トッ化学II 改訂版4部 生活と物質>第2章 材料の化学>第1節 プラスチック

1節 プラスチック

 

合成樹脂  石油,石炭,天然ガス等化石資源を原料とした低分子量の化合物から,重合,重縮合,重付加等により得られる高分子量(分子量1万以上)の樹脂状物質を合成樹脂(プラスチック)と呼ぶ。熱すると軟化し塑性を示し,任意の形に成形できるが冷やすと固化する過程を可逆的に行える熱可塑性樹脂が主で,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン等がある。また,熱すると反応が起こり三次元高分子を生じると同時に硬化を起こし,可塑性を再現できない熱硬化性樹脂があり,フェノール樹脂,メラミン樹脂,尿素樹脂等がある。家電部品,パネル,パイプ,フィルムの様な成形品のみでなく,接着剤,塗料,クッション材等として合成樹脂は日常生活に広く使われている。

 

◆熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂

熱可塑性樹脂は一次元構造の固体高分子で,加熱すると融解し,冷却すると固体になる。また,適当な溶媒に溶解する。熱可塑性樹脂は繊維に利用されるものが多く,次の様な樹脂がある。

塩化ビニル樹脂,塩化ビニリデン,塩化ビニル共重合体,酢酸ビニル樹脂,ポリビニルアルコール,ポリビニルアセタール,ポリエチレン,ポリプロピレン,スチレン樹脂(ポリスチレン),アクリル樹脂,ポリアミド,ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,フッ素樹脂

熱硬化性樹脂の硬化物は三次元構造の固体高分子だが,硬化前は分子量の比較的小さい熱可塑性樹脂である。これが加圧・加熱等の操作で架橋構造を生じる事により,三次元構造の不溶・不融の硬化物となる。熱硬化性樹脂には,尿素樹脂,フェノール樹脂の他,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,ケイ素樹脂等がある。

 

ポリエチレンの製造

ポリエチレンはエチレンの付加重合で合成され,幾つかの合成法がある。最初にポリエチレンを製造したのはイギリスのICI社で高圧法が開発された。1950代,ドイツのチーグラーが,発明したチーグラー触媒TiCl4-Al(C2H5)3を用いて低圧法による合成に成功した。次に合成法を示す。

(1) 低圧法

温度60100°C,圧力100010000 hPa,触媒はチーグラー触媒

(2) 中圧法

温度100150°C30000hPa,触媒はCr2O3-SiO2-Al2O3

温度200250°C70000 hPa,触媒はMoO3-Al2O3

(3) 高圧法

温度55100°C3000001400000 hPa,触媒はジエチルペルオキシカーボネート

ポリプロピレンの製造

プロピレンがチーグラー−ナッタ触媒TiCl3-Al(C2H5)3で重合体になる事が発見されてから,1957年にイタリアで初めてポリプロピレンの工業生産が始まった。重合条件は,室温〜80°C100010000hPaで,ヘキサンやヘプタンの溶媒中で反応させる。

 

◆熱可塑性樹脂の性質

熱可塑性樹脂の性質を,下表に示す。これらの性質は代表的なものの例であり,平均分子量や製法により変化する事もある。

熱可塑性樹脂の性質

 

ソフトコンタクトレンズ

ソフトコンタクトレンズは,吸水し膨潤軟化する親水性のポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート)が主成分として使用され,橋架け剤としてジメタクリレートが少量含まれている。涙で膨潤した状態で丁度よい形,大きさ,屈折率を示さなければならない為,乾燥時と膨潤時の膨張率と屈折率を計算して切削してつくられる。ハードコンタクトレンズはポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート)で,無機ガラスより軽いが同じ様な適当な屈折率をもち,割れない。

 

◆高分子の固体構造

低分子固体では,粒子が規則正しく配列して100%結晶化しているのに対し,固体高分子の場合は,一般に結晶部分と非結晶部分から成り,結晶化は100%ではない。この様な構造上の特徴が,固体高分子特有の性質を表す結果となっている。

固体高分子では,例えば次図(1)に示す100%非結晶の高分子は長い分子が絡み合って構成されている。そして,これを加熱によって結晶化しても,その結晶核の成長は長い分子がからみ合っている為困難で,非結晶部分の中に多数の微結晶部分(クリスタリット)が分散した微細構造図(2)となる。次にこの結晶化した高分子を延伸すると微結晶部分の配向が起こり,図(3)の様になる。

この様に延伸による分子鎖の配向は,特に糸状高分子である繊維の機械的性質の向上に重要である。また,高分子全体の質量に対する,この様な微結晶部分の全質量の割合(百分率)を結晶度といい,これは分子量と共に固体高分子の力学的性質の目安として重要な因子の1つである。

