トップ化学II巻末付録>付録7 元素と単体の性質

付録7 元素と単体の性質

 

 

1H43Tc元素の存在比() *印は,長寿命放射性同位体を示す

11H

99.985

 

3216S

95.02

 

 

 

 

5426Fe

5.8

 

7935Br

50.69

2H

0.015

 

33S

0.75

56Fe

91.72

81Br

49.31

32He

0.000138

34S

4.21

57Fe

2.2

7836Kr

0.35

4He

99.999862

 

36S

0.02

58Fe

0.28

80Kr

2.25

63Li

7.5

3517Cl

75.77

5927Co

100

82Kr

11.6

7Li

92.5

 

37Cl

24.23

5828Ni

68.27

83Kr

11.5

94Be

100

3618Ar

0.337

60Ni

26.10

84Kr

57.0

105B

19.9

38Ar

0.063

61Ni

1.13

86Kr

17.3

11B

80.1

 

40Ar

99.600

 

 

 

62Ni

3.59

8537Rb

72.165

126C

98.90

3919K

93.2581

64Ni

0.91

87Rb*

27.835

13C

1.10

40K

0.0117

6329Cu

69.17

8438Sr

0.56

147N

99.634

41K

6.7302

65Cu

30.83

86Sr

9.86

15N

0.366

4020Ca

96.941

6430Zn

48.6

87Sr

7.00

168O

99.762

42Ca

0.647

66Zn

27.9

88Sr

82.58

17O

0.038

43Ca

0.135

 

67Zn

4.1

8939Y

100

18O

0.200

44Ca

2.086

68Zn

18.8

9040Zr

51.45

199F

100

46Ca

0.004

70Zn

0.6

91Zr

11.22

2010Ne

90.51

48Ca*

0.187

6931Ga

60.1

92Zr

17.15

21Ne

0.27

4521Sc

100

71Ga

39.9

94Zr

17.38

22Ne

9.22

4622Ti

8.0

7032Ge

20.5

96Zr

2.80

2311Na

100

47Ti

7.3

72Ge

27.4

9241Nb*

2×1011

2412Mg

78.99

48Ti

73.8

73Ge

7.8

93Nb

100

25Mg

10.00

49Ti

5.5

74Ge

36.5

9242Mo

14.84

26Mg

11.01

50Ti

5.4

76Ge

7.8

94Mo

9.25

2713Al

100

5023V*

0.250

7533As

100

95Mo

15.92

2814Si

92.23

51V

99.750

7434Se

0.9

96Mo

16.68

29Si

4.67

5024Cr

4.345

76Se

9.0

97Mo

9.55

30Si

3.10

52Cr

83.789

77Se

7.6

98Mo

24.13

3115P

100

53Cr

9.501

78Se

23.6

100Mo

9.63

 

 

54Cr

2.365

80Se

49.7

43Tc

 

0

5525Mn

100

82Se*

9.2

 

 

2周期・第3周期の非金属元素の単体

 単体の反応性は,18族の希ガスを除き,非金属性が強いほど大きい。したがっ

て,同周期ではハロゲンが最も激しく反応する。たとえば水との反応は,Cl2

室温で反応するが,SiPSは通常反応しない。次の表に,第2周期・第3周期

の非金属元素の単体の性質を示した。

 

2周期・第3周期の非金属元素の単体

単体

融点

沸点

比重
(固体)

