トッ化学II 改訂版見返し>後見返し 主な合成高分子化合物の系統図

後見返し

主な合成高分子化合物の系統図

 

技術革新があらゆる科学技術の部門で急ピッチに進められつつある。この様な潮流の中で,化学工業に寄せられる期待と役割は,ますます大きくなりつつある。エチレンプラントは,我が国の産業基盤を支える重要な役割を果たしている。石油ガス類としてのエチレン,プロピレンを始め,芳香族炭化水素のベンゼン,トルエン,キシレン等このプラントから製造される石油化学製品は,種々の化学製品の原料となり,工業分野から生活関連分野に至るまで,広く社会に行き渡っている。例えば,住宅,自動車,電気,塗料等あらゆる産業に渡り,我々の日常生活に貢献している。一方,これらのプラントは,海外への技術輸出により,広く内外で高い評価を受けている。

 

主な合成高分子化合物の系統図

(1) 原油  石油の主成分は炭化水素だが,その組成は石炭とはかなり異なり,また産地により多少異なる。原油は各種炭化水素の混合物であり,炭化水素以外に,少量の硫黄化合物,含窒素化合物,含酸素化合物,金属を含む化合物が存在する。原油中の炭化水素の多くは,パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素,芳香族炭化水素であり,原油中にはオレフィン系炭化水素やアセチレン系炭化水素は殆ど含まれていない。

(2) 日本の石油化学工業  石油化学とは石油中の炭化水素を原料とする有機合成化学に対して用いられる。石油化学工業とは,石油中の炭化水素を化学的加工により基礎原料(エチレン,プロペン等)や化学工業用中間体(アセトアルデヒド,酸化エチレン,ベンゼン,各種重合用ビニルモノマー),更にポリエチレン,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル等の最終製品を製造する工業をさす。

1955年に政府は,石油化学育成対策に取り組むことを決定し,1958年にエチレン製造を目的とするナフサの分解が開始されたのを出発点として,その後,中東での油田開発,プラスチックや合成繊維等の優れた製造技術の欧米からの導入に支えられ,石油化学工業は大きく発展した。

 

 

石油化学主要生産品目とその主な用途

原料炭化水素

主要石油化学製品

主要用途または誘導品

エチレン

低密度ポリエチレン

フィルム,加工紙(ラミネート),電線被覆

高密度ポリエチレン

成形品,フィルム,パイプ

塩化ビニル(モノマー)

ポリ塩化ビニル樹脂

酸化エチレン

ポリエステル繊維,界面活性剤

アセトアルデヒド

酢酸,酢酸エステル,可塑剤

プロピレン

ポリプロピレン

成形品,フィルム,合成繊維

アクリロニトリル

アクリル繊維,合成ゴム

プロピレンオキシド

ポリウレタン,ポリエステル樹脂

アクリル酸,アセトン,

アクリル樹脂,溶剤,

イソプロパノール,フェノール

フェノール樹脂

ブタノール,オクタノール

可塑剤,塗料溶剤

C4留分

ブタジエン

合成ゴム

芳香族化合物

ベンゼン

ポリアミド繊維(ナイロン),合成洗剤,染料

トルエン

溶剤

キシレン

ポリエステル繊維,溶剤

スチレン(モノマー)

ポリスチレン,合成ゴム

 

(3) 芳香族炭化水素(ベンゼンやトルエン,エチルベンゼン,スチレン等)の製法

以前は石炭工業で供給されていたが,今日その大部分は石油化学工業による。

@改質ガソリンからの抽出法

改質ガソリン中には半分以上の芳香族成分が含まれ,プラットホーミング法やハイドロホーミング法(450550℃,20000 hPa,触媒:MoO3Al2O3SiO2)等の接触改質法がある。

Aアルキルベンゼンの水素化脱アルキル法

アルキルベンゼン類を水素加圧下で熱するか,触媒を用いて熱すると,脱アルキル化が起こり,ベンゼンが生じる。

Bエチルベンゼン・スチレンの製法

エチルベンゼンはスチレンの原料として重要だが,留分から分離される量は需要全体の20%を満たさず,大部分は触媒を用いて300℃,高圧下で,エチレンとベンゼンを反応させて製造する。一方,スチレンは,エチルベンゼンを水蒸気と共に600℃で触媒上に通して脱水素させてつくる。その他,Halcon法等もある。

 

◆高分子化学工業の合成過程

主に石油を原料とした高分子化合物の合成過程の概要を示したものである。

(1) ベンゼンからスチレン生成

C6H6 C2H4 ―→ C6H5-CH2CH3   (触媒はAICl3BF3)

C6H5-CH2CH3 ―→ C6H5-CHCH2 H2 (600℃,触媒はFe2O3)

(2) ベンゼンからカプロラクタム生成

C6H6 3H2 ―→ C6H12 (シクロヘキサン)

C6H12 O 2―→ C6H10O(シクロヘキサノン) H2O (触媒はCo)

C6H10O NH2OH1/2H2SO4(硫酸ヒドロキシルアミン)

