トップ化学II 改訂版5部 生命と物質>第1章 生命体を構成する物質>第2節 核酸

2節 核

 

 

◆核酸

核酸は,全ての細胞に含まれ,生物の遺伝現象において中心的な役割を果たしている物質である。窒素を含む塩基であるプリン又はピリミジン(5種類)と炭素数5個の糖(リボースとデオキシリボース)とリン酸が結合したものをヌクレオチドといい,ヌクレオチドが重合したものが核酸である。核酸は遺伝子の本体といわれている。

 

ヌクレオチドの塩基がアデニン,糖がリボースの時,アデノシン一リン酸(アデニル酸AMP)となる。

 

◆核酸中の糖

ヌクレオチドや核酸中の糖はペントースで,糖がリボースの核酸をリボ核酸RNA(ribonucleic acid),デオキシリボースの核酸をデオキシリボ核酸DNA(deoxyribonucleic acid)という。

 

 

◆核酸塩基の塩基対

DNA中の塩基はアデニン,グアニン,シトシン,チミンの4種類からなる。RNAはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルから成る。アデニンとチミン,又アデニンとウラシルの間には2本の水素結合が,グアニンとシトシンの間では3本の水素結合ができる。この為,DNARNAの間の遺伝情報の交換が可能となっている。この時の水素結合はピリミジン塩基とプリン塩基の組み合わせになっている。

 

 

DNAの二重らせん

リン酸と糖のヒドロキシ基が縮合してつくるエステル結合により,RNADNAの高分子鎖がつくられている。リン酸分子に注目するとリン酸ジエステル結合といえる。

DNAは塩基が対応する塩基と水素結合して,二本の高分子鎖が二重らせん構造を取っている。細胞内では右巻きらせんになっており,5'から3'へ見ていくのが習慣になっている。細胞内のDNAB形といわれ,他に,脱水状態のA形があり,胞子内に存在する。別の形に左巻きらせんのZ形もある。

 

DNAのつくる二重らせんは,広い溝(主溝)と狭い溝(副溝)が観察される。らせんの外側はリン酸ジエステル結合にあるヒドロキシ基が電離したO-  が水に接している。広い溝の中では,塩基の水素結合以外の疎水的部分が水と接している。隣り合った塩基対がなす角はB型で36°10塩基対でらせんが一回りしている。

 

細胞中のDNA

B-DNAはらせん1回転に10塩基対があり,1回転分の長さを3.4nmとすると,ヒトの細胞の中にはDNA30億の塩基対あるので,DNA1本の鎖にするとその長さは2mになる。

3.4×10-9[m]×30×10810×22.04[m]

二重らせんになったものは1mあり,これだけ長いDNAが細胞1個にこんがらがらずに入る為に,きれいに整理されDNAが細胞中に存在している。

DNAは,ヒストンというタンパク質8個からなるヌクレオソームに146塩基対が2巻きし,ヌクレオソームが集まってクロマチン(染色質)という繊維になっている。クロマチン(染色質)が折り畳まれ集まって,顕微鏡で観察できる染色体になる。

 

DNAの複製

DNAの複製では,まず二本鎖のDNAがほどかれて一本鎖DNA2つにならなければならない。この時DNAヘリカーゼという酵素が関係し,ジッパが壊れて所々開いた様になる。この二本鎖が開いた部分を複製フォークと呼び,開いた部分には2つの複製フォークができたことになる。開いた一本鎖DNA上の塩基には,対応するデオキシヌクレオチド三リン酸が水素結合する。

二本鎖DNAがほどけて複製起点ができるところ

DNAの合成は,複製フォークの一本鎖DNA上で,DNAポリメラーゼという酵素によって行われる。DNAポリメラーゼの基質は4種のデオキシリボヌクレオチド(dATPdCTPdGTPdTTP)であり,鋳型となる一本鎖DNA上で,DNAの合成が行われる。

DNAポリメラーゼは,5'のヒドロキシ基がリン酸エステルとなり3'のヒドロキシ基が残っているDNA断片とデオキシリボヌクレオチドの5'のヒドロキシ基に対して作用する。その為,DNAポリメラーゼによるDNAの合成は,1つの方向にしか起こらない。そして複製フォーク上にプライマーRNAといわれるRNA断片が,プライマーゼという酵素により作られる。そこを起点として,DNA3'のヒドロキシ基とデオキシヌクレオチドが縮合反応してDNA鎖を伸ばす事になる。プライマーRNAは最終的に取り除かれDNAに置き換わる。

 

 

二重らせんがほどけると,上図左側の鋳型DNA(DNA)上の新しいDNAは,プライマーDNAから新しいDNAが伸びていく方向と,二重らせんが開く方向が一致していて問題がなく,これをリーディング鎖(leading rand)という。右側の鋳型DNA上では,DNAが伸びる方向と二重らせんが開く方向が反対になっている。この様なDNAをラギング鎖(lagging strand)という。図の右側では二重らせんが開いていく度に,プライマーRNAが新たに作られていく。

 

 

コドン

DNA4種類の塩基のうち3つの塩基の配列は,決まったアミノ酸または情報(遺伝情報の始まり・終わり)に対応している。3つの塩基の組み合わせは,遺伝暗号の最小単位になり,1つのアミノ酸を決めている3つの塩基のつながりをコドンと呼んでいる。コドンをまとめた表が一般的である。同心円を利用したひまわり型の図(日の出図)は,対応するアミノ酸が判り易い。

 

DNAからタンパク質の合成

DNAの遺伝情報は,核の中で合成される一本鎖のメッセンジャーRNA(mRNA)に伝えられる。そして,mRNAのアミノ酸情報に対応した転移RNA(tRNA)が作られる。1分子のtRNA1分子の特定のアミノ酸に対応している。また,リボソームRNA(rRNA)もつくられる。

3種類のRNAは核から抜け出し,細胞質の中に出ていく。tRNAは細胞質ゾル中に溶けているアミノ酸の中から対応するアミノ酸と結合する。rRNAはリボソームタンパク質と結合し,大小二つのサブユニットからなる。小さいサブユニットがmRNAの開始コドンと結合すると大きいサブユニットと会合してリボソームになる。リボソームは,mRNAの遺伝情報の順番に従ってアミノ酸と結合したtRNAを受け入れる。mRNA-リボソーム-tRNAの端にあるアミノ酸が順次ペプチド結合で重合されてタンパク質の一次構造が完成する。

 

遺伝情報によるタンパク質の合成

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009-2012 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.