トップ化学II5部 課題研究>第1章 化学の探究方法>第3節 化学的探究の進め方

3節 化学的探究の進め方

 

◆テーマの設定

 広く自然界において,あるいは身近な身辺で起こるいろいろな事象やその変化に

ついて,関心がなければ探究のテーマは出てこないだろう。たえず未知のものに興

味と関心をもち,情報を集める気持ちがあって初めて「疑問」が生まれる。そして,

その疑問を解決するために,あたかもクモが巣に網を張って獲物をねらうように,

集中的に情報を集める仕事を始めたとき「テーマが設定」されたといえる。“偶然

は準備のない人を助けない”(パスツール)のである。

 ラボアジエは,燃焼についての自分の経験からフロギストン説を疑った。そして,

これを実証的に検討することを始めた。これが,彼にとって化学探究の一つのテー

マであった。

 

◆実験の計画

 自然科学においては,論証して他者を説得できるのは事実だけである。したが

って,自分の立てた仮説を実証する事実を実験から導き出さなければならない。

実験に基づく証拠が豊富であるほど仮説の確かさは高められるが,一方,実験は

能率よく的確にすすめることも必要である。したがって,実験に当たっては「計

画」が大事である。すでに知見が得られていることを無駄に繰り返すことのない

ように,あらかじめ十分に「調査」し,そのうえで効果的な実験を計画するべき

である。

 当然,危険防止・安全対策も十分考慮する必要がある。ラボアジエを追試した

実験の操作Aにおいて(教科書p.258),スズを酸化する前に容器内の空気の一部を

加熱によって抜いたのは,密閉して加熱したとき容器内の圧力が上昇し,場合に

よっては容器が爆発する危険を防止したのであった。空気を抜かずに実験を進め

ても得られる結果は同じであったはずである。このような細かな配慮が,安全で

的確な実験を行うポイントになる。

 

◆測定

燃焼という現象を質量の増減から調べようという「定量的実験」では,質量の測

定値が十分有意なものでなければならない。したがって,用いる天びんの精度が

実験結果を左右する。目的とする現象の解明に最適の,そして必要にして十分な

精度をもった器具の選定はきわめて大事である。精度は,誤差がどの程度まで許

されるかで決まる。有意な測定値を得ることに力を入れなければならない。

 

参考 化学分析
物質中にどのような元素,イオン,あるいは化合物が含まれているかを調べる

ことを定性分析といい,また,含まれている量や割合がいくらかを調べることを

量分析という。定性分析・定量分析をまとめて,広く化学分析という。

(1)   定性分析 定性分析の手段としては,化学反応を利用する方法を始めとして,

各種の電気化学的,光学的,電磁気的方法が利用される。どの方法を利用するに
しても,目的成分の含有程度は,多くの場合,大量・小量・微量・こん跡など,
非常にばく然とした分類であるが,推定可能なことが多い。
 無機物の定性分析は,水・酸・塩基などに溶かした上で,化学反応を利用して

沈殿の生成,液色の変化,気体の発生などを観察して行う(湿式法と呼ばれる)

