トップ化学II 改訂版3部 高分子化合物>第2章 糖類とタンパク質>第2節 タンパク質

2節 タンパク質

 

光学異性体と不斉炭素原子

4価の炭素原子に4個とも互いに異なる原子や原子団が結合している時,この炭素原子を不斉炭素原子という。不斉炭素原子をもつ分子を,それを鏡面に映した形の分子と比べると,重ね合わせられず,互いに異性体となる。この異性体は,対掌体,鏡像体の関係にある立体異性体で,光学的性質だけが異なる事から光学異性体と呼ばれている(時には結晶形が左右逆になる事もある)。光学異性体の溶液に偏光を当てると,その振動面が右や左に旋回する。左に旋回させるものを左旋性があるといい,()で表し,右に旋回させるものを右旋性があるといい,()で表す。左旋性と右旋性のものの等量混合物は旋光性がなく,ラセミ体という。

光学異性体には,その構造からみた命名上の規約がある。これは,ドイツのフィッシャー(Hermann Emilo.Fischer18521919)によるもので,基準物質にグリセルアルデヒドを用い,小型のDLの文字を用いて表す。この規約では,図(a)の構造のものをDグリセルアルデヒドとする。四角形は不斉炭素原子を中心においた正四面体を表し,各頂点で置換基と結合している。HOHを結ぶ横向きの実線は紙面の手前にある事を示し,‐CHOと‐CH2OHを結ぶ縦向きの破線は紙面の奥にある事を示している。図(b)は,(a)を平面に投影した図である。L‐グリセルアルデヒドは図(b)HOHを互いに交換したものになる。図(c)D型,図(d)L型であり,(c)(d)DLが鏡像体になっている事を示す。

グリセルアルデヒドのD型とL

D () -グリセルアルデヒドは,酸化されてD()グリセリン酸になり,更に数段階の反応を経てD()乳酸になる。この様に,Dグリセルアルデヒドから導かれる光学異性体をD型とし,DLは,旋光性と無関係に定められている。

乳酸は,乳製品や乳酸菌飲料,漬物等の酸味成分であり,乳酸発酵によってDL−乳酸ができる。又,筋肉等の動物組織中で糖代謝によりできる乳酸はL() −乳酸である。

糖の場合には,糖とグリセルアルデヒドのCH(OH)CH2OHの構造を対比させて,同じ構造の時記号も同じになる。アミノ酸の場合には,NH2OHに置き換えて乳酸と対比させ,同じ構造の時記号も同じになる。

 

天然のアミノ酸は殆どL型だが,旋光性は右のものと左のものがある。

酒石酸には1分子中に2個の不斉炭素原子がある。そこで,2個ともD型又はL型のものと,D型とL型を1個ずつもつメソ体と呼ぶ対掌構造のものがある。メソ体はラセミ体と同様に,左旋性と右旋性が打ち消し合い旋光性を示さないので,光学不活性体である。


一般に,不斉炭素原子n個をもつ分子の光学異性体は,2n個である。

光学異性体は,生理的には全く異なった挙動を示すもので,地球上の生物体内のホルモンや糖類,アミノ酸等は,どれも光学活性があり,そのどちらか一方の分子からできている。例えば,タンパク質のa-ヘリックスのらせん構造は,光学活性のL-型アミノ酸による二次構造である。もし,この中にD型アミノ酸が混入すると,規則的ならせん構造はできなくなる。この様に,生物体内では一方の光学異性体のみが選択的に秩序よく配列され,安定な構造を保ち生理作用を営んでいる。これは非常に興味深い問題である。現在,この不斉が発生する仕組みについていろいろな研究が進められている。不斉発生の真の姿が解明される日も近いかも知れない。

 

光学分割

不斉炭素原子を含む化合物を人工的に合成すると,光学異性体の等量混合物であるラセミ体が一般には得られる。そこで,鏡像体の一方のみを合成する不斉合成が試みられている。又,ラセミ体から一方の鏡像体を分離する方法は古くから研究されており,これを光学分割又はラセミ分割といい,主として次の様な方法がある。

(1) 最も古い方法として,パスツール(Louis Pasteur18221895)1848年に発見した方法で,DL-酒石酸ナトリウムアンモニウム塩の水溶液を27℃以下で再結晶させるとD塩とL塩の2種類の結晶ができる。これを顕微鏡を用いて分け,強酸で処理して,酒石酸のそれぞれの対掌体を得た。しかし,この方法に適する物質例は少ない。