―→ C6H10=NOH(シクロヘキサノンオキシム) H2O 1/2H2SO4

C6H10=NOH ―→ (CH2)5CONH(カプロラクタム)  (発煙硫酸中)

カプロラクタム製造には,他に種々の方法があり,原料としてトルエンやフェノールも用いられる。

(3) フェノールからアジピン酸,ヘキサメチレンジアミン生成

C6H5OH 3H2 ―→ C6H11OH(シクロヘキサノール)

C6H11OH 8HNO3 ―→ HOOC-(CH2) 4-COOH(アジピン酸) 8NO2 5H2O

HOOC(CH2) 4COOH 2NH3 ―→ NC(CH2) 4CN(アジポニトリル) 4H2O

NC(CH2) 4CN4H2 ―→ H2N(CH2)6NH2(ヘキサメチレンジアミン)

(4) アセトンからメタクリル樹脂生成

CH3COCH3HCN ―→ CH3C(CN)(OH)CH3   (アルカリ触媒)

CH3C(CN)(OH)CH3 H2SO4 ―→ CH2=C(COOCH3)CH3 NH4HSO4

イソプチレンから合成する方法もある。

(5) プロペン(プロピレン)からアクリロニトリル生成

CH2=CHCH3 O2 ―→ CH2=CHCHO H2O

CH2=CHCHO NH3 ―→ CH2=CHCNH2 H2O

2CH2=CHCNH2 O2 ―→ 2CH2=CHCN 2H2O

(6) アンモニアから尿素,メラミン生成

2NH3 CO2 ―→ NH2CO2NH4(カルバミン酸アンモニウム)

NH2CO2NH4 ―→ CO(NH2)2 H2O

6CO(NH2)2 ―→ C3N3(NH2)3 3CO 6NH3   (400℃,触媒Al2O3)

モリブデン系触媒を用いたソハイオ法(アンモ酸化)で合成する方法もある。

(7) エチレンからエチレングリコール生成

(8) 酢酸から酢酸ビニル生成

2CH2=CH2 2CH3COOH O2 ―→ 2CH2=CH(OCOCH3) H2O

(触媒Pd200・高圧・気相反応)

アセチレンへの酢酸付加でも製造されている。

(9) エチレンから塩化ビニル生成

C2H4 Cl2 ―→ C2H4Cl2(1,2-ジクロロエタン)   (触媒FeCl3)

2C2H4 4HCl O2 ―→ 2C2H4Cl2 2H2O   (触媒CuCl2300)

C2H4Cl2 ―→ C2H3Cl(塩化ビニル) HCl   (高圧,450650)

アセチレンから合成する方法もある。

 

参考 石油,原油

石油の成因には種々の説があるが,プランクトンや陸上の有機物等が海底に沈み,そこに土砂が堆積して,その下でこれらが複雑な変化をして生じたといわれている。

油井から汲み上げられたままの石油を原油という。原油の主成分は炭化水素だがその種類が多く,組成を完全に知る事はできない。また,産地により組成が大きく異なる。アルカンとシクロアルカンが主で,芳香族炭化水素が多く含まれているものもあるが,アルケンは殆ど含まれていない。

炭化水素以外の成分として硫黄,窒素,酸素,金属等がある。酸素は有機酸やフェノール類として含まれている。金属はバナジウムとニッケルが多く,銅や鉄も多い。

 

参考 原油の分留

原油を処理して各種石油製品をつくる事を石油精製という。石油精製の工程の初めに,原油中の各種成分を,その沸点の違いを利用して蒸留により分離する。これを分類(分別蒸留)といい,沸点の低い方からガス,軽質ガソリン,重質ガソリン,灯油,軽質軽油,重質軽油,残油の各留分に分けられる。残油は更に減圧蒸留され,減圧軽油と減圧残油に分けられることもある。各留分の沸点範囲は,ナフサ(粗製ガソリン)30180°C,灯油250°C,軽油250320°C,残油320°C以上である。

ガスはC3C4の炭化水素が中心で,液化石油ガス(LPGLiquified Petroleum Gas)として使われる。軽質ガソリン留分は,自動車ガソリンの混合基材とされる他,石油化学用原料のナフサとして使われる。重質ガソリン留分はオクタン価が低く,接触改質されて自動車ガソリンに混合される。灯油留分は,灯油や航空タービン燃料として用いられる。軽質軽油留分はディーゼル軽油として利用される。重質軽油留分は重油の混合基材としたり,接触分解用の原料となる。減圧軽油は,接触分解でガソリン留分や軽油留分を採取する。減圧残油は重油の基材やアスファルトとして用いられる。

精留塔を用いて分留された原油の各留分は,石油タンクに貯蔵される。低沸点のプロパンやブタンはLPGとして燃料に,C4C9のナフサは触媒を用いて水蒸気と共に熱分解されて,エチレンやベンゼン,トルエン,キシレン等に変えられる。これらの有機化合物を出発原料として,いろんな石油化学製品が一貫して,それぞれ石油化学コンビナートで生産される。

 

 








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