g/cm3

結晶

種類

電気
伝導

反応性

その他特徴

B

2079

2550

2.37

共有

300℃で酸化,少し両性

硬度9.3,半導体

C黒鉛

2.27

共有

500℃で酸化

硬度12

Cダイヤモンド

3.51

共有

700℃で酸化

硬度10

N2

209.86

195.8

1.026

分子

安定

O2酸素

218.4

182.96

1.43

分子

多くの気体と反応

O3オゾン

193

111.3

1.6

分子

02に分解,酸化力大

特異臭,有毒

F2

219.62

188.14

1.530

分子

酸化力特大,反応性大

特異臭,有毒

Ne

248.67

246.048

1.2

分子

ほとんど反応しない

Si

1410

2355

2.33

共有

SiF4,塩基と反応

半導体

P4黄リン

44.1

280.5

1.82

分子

りん光,160℃で発火

有毒

P赤リン

2.20

共有

260℃で発火

マッチ箱

S8斜方

112.8

444.674

2.07

分子

高温で燃焼

S8単斜

119.0

444.674

1.957

分子

高温で燃焼

Cl2

100.98

34.6

2.13

分子

反応性大,酸化力大

刺激臭,有毒

Ar

189.2

185.7

1.65

分子

ほとんど反応しない

空気中に1

 

 

同周期非金属元素の化合物

非金属元素の酸化物は,元素の非金属性が強いほど酸性が強い。したがって,同
周期では原子番号が大きくなるほど,酸性の強い酸化物になる。水酸化物やオキソ

酸も同様の性質を示す。

2・第3周期非金属元素の化合物

元素

水素化合物

酸素化合物

水酸化物・オキソ酸

水を含む反応

5B

B2H6 分子性

B2O3

H3BO3     弱酸性

2H3BO3B2O33H2O

6C

CH4 分子性

CO2

H2CO3     弱酸性

CO2H2OH2CO3

7N

NH3  分子性

N2O5

HNO3     強酸性

N2O5H2O2HNO3

80

H2O 分子性

9F

HF  分子性

OF2

14Si

SiF4  分子性

SiO2

H4SiO4    弱酸性

H4SiO4SiO22H20

15P

PH3  分子性

P4O10

H3PO4 中程度の酸性

P4O106H2O4H3PO4

16S

H2S 分子性

SO3

H2SO4     強酸性

SO3H2OH2SO4

17Cl

HCl 分子性

Cl2O7

HClO4    強酸性

Cl2O7H2O2HClO4

 

 

2周期・第3周期の金属元素の単体

 単体の反応性は金属性が強いほど大きく,第3周期でいえばNaが最も激しく反

応する。たとえば水とは,Naは室温で,Mgは熱水で,Alは高温水蒸気で,それ

ぞれ反応する。次の表に,第2周期・第3周期の金属元素の単体の性質を示した。

 

2周期・第3周期の金属元素の単体

単体

融点

沸点

比重 (固体)

g/cm3

結晶の
種類

電気伝導

反応性

その他特徴

Li

 180.49

1340

0.534

金属

200℃で燃焼,水と反応

軽い,比熱大

Be

1278

2970

1.848

金属

室温で酸化膜,両性元素

有毒

Na

97.75

881.4

0.971

金属

空気酸化,水で発火

 

Mg

 648.8

1090

1.788

金属

室温で酸化膜,熱水と反応

 

Al

 660.4

2470

2.6989

金属

室温で酸化膜,両性元素

 

 

 

2周期・第3周期の金属元素の化合物

金属元素の酸化物は,元素の金属性が強いほど塩基性が強い。したがって同周
期では,原子番号が小さくなるほど塩基性の強い酸化物になり,非金属元素との境
界付近に存在する元素の酸化物は両性を示す。水酸化物も同様の性質を示す。

2周期・第3周期の金属元素の化合物

元素

水素化物

酸化物

水酸化物

水を含む反応

3Li

LiH  イオン性

Li2O

LiOH   強塩基性

Li2OH2O2LiOH

4Be

BeH2 イオン性

BeO

Be(OH)2   両性

Be(OH)2BeOH2O

11Na

NaH  イオン性

Na2O

NaOH  強塩基性

Na20H2O2NaOH

12Mg

MgH2 イオン性

MgO

Mg(OH)2 弱塩基性

Mg(OH)2MgOH2O

13Al

AIH3  分子性

Al2O3

Al(OH)3   両性

2Al(OH)3Al2O33H2O

 

 