また,発光分光分析,蛍光]線分析など機器分析も有力な方法である(乾式法と

呼ばれる)。有機物の場合もほぼ無機物と同様であるが,機器的方法として赤外

線吸収・紫外線吸収・質量分析などが有効な手段となる。

(2)   定量分析 物質中の各成分の量的関係を知ることがいかに重要なことである

かは,18世紀の後半,天秤が使われるようになって初めて化学の発達が軌道にの

ったのを見ても明らかなことである。
  定量分析を行うためには,最初にその物質の質量なり,容積なりを正確には
 
かり,次に目的の成分だけを取り出して同様に量り,この2つの測定から目的
 
成分の含有割合を計算する。したがって,定量分析のポイントは目的成分をいか
 
にして取り出し,いかなる手段を用いてはかるかにある。
 古典的な化学分析は,もっぱら化学反応に頼っていたが,機器分析は化学反応

のみならず,利用できるものは何でも使うという考え方である。化学分析を機

器化することにより,それまでに比べ「より正確に,より迅速に,より微量ま

で」分析しうるばかりでなく,化学的方法では不可能あるいは困難であった成分

のものが,きわめて容易に分析できるようになった。機器分析は分析の自動化を

可能とし,組成の変化を絶えず指示して,化学工場において工程の監視あるいは

管理の役割を果たすに至っている。

 機器的な方法について主なものを列挙する。

 @光吸収分析  A炎光分析  B電気分析  Cポーラログラフィ

  D放射化分析  E発光分光分析  F赤外線吸収分析  G質量分析

  Hガスクロマトグラフィ

 

成分元素の検出(定性分析)

 有機化合物に含まれる各元素の検出法を,以下に解説する。

(1) 炭素 有機物であることがわかっていれば,普通は検出試験を行わない。一般

 には,次のような方法がある。

(A) 濃硫酸を加えて熱すると,Cは黒〜褐色となって生じる。

(B) 封管中で加熱分解すると,Cは黒色物質になる。

(C) MoO3(黄色)と伴に熱すると,これが青色のMo2O5に還元される。

(D) KN3と伴に熱し,生じたKCNを検出する。

(2) 水素

(A) Na2SO3(またはNa2S2O3)と伴に熱し,H2Sを発生させる。H2Sは酢酸

  鉛紙の黒変などで検出する。

(B) CuOと伴に強熱し,H2Oとする。H2OCuSO4の青変などで検出する。

  この方法はCも同時に検出でき,CO2が発生する。CO2Ba塩などの水溶液

  に通し,BaCO3の沈殿として確認する。

(3) 窒素

(A) CO2気流中で,CuOと伴に熱し,N2とする。この混合ガスは,KOH

  溶液に通し,CO2H2Oを除き.N2を確認する。体積で定量する。

(B) 濃硫酸と接触剤(CuSO4HgSO4など)と伴に加熱分解し,Nを硫酸アン

  モニウムにする。これを,NaOHの濃溶液に加えて熱し,発生するNH3

  酸に吸収させて,酸の消費量を知る。定量法である。

(C) 金属Naと加熱融解し,残りのNaをメタノールと反応させた後,ろ過して

  炭素を除く。ろ液にはNaCNがあり,液を酸性にしてFeSO4溶液とFeCl3

  液を加えると,ベルリンブルーが沈殿する。Nが少量のときは青緑色になる。

(D) CaOと伴に熱するとNH3が発生する。このNH3を検出する。

(4) ハロゲン

(A) 熱してCuO被膜をつくった銅線に試料を載せ,バーナーの酸化炎で熱する。

このとき,Clがあれば緑色炎,BrIがあれば青色炎になる。これは,揮発性

の銅のハロゲン化物が生成するためである。

(B) 窒素の分析法(C)と同様に試量を反応させ,ろ液を硝酸で酸性にした後硝酸

  銀溶液を加える。AgCI白,AgBr淡黄,AgI黄の沈殿で確認する。

(5) 硫黄

(A) Na及びCa(NO3)2と伴に加熱融解し,冷却後水に溶かす。Sは硫酸にな

  っており,HClBaCl2を加えるとBaSO4の白沈となる。

(B) ギ酸ナトリウムと伴に熱すると,H2Sが発生する。これを酢酸鉛紙で検

  出する。

 

参考 有機化合物の元素分析

 

元素分析

 有機化合物の構成元素を検出し,その量を決める方法。有機化合物は,CH

Oなどの一連の化合物であり,元素の検出だけでなくその成分比を求めなければ化

合物を半別できないので,元素分析が行われる。

 有機物の元素分析を行うときは,化合物を分離精製した後,まず物理的性質(色,

臭い,結晶形,融点,沸点など)を観察して,一定の見当をつけてから行う。

 

