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付録5 イオンの検出反応

 

◆炎色反応

 炎色反応は,化合物中の金属元素を検出するための簡便な方法である。アルカリ

金属やアルカリ土類金属,鋼などが炎色反応を示す。通常,試料には塩化物水溶液

を用い,白金線の先につけて無色炎に入れる。水溶液につけたろ紙を炎に入れても,

炎色反応を行うことができる。炎色は,コバルトガラスを通すと,元素により固有

の色に変わり,元素の識別がより確かになる。特にNaが混合しているときは,コ

バルトガラスでNaの炎色が消え,識別しやすい。炎色反応は花火などに利用され,

古くから知られてきた。下に炎色反応の色を示す。

 

炎色反応

 一般に,塩化物のような揮発性化合物中の金属原子が,加熱で励起されて発する

輝線スペクトルのうちで,ある波長の光が特に強いために生じる発色現象。定性分

析の補助法として重要である。普通,白金線の先端に検体をつけて無色炎に入れて

観察するが,検体が水溶液の場合には,ろ紙片に十分浸して直接無色炎に入れても

十分観察できる。

 花火の色は,炎色反応によるものである。花火の閃光は,マグネシウムまたは

アルミニウムの燃焼による。現代の花火は酸化剤として塩素酸カリウムのような

能率のよいものを用いているので,燃焼温度が高く,炎色反応も非常に鮮やかであ

るが,江戸時代の花火は酸化剤として硝石(硝酸カリウム)を用いており,燃焼温

度が低いため色はあまり鮮やかではなかったと想像される。

炎色反応のまとめ

元素

炎色

コバルトガラスを
通して見た炎色

Li

赤紫

 

Na

無色

 

K

赤紫

赤紫

 

Ca

橙赤

橙緑

 

Sr

深赤

 

Ba

青緑

 

Cu

青緑

淡青

 

 

 

銅イオンCu2の反応
塩基性にすると,青〜青白色の水酸化物Cu(OH)2が沈殿する。このとき,長く

放置したり,熱すると黒色の酸化銅CuOを生じる。

   Cu22OH-Cu(OH)2, Cu(OH)2CuOH2O

また,アンモニア水を過剰に加えたときは,Cu(OH)2が溶けて深青色溶液となる。

これはアンミン錯イオンが生じるためである。

   Cu(OH)24NH3[Cu(NH3)4]22OH-

 硫化水素水H2Sを加えると,黒色のCuSを沈殿する。CuSは酸に溶けないが,

熱希硝酸やKCN水溶液には溶ける。

   2CuS9CN-2[Cu(CN)4]3-CNS-S2-

 Cu2水溶液にKCN水溶液を加えると,黄色のCu(CN)2が沈殿するが,これは

直ちに(CN)2ガスを失って白色のCuCNの沈殿になる。このCuCNは,過剰の

KCNと錯イオンをつくって無色の溶液となる。

   Cu22CN- Cu(CN)2  2Cu(CN)22CuCN(CN)2

   CuCN3CN-[Cu(CN)4]3-

 中性のCu2溶液は,K4[Fe(CN)6]溶液を加えると赤褐色沈殿となる。

   2Cu2[Fe(CN)6]4- Cu2[Fe(CN)6]

 

銀イオンAgの反応
硝酸銀水溶液中のAgは,次のように反応する。塩基には,Ag2Oとなって沈殿

する。この沈殿は,アンモニア水に溶ける。
   2Ag20H-Ag2OH2O
   Ag2O4NH3H2O2[Ag(NH3)2]20H-

 ハロゲン化物イオンとの反応は,前項目の解説のようになる。

 硫化水素には,Ag2Sとなって沈殿する。Ag2Sは,KCN溶液に溶ける。

   2AgS2- Ag2S

   Ag2S4KCN2[Ag(CN)2]-4KS2-

 KCN溶液には,白色のAgCNとなって沈殿するが,過剰のKCN溶液には溶ける。

   AgCN-AgCN AgCNCN-[Ag(CN)2]-

 K2CrO4またはK2Cr2O7水溶液には,Ag2CrO4となって沈殿する。この沈殿も,

KCN溶液やNH3水に溶ける。

   2AgCrO42- Ag2CrO4

   4AgCr2O72-H2O2Ag2CrO42H

 

金属の反応性一覧 温度については,カッコ内に示したが,単位℃は省いた。

元素名(記号)

