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1節 物質の状態と粒子の熱運動

 

拡散

気体分子や溶液中の成分が,高濃度の領域から低濃度の領域に移動し,全領域が均一になって濃度の差がなくなる現象を拡散という。拡散は,分子自身の熱運動,及び周りに存在する分子の衝突によって起こる。熱力学的には,温度・エントロピー・組成等で決まる自由エネルギー勾配によって起こり,不可逆な変化(熱力学第二法則)である。

NOを入れてガラス板でふたをした集気瓶を,ふたをしたまま逆にして空気の入った集気瓶に重ねる。ガラス板を取ると同時に両気体の拡散が起こり,互いに衝突して反応し,赤褐色の気体となる。

2NO(無色)O2(無色)―→2NO2(赤褐色)

NOと空気に窒素を入れて少し薄め,10℃程度の室温で実験すると,ガラス板を取ってから直ぐに全体が均一な赤褐色になった。この事から,気体の拡散は極めて速く,短時間で進むことが判る。

気体中での拡散の速さは,濃度差や分子の平均自由行程,平均速度に比例する。気体の平均速度は次式で表され,絶対温度Tが大きい程,また分子量Mが小さい程大きくなる。したがって,分子量の小さい軽い気体程拡散し易い。

Rは気体定数,kはボルツマン定数,pは円周率,mは分子の質量

 

気体分子は,それぞれいろんな速度で運動している。例えば,水素分子の0°Cにおける速度は,殆ど0に近いものから2000m/s以上のものまで様々で,平均速度は1692m/sになる。

 

気体分子の運動と圧力

物体が運動しているとき,この運動を止めようとすれば,力を加えて物体に仕事をしなければならない。この仕事量は,物体の質量が大きい程,またその速度が大きい程多くなる。

気体分子は自由に運動しているから,壁に衝突してはね返るとき壁に力を及ぼす。

質量mの気体分子N個が体積V中に存在するとき,その平均二乗速度をとすると,圧力pは次式で表される。

気体分子1個のエネルギーはm/2で表されるから,このときの気体全体のエネルギーEは,Nm/2となり,圧力はエネルギーに比例することが判る。

この式を発展させると,ボイルの法則になる。

 

分子の運動と固体・液体・気体の状態

(1) 固体  温度が下がって粒子の運動エネルギーが小さくなり,粒子間に働く結合力で粒子が規則正しく密に並んだ状態。したがって,一定の形,体積をもつ。この状態で粒子が行う運動は,一定位置を中心にした振動に限られる。

(2) 液体  固体の加熱により,温度が上昇して粒子の運動エネルギーが大きくなり,粒子間に働く力による束縛を振り切って一定位置から離れて動ける様になった状態。まだ粒子間の引力が多少残っており,粒子はほぼ密着しているが,一定位置に固定されないので,一定の形を示さない。

(3) 気体  液体を熱して更に温度を上げると,粒子の熱運動に比べて粒子間の引力が殆ど無視できる様になり,粒子が自由に運動できる様になった状態。気体では,物質の種類や分子量に関係なく,一定体積中の粒子数がほぼ似た状態になる。

 

参考 結晶と無定形固体

(1) 結晶 単結晶は,外見的に明瞭な結晶形を示す事が多いが,狭い意味ではこれを結晶という。広義には,外見上結晶の形が明らかでない小結晶の集まり(多結晶)も結晶という。核酸やタンパク質の様な高分子物質でも部分的には結晶構造をもつものが多く,結晶は,一般的には固体の正常な状態という事ができる。

(2) 無定形固体(非結晶固体) 塩化ナトリウムやナフタレンの様な結晶に対して,ガラス,ゴム,寒天,樹脂等は無定形固体である。この様な無定形固体は,一定の形をもたず,一定の融点を持たない。

水晶を高温にして液体にした後で冷やすと,非結晶性の石英ガラスが得られる。水晶は1550℃で融けるが,石英ガラスは熱すると次第に軟らかくなり,いつとはなしに液状になってしまう。

水晶の結晶ではSiO2が網目構造の規則正しい配列をつくっているのに対し,石英ガラスは網目構造はつくっているが,それが極めて不規則であり,結合の強さもまちまちである。したがって温度を上げていくと,弱い部分から結合が切れて軟らかくなっていくので,明確な融点を示さない。

無定形固体は,状態は固体だが,粒子配列の上では液体に近く,液体状態の物質をそのまま固化させた物質とも考えられる。

 

参考 液晶(液晶ディスプレイ)

一般に,液晶ディスプレイLCDの事を液晶といっている。厳密には,液晶とは,液体と固体の中間にある物質の状態(例えば,イカ墨,セッケン水等)を指す言葉である。見た目にはほぼ透明な液体で,少し粘りがある。液晶は,1888年にオーストリアの植物学者ライニツァーによって発見された。1963年,RCA社のウイリアムズは,液晶に電気的な刺激を与えると,光の通し方が変わる事を発見し,5年後に同社のハイルマイヤーらのグループが,この性質を応用した表示装置をつくった。これが液晶ディスプレイの始まりである。

 

 









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