(2) ラセミ体の飽和溶液の中へ,再結晶の種として一方の対掌体の結晶を入れると,種結晶と同じ対掌体の結晶が析出してくる。又,時には異なった旋光性の結晶を種として加えても,その刺激によって一方のみの対掌体の結晶が析出する事がある。例えば,DL-酒石酸ナトリウムアンモニウム塩の水溶液にL-アスパラギン酸の結晶を加えるとD-酒石酸ナトリウムアンモニウム塩が析出する。

(3) 酸,アミン及びアルコール類のラセミ体については,例えば,カルボン酸のラセミ体(DL-)の溶液にDの立体配置をもった光学活性の塩基を加えると,生じる塩はD-酸+D-塩基とL-酸+D-塩基の混合物となる。この2種類の塩の溶解度の性質は同一ではなく,再結晶やクロマトグラフィー等で2種類の塩に分離できる。この分離した塩を酸で処理して,DLのカルボン酸をそれぞれ別々に得る事ができる。

 

 

D塩基

 

 

 

 

 

(4) 生物体から生じる化合物(代謝産物)は,殆どが一方の対掌体である。これは酵素の基質特異性に起因する。この性質を利用して生物体外における酵素の作用により,ラセミ体のアミノ酸やテルペン類の光学分割を行う事ができる。

 

◆アミノ酸

分子中にカルボキシル基-COOHとアミノ基-NH22種の官能基をもつ化合物をアミノ酸という。カルボキシル基が結合している炭素をα,順にβγδ,…とし,アミノ基の結合する炭素の場所によってα-アミノ酸,β-アミノ酸,…という。

天然のタンパク質を構成するアミノ酸は,殆どがα-アミノ酸であり,20種のα-アミノ酸が知られている。一般式では R-CH (NH2)COOHで表され,-Rを側鎖と呼ぶ。-R-COOH基をもつものは酸性アミノ酸,-NH2を持つものは塩基性アミノ酸という。又,Sを含む含硫アミノ酸,-OH基をもつオキシアミノ酸,芳香族や複素環を持つアミノ酸等がある。

タンパク質中に見られるアミノ酸は,アルファベット3文字又は1文字の略号で表す。

グリシン以外のアミノ酸は不斉炭素原子を持ち,生体内のアミノ酸は殆どがL型で,D型のものはある種の抗生物質や細胞膜に僅かに存在する。

立体構造の表示は方法にはいろいろ考案されている。フィッシャー投影式が一般的だが,ハース投影式(糖類)やニューマン投影式等その他の表示方法も利用されている。

かつて旋光性は,右旋性(dextrorotatory)d-左旋性(levorotatory)l-表していたが,現在では+−で表している。そして,糖についてのフィッシャー投影式から定義されるD-L-を使っている。従って古い文献にあるl-アラニンは,L-(+)-アラニンとなる。

 

◆双性イオン

1つの分子内に酸性の官能基と塩基性の官能基をもつものを両性電解質といい,分子内で,H+が移動して生ずる一種の電気的双極子を双性イオン,又は両性イオンという。双性イオンは全体としては電荷を持たず,分子内で電荷の分離があり双極子モーメントを持っている。通常,構造式はカルボキシル基とアミノ基は電離しない状態で表記している。

双性イオンは,酸には塩基として,塩基には酸として働き,それぞれ陽イオン,陰イオンになる。よって,アミノ酸は酸性では陽イオンとなり,塩基性では陰イオンとなる。特定のpHでは正と負の荷電の量が等しくなり,全体の電荷が0となる。この特定のpHを等電点という。

アミノ酸は,結晶状態においても双性イオンの状態で存在し,同程度の分子量の有機化合物をもつ他の分子結晶より融点が高く,α-アミノ酸の融点は200℃以上である。その為,融解する前に分解するものもある。又,水に溶け易く,有機溶媒に溶け難い。

 

 

タンパク質を構成する主なα-アミノ酸 R-CH(NH2)COOH

 