組成式の決定

 CHOを含む化合物は,燃焼させ,CO2H2Oとして定量する。装置の概要

は,以下の通りである。

(1) 酸素または空気の精製  酸素または空気は,精製管を通して妨害ガスや水分

 を除く。このとき,線状CuOを詰めた加熱管で800°Cに熱して不純物は完全

 に燃焼させ,生じたCO2はアスカライト(NaOHとアスベストからつくられた

 CO2吸収剤。吸収能はソーダ石灰の34),水分はMg(ClO4)2に吸収させる。

(2) 試料の燃焼  試料は質量測定後,白金ボートに入れ燃焼管中に置く。試料は

 約850°Cで加熱分解して酸素で燃焼させ,これをCuOを詰めた固定炉(温度

 800°C)に通し完全燃焼させる。燃焼は約5分間行う。

(3) 生成物の吸収  燃焼ガスは,まず550°Cに熱したAgに通す。これは試料

 中のSとハロゲンを,Ag2SO4及びハロゲン化銀として除くためである。続い

 て水吸収管,窒素酸化物吸収管,二酸化炭素吸収管に通す。水吸収管ではアンヒ

 ドリンMg(ClO4)2,窒素酸化物吸収管ではMnO2,二酸化炭素吸収管ではアスカ

 ライトが通常用いられる。N2は外部にそのまま放出される。

(4) 質量測定  水吸収管,二酸化炭素吸収管はそれぞれ装置から取り外し,質

 量を測定し,反応前の質量と比較して,生じたH2OCO2を求める。この値

 から,もとの試料中のHCの割合を求める。

 

分子量測定

 主要な分子量測定法を以下に示す。低分子量物質では,分子量よりも他の物理

的・化学的性質で化合物を推定することが多いが,高分子では分子量を知ることが

基本的な量として重要である。

(1) 質量分析計による測定  分子をイオン化して質量分析計で測定する方法で,

 分子量数万の物質まで適用できる。この方法は測定時間も短く,試料も1mgあれ

ば可能である。多くは,化学式の決定も同時にできる。

(2) 蒸気密度の測定 気体を理想気体と仮定し,その質量,体積,圧力,温度を

測定して,状態方程式から求める方法である。

(3) 気体の流出速度測定  小穴より,一定圧で一定体積の気体を噴出させる

 とき,気体が流れ出るのに要した時間tは分子量Mの平方根に比例する。既知の

 気体の流出時間t 1M1と未知の気体のt2M2を比べて,M2を求める。

(4) 沸点上昇測定,凝固点降下測定  試量の質量,溶媒の質量,及び沸点上昇度

 または凝固点降下度を測定して,分子量を計算する方法である。

     

 

(5) 浸透圧法  試料の質量,溶液の体積,温度,浸透圧を測定して分子量を計算

する方法である。高分子に主に用いられる。

 

(6) 粘度測定  固有粘度[η]は,[η]KM aで表され,同じ高分子と溶媒では,

 Kaは定数となる。したがって,粘度の値から分子量が求められる。高分子に

 用いられる。

(7) 超遠心法  試料をセルに入れ超遠心機で高速回転させると,分子量が大きい

 ほど速く沈降する。したがって沈降速度から分子量を推定できる。この方法は生

 化学分野の高分子に主に用いられている。

(8) 光散乱法  高分子の希薄溶液は,分子量や分子の形によって,散乱される光

 の強度が異なる。その強度と分子量は一定の式(Zimmの提出した式)で関係づけ

 られ,この式から分子量が求められる。この方法では,分子の形や大きさを同時

 に測定できる利点がある。

 

