2O,クエン酸C6H8O7緩衝液(クエン酸21.0gを水200cm3に溶かし,1mol/L水酸化ナトリウム水溶液200cm3と水を加えて全量を500cm3としたもの。),ニンヒドリンC9H6O4,Eで得た試料,アミノ酸標品(チロシンTyr1%,グルタミン酸Glu1)

【操作の概要2】 F ビーカーに,ブタノール:酢酸:水=412(体積比)で混合する(展開溶媒)

G クエン酸緩衝液をブタノール(密度0.8g/cm3)100cm3に飽和させ,この溶液の質量を量り,ニンヒドリン濃度が0.2%になる様にニンヒドリンを溶かす(発色試薬)

H 集気びんに展開溶媒を深さ1cmになる様に入れ,ガラス板でふたをして蒸気を充満させる。

I Eで得られた結晶を少量の水に溶かし,毛細管でTLC 板の下端から1.5cmの所にスポットし,素早くHに入れて直ぐにふたをする。

J 展開溶媒がTLC 板の上端の少し手前に上がる迄展開させる(40)

K Jで展開したTLC 板を,ドラフト内で乾燥させる。

L Kで乾燥させたTLC 板に,発色試薬を霧吹きで吹きつけ,110℃で5分間ホットプレートで熱すると,赤紫〜紫色のスポットが一時的に現れる。

M I〜Lの操作をEで得られたろ液とアミノ酸標品で行い,Rf値を比べて,グルテンの構成アミノ酸の種類を確認する。をRf(移動率)といい,温度や湿度,薄層板,展開溶媒の種類等の条件が一定であれば,1つの物質では一定値になるので,試料物質が何かを確認できる。

 

 

【実験上の留意点】 〔実験11

1.強力粉に水を加えて練る操作は,しっかり行う程後の実験結果がよい(得られた小麦粉の塊をドゥという)

2.水で練った強力粉(ドゥ)を水で揉み洗う操作も,しっかり行う程後の実験結果がよい。

3.加水分解における加熱は,連続して行う事が無理なら断続的でもよい。

〔実験2

1.展開溶媒は刺激臭が強い為,蒸気を吸い込まない様に,ドラフト内で操作を行う。TLC板を展開層に入れる時,スポットが展開溶媒に浸からない様にする。

2.展開容器中に展開溶媒の蒸気を十分に充満させてから展開を行う。

3.試料溶媒を展開させた時に,ある程度テーリングを生じるのはやむを得ない。実験1の操作を念入りに行う以外にも,溶媒の濃縮度,実験室の温度,展開容器の形状等を工夫してみるのもよい。

【考察】 1.物質が固定相と移動相への親和性の違いに基づいて分離されていく原理を利用した分離方法をクロマトグラフィーという。高校でよく用いられるペーパークロマトグラフィー(PC)と薄層クロマトグラフィー(TLC)は,原理は同じである。

TLCは,固定相にシリカゲル,酸化アルミニウム(アルミナ),セルロース等が用いられ,PCに比べて展開時間が短い,検出感度がよい,発色試薬が広範囲である等の特徴をもつ。但し,Rf値の再現性にやや安定性を欠く為,標準物質を試料と同時に展開してこの欠点を補正する場合もある。

2.試料を展開させると,以下の様な結果が得られる。

Rf

濃淡

0.510.54

薄紫色

0.210.29

茶褐色

0.130.17

淡桃色

一方,アミノ酸標品を展開させると,以下の様な結果が得られる。

 

標品

Rf

 

 

チロシン

0.510.54

 

 

グルタミン酸

0.210.29

茶褐色

 

 

アルギニン

0.130.17

 

これらを比較すると,グルテンを構成するアミノ酸は,グルタミン酸を中心として,チロシンやアルギニン等が含まれる事が判る。

テキスト ボックス: 準備に要する時間 約1時間
実験に要する時間 約10時間
実験に要する消耗品の価格 約500円
TLCプレート(20cm×20cm,25枚入り)は18,000円程度

 

【発展実験2】 強力粉からグルテンを取り出し,これを加水分解して構成アミノ酸を調べる本実験は,身近な材料を用いて種々の考察が可能な興味深いものだが,実験時間が長時間にわたる為,生徒実験としてはやや不向きであるという欠点がある。そこで,この欠点を補う以下の様な方法もある。

(1) 市販のもやしをジューサーにかけ,得られたジュースを2分間煮沸した後,吸引ろ過して得たろ液を試料溶液とする。

(2) 展開溶媒として,1-プロパノール:水=169(体積比)を用いる。

(3) 標品と比較すると,アスパラギン,アラニン,バリン,ロイシン等が含まれる事が判る。

 

