付録2 実験の基本操作
参考 有機化合物の分離
有機化合物の混合溶液から,各化合物を分離するには,これらの化合物の酸・塩
基との反応性と有機溶媒や水に対する溶解性を十分知っておく必要がある。また,
これらの化合物を確認する方法も,同時に知っておかねばならない。ここでとり扱
っている,トルエン,フェノール,安息香酸,アニリンのエーテル混合溶液から,
これらの化合物を1つ1つ分離し,確認する実験操作を示しておく。
試料は,各物質1gずつの混合物を15cm3のエーテル(ジエチルエーテル)に
溶かしたものを用いる。
操作(1) エーテル溶液を100cm3の分液漏斗に入れ,2mol/l HCl 20cm3を加えて
よく振ったのち静置し,下層の水溶液を試験管に流し出す。このときの反応は,
C6H5NH2+HCl→C6H5NH3Cl
この試験管に6mol/l NaOH10cm3を加えてしばらく静置すると,上層に油状
物質が遊離する。このときの反応は,
C6H5NH3Cl+NaOH→C6H5NH2+NaCl+H2O
この油状物質の1滴をさらし粉溶液に加えると,赤紫色に呈色することから,こ
の物質がアニリンと確認できる。
操作(2) 操作(1)の分液漏斗中の上層の部分に,水15cm3を加えてよく振り,残っ
ているHClを洗い流す。つづいて,1mol/l NaHCO3 15cm3を分液漏斗に入れ,
(1)と同様の操作を行うと,次の反応が起こる。
C6H5COOH+NaHCO3→C6H5COONa+CO2↑+H2O
下層部を流し出した試験管に2mol/l HCl 10 cm3を,溶液があふれ出さないよ
うに少量ずつ加えると,固体が析出する。生じた固体を吸引ろ過し,少量の純水
で洗う。このときの反応は,
C6H5COONa+HCl→C6H5COOH+NaCl
操作(3) 操作(2)の分液漏斗に残っている上層の部分に,6mol/l NaOH 10cm3を加
えてよく振り,(1)と同様の操作を行うと,次の反応が起こる。
C6H5OH+NaOH→C6H5ONa+H2O
下層部を流し出した試験管に6mol/l
HCl 15cm3を加えると,油状物質が上層
に遊離する。このときの反応は,
C6H5ONa+HCl→C6H5OH+NaCl
この油状物質の1滴を塩化鉄(V)溶液に加えると,紫色に呈色することから,フ
ェノールを確認できる。
操作(4) 操作(3)の分液漏斗に残っている溶液をビーカーに移し,エーテルを蒸発さ
せる。残ったビーカー中の物質のにおいから,この物質がトルエンであることが
わかる。