◆ニンヒドリンとアミノ酸の反応

ニンヒドリン(トリケトヒドリンデン水和物)(1)とアミノ酸水溶液を混合して熱すると,酸化的脱アミノ化と脱炭酸が起こり還元生成物(2)が生じ,アミノ酸は炭素数が1個少ないアルデヒドになる。又,一部のニンヒドリンは水分子がとれ,カルボニル基が1つ増え(3),アミノ酸と反応したニンヒドリン誘導体(2)及びアンモニアと反応し,青紫色の生成物(4)(Ruhemann's  purple)を得る。色調は,アミノ酸の種類により多少異なる。これは,生じるアミノ酸由来のアルデヒドの関与する副反応を伴っていると推定されている。

この反応は極めて鋭敏で,ペプチド,タンパク質の他に,多くの第一級アミン,アミノ糖とも呈色する。又アンモニア自身も陽性となる。

ろ紙や薄層上でのアミノ酸やペプチドの検出に用いる時は,ニンヒドリンのアセトン(又は1-ブタノール)溶液を噴霧して熱する。

 

◆ペプチド

アミノ酸同士の脱水縮合反応により生じるアミド結合をペプチド結合といい,アミノ酸が2個以上結合したものをペプチドという。アミノ酸の数が2個の時ジペプチド,3個の時トリペプチド等と呼ぶ。又,アミノ酸が210個のものをオリゴペプチド,10個以上のものをポリペプチドと呼ぶ(100個以上のものをマクロペプチドとして分ける事もある)。タンパク質はアミノ酸残基100個以上という事もあるが,インスリンをタンパク質に分類しているので,50個以上(分子量5000以上)をタンパク質という事が多い。

ペプチドは,タンパク質の加水分解生成物に含まれる他,ホルモン,抗生物質,毒素等としても天然に存在する。

ペプチド結合とα位の炭素との連なりをペプチドの主鎖,ペプチド鎖という。ペプチド鎖中のアミノ酸の配列順序を一次構造といい,構成アミノ酸の順序は,アミノ基側から順に略号で表していくのが一般的である。

同じ機能を持つタンパク質でも生物の種類が異なると一次構造が多少異なる場合がある。この違いが起こる確率を計算する事により,進化の分岐が起こった時点を調べる研究が行われている。化石等からの研究と比較し,よい結果を得ている。

 

◆グルカゴン

膵ホルモンの一種。29個のアミノ酸残基からなるポリペプチド。分子量3483。膵臓でつくられ,低血糖時に放出されて血糖値を上昇させる。インスリンと逆の作用を示す。

 

◆タンパク質

1926年にSumnerがウレアーゼの結晶化に成功してから,純粋なタンパク質はかなり大きな結晶(1mm程度)になる事が判り,タンパク質は同じ大きさの分子からなると考えられる様になった。そして,クロマトグラフィー等の分析法で組成が決められると共に,構成アミノ酸の順序も決定できる様になり,1955年にイギリスのサンガー(Frederick Sanger1918年〜)が初めてインスリンの全化学構造を決定した。

タンパク質が生体で重要な機能を果たすのは,一次構造だけによるのではなく,その立体構造による事が明らかになり,これを決定する為にX線構造解析が用いられた。そして,1958年にイギリスのケンドリュー(John Cowdery Kendrew19171997)が初めてマッコウクジラのミオグロビンの立体構造を明らかにした。その後,多くのタンパク質の立体構造が明らかにされた。

生体の機能に関係するタンパク質として酵素がある。酵素については触媒作用だけでなく,酵素反応による生成物のフィードバックにより酵素反応を抑える調節作用等が詳しく研究された。現在,酵素だけでなく,様々な単純タンパク質,複合タンパク質の立体構造,細胞中での役割等複雑な構造や機能が研究されている。

 

◆ペプチドの立体構造

アミド(ペプチド)結合のC-N結合は40%の二重結合性を持つ為,結合軸での回転が起こらない。両原子に結合した原子は同一平面上にあり,トランス型である。これに対して,C-C結合の回転角の大きさにより,様々な立体構造をとる。この為,ペプチド鎖はα-へリックス構造,β-シート構造と呼ばれる特徴的な構造を部分的にとる。それぞれの構造でもこの平面構造はほぼ保持されている。

 