両性,両性元素

周期表で,非金属元素と金属元素の境界付近に存在する元素には,非金属性や金
属性のあいまいなものが存在し,場合により両方の性質を示す。両性元素とは,単
体や化合物の酸・塩基に対する性質が,典型的な金属元素や非金属元素とは異なり,
両方の性質を示す元素をいう。AlZnSnPbなどは,単体が強酸・強塩基のど

ちらとも反応する。また,酸化物や水酸化物が弱い酸・塩基の両方の性質をもち,
塩基・酸のどちらとも反応する。したがって,これらは両性元素である。両性元素
には,そのほか,BeCdBGaInSiGeAsSbBiなどがある。

 

原子量

 原子量の概念は,1803年ドルトンによって導入され,1805年に最初の原子量表

が発表された。これは誤差の大きなものであったが,彼の原子説を支持する上で大

きな役割を果たした。初めて精密な測定を行い,原子説に実験的支持を与えたのは,

スウェーデンの大化学者ベルツェリウスであった。彼が1826年に発表した原子量

表は,現在と大差のない立派なものであった。しかし原子量の決定に確たるよりど

ころがなく,その後,原子量の基準は二転三転することとなった。

 原子量は,長い間,天然の酸素原子の相対質量,すなわち16O17O18O3

の同位体が一定の割合で混合しているときの平均相対質量を16として,これを基

準に定められてきた(化学原子量)。天然に存在する同位体どうしの割合が,世界中

どこでも不変であると考えられていたので,この方法で国際的に同一の原子量を定

めることができたのであった。しかし,同位体の研究が進みその知識が増すにつれ,

質量数16の酸素原子16Oだけをとり出し,この相対質量を16とする基準(物理原

子量,あるいは同位体原子量)も必要となってきて,2種の原子量が用いられる時

代となった。この2種の原子量の比は,

 

で与えられる。しかし,2種の原子量が存在することは不便であるという声も大き

くなり,IUPACで種々検討の結果,質量数12の炭素原子12Cを基準にとり,この

相対質量を12とする新基準の国際原子量表が1961年に発表された。

 新基準に従えば,ある元素の原子量は,12C12g中に含まれている原子の数(

ボガドロ数に等しい)と同数のその元素の原子の集団(1mol)の質量を,グラム単位で

示したときの数値であると定義される。従来の化学原子量は,新基準による原子量

1.000043倍にすぎず,実用的には旧来の原子量を用いてもよい。

 自然界に存在する各元素の同位体の割合はほぼ一定であるから,各元素の原子量

は,その同位体の相対質量に存在比を掛けたものの平均値として算出される。

12Cを基準に選んだ理由は,従来の原子量値を大きく変えないですむことや,他

の同位体との質量比較が正確であることなどであった。上の計算ならびに下の表に

示したように,1H160は従来の化学原子量を大きく変える点で不合格であり,19F

は天然同位体をもたない点ではすぐれているが,他の原子との質量比較が不正確に

なる点で不採用となった。

基準同位体と化学原子量の変化率

基準同位体

化学原子量の変化率

11H

7870×106

12C

− 43×106

15N

− 50×106

16O

+ 273×106

19F

+ 42×106

 

希ガスの性質
 存在量が少ないことから希ガスと呼ばれるが,化学的に不活性で化合物をつく
りにくいため「不活性ガス」といわれることもある。単原子分子として存在する。
分子間力も非常に小さいので,融点・沸点ともに極端に低い。不活性であることな

どの性質を利用して,気球用安全ガス,ガス入り電球,不活性ガス中での熔接,極

低温の研究などに用いられている。

希ガスの物理的性質

 

2He

10Ne

18Ar

36Kr

54Xe

86Rn

原子量

4.002602

20.1797

39.948

83.80

131.29

222

密度(0)g/l

0.17850

0.89990

1.7840

3.7330

5.887

9.730

密度(沸点) g/m l

0.1250

1.207

1.393

2.41

3.52

4.4

融解熱〔kJ/mol

0.021

0.33

1.18

1.64

2.30

2.90

蒸発熱〔kJ/mol

0.084

1.80

6.519

9.03

12.6

16.4

臨界温度 〔K

5.20

44.40

150.7

  209.4

289.73

377

臨異圧 〔hPa

2270

27256

48646

55019

58394

75284

イオン化(第一)エネルギー

24.587

21.564

15.760

13.999

12.130

10.748

イオン化(第二) エネルギー

54.416

40.962

27.629

24.359

21.21

原子半径〔nm

0.140

0.154

0.188

0.202

0.216

 

