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3節 金属結合と金属結晶

 

金属結合

金は,自由電子によって金の原子が結び付けられる金属結合で形成される。自由電子の存在により,電気や熱の伝導性が大きくなっている。

ナトリウムを例に金属結合を考えてみる。隣接するNa原子2個の間では,各々の3s軌道から分子軌道2個がつくられる(一般に,分子軌道は用いられた原子軌道の数だけできる)。そして,それぞれの3s軌道の電子は対となって,エネルギー準位の低い分子軌道に入る。更にNa原子が増えて3個,4個,5個,…となると,Na原子の3s軌道からつくられる分子軌道の数も345,…と増える。そして,Na原子の3s軌道の電子は,エネルギー準位の低い分子軌道から順に2個ずつ配置される。

ナトリウムの単体1molでは,原子の3s軌道から6.02×1023個の分子軌道がつくられ,その数が多いので各エネルギー準位の間隔は極めて小さくなり,事実上連続した帯の様になる。この様な帯をエネルギー帯やバンドと呼んでいる。エネルギー帯を構成する全ての分子軌道は,全原子に行き亘っている。したがって,どの電子も特定の原子に属せないので,金属結合は,全原子が全電子を共有する1種の共有結合であるといえる。

ナトリウムでは,3s軌道から構成されるエネルギー帯の半分が空なので,電圧を掛けると電子は容易くエネルギーを得て移動し,電流が流れる。Mg3s軌道に2個の電子をもち,3s軌道から構成されるエネルギー帯に電子が充満するので,Naとは電気伝導の仕組みが異なる。この場合は,3p軌道から構成されるエネルギー帯の一部が3s軌道によるものと一部重なり,電子は空の3p軌道を使って移動でき,電気が流れる。

参考 半導体(金属・不導体・半導体)

原子の核外電子のもつエネルギーは飛び飛びであり,価電子を上のエネルギー準位に上げるのにエネルギーが必要である。原子が多数集まって結晶をつくる時は,原子が互いに作用し合う為,多くのエネルギー準位が密に集まって,帯の様に幅のあるエネルギー準位が形成される。これをエネルギー帯と呼び,原子に幾つかのエネルギー準位がある様に,エネルギー帯にも幾つかの段階がある。エネルギー帯とエネルギー帯の間に,電子の存在できないエネルギーの範囲があるとき,これを禁制帯と呼んでいる。

結晶中の電子は,エネルギーの低いエネルギー帯から順に配置され,価電子はエネルギーの高い部分に配置される。価電子が入るエネルギー帯は,特に価電子帯と呼ばれている。そして,電子が全部エネルギー帯に配置されたとき,電子が入っていない部分との境界になるエネルギーを,フェルミエネルギーという。

金属とは,(A)様に,フェルミエネルギーが価電子帯の中にくる結晶である。この場合,価電子帯のフェルミエネルギーより上の部分は空なので,結晶に電圧を掛けると,フェルミエネルギーの値に近い電子から次々とこの空の部分に移動し,電流が流れる。これが金属の電気伝導現象で,このとき電子が移動できるエネルギー帯を伝導帯と呼んでいる。

不導体は,図(B)の様に,価電子帯に電子が充満した結晶である。伝導帯は,禁制帯を挟んだ直ぐ上のエネルギー帯になり,フェルミエネルギーはこの禁制帯にある。したがって,結晶に電圧を掛けても電子の運動エネルギーが増すだけで,電子は容易に伝導帯に移動できず電流は流れない。

半導体は,図(C)の様なエネルギー帯を持ち,その基本構造は不導体と同じである。但し,価電子帯と伝導帯とのエネルギー差が不導体よりは小さく,より少ないエネルギーで電子が価電子帯から伝導帯に移動でき,ある程度電流が流れる。

ケイ素やゲルマニウムに少量のリンやヒ素を加えると,電気伝導率が大きくなる。これは,禁制帯の途中に不純物のエネルギー準位ができ,そこに存在する電子が比較的容易に伝導帯に移動できる為である。この様な不純物半導体をn(negative)半導体という。一方,ホウ素やアルミニウムを少量加えると,同様に禁制帯にエネルギー準位ができ,ここに価電子帯から電子が容易に移動するので,価電子帯に電子の存在しない部分ができる。これを正孔といい,正孔が移動して電流を通し,電気伝導率が大きくなる。この様な不純物半導体をp(positive)半導体という。

 

金属の結晶構造

結晶格子における原子の配列を結晶構造という。

(1) 面心立方格子(面心立方構造,立方最密構造)  大きさの同じ球をなるべく密に規則正しく並べる方法の1つに次図の様な方法がある。第2段の球Bは,第1段の球Aがつくる凹みに1つおきに入る。第3段の球Cは,球Bが埋めた球Aの凹みのうち,残った凹みの真上にくる様に配置される。第4段は,第1段の上にくる。この様にABCの順に次々と球を重ねた構造が面心立方格子である。単位格子を構成するのは,第1段のA1個,第2段のB6個,第3段のC6個,第4段のA1個の14個の粒子で,2個のAを結ぶ線が格子の対角線にあたる。BCの球は,各々3個が格子の頂点,残りの3個が格子の面の中心に配置される。この構造では1個の球は12個の球と接し,球は空間の74%を占める。

面心立方格子の球の詰め方

 

(2) 六方最密構造  上図で,第3段を第1段と同じ位置に配置したのが六方最密構造である。単位格子は,第1段及び第3段の球A4個,第2段の球B1個で構成される。この構造も,球は他の12個の球と接し,球は空間の74%を占めて最密構造となる。

六方最密構造の球の詰め方

 

(3) 体心立方格子(体心立方構造)  次図の様に,同じ大きさの球をABの順に次々と積み重ねた構造が体心立方格子である。ABの球は接しているが,A同士やB同士の球は接していない。したがって隙間が多く,球は空間の68%を占める。1つの球は,8個の球と接し,次に近い球は6個である。

体心立方格子の球の詰め方

 

単位格子の大きさと,粒子半径,体積比,密度

半径r,質量mの粒子を,互いに接する様にして単位格子に配置したときの,格子の辺の長さや粒子の占める体積,物質の密度との関係を示す。acは結晶格子の辺の長さである。

(1)  体心立方格子

粒子数=8×(頂点)1(中心)2()

 

(A)の関係から,

(4r)2a2(a)2 より,a4 r/

単位格子の体積=a364 r3/3

粒子1個の体積=4πr3/3

 

 

(2) 面心立方格子

(B)の関係から,

 

(4 r)22a2より,a2r

 

 

(3) 六方最密構造

 

2()

(C)の関係から,

 

 

六方最密構造のcの長さは,球4個がつくる正四面体の高さの2倍に等しく,acの比は,

 

 

 









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