一般に固体高分子は,非結晶の部分に微結晶部分が混じり合っている場合が多いが,最近では数種の固体高分子について100%結晶体からなる高分子単結晶がつくられる様になった。

 

繊維強化プラスチック(FRP)

エンジニアリングプラスチック中にガラス繊維や炭素繊維を加え耐熱性や強度を高めたもの。ガラスを繊維状に引き伸ばしたもの(直径0.0050.02mm)は強度200kg/mm2で,ナイロンやポリエステルの2倍となる。これをナイロン,テトロン等に埋め込むと芯となるガラス繊維の伸度が小さくなり,圧縮や引張りに強くなる。高温になって,ナイロンやテトロンが軟化しても,ガラス形状を保つ為,200℃近くまで使用に耐え得る。ガラス強化プラスチックは質量が鋼材の1/3だが,強度は鋼材と同程度である。

 

◆フェノール樹脂

普通,ベークライトと呼ばれ,合成樹脂のうち最も古くから知られている。これはベークランドによって1907年に初めてつくられたもので,フェノールとホルムアルデヒドが原料である。

フェノールにホルムアルデヒドを作用させた時,ホルムアルデヒドが結合する場所は,フェノールのo-p-位である。その場所を*で示すと,次の様になる。

塩基を触媒として反応させると,第一段階として次の様な反応が起こり,これらの混合生成物をレゾールという。レゾールは溶媒に可溶で,これを脱水して接着剤や塗料に利用される。

2段階として,-CH2OHとフェノールのo-又はp-位のCHとの間で縮合反応が起こり,最後にフェノール樹脂ができる。フェノールに3か所反応する場所があるので,フェノール樹脂は三次元的に網状構造を形成している。その為,硬化性の樹脂をつくる。

フェノールとアルデヒドとの縮合がまだ十分に進まず,溶媒に溶け,熱によって柔らかくなる段階で,フェノール樹脂に木粉等を混ぜて練り合わせ,加熱・加圧して適当な形を与えながら最後の硬化を行ってフェノール樹脂の製品にする。フェノール樹脂は電気絶縁材料・家具・日用品等に用いられる。

酸を触媒としてフェノールとホルムアルデヒドを反応させる時は,第1段階で,主としてメチレン結合からなる中間体(ノボラック)が生じる。

ノボラックはこのまま熱しても硬化せず,ヘキサメチレンテトラアミン等の硬化剤を加えて熱し,フェノール樹脂にする。

フェノールの代わりに,クレゾールやキシレノール等を原料としたフェノール樹脂もつくられている。クレゾールを用いた場合は,o-p-の場合は2か所しか反応場所がない。その為o-クレゾール,p-クレゾールからは鎖状構造の高分子ができ,硬化性の樹脂は得られない。o-クレゾール,p-クレゾールを用いる場合は,m-クレゾールやフェノールを加えないと硬化しない。

 

尿素樹脂

尿素とホルマリンの縮合による熱硬化性樹脂。ユリア樹脂ともいう。尿素をホルマリンに溶かし,尿素が完全に溶けてからアンモニア水を加え1015分熱し,型に入れて6080℃,80100℃で熟成させてもよい。この場合,尿素5gに対し35%ホルマリンを15mL程度,濃アンモニア水は,0.5mL程度加えると透明で硬く強い樹脂ができる。尿素が少ないと白濁し,多いと透明になるが乾燥し難く,硬さが十分でない。加熱時は沸騰石を入れ,消えにくい泡ができ始めたら素早く型に流し込む。又,熟成に際しても急激な温度変化は気泡混入の原因になる。この反応では,尿素分子にホルムアルデヒドが付加(メチロール化)し,更に,メチロール基-CH2OHと他の尿素分子の-NH-間で脱水縮合(メチレン化)が起こり,次第に大きな分子となり硬化していく。

尿素樹脂は,食器等の成形品や,合板用の接着剤に用いられる。

 

◆メラミン樹脂

メラミンとホルマリンの縮合による熱硬化性樹脂で,尿素樹脂と同様にして製造され,成形材料ではパルプ等の充填材を加える。食卓等の天板,耐熱性食器,建材等に用いられる。

 

◆シリコーン樹脂

ケイ素樹脂ともいい,有機基を持つケイ素が酸素と交互に結合した結合を骨格にもった樹脂。シリコーンの原料としてはタロロトリメチルシラン(CH3)3SiCl,ジクロロジメチルシラン(CH3)2SiCl2,トリクロロメチルシランCH3SiCl3がある。これらの化合物は水と容易に反応しシラノール(CH3)4nSi(OH) n (n123)となり,この時発生する塩酸は脱水縮合を促進する。