気体に対する反応性

液体に対する反応性

特性

亜鉛Zn

湿気;灰白被膜。空気(高温);燃焼,ZnOハロゲン(湿)ZnX2

無機酸,酢酸,強塩基aq;溶,H2Zn2

電解金属99.999%,めっき,電池,合金

アルミニウムAl

空気;(室温)酸化被膜,(高温)燃焼。ハロゲン(高温);燃焼

(高温)H2無機酸(除濃HNO3)H2塩基aq[Al(OH)4]-H2

展延性,電気伝導性,軽合金

アンチモンSb

空気;()光沢失う,(加熱)Sb203。ハロゲン;SbX3

王水,濃硝酸,熱濃硫酸;溶

有毒

カドミウムCd

空気;(室温)表面酸化,(高温)CdOハロゲン(高温)CdX2

希硝酸,熱硫酸,HCl;溶。強塩基aq;不溶

有毒

カリウムK

空気;(室温)酸化,(高温)KO2 H2(高温)KHハロゲン;KX

水;発火,H2エタノール;エトキシド+H2

炎色;赤紫

カルシウムCa

空気;(室温)表面酸化,(高温)CaO H2(高温)CaH2。ハロゲン;CaX2

水;溶,H2酸;激しく反応,H2エタノール;エトキシド+H2

炎色;橙

Au

Cl2Br2(高温)AuX3

王水;[AuCl4]-  KCN(02存在);溶

展延性金属中最大

Ag

03Ag202

硝酸,熱硫酸;溶

熱,電気伝導性金属中最大。ハロゲン化物;写真

クロムCr

N2(高温);窒化物。ハロゲン(高温)CrX3

HCl,希硫酸;溶,H2濃硝酸,王水;不動態

Y価化合物有毒,耐食性(めっき)

ゲルマニウムGe

空気;(高温)GeO2 Cl2GeCl4

熱硫酸,硝酸;溶,Ge(W)強塩基aq;徐々に溶,[Ge(OH)6]2-

半導体

コバルトCo

空気;(400500)Co304 O2(1100)CoO。ハロゲン;CoX2

希硫酸,希硝酸,HCl;溶,

Co2。塩基aq;不溶

強磁性,V価の安定錯化合物多数

水銀Hg

空気;(300400)HgO Cl2Hg2Cl2

硝酸,濃硫酸,王水;溶

室温で液体,有毒,多くの金属とアマルガムを生成

スズSn

空気;(高温)SnO2ハロゲン;激しく反応,SnX4

酸;溶,Sn2+H2濃硝酸;SnO2(沈殿)。強塩基aq;溶,[Sn(OH)4]2-

めっき,合金

ストロンチウムSr

空気;(室温)灰白被膜,(高温)SrOSr3N2 H2;水素化物

水,希酸;激しく反応,H2。濃硝酸,濃硫酸;徐々に溶

炎色;紅

セシウムCs

空気;酸化,(高温)CsO2 H2CsH。ハロゲン;CsX

水,酸,激しく反応,H2 エタノール;溶

炎色;青。低融点。最も陽性な元素

タングステンW

空気(300);粉末酸化,WO3 F2Cl2Br2(加熱)WX6

濃硝酸;WO3 王水;表面酸化。HF+硝酸;溶

融点金属中最高,電球フィラメント

チタンTi

O2(610)TiO2 N2(800)TiN4Cl2(300)TiCl4

無機酸();溶,H2 硝酸;メタチタン酸。HF;溶

耐食性(とくに海水中)

Fe

空気(室温,湿);酸化 O2(高温)Fe2O3 Cl2FeCl3

濃硝酸;不動態

α;強磁性(769)

Cu

空気;(湿,CO2)緑青,(高温)CuOF2(高温)CuF2

HCl(O2共存);溶 硝酸,濃硫酸;溶 NH3水; [Cu(NH3)4]2

熱,電気伝導性大

ナトリウムNa

空気;(室温)酸化,Na2O2 H2(高温)NaH ハロゲン;NaX

水;発火,H2 酸;激しく反応。エタノール;エトキシド+H2

炎色;黄

Pb

空気;(室温)表面酸化。ハロゲン;PbX2

熱硫酸,硝酸;溶 酢酸(O2存在);溶。

軟らかい 蓄電池の電極。

ニッケルNi

空気;微粉末発火 Cl2Br2(高温)NiX2 CONi(CO)4

HCl,硫酸,希硝酸;溶 濃硝酸;不動態 塩基aq;不溶

強磁性 水素化触媒

白金Pt

Cl2(250)PtCl2 F2(高温)PtF4H2;微粉吸蔵

王水;溶,[PtCl6]2 KCN水,熱濃硫酸,融解塩基;徐々に溶

水素吸蔵性大

バリウムBa

空気(高温)BaO H2N2(高温)BaH2Ba3N2 ハロゲン;BaX2

水;溶 酸;激しく反応,H2濃硫酸,濃硝酸;徐々に溶

炎色;黄緑

ベリリウムBe

空気;(室温)酸化被膜,(高温)粉末燃焼,BeO

希酸,強塩基aq;溶,H2 濃硝酸;不溶

有毒,]線管窓

マグネシウム Mg

空気;(室温)表面酸化,(高温)強い光,MgO Cl2MgCl2

熱水,希酸;溶,H2 塩基aq;不溶

軽金属

マンガンMn

空気;表面酸化 O2CI2(高温)Mn3O4MnCl2

水;徐々に溶 酸;溶,Mn2H2

安定酸化数多数

リチウムLi

空気;(200)燃焼,Li2O H2(高温)LiHN2(高温)Li3N

水;溶,H2 酸;激しく反応,H2 エタノール;エトキシド+H2

炎色;赤 最も軽い金属,固体金属中比熱最大

ルビジウムRb

空気(高温)RbO2,ハロゲン;RbX

水;激しく反応,H2 エタノール;エトキシド+H2

炎色;赤

 