◆α-へリックス構造

C-C結合が1つの方向に回転するとらせん構造となり,これをα-へリックスという。

ポリペプチドのα-へリックス構造は,らせん構造がアミド結合の間の水素結合により保たれる。アミド結合のC=O基のO原子が,カルボキシル基側の4つ先のアミノ酸のNH基のH原子と水素結合している。α-へリックスには,右回りと左回りが存在する。しかし,天然タンパク質には,安定な右回りのみ存在する。

アミノ酸残基のC=OO原子は,C末端側4つ先のアミノ酸残基の-NH基と水素結合するα炭素原子の部分で折れ曲がり,蛇腹(プリーン)の様に並んだ構造をβ-シート構造という。β-シート構造は,並行に並んだペプチド鎖のアミド結合間で水素結合を形成している。β-構造には,ペプチド鎖が同じ方向に並ぶもの(平行)と,逆方向に並ぶもの(逆平行型)がある。

α-へリックスやβ-シート構造の様な規則的な繰り返しのない構造を,糸まり構造と呼ぶ。

◆タンパク質の高次構造

タンパク質をつくっているアミノ酸は20種類あり,遺伝情報に従って決まった順にペプチド結合してペプチド鎖がつくられており,これを一次構造という。ペプチド鎖内では,水素結合によりα-へリックス構造やβ-シート構造がつくられ,これを二次構造という。二次構造が組み合わさり,アミノ酸側鎖間の相互作用を起こす。例えばジスルフィド結合(–SS–)NH3+COO-の間の静電気力,水素結合,疎水性相互作用等で,ポリペプチド鎖は折り畳まれて丸くなった構造をとる。これを三次構造という。複数の三次構造のポリペプチド鎖同士は,相互作用(金属イオンとの配位結合も含む)し合いまとまった構造となる。これを四次構造という。全てのタンパク質が四次構造をとるわけではないが,多くの球状タンパク質には四次構造が見られる。

インスリンの一次構造と三次構造

ヘモグロビンの次構造  赤線のα,β鎖は紙面の下側にある

 

◆ミオグロビン

筋肉細胞内に存在する色素タンパク質で,分子量は馬のミオグロビンでは16800である。筋肉内での呼吸で,酸素の貯蔵に大きな役割を果たしている。魚肉等の赤色は,このミオグロビンの色である。マッコウクジラのミオグロビンの3次構造は,全タンパク質のうち最も早い1958年,KendrewによってX線構造解析で決定された。

ミオグロビンの三次構造

 

◆タンパク質の分類

a.分子の形状による分類

分子の形から,球状又は回転楕円体で近似される形状のタンパク質を球状タンパク質,それ以外の細長い形状のタンパク質を繊維状タンパク質という。多くのタンパク質は球状タンパク質で,水に溶け易いものが多い。繊維状タンパク質には,分子として長いもの以外に,会合してより大きな繊維状構造を作るコラーゲン,ミオシン,ケラチン等がある。これらは,分子間の架橋構造が顕著である。

種々のタンパク質とその機能

タンパク質

機    能   

ペプシン

胃の細胞から分泌される消化酵素(細胞外へ分泌される)

ヘキソキナーゼ

細胞質中の酵素(ヘキソースをヘキソース-6-リン酸にする)

インスリン

血中グルコース値を制御(抑制)する

ヘモグロビン

赤血球中に含まれる酸素運搬タンパク質

免疫グロブリン

血清(体液)中の抗体を含む構造的・機能的関連を持つタンパク質の総称

コレラ毒

細菌Vibrio cholerare が産生する毒

アクチン

筋肉タンパク質,細胞骨格タンパク質

コラーゲン

骨や腱等の結合組織の細胞マトリックス主成分

ケラチン

毛髪,羽の繊維状タンパク質

絹フィブロイン

カイコ蛾が産生する繊維状タンパク質

 

b.構成成分による分類

アミノ酸のみからなるものを単純タンパク質,アミノ酸以外の化合物(糖,脂質,金属イオン,リン酸等)を含むものを複合タンパク質という。複合タンパク質には,ヘムタンパク質,リポタンパク質,糖タンパク質,核酸と結合している核タンパク質等がある。BSE(狂牛病)の感染原因物質であるプリオンは糖タンパク質の一種である。

c.溶解性による分類

単純タンパク質の多くは水等に溶解し,次表の様に分類されている。

 

溶解性

所在場所

塩類

(aq)