原料がR3SiClR2SiCl2では分子量はあまり大きくないシリコーン油が生じ,R2SiCl2では直線分子のシリコーンゴムが得られ,R2SiCl2RSiCl3では一部架橋されたシリコーン樹脂が得られる。シリコーン樹脂は耐熱性,耐水性,電気絶縁性に優れており,電気絶縁剤として用いられる他,塗料用として他の樹脂と共に使われる事が多い。

 

 

◆イオン交換樹脂

1935年イギリスのAdamsHolmesが,実験室内の塩水がベークライト系の合成樹脂の為一夜で酸になった事から,合成樹脂のイオン交換作用を発見した。しかし,イオン交換作用そのものは,1850年に土壌中にその作用のある事等が知られていたが,1944年アメリカのD'Alelioがポリスチレンを母体とするイオン交換樹脂を発明し,研究は急激に発展した。現在実用化されているものは,大部分スチレンとジビニルベンゼンの共重合体を母体とし,その形状は0.51.0mmの粒状のものが主だが,薄紙の様なイオン交換膜も多く使われている。

この様に,イオン交換樹脂は有機高分子化合物の1つで,その主なものは

-SO3H:スルホ基,強酸型  -COOH:カルボキシ基,弱酸型

-N(CH3)3OH:第四級アルキルアンモニウム基,強塩基型

-NH2-NHR-NR2:アミン類,弱塩基型

等がある。その交換作用は,酸型(HR)のものはHと陽イオン,塩基型(ROH)のものはOHと陰イオンの間で行われる。

HR NaCl  NaR HCl

ROH NaCl  RCl NaOH

イオン交換樹脂は純水製造の他,海水から真水や塩の製造,微量イオンの回収の応用として原子力産業への利用,廃液中から有効成分の分離精製,医薬品として等,学術研究と実用の両面で幅広く用いられている。

 

参考 感光性樹脂

感光性樹脂は光で不溶化するネガ型と,光で可溶化するポジ型がある。ネガ型感光樹脂としてはポリビニルシンナマートであり,その橋架け不溶化する反応を次に示す。

 

ネガ型感光性樹脂を用いた写真凸版製版法の原理を次に示す。露光により光り露光部は硬化し,溶剤で現像する事により末露光部が洗い流され,光硬化部が残り,耐酸化被膜となる。腐食液により金属基盤を削り凸版となる。一方,ポジ型感光樹脂には,光照射で高分子主鎖が分解するポリメチルメタクリレート誘導体等が用いられている。

 

参考 高分子膜

高分子膜の利用法としては,限外炉過膜,逆浸透膜,透析膜,気体分離膜,徐放性膜,マイクロカプセル等がある。

限外炉過膜は分子ふるい膜とも呼ばれ,分子量50030万の分子を,分子の大きさを利用して分離するのに用いられる。

逆浸透膜は,Na+Clを通さず水分子を通すので,海水からの淡水製造等に用いられている。

透析膜は,人工腎臓等に利用され,血液中の不要物を除く働きをする。

気体分離膜は,気体中の特定の物質を回収濃縮する等の働きを持ち,人口肺等への利用が考えられるが,まだ試験段階である。ヘリウムの純化等で一部実用化されている。

徐放性膜は,一定速度で物質を透過させる働きをするので,薬品や農薬を必要なとき必要量だけ放出させるのに利用される。

マイクロカプセルは,直径数µm〜数百µmの大きさに物質を膜で包んだものである。膜は,揮発性物質や反応性物質の隔離・保護の役目や,形態の変換(気体・液体の固形化,溶解度・比重等の改変)の役目を果たしている。

 

参考 吸水性高分子

吸水性高分子とは,水を数百倍も吸収して膨潤し,ハイドロゲルとなるポリマー。化学構造上は,カルボキシ基等の親水基をもつ水溶性ポリマーを分子間で架橋したものである。一度膨潤したハイドロゲルは,加圧しても水は出てこない。食物で例えるとコンニャクの様なもので,高野豆腐の様に多孔質で押すと水が出てくるものとは異なる。ハイドロゲルに塩をかけると,水を出して縮み(塩析現象),膨潤したハイドロゲルからは水を自由に出す事ができる。また,砂漠地帯の緑化計画に果たす吸水性高分子の役割が注目されている。この原理を利用したのが,土や砂に添加する植物用保水剤であり,1960年頃アメリカで開発された。吸水性高分子は,生理用品や紙おむつ等に利用されている。そのポリマーの多くはポリアクリル酸塩系であり,デンプンとポリアクリル酸からなるものやメタクリル酸メチルと酢酸ビニルの共重合体等がある。

 

 








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