 希ガスは何ものとも安定な化合物をつくらないと長い間考えられてきたが,カナ

ダのバートレットが1962年,XePtF6の合成に成功して以来,アメリカのアルゴ

ンヌ国立研究所のクラッセンらによってXeF4の固体化合物が合成され,最近では

いくつかの希ガス化合物がつくられている。

(1) 放電管中に生じる希ガスの2原子イオンHe2Ar2HeNeなど。

(2) 包接化合物:ヒドロキノン3分子あたり1原子の希ガスがファンデルワールス

 力で収まり,結晶をつくる。その他,Ar(H2O)6Kr(H2O)6Xe(H2O)6などの水和

 物,Ar(C6H5OH)4Kr(C6H5OH)4などのフェノール包接化合物もある。

(3) 六フッ化白金と分子状酸素から得られるイオン結晶O2[PtF6]-にヒントを得

 て,バートレットがXePtF6- (黄色)を合成した。

(4) F2Xe400℃でニッケル管中に通すとXeF6の固体が得られる。

 

ヘリウム

 空気中のヘリウムの存在量は少ないが,宇宙における存在量は水素についで多い。

クレーブ石,フェルグソン石,モナズ石などの放射性元素を含む鉱物には,α崩壊

によって生じたヘリウムが含まれている。また,テキサスやカンザスの天然ガスに

1%程度含まれており,これらはヘリウムの重要な供給源になっている。

 ヘリウムの臨界温度は5.2Kであるが,オランダのオンネスは1908年,初めて

ヘリウムの液化に成功した。このときの液化温度は4.2Kできわめて低い温度であ

るので,超低温を得る材料としてヘリウムは使われている。

(1) 超伝導現象 1908年に初めて液体ヘリウムが得られてから,1K付近の極低温

で金属の電気抵抗がどのようになるかの研究が,オンネスをリーダーとするグル

ープによって始まった。下の表に示す金属は,それぞれの転移温度以下では電気

抵抗がほとんどなくなる。

  電気抵抗がほとんど認められないこの状態では,その金属の中を流れる電流は

ほとんど減衰しない。このような現象を超伝導と呼んでいる。そして,超伝導体

の中を流れる電流を永久電流と呼んでいる。1年以上も永久電流が流れ続けた実

験もある。

  近年,超伝導物質の研究が急速に進み,転移温度が窒素液化温度(196℃)

や室温のものも報告されている。( YBa2Cu3O6.5d d:酸素欠損ペロブスカ

イト型3層構造 86K(187)で抵抗0)

超伝導の転移温度

金 属

転移温度〔K

アルミニウム

1.14

亜    鉛

0.79

ス    ズ

3.37

水    銀

4.15

7.22

 

(2) 超流動現象 2.18Kより温度の低い「液体ヘリウムII」では,奇妙な現象が起

こる。液体ヘリウムIIを入れた容器を傾けなくても,ヘリウムは器壁を伝わって

器外へ流出する。また,ヘリウムに空の容器を接触させると,ヘリウムが器壁を

伝わって容器内へ流入する。このような流出,流入は,容器の内外の液面の高さ

が等しくなるまで続く。液体が重力に無関係に容器の内外に出入りするこのよう

な現象を超流動という。

超流動の説明は量子力学を使わなければできないが,全原子のエネルギー状態

がほぼ同一になり,1つの原子のもつ流動性が巨視的なスケールに拡大された現

象として説明されている。

 