70%ア

ルコール

プロタミン

×

生殖細胞

サルミン,クルベイン

アルブミン

×

細胞,体液

血清・卵白アルブミン

グロブリン

×

×

細胞,体液

血清グロブリン,ペプシン

プロラミン

×

×

穀類の種子

グリアジン,ホルデイン

グリテリン

×

×

×

穀類の種子

グルテニン,オリゼニン

硬タンパク質

×

×

×

×

動物組織

ケラチン,コラーゲン

 

◆タンバク質の機能

タンパク質は,生体内の生物学的役割により,次の様に大別できる。

(1) 構造タンパク質  生物の構造をつくるタンパク質。繊維状構造を持ち,水に不溶。ケラチン,コラーゲン,フィブロイン,エラスチン等。

(2) 運動性タンパク質  生物の運動に関係するタンパク質。繊維状構造を持ち,水に不溶。アクチン,ミオシン,チュブリン等。

(3) 栄養タンパク質  生物の成長に必要な栄養となる球状タンパク質。グリアジン,カゼイン,オボアルブミン等。

(4) 輸送タンパク質  生体内の物質輸送に関係する球状タンパク質。ヘモグロビン,血清アルブミン,リポタンパク質等。

(5) 酵素  触媒作用を行う球状タンパク質。

(6) 調節タンパク質  生体内の生理活性の調節に役立つタンパク質。球状タンパク質で,一連の代謝反応を律速する多くの酵素がこれに含まれる。

(7) 防御タンパク質  他の生物種の侵略に対して生体を防御し,傷害から生体を守るタンパク質。球状タンパク質で,抗体,フィブリノーゲン等。ヘビ毒やバクテリア毒素等も含まれる。

 

◆タンパク質の変性

タンパク質は,アミノ酸が脱水縮合したポリペプチドが,αヘリックスやβ構造,糸まり構造をつくり,それぞれのタンパク質で固有の空間構造に組み立てられている。アミノ酸が定まった順序に共有結合で並んだ構造を一次構造,αヘリックスやβ構造の様な定まった構造を二次構造,それらが集まってまとまった構造をしているものを三次構造という。タンパク質の二次,三次の構造は,炭化水素鎖間の疎水基同士の結合や分子内の水素結合で保たれている。したがって,極めて穏やかな変化でこれらが切れて,一次結合が残ったままのタンパク質は,生の状態とは違った状態になる。この様な変化をタンパク質の変性という。タンパク質は元来,生物体を構成し,その機能を果たしているものだが,変性に伴って生物的な活性が失われてしまう。変性は,加熱や超音波照射,紫外線照射等の物理的な変化によっても起こるが,尿素や塩酸グアニジン等水素結合性が強いものや,重金属イオン等の様に,不溶性の塩をカルボキシル基との間につくる様な働きをもつものの作用によっても起こる。超音波照射や紫外線照射の時には一部共有結合の切れる事もあり,これも変性として取り扱われる。

 

◆ビウレット反応

タンパク質溶液にNaOH水溶液を加えて塩基性にし, CuSO4水溶液を加えると赤紫色になる呈色反応をビウレット反応という。ビウレットNH2-CO-NH-CO-NH 2 がこの呈色反応を示す事から名付けられた。この反応は,1個の窒素原子を隔てて存在する2個の -CONH- 基がCu2+に配位して銅錯塩を作る事に基づいている。トリペプチドとテトラペプチドの立体構造は次図の様になっている。

 

◆キサントプロテイン反応

タンパク質に濃硝酸を加えて熱すると黄色になり,これを塩基性にすると橙黄色になる。この呈色反応をキサントプロテイン反応といい,キサントは黄色という意味である。この反応はベンゼン環がニトロ化される事で生じ,フェニルアラニン,チロシン,トリプトファン等のアミノ酸,及びこれらを含むタンパク質が反応を示す。ゼラチンの様なこれらのアミノ酸を含まないタンパク質は,この反応を示さない。

酸性から塩基性にした時,色が変わるのはチロシンの影響である。ニトロ化されたチロシンは,酸性溶液中で360nm付近の可視光を吸収し,黄色く見える。液を塩基性(pH9以上)にすると,チロシンのフェノール性ヒドロキシ基はH+を失い,陰イオンとなって428nm付近の可視光を吸収する様になり,反応液は赤味を帯びてくる。

 

 








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