構造の決定

 分子式が決まった物質は,種々の物理的性質や官能基による化学的性質をもとに,

その構造が決められる。ここでは,構造決定に関係する主な物理的性質を解説する。

吸収スペクトルについては別項で解説する。

(1)   ニトロ化合物やヨウ素化合物,キノン類,アゾ化合物などは着色してい

 る。一般に有機物で着色しているものには,共役二重結合や発色団を含む。した

 がって,着色物質であればこのような構造をまず考える。

(2) 臭い  臭いはあまり信頼性のおけるものではないが,一定の物質の存在

 を推定できる。特有の臭いをもつものには,フェノール類,芳香族炭化水素,

 アミン類,脂肪酸,カルボニル化合物,チオール(メルカプト)類などがある。

(3) 結晶形  有機物は,結晶をつくる方法によって外形の異なることもあるが,

 参考データとなる。

(4) 融点,沸点,分解点  融点・沸点は物質を固定する重要なデータである。

(5) 比重  炭化水素などでは,二重結合を有するものほど比重が一般に大きい。

(6) 溶解度  溶解度により物質の構造を直ちに推定することはできないが,一

 般に次のようなことがいわれている。「物質は似た構造をもつ溶媒に溶けやすい。

 対称的構造をもつ物質は溶解度が小さい。パラ化合物はオルトまたはメタ化合物

 と比較して溶けにくい。」

(7) 燃焼熱  燃焼熱が小さい物質は,不飽和結合が多く,生成熱が小さいと考え

 られる。

(8) 燃焼試験  芳香族は黒いすすの多い炎を出す。低級脂肪族は殆どすすを

 出さない。また,酸素の多い化合物の炎は青味がかった淡い色となる。ハロゲン

 があるとすすの多い炎となる。タンパク質では特有の臭いを出す。

  爆発するものとしては,ニトロ化合物などがある。

  金属塩のときは,燃焼後灰分を残す。灰分に塩酸を加えたとき発泡すれば,

 NaKのアルカリ金属があるものと推定できる。

 

吸収スペクトル

 試料にいろいろな波長の光を当てて,透過してくる光の強さを求めると,波長に

よって異なる割合で光が吸収されることがわかる。この吸光度を,波長毎にグラフ

で表したものが吸収スペクトルである。

 物質による光の吸収は,光のエネルギーに応じて,物質のエネルギー状態が変わ

ることにより起こる。光のエネルギーは,波長が短いほど大きく,吸収される光の

波長により,物質の分子構造を推定することができる。

 各波長の範囲により,スペクトルがどのような原因で生じるかを次に示す。

(1) X線領域  主に,原子の内殻にある電子が,外殻または外へ叩き出される場

 合に対応し,元素分析や原子の性質の研究に用いられる。

(2) 紫外線・可視光線領域  原子の外殻電子をより高い励起状態に上げる場合に対

 応する。分子の場合は,結合電子や非共有電子対を高エネルギー準位に押し上げ

 る過程に対応する。

(3) 赤外線領域  分子中の原子間の振動状態の変化に対応する。物質中のC=O

 O-HN-Hなどの基によって,それぞれ特有の吸収スペクトルが現れる。また,

 分子の形によっても特徴ある変化をするので,分子構造や性質についての知見

 を得ることができ,物質の化学研究に広く用いられている。

(4) マイクロ波領域  分子の回転エネルギーの準位の変化に対応する。これから

 分子の慣性モーメントを求めて,ひいては分子構造(原子間隔や原子価角など)

 精密に決定することができる。

 

質量スペクトル

 気体試料に電子線を当ててイオン(主に陽イオン)とし,これをまず電界で加速し

て,続いて磁界をかけてイオンの進行方向を曲げると,イオンの質量と電荷の違い

によって進行方向がいろいろ変わる。このときのイオンの分布を質量スペクトルと

いい,これを行う機器を質量分析計という。質量スペクトルには,はじめ導入した

分子から電子1個が取り除かれた陽イオン(親イオンという)と,それが分解して生

じた小さなイオンが出てくるのが普通である。これにより,分子量の決定ができ

て,また,混合物試料との分析も可能である。

 

核磁気共鳴(NMR)