ハロゲン

 FClBrTAtは周期表17族元素で,ハロゲンと総称されている。Atは人

工的に1940年につくられた。放射性があり,天然にごくわずかしか存在しない。

それで,普通Atを除いた4元素についてハロゲンを論じることが多い。ハロゲ

ンの語源はギリシア語のHalo(造塩)gen()に由来し,「造塩元素」の意味をもつ。

 それぞれの元素名の由来は,フッ素fluorineが蛍石fluorite,塩素chlorineが単

体の色(ギリシア語の黄緑chloros),臭素bromineが単体の臭い(ギリシア語の悪

bromos),ヨウ素iodineが単体蒸気の色(ギリシア語のスミレ色ioeides),アス

タチンastatineが放射性による不安定さ(ギリシア語の不安定astatine)である。

 

ハロゲンの単体と化合物

(1) フッ素 フッ素は,天然に蛍石CaF2,氷晶石Na3[AIF6] (AIF33NaF),フッ素リ

ン灰石CaF2·3Ca3(PO4)2などの化合物として存在する。植物の灰からは平均0.1

ほど見いだされ,哺乳動物の歯に約0.3%含まれている。

  フッ素は,フランス人のH.Moissanによって初めて単体として取り出された。

彼は,1886年,液体フッ化水素にフッ化カリウムを溶解し,白金イリジウムの容

器と電極を使って電気分解を行い,フッ素の遊離に成功した。その後,W.L.

Argoは,1919年にフッ化カリウムの溶融塩電解でこれを取り出している。

  フッ素は淡黄色の気体で激しい刺激臭をもち,空気よりも重い。沸点−188.14℃,

融点−219.62℃で,液体は淡黄色,固体は無色である。電気陰性度最大で,ほと

んどの元素と室温で反応する。水とは激しく反応し,HF02の他03H2O2

OF2などが生じる。PtAuとも500℃以下で反応するが,NiAlCuは表面

にフッ化物をつくり,侵されにくい。

(2) 臭素 臭素はフランスの化学者A.J.Balardによって1924年に発見された。

塩素に比べると存在量が少なく,海水中にはわずか0.015%しか含まれていない。

  工業的には,海水のにがり中にある臭化物を塩素で酸化して製造する。

    MgBr2Cl2MgCl2Br2

  臭素は水に比較的よく溶け(3.5),臭素水になる。臭素水は塩素水より安定で,

水を分解する作用も弱い(Br2H2OHBrHBrO)。  

  臭素の融点は−7.2℃,沸点は58.78℃で,室温では赤褐色で不快な刺激臭のあ

る重い液体である。

(3) ヨウ素  ヨウ素は1811年にフランスのB.Courtoisによって発見された。こ

れにiodineと命名したのはGey–Lussacである。

  ヨウ素は動物・植物・鉱物の3界を通じて広く分布しているが,その存在量は非

常に少なく地殻の0.0001%,海水には約0.001%含まれているにすぎない。海草の

灰の中には1%程度存在している。日本では千葉県大多喜その他の地方で海草か

らヨウ素を採取している。ヨウ素の一般的な製法は,塩素によるヨウ化物の酸化で

ある。

    2NaICI22NaClI2

  融点113.6℃,沸点184.4℃。固体は黒紫金属光沢,液体は赤色,気体は紫色で,

昇華しやすい。

 

セレン,テルル

セレンとテルルは硫黄によく似た性質を示す。同素体に金属性のものがあり,こ
れは半導体となる。ともに有毒である。

セレン,テルルの単体の性質

元 素

セレン Se

テルル Te

同素体

無 定 形

結 晶

金 属

無定形

金 属

形・結晶

粉 末

ガラス状

単斜晶系

六方晶系

六方晶系

暗褐()

灰 黒

銀 灰

 密度〔g/cm3

4.26

4.28

4.4

4.79

6.026.24

6.236

融点〔℃〕

ガラス化

144

217

449.5

沸点〔℃〕

684.9

684.9

684.9

684.9

989.8

水・塩酸

不 溶

不 溶

不 溶

不 溶

不 溶

不 溶

硝酸

CS2

不 溶

不 溶

 

