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2節 気体の状態方程式

 

気体定数

気体1molの状態方程式pVRTによって定義される定数で,記号Rで示される。標準状態の値で計算すると,

1atm1013.25hPaの値を用いると

 

粒子1個当たりの気体定数をボルツマン定数といい,記号kで示す。

kR/NA1.38×10-23J/K

                                                                     

気体の分子運動と状態方程式の関係

気体分子運動論によると,質量m,速度の2乗平均の気体分子N個を体積Vの容器に入れると,圧力pは次式で表される。

 

したがって,圧力は粒子の濃度N/Vに比例する。即ち体積に反比例し,粒子数に比例する。また,分子の運動エネルギーに比例する。式(1)で,気体の物質量をn mol,アボガドロ数をNAとすると,NnNAとなり,式(2)が導かれる。

 

一方,気体分子の速度の2乗平均3kT/mであり,分子の運動エネルギーは式(3)で表される。

 

(3)を式(2)に代入すると,気体の状態方程式(4)が得られる。

 

分子量の測定

気体または蒸発し易い液体の分子量測定は,アボガドロの法則や気体の状態方程式を用いて行われ,多くの測定法がある。一例として,ビクターマイヤー法の概略を示す。

図の様な装置を用いる。外管Aには水を入れ,ニクロム線で熱する。内管のBには試料を入れたガラス小球を置いておく。内管はガスビュレットに接続し,気密性を確かめておく。内管のCを操作し,ガラス小球を落下させて割ると試料は蒸発し,その蒸気が内管中の空気を追い出すのでガスビュレットの液面が下がる。よって,試料気体の体積が測定でき,更に試料の質量,大気圧,室温等を測定し,分子量が求められる。

 

理想気体

気体の状態方程式pVnRTが厳密に適用できる気体を理想気体という。理想気体の特徴は,どんな条件でも液化せず,0Kでは体積が0になる事である。

しかし,実在の気体にはこの様な物質は存在せず,この方程式を適用するには一定の条件が必要となる。

(1) 理想気体は,分子間に引力は存在しないという仮定の下に成り立っているが,実際の分子の間では,どんな分子でも非常に接近すれば,ファンデルワールス力と呼ばれる分子間力が働く。また電気双極子をもつ分子では,電気的な引力,斥力も働く。したがって,気体分子が平均して互いに遠く離れている状態,つまり,圧力が非常に低く,沸点に比べて温度の高い状態では,これらの分子間の相互作用が無視できる為,理想気体に近い挙動を示す。

(2) 理想気体では,温度が0Kになると気体の体積は0になるとしている。しかし,実在の気体はあくまで分子という粒子の集まりであり,0Kにおいても気体分子固有の体積は存在し,決して0にはならない。したがって,圧力が高く,温度の低い場合に大きく理想気体からずれるのは,気体分子固有の体積が無視できなくなるからである。

 

実在気体

気体の量と温度が一定のとき,理想気体では,pVの値は圧力の高低によらず一定になる。しかし,実在の気体は,高い圧力では図(A)の様に大きくずれ,低い圧力でも図(B)の様に少しずれる。そのずれ方も,気体の種類によって大きく異なり,特に二酸化炭素の場合はずれが大きい。一般に,沸点の低い酸素・窒素・水素・ヘリウム等は,室温またはそれ以上の温度で10atm以下の圧力の場合,理想気体の値の1%以内で理想気体に近い性質を示す。

 

参考 ファンデルワールスの状態方程式

実在気体の状態を状態方程式で表す場合,理想気体と実在気体の違いを考慮して,状態方程式を修正する必要がある。違いの1つは,実在気体では分子に体積がある事である。他の違いは,分子間に弱いながらも分子間力が働く事である。

(1) 体積Vの容器中にnmol〕の気体がある時,分子が自由に動く事のできる体積は,分子自身の体積が無視できる場合(圧力が極めて低いとき)にのみVに等しいが,分子がある大きさをもっている事から,今1molの気体が排除する体積をbとすると,pVnRTにおいて,Vの代わりに(Vnb)とおいて,次式で表される。

p(Vnb)nRT ……(1)

このbの大きさは,気体分子の種類によって異なる定数である。

(2) また,分子間に働く引力の為に,分子同士は互いに近づこうとする。1つの分子が他の分子に及ぼす引力は,単位体積中の分子数に比例するので,体積V中にnmolの気体があるとすると,に比例する。隣の分子はまたその隣の分子によって同様の力を受けるので,結局,気体分子が全体として引き合う力は,に比例する。この様な考察からファンデルワールスは,(1)に更に分子間力による補正を加え,次の様に表した。

(p)(Vnb)nRT

この式を,実在気体に対するファンデルワールスの状態式とよんでいる。ファンデルワールス定数abは,各気体の臨界定数から算出され,臨界温度をT,臨界圧力をpとすると,次式で表される。

    

 

ファンデルワールスの定数

気   体

空気

He

H2

O2

N2

CO2

CH4

aPaL2mol2

0.136

0.00347

0.0244

0.138

0.137

0.366

0.230

b×106Lmol1

32.2

23.8

26.2

31.8

38.6

42.8

43.1

 

ファンデルワールス J.D.Van der Waals

18371123日生,192339日没。オランダの物理学者。1877年より30間アムステルダム大学理論物理学教授。1873年ファンデルワールスの式を発表。電離,表面張力,分子間力等の研究がある。1910年ノーベル物理学賞を受賞。

 

参考 実在気体の状態変化

次図Aは蒸気圧曲線の一部である。今,気体状態のP点から液体状態のQ点とR点に変化する場面を考えてみよう。

(1) 圧力一定下での変化  図AP点の状態の気体を,圧力一定下で冷やすと,q(この圧力での沸点)で凝縮が始まる。凝縮中は熱が放出されるから,一定の冷却を続けていても,気体が全て液体に変わるまでは,温度が変わらず一定に保たれる。凝縮が完了して全て液体になれば,その液体の温度が下降し,ついにQ点の液体となる。図Bに,PQの変化を,時間経過と温度変化の関係として示した。

Cは,上の変化を温度と体積について示したものである。ここで,Pq間はシャルルの法則に従う変化,q点の温度まで冷えたとき飽和蒸気圧に達し,qq¢では温度を一定に保ちながら凝縮が進む。冷やしているにも関わらず温度が変わらないのは,凝縮熱が放出される為である。

(2) 温度一定のもとでの変化  図AP点の気体を,温度一定下で加圧していくと,Pr間ではボイルの法則に従って体積が減少し,r点に達すると凝縮が始まる。r点の圧力は蒸気圧で,蒸気圧の大きさは温度のみに依存するから,気体が全て凝縮するまでは,気体部分の圧力は一定値を保つ。全て液体になったとき,その体積は気体の体積に比べ無視できる程小さいのが普通である。液体の体積は,圧力を大きくしても実際上変動は見られない(D)

(3) 体積が一定の場合の変化  P点の気体を,体積一定の状態で冷やしていくと,図ES点で蒸気圧に達し,凝縮が始まる。それ以後は,冷やすと伴に蒸気圧が低下するので,次第に凝縮が進み,液体の量が増える。そして,気体の圧力は蒸気圧曲線に従って低下していく。

 

 

 

 








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