 磁気モーメントをもつ原子核(1H13Cなど)を,磁場中に置くとゼーマン効果に

よりいくつかのエネルギー状態が生じる。このエネルギー差に相当する周波数の

電磁波をあてると,分裂した核スピン状態間の遷移に基づくエネルギー吸収が起こ

る。その共鳴吸収位置のちがいで色々な化合物の定性ができ,吸収強度から定量も

できる。

 

◆結果の分析

 定量的実験の測定結果を得たとき,ある量の変化に応じて他の量がどう変化した

かの考察は,数値を見るだけでだいたいの傾向はわかる。しかし,それらの間の関

(仮に変数xyとの間の関係とする)を正しく知るには,測定結果をグラフ化し

て考察するのが最もよい。そして,グラフが直線関係になったとき,一般にxy

の関係を法則化できる。したがって,必要な作業はxのどのような量(2乗,平

方根,逆数)yのどういう量(2乗,平方根,逆数など)

が互いに直線の関係になるかをみることになる。

 教科書p.262264では,ボイルの法則の検証実験を例に,反比例の関係を見い

出す作業のプロセスが述べられている。

1.グラフを描くときの注意 

教科書p.263の図9は,圧力pの変化に伴う体積

vの変化を示したデータである。

 

表 空気の体積と圧力

vcm3

p〔×103hPa

48.0

1.01

40.0

1.23

32.0

1.54

24.0

2.04

20.0

2.46

16.0

3.04

12.0

4.09

 

 

 表の結果をグラフに描くとき,図(i)のように折れ線のグラフに描いてはいけな

い。図(ii)のように,全体の測定点を見通して滑らかに連続した曲線のグラフに描く。

ある測定点と次の測定点の間は,測定はしていないが全体的な変化の流れの中にあ

るのだから,全体的な変化に沿った連続的な曲線として示すのが妥当である。折れ

線グラフにするということは,測定点と次の測定点の間が直線の関係であると示す

ことになり,これは誤りである。

 ただし,測定点と次の測定点の間が十分小さい場合,実際は曲線の関係であって

も便宜上直線の関係と近似的にみなして考察することはある。すなわち,二つの測

定点の中間点の値は,二つの測定点の値の平均値とみなす考え方である。これは,

グラフの考察において実際上行う方法であり,グラフを描くこととは別である。グ

ラフの変化は,全体的な変化の一部として描かなければならない。

 

2.法則性への誘導

 図(ii)のグラフは,pの増大とともにvが減少することを表しているが,これを見

pvとが互いに反比例の関係であるとはまだ断定できない。図(ii)のグラフの形

状は,たしかに双曲線の一部のように見えるが,円の一部か,だ円の一部か,ある

いは多次関数のグラフの一部かも知れないのである。したがって,pvとの関係

がどの曲線の一部を示しているかを解明しなければならないが,そのためにはp

vをそれぞれ含む量の間の比例関係(すなわち,原点を通る直線の関係)を見出すの

が最も速く,また確かである。

教科書p.264の表およびそのグラフ図10は, v1/pが正比例することを示

しており,ここで初めて「温度が一定のもとでは,一定量の気体のvpとは反比

例する」というボイルの法則が検証されたことになる。もちろん,1/vpとの直

線関係をみても同一の結論に達する。

 変数xyとの関係が複雑な場合は,xを含む量とyを含む量との間の関係を直

線のグラフとして見出すことは容易ではない。しかし,これが解明できなければ法

則化もできないことになるので,十分時間をかけて直線関係を求めていかねばなら

ない。

 次に,生徒用練習問題の一例を示す。

 