 

硫黄の単体

 同素体では斜方硫黄Sαと単斜硫黄Sβがよく知られ,SαSβは互いに変化する。

Sβを室温に放置すればSαに,Sαを融解して徐々に冷やすとSβになる。また,Sα

95.5℃以上に保ってもSβになる。この温度を,硫黄の転移点という。

 

転移点(95.5)

Sα(低温)  Sβ(高温)

 

 硫黄を熱すると119.6℃で融解して黄色流動性の液体Sλになり,さらに熱する

と黒褐色粘稠性の液体Sμに変わる。これは,445℃で沸騰して赤褐色の蒸気を出

す。Sμを冷水中に入れるとゴム状硫黄が得られる。

 硫黄は水に溶けないが,アルコールには少し溶け,二硫化炭素にはよく溶ける。

ただし,ゴム状硫黄は高分子になっており,二硫化炭素にも溶けにくい。

 水酸化ナトリウム水溶液や石灰水などのアルカリには,温めると溶ける。

   6S6NaOH2Na2S2Na2S2O33H2O

 

アルカリ金属

 アルカリ金属は,最も典型的な金属元素である。どれも類似した性質をもち,

単体は軟らかい銀白色の金属で,空気中では酸化されやすく,石油中に蓄えられる。

沸点・融点は原子量が大きくなるほど低く,このことは,原子の電子配置や原子半

径からも理解することができる。

 アルカリ金属の原子の電子配置は,すべて最外殻のs軌道に電子を1個もつ点で

共通性がある。このs電子は放出しやすいもので,これを放出すると1価の陽イオ

ンができる。したがって,イオン化エネルギーは一般に小さく,原子番号の増大と

ともに一段と小さくなる。

 NaKは,デービーが白金皿の中でNaOHKOHを融解して電気分解する方法

で初めてつくった(1807)Liは,アルフベトソンがぺタル石の成分元素として

1817年に発見し,その単体はブンゼンが融解塩電解でとり出している(1855)Rb

Csは,ブンゼンらにより,1861年および1860年に,鉱泉水のスペクトル分析で

それぞれ見いだされているが,単体はどちらもそれらの塩の融解塩電解で得られた。

Frは,1939年,フランスのキュリー研究所のベレーによって発見された放射性元素

である。

 アルカリ金属元素のイオンが水溶液中で還元されて単体となることは難しいので,

どれもその塩の融解塩電解で単体を得ている。

 

アルカリ金属の反応

 水との反応は,原子番号が大きいほど激しく,水酸化物と水素を生じる。Li

を除いて反応時は融解し,Naでは時折,K以下では常に発火する。

   2M2H2O2MOHH2

 アルコールとも反応し,アルコキシドとH2を生じるが,エーテルや灯油とは反応

しない。

 空気中では湿気があれば水酸化物となり,乾燥空気中ではLiを除いて酸化され

る。高温にすると燃焼し,Li2ONa2O2KO2RbO2CsO2などが生じる。ハロゲン

とも空気と同様に反応し,ハロゲン化合物MXが生じる。水素とは高温で水素化物

MHを生じる。窒素,炭素,ケイ素などとは一般に反応しないが,Liだけは例外

で,窒化物や炭化物,ケイ化物になる。

   6LiN22Li3N

 