【参考】 小麦粉  タンパク質は,主としてグルテニンとグリアジンと呼ばれる物質からなり,水を加えて練ると,2つのタンパク質は互いにくっつき合ってグルテンと呼ばれる粘りのあるタンパク質に変化する。

小麦粉は,グルテンの含有量の違いや粒の硬さの違いから,幾つかに分類できる。

≪グルテンの含有量の違いによる分類≫

小麦から多種多様な製品が作られるのは,このグルテンの含有量の違いによる。

@ 強力粉:グルテンの含有量が11.513.0%で,硬質小麦を原料として粒子が粗い。パン,中華麺,ギョウザの皮,ピザ等に適する。

A 中力粉:グルテンの含有量が7.510.5%で,軟質小麦を原料として粒子が細かい。うどん,そうめん,フランスパン,クラッカー等に適する。

B 薄力粉:グルテンの含有量が6.09.0%で,軟質小麦を原料として粒子が非常に細かい。ケーキ,クッキー,天ぷら等に適する。

《小麦の粒の硬さによる分類》

@ 硬質小麦:デンプン粒とその他の物質が固く密着した小麦。粉にした時に,幾つかのデンプンが塊のまま砕け,デンプンにも傷がつき,この傷がある事で粉の吸水性が高まる。

A 軟質小麦:デンプン粒とその他の物質のつながりが弱い小麦。粉にした際,ほぼ無傷のままデンプン粒をばらばらにできる為,粉の粒は非常に細かくなるが,デンプン粒としては無傷なので,吸水性は低くなる。

グルテン  グルテンは,グルテニンとグリアジンと呼ばれる2つの単純タンパク質が水を吸って膨潤し,よく練られる事でお互いが網の目の様に絡み合って特有の粘りと弾力のある塊となったものである。

グルテニンは,分子量30万のランダムコイル分子で,水,塩の希薄水溶液,アルコールに不溶で,酸の希薄水溶液,塩基の希薄水溶液に可溶である。保水性や粘張性に富む。

グリアジンは,分子量が26千でα-ヘリックス構造をもつ分子で,水,塩の希薄水溶液に不溶で,酸の希薄水溶液,塩基の希薄水溶液,アルコールやエーテル等の極性溶媒に可溶。グルテンから70%エタノールで抽出できる。

小麦粉を用いた料理の科学

《グルテンを活かした料理法》

@ パンのもちもちとした食感やうどんのこしは,グルテンの為である。パン生地を一生懸命手でこねたり,うどん生地を足で踏むのは,よくこねて多量のグルテンを得る為である。

A パンやうどんに食塩が含まれるのは,食塩がグルテンの粘りを増すのに役立つ為である。

B 炭酸ナトリウム等を溶かした塩基性の水溶液をかん水といい,グルテンの延びをよくする働きをもつ。中華麺にかん水が使われているのはこの為である。

《グルテンの特徴を抑えこむ料理法》

@ 天ぷらをさくっとした食感にする為には,小麦粉を水に溶く際にグルテンの生成をできるだけ少なくする事が大切である。この為には,小麦粉はよくこねずにさっと混ぜたり,切る様に混ぜるのがコツである。

A グルテンは温度が高くなればなる程多く生じる為,天ぷらの衣を作る時には冷水を用いるのがよい。小麦粉を使う迄冷やしておくのも良い方法である。

B お菓子作りには,バター等の油脂が用いられる。これらの油脂は,グルテンと水の間に割り込み,グルテンの生成を妨げる働きをもつ。この為,油分の多いクッキー程さくさくした食感になる。シュークリームの皮を作る時,小麦粉よりも先に溶かしバターを入れるのは,グルテンが生じる前にバターで予防する為である。

C ケーキに砂糖を入れるのは,甘くする為の理由以外に,砂糖が水を抱え込み,グルテンをつくる為の水分を横取りする働きをもつ。

 

◆クロマトグラフィー  各種の固体または液体を固定相として,その一端に置いた試料混合物を適当な展開剤で移動させ,各成分の吸着性や分配係数の差異に基づく移動速度の差を利用して相互分離する技術。展開剤が液体の時は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)といい,カラムにシリカゲルや活性アルミウム,詰めて行わせるものをカラムクロマトグラフィーという。ろ紙上に展開させるペーパークロマトグラフィーもよく用いられる。ろ紙の代わりに,ガラス板上にシリカゲル等の粉末をつけた薄層を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)がよく行われている。また,展開剤として気体を用いたものがガスクロマトグラフィー(GLC)である。

 

<教材・参考資料等の紹介>

1 大阪府教育センター理科第一室,「化学II・課題研究の指導資料」,p.6167(1995)

2 島弘則,「化学と教育」,41622(1993)

 

 

 








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