 

◆アルミニウムの単体と酸・塩基との反応

 アルミニウムは両性金属であり,希塩酸にもNaOH水溶液にも水素を発生して

溶けるが,濃硝酸には不動態をつくり溶けない。

 

 

Al(OH)3の沈殿

 AICl3水溶液に少量のNaOH水溶液を加えるとこの白色沈殿が生じる。さらに

NaOH水溶液を加えると,[Al(OH)4]が生じるため沈殿は溶け無色の溶液となる。

塩基としてNaOH水溶液のかわりに弱塩基のNH3水を用いると,多量に加えても

ー旦生じたAl(OH)3の沈殿は溶けない。

 

◆鉄(II)イオンFe2の反応

 FeSO47H2OFe2化合物の主要なものの1つで青緑色の結晶である。水

によく溶け,ほぼ無色に近い淡緑色水溶液となる。これはアクア錯イオン

[Fe(H2O)6]2が示す色である。放置すると水溶液はしだいに酸化されて黄色味を帯

びるようになる。

 鉄(II)イオンにNaOH水溶液を加えると次の反応が起こる。

Fe22OHFe(OH)2

Fe(OH) 2は白色であるが,酸化を防ぐ工夫をしなければ白色のものを観察すること

は困難である。普通やや緑がかった白色のものが得られる。

 鉄(II)イオンにK4[Fe(CN)6]水溶液を加えると次の反応が起こる。

2Fe2[Fe(CN)6]4Fe2 [Fe(CN)6]

Fe2[Fe(CN)6]は白色であるが,これも酸化を防ぐ工夫をしなければ白色のものを観

察することは困難である。普通ただちに青色を帯び始めて青白色のものが得られる。

 鉄(II)イオンにK3[Fe(CN)6]を加えると,試薬がうすい場合は次の反応が起こり濃

青色溶液になる。

   Fe2K3Fe[Fe(CN)6]KFe[Fe(CN)6]2K

試薬が濃い場合は次の反応が起こり,濃青色沈殿(ターンブル青)を生じる。

3Fe22[Fe(CN)6]3nH2OFe3[Fe(CN)6]2nH2O

 

◆鉄(III)イオンFe3の反応

 FeCl6H2Oは潮解性の黄褐色の結晶。水溶液も黄褐色である。

 鉄(III)イオンにNaOH水溶液を加えると次の反応が起こり,赤褐色沈殿を生じる。

Fe33OH−→Fe(OH)3

 鉄(III)イオンにK4[Fe(CN)6]水溶液を加えると,試薬がうすい場合は次の反応が

起こり,濃青色溶液になる。

   Fe3K4[Fe(CN)6KFe[Fe(CN)6]3K

試薬が濃い場合は次の反応が起こり,濃青色沈殿(プルシアン青)を生じる。

4Fe33[Fe(CN)6]4Fe4[Fe(CN)6]3

 鉄(III)イオンにKSCN水溶液を加えると次の反応が起こり,血赤色溶液となる。

Fe3nSCN[Fe(SCN)n](n3)

 

◆銅(II)イオンCu2の反応

 CuSO45H2Oは青色の結晶で,水溶液も青色。無水物は白色の結晶である。

 銅(II)イオンにNaOH水溶液を加えると次の反応が起こり,青白色沈殿を生じる。

Cu22OH−→Cu(OH)2

 銅(II)イオンに過剰のNH3水を加えると,いったんCu(OH)2の沈殿を生じるが,

溶けて深青色溶液になる。

Cu22NH32H2OCu(OH)22NH4

Cu(OH)24NH3[Cu(NH3)4]22OH

 銅(II)イオンにH2S水を加えると次の反応が起こり,黒色沈殿を生じる。

Cu2S2CuS

 

◆銀イオンAgの反応

 AgNO3は白色の痕晶であり,水溶液は無色である。

 銀イオンにNaOH水溶液を加えると次の反応が起こり,暗褐色沈殿を生じる。

2Ag2OHAg2OH2O

  銀イオンにK2CrO4水溶液を加えると次の反応が起こり,暗赤色沈殿を生じる。

2AgCrO42Ag2CrO4

 銀イオンにH2S水を加えると次の反応が起こり,黒色沈殿を生じる。

2AgS2Ag2S

 

 

 

 








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