2族元素,アルカリ土類金属

 2族元素は,以前はアルカリ土類金属と同義であったが,IUPACは無機化学命

名法においてCaSrBaRaをアルカリ土類金属と呼ぶと定義したので,今日

ではBeMgはアルカリ土類金属に含まれないことになった。BeMgは,Ca

下の他の元素に比べて塩基性(金属性)が弱く,12族のZnCdHgと似た性質が

あるので,このように区別して扱われる。

 2族元素はイオン化傾向が大きいので,単体として産出しない。アルカリ金属に

次いで軽く軟らかい。原子価は2価で,金属性が一般的に強いので陽イオンになり

やすく,その水酸化物はアルカリ金属に次いで強塩基性を示す。アルカリ土類の

「土」には,水に溶けにくく,熱に強いという意味がある。

 マグネシウムの製造は,カーナライトMgCl2 · KCl· 6H2O,マグネサイトMgCO3

にがりMgCl2 · 6H2Oなどから純粋な無水MgCl2をつくり,これを融解し電気分解

する方法で行う。そのとき,融点を下げるため塩化ナトリウムを加える。

 (鉄陰極)Mg22e-Mg  (炭素陽極)2Cl-Cl22e-

 カルシウムは,CaCl2の融解塩電解で製造される。

 

2族元素の反応

 2族元素は,どれも標準酸化還元電位が水より低いので,水と反応できる。

   M2H2OM(OH)2H2

 しかし,Be(OH)2Mg(OH)2は溶解度が小さく,これが金属表面を覆うので,Be

は実際に反応せず,Mgは加熱しないと反応しない。CaCa(OH)2の保護膜をつく

るので,冷水での反応は穏やかであり,熱水では激しくなる。

 アルコールに対する反応も水と同様である。

 希酸とはどれもよく反応するが,Beは濃硝酸と反応せず,SrBaは濃硫酸や濃

硝酸とは徐々に反応する。

 空気とは,どれも表面が酸化され,熱すると燃焼して酸化物MOになる。こ

のとき,Mgでは明るい光を出す。また,同時に窒化物M3N2のできていることが

多い。窒化物の生成は,酸素量が少なくなるほど多くなる。

   2MO22MO3MN2M3N2

 Beは両性元素で,強塩基に溶けて水素を発生する。他の2族元素は塩基と反応

しない。

   Be2NaOH2H2ONa2[Be(OH)4]H2

 

亜鉛

 天然に単体で産出することはないが,地殻中に広く分布している。主要鉱石は閃

亜鉛鉱ZnS,菱亜鉛鉱ZnCO3である。硫化物は焼いて酸化物とし,これを炭素と混

ぜて熱すると亜鉛が蒸発して出てくる。精製は蒸留,電解によって行う。青みを帯

びた銀白色の金属光沢がある。融点419.58℃,沸点907℃,密度7.13g/cm3室温で

はややもろく,加工しにくいが,100115℃で展性・延性が著しく増大するので,

薄板や線に加工できる。200℃以上でまたもろくなり,粉末にすることができる。

 湿った空気中で塩基性炭酸亜鉛の被膜を生じ,内部を保護する。酸素または空気

中で高温に熱すると光を出して酸化物になる。赤熱状態で水と反応し,分解して水

素を発生する。乾いたハロゲンとは室温で反応しないが,水分があれば容易に侵さ

れる。希酸及び濃アルカリ溶液と反応し,水素を発生して塩を生じるので,希酸あ

るいは濃アルカリ溶液とともに還元剤として用いることができる。アンモニア水,

シアン化カリウム水溶液には,水溶性錯塩をつくって溶ける。

 トタン板,電池の製造のほか,黄銅,洋銀など重要な合金の材料となる。

 