<練習問題>

 物質ABが反応してCを生じる変化の反応速度を考える。この反応の化学反応

式は  2AB→3C と表される。

 水溶液Aと水溶液Bとを混合したときから10分間経過する間の平均反応速度(

速度)v0mol/l・分〕を調べる実験を行い,次の表(a)(b)の結果を得た。表(a)では,

混合直後のBの濃度は常に0.010 mol/lで一定になるようにし,Aの濃度をいろい

ろ変えて(実験番号15)初速度を求めた。表(b)では,Aの初濃度が0.010 mol/l

になるようにしてBの濃度を変えた場合(実験番号610)の初速度を求めたもので

ある。

 この反応の反応速度式は,一般にv0k[A]p[B]qの形で示される。

 

(a)

 

()

実験

番号

[A]

[B]

v0mol/l・分〕

 

実験

番号

[A]

[B]

v0mol/l・分〕

1

0.010

0.010

2.0×107

 

6

0.010

0.010

2.0×107

2

0.0080

0.010

1.3×107

 

7

0.010

0.0080

1.8×107

3

0.0060

0.010

7.2×108

 

8

0.010

0.0060

1.5×107

4

0.0040

0.010

3.2×108

 

9

0.010

0.0040

1.3×107

5

0.0020

0.010

8.0×109

 

10

0.010

0.0020

8.9×108

 

(a)(b)の結果をもとに,上記反応速度式のpqを求めよ。また,速度定数k

の値を単位をつけて求めよ。

 

解答例

 表(a)の結果をもとに,[A]v0の関係,また,表(b)の結果をもとに,[B]v0

の関係をそれぞれグラフにすると,次の図(a),図(b)となる。

 

 

(a)(b)のいずれも直線の関係ではない。グラフの形からは,[A]2の二

次曲線に近いことが推定できる。そこで,[A]2v0の関係を表(a)′に,v0

の関係を表(b)′に示し,それぞれのグラフ図(a)′と図(b)′をつくってみる。

 

(a)′ 

 

(b)′

実験

番号

[A]2

v0

 

 

実験

番号

v0

1

1.0×104

2.0×107

 

6

1.0×101

2.0×107

2

6.4×105

1.3×107

 

7

8.9×102

1.8×107

3

3.6×105

7.2×108

 

8

7.7×102

1.5×107

4

1.6×105

3.2×108

 

9

6.3×102

1.3×107

5

4.0×106

8.0×109

 

10

4.5×102

8.9×108

 

 

 以上の結果より,初速度v0v0k[A] 2[B]1/2になることがわかる。

 実験番号1あるいは6のデータを用いて

  2.0×107mol/l・分〕=k×(1.0×102)2mol2/l 2〕×(1.0×102)1/2mol1/2/l 1/2

   ∴ k2.0×102l 3/2/ mol3/2・分〕

 

◆帰納と演繹

<帰納> 推理および思考の手続きの一つ。個々の具体的事実から一般的な命題な

いし法則を導き出すこと。特殊な事実から一般的結論を導き出す推理。例えば,

「地球・水星・火星などは球形である」,「地球・水星・火星などは惑星である」とい

う二つの事実から,「ゆえにすべての惑星は球形である」という三段論法の形式を

とる。この場合,すべての惑星が枚挙されていればまぎれのない結論として導き出

されるが,帰納的推理では通常比較的少数の事例しかとらないから,導かれる結論

には多少の不確実さは残る。しかし,事例を慎重に選べば,相当確実な結論を導き

出すことができる。

<演繹> 意義を推し拡げて説明すること。経験に頼らず,論理の規則に従ってす

でに提出された法則から別の必然的な結論を導き出す思考の手続き。三段論法はそ

の典型である。         (以上,広辞苑から抜すい,部分的に改め)

 

 

