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1節 化学平衡と平衡定数

 

可逆反応

化学反応で,反応物から生成物に進む反応(正反応)と,生成物から反応物へ進む反応(逆反応)が同時に起こり,結果として,条件によって変わるが,反応全体が生成物増加の方向にも減少の方向にも進む反応を,一般に可逆反応という。

原理的には,反応物と生成物が存在する時は,正反応も逆反応も起こるので,全ての反応が可逆反応である。しかし実際には,平衡状態で生成物の割合が著しく大きい反応系の場合(化学平衡が生成物の側に著しく偏っている場合),逆反応は非常に小さく(勿論反応に伴って大きくなるが,それでも正反応と比較できる値になるのは,生成物の割合が極度に大きくなった所である),反応が不可逆的に一方向に進むと考えてよい。この様な反応では,条件を変化させても殆ど平衡状態は変わらない。

一般に可逆反応といわれる反応では,化学平衡の位置が,反応物の側にも生成物の側にも極端には偏らず,正道両反応の反応速度があまり大きくは異ならない反応である。化学平衡の議論は,可逆反応について行われるのが普通である。

 

化学平衡

化学平衡の状態では,これを巨視的に見れば一見反応は停止し,外見上からは何も変化が起こっていない様に見える。しかし,これを微視的に見れば,分子は絶えず反応し,丁度右向きの反応と左向きの反応がつり合っている状態となっている。即ち,H2I2の反応の例でいえば,平衡状態においては一定の時間内に生じるHIの分子の数と,その時間内で分解されるHIの分子数が等しくなっている。

化学平衡にある系では,系全体の自由エネルギーが極小値になっており,各成分の濃度または分圧の間に質量作用の法則が成り立っている。

下図は,H2I 22HIの可逆反応について,同じ物質量のH2I 2を混合したときの,反応速度の変化と平衡状態の関係を示したものである。この反応で,正味 (見かけ上)の反応速度は,正反応と逆反応の速度の差から求められ,次式で表される。

 

反応の初めを[H2] [I 2]a[HI]0とし,時間t後に[HI]xになったとすると,[H2] [I 2]a(x/2),となる。これらを式(1)に代入すると,

 

(2)を積分し,初期条件を入れて計算すると,

 

 

平衡状態での濃度は,式(3)及び(4)で時間tを無限大にすると得られる。

 

 

(3)(4)を式(1)に代入すると,正味の反応速度式が求められ,またk1[H2] [I2]に代入すると正反応の速度式が,k2[HI] 2に代入すると逆反応の速度式が求められる。図のグラフは,k11k2(2+√3)/80.47Kk1/ k22.1とした。但し,平衡状態の付近では時間を有限にする為少し曲げてある。Kの値は比較的小さくしてあるが,これはKを大きくすると平衡時の反応速度が初速度に比べてかなり小さくなり,グラフが非常に見難くなる為である。

平衡定数

可逆反応  aAbB+…… ……

が平衡状態にあるとき,各物質の濃度の間に,次式が成立する。

 

Kは平衡定数と呼ばれ,反応の種類と温度が決まれば一定値となる定数である(この化学平衡の法則を質量作用の法則という事もある)。平衡定数の値は,温度が変われば変化するが,物質の濃度や圧力によっては変わらない。

Kは,各物質を濃度単位で表した時は濃度平衡定数Kc,反応が気相反応の場合で圧力単位で表した時は,圧平衡定数Kpという。

 

尚,厳密には,平衡定数は各々の物質の活動度aAaB,…,aAaB,…を用いて次式の様に表され,化学平衡の法則も正式にはこの式で表される。

 

この式は統計力学や熱力学から導く事ができ,KcKpは,この関係を理想溶液や理想気体に応用したものである。高校化学では,厳密に平衡定数を定義する必要はなく定性的な理解が得られればよいので,平衡定数を扱うにしてもKcKp等で十分である。

 

固体を含む反応の平衡定数

反応式中に固体を含む反応では,平衡定数を示す式から固体成分を除く。例えば次の反応式

aA()bB()cC()dD()

で,化学平衡の法則から平衡定数の式を考えると,次式の様になる。

 

(1)で,Aは固体だから[A]は固体の密度になり,温度が決まれば一定値となる。したがって,式(1)は次式の様に変えたとき,K[A]aも定数となる。

 

K[A]aを改めて新しいKと置けば,固体成分を除く式で平衡定数が決まる。

 

平衡定数と反応速度式

化学平衡の法則を,反応速度の考え方から説明する事が多い。例えば,aAbB cCdDの反応で,右向きの反応速度v1と左向きの反応速度v2は次の様に示される。

v11 [A]a[B] b  …(1)

v22 [C] c[D] d  …(2)

平衡状態では,v1v2だから,

 

この考え方は,高校段階では理解し易く便利だが,幾つか難点がある。1つは,反応速度式が必ずしも式(1)(2)の様に表されない事である。いわゆる化学反応の次数と反応式の係数とは無関係である。また,化学反応の次数が3になる反応は極めて稀であり,3より大きい反応は存在しない。したがって,反応速度の考え方から平衡を理解させる時は注意を要する。ヨウ化水素の生成反応は,反応式の係数と反応の次数が偶然一致した例だが,触媒をつかって反応経路が変わる時は,反応の次数が異なってくる可能性もある。

 

 








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