水銀
主要鉱物はHgSで,自然水銀として産出することもある。室温常圧で液体である

唯一の金属。融点−38.842,沸点356.58,密度13.546g/cm3空気中では変化し

ないが,300400に熱すると酸化水銀(U)HgOとなる。塩素と作用して塩化水銀

(I)Hg2Cl2を生成。塩酸・希硫酸とは反応しないが,硝酸・濃硫酸・王水に溶ける。

また,多くの金属とアマルガムをつくる。単体・無機化合物とも皮膚吸収,煙・蒸気

を吸い込むと猛毒。有機化合物は大部分が有毒。

スズとその化合物
スズは天然には錫石SnO2として産し,これをCSiO2CaCO3などで還元し,粗

スズをつくり,さらに電解法などにより精製する。低温型のaスズと高温型のスズが

知られている。転移温度は18℃であるが,この温度では転移速度は小さく,−48

で極大となる。aスズは灰色スズともいい,ダイヤモンド型構造,格子定数α0.649

nmbスズは白色スズともいい,普通の銀白色の金属スズはbスズである。融点

231.9681,沸点2270da205.77db207.27加工性はよいが,棒状のものを

曲げると,表面は何も変化がないのに,竹を折るような音がする(これを錫声とよぶこ

とがある)bスズを−30以下に保つとaスズになる。このとき金属スズは膨張し,崩

れやすくなる。寒冷地で見られる錫ペストはこれである。空気中では安定であるが,高

温では燃焼し酸化スズ(II)となる。両性を示す。ブリキ(鉄板にスズメッキ)、各種合金に

使われている。
 化合物のスズの酸化数は+2か+4である。スズ(II)化合物は酸化されやすく,還元
剤として働き,スズ(IV)化合物となる。

鉛とその化合物
 方鉛鉱PbSから粗鉛をつくり,これを電解法,乾式法などにより精製する。帯
青白色の軟らかく重い金属。構造は,面心立方格子,格子定数a0.49505nm(25)
融点327.502沸点1744密度11.35g/cm3(20)加熱によりしだいに酸化され

PbOPb3O4などとなる。希酸には侵されにくいが,酸化力のある酸(硝酸など)には溶け

る。両性を示す。板,管などとして,また蓄電池の電極などに用いられる。また,はん

だの他,各種合金の成分となる。可溶性鉛化合物はすべて有毒。
 酸化数+2の化合物が多く,+4のものもあるが+2のものに比べて不安定である。

 

遷移元素の性質

4周期の遷移元素の性質を下表に示した。遷移元素の融点が高く硬いのは,d

道電子を含む多数の電子が金属結合に参加するためと考えられる。

 遷移元素はまた,いくつかの酸化数を示すものが多い。これは,結合に関係する

電子のすべてが,常に使われるわけではないからである。マンガンを例にとれば,

最高7個の電子が結合に関与するが,実際には26個が使われることもあり,

2〜+7の酸化数を示す。

4周期遷移元素の性質

元素

Ca

Sc

Ti

V

Cr

Mn

Fe

Co

Ni

Cu

Zn

融点〔℃〕

839

1541

1660

1890

1857

1244

1535

1495

1453

1083

420

沸点〔℃〕

1484

2830

3290

3380

2670

1962

2750

2870

2910

2570

907

密度g/cm3

1.55

2.99

4.50

6.11

7.19

7.44

7.87

8.9

8.91

8.96

7.13

原子半径

1.97

1.63

1.45

1.31

1.25

1.12

1.24

1.25

1.25

1.28

1.33

M2半径〔Å〕

1.14

---

1.00

0.93

0.87

0.81

0.75

0.79

0.83

0.87

0.88

結晶構造

面立

六最

六最

体立

体立

立方

体立

六最

面立

面立

六最

電気陰性度

1.0

1.3

1.5

1.6

1.6

1.5

1.8

1.8

1.8

1.9

1.6

標準電極電位

2.8

2.0

1.6

1.1

0.9

1.2

0.4

0.3

0.3

0.3

0.8

主な酸化数

2

3

24

25

26

27

24,
6

14

14

13

2

面立は面心立方構造,六最は六方最密構造,体立は体心立方構造

 

遷移元素の特色

 これまで触れたことを含めて特色をまとめると,次のようになる。

(1) 周期表の第4周期以後に位置し,311族に属する。

(2) 原子の電子配置は,原子番号の増加につれて,最外殻ではなく内殻のd軌道,

 f軌道に電子が満たされていく。

(3) 一般に密度が大きく,Scを除き重金属である。融点・沸点も高く,融解熱も

 大きい。比較的硬い。

(4) 有色の化合物が多い。

(5) 単体のイオン化傾向は比較的小さく,また反応性も小さい。

(6) 同一元素で,いくつかの酸化数をもつものが多い。

(7) 錯イオンをつくる。

 

 

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009-2012 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.