◆レポート

 実験を行い,考察を加えた研究の結果は報告・発表してこそ意味がある。空論

でなく,実証的にどのようなことがわかったかを,他の人に理解してもらうには平

易で説得力のあるレポートが必要である。

 自然科学のレポートは長々しいストーリーよりも箇条書きにまとめるほうが理解

しやすい。その見本が教科書p.266に示してある。項目は必要に応じて変えても

よい。

 自然科学のレポートを書き慣れていない生徒は,内容よりも形式を先行させがち

である。課題研究の本旨は,自分が考え判断し,時には創意を加えて探究活動を体

験することであるので,なるべくその趣旨に従ったレポートを求めたい。したがっ

て,特に重視するのは(2)実験の計画と方法,(4)実験の考察,(5)結論であることを

予め告げておいてもよいと思われる。よって,評価もそのポイントにおいてなされ

ることになろう。

<実験と失敗> あるテーマに従って探究を進めたとき,常に目ざましい結果が得

られるとは限らない。むしろ,失敗と評価される場合のほうが多い。報告書には,

どのような経過で目的の探究が期待通りの結果にならなかったかを率直に書くよう

に指導したい。失敗の中には,新たな探究のテーマや解決の鍵がかくされているの

もまた事実である。失敗こそが,いわば宝の山ともいえるのである。

 

◆コンピュータの利用

<インターネット>

 1960年代末から米国国防総省が中心となり計画・開発してきた情報ネットワー

ク。規模がしだいに拡大し,90年代には世界規模のネットワークになった。大学・

研究所や企業等のホームページから,さまざまな情報が検索できる。

<検索エンジン>

 インターネットで,キーワードから必要な情報を検索するのに便利なソフトウ

エアが“検索エンジン”である。“Yahoo”,“goo”“google”などがある。

<表計算ソフトウエア>

 実験データの計算処理やグラフ作成等に威力を発揮するのが,表計算ソフトで

ある。実験データを指示に従って入力すると,様々な形でグラフ化してくれる。

また,最小二乗法による近似直線の作成など統計的な処理を行うこともできる。

<化学構造式作成ソフトウエア>

 一般のワードプロセッサ(ワープロ)ソフトでは,分子式・組成式はともかく構

造式を表現するのはお手上げである。このため,構造式作成専用のソフトウエア

が市販されており,大学・研究機関等では一般に使用されている。

<ディジタルカメラ・ビデオ>

ディジタルカメラの映像は,簡単にワープロソフト等で作成したレポートに取り

込むことができる。ディジタルビデオの映像も,プレゼンテーションソフトやホ

ームページなどに取り込むことが容易である。

<プレゼンテーションソフト>

 ワープロソフトの感覚で,OHPシートのような“スライド”を作成することが

できる。ディジタルデータの写真や動画を,簡単に取り込めるのも利点である。

スライドの順番やアニメーションなどあらかじめ決めておくと,発表にあわせて

Enter”キーを操作するのみで,画面を映し出していくことができる。パソコン

の画面を大きく映すためには,プロジェクターなどの機器が必要である。

 

 

課題研究

(1) コンピュータの利用 

 例えば,温度計のかわりに温度センサーを用いると,測定データを直接コンピ

 ュータに取り込むことができる。コンピュータによる自動計測では,測定と同時

 にグラフ化することができ,測定誤差も少ない。温度測定以外に,質量,圧力

 電圧,電流などの測定にも,それぞれの測定に応じたセンサーが市販されている。

 

 (2) コンピュータグラフィックスで見た高分子化合物 コンピュータグラフィッ

クスとは,コンピュータを使った図形処理技術や装置,または,その図形のこと

 である。拡大・縮小・回転などができ,デザイン,設計,各種のシミュレーショ

 ンなどに用いられる。

  高分子化合物において,その分子構造を知ることは大変重要である。化学にお

 いて量子力学が導入されると,実験的にも理論的にも分子構造の研究が進んだ。

 分子構造は,幾何学的には分子の形・大きさ,エネルギー的には化学結合の力お

 よび結合エネルギー,内部構造としては分子内電子の分布状態により記載される。

  初期の研究は半定量的なものであったが,最近のコンピュータの発達により計

算速度が大幅に向上し実験的研究と相まって,分子構造の本質解明のための非経

験的分子軌道法による理論的研究が主流になっている。

 

 

 








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