トップ>化学II>第3部 生活と物質>第3章 材料の化学>第4節 セラミックス
第4節 セラミックス
►ケイ素
天然には単体の状態で産出しないが,化合物として地殻中に酸素に次いで多く存
在している。無定形のものは,ケイ砂をMgやAlで還元しても得られる,褐色の
粉末状である。結晶は,四塩化ケイ素をNaで還元すると得られ,濃暗灰色で,板
状の八面体である。
SiCl4+4Na→Si+4NaCl
無定形のケイ素は,融点が1410℃,沸点が2355℃である。結晶形のものの融
点や沸点もほぼ同じで,硬度は7,粉砕されやすく,化学作用は無定形のものに比
べてやや不活性である。半導体の性質を示す。
フッ素とは室温で激しく化合し,塩素とは430℃,臭素とは500℃,酸素とは
400℃,窒素とは1000℃で化合物をつくる。王水には徐々に酸化されて二酸化ケ
イ素となる。フッ化水素酸と硝酸の混合物とも反応するが,他の酸には侵されない。
アルカリ溶液とは反応して水素を発生する。
Si+2NaOH+H20→Na2SiO3+2H2
高純度の単体(結晶)は半導体素子として,アモルファス単体は太陽電池などに使
われている。
►二酸化ケイ素
無水ケイ酸とかシリカといわれ,天然には石英,水晶,玉髄,メノウ,ヒウチ石,
ケイ砂,鱗ケイ石,クリストバル石など,結晶状あるいは非結晶状で存在する。純
粋な二酸化ケイ素は無色透明だが,不純物を含むものは不透明だったり,着色して
いたりする。融解したものを冷やすと石英ガラスとなる。
二酸化ケイ素は,SiO4の正四面体が結晶構造の単位となり,Oを共有して空間
に広がった三次元的なネットワーク構造をもつ。その四面体の配列のしかたによっ
て,石英,鱗ケイ石,クリストバル石などとなり,配列が不規則であると石英ガラ
スになる。
|
SiO2の結晶 |
|||||
|
名称 |
無定形 |
クリストバル石 |
水晶(石英) |
鱗ケイ石 |
オパール(水和物) |
|
融点〔℃〕 |
1726 |
1713 |
1550 |
1703 |
1600以上 |
|
沸点〔℃〕 |
2230 |
2950 |
2950 |
2950 |
|
|
結晶系 |
非晶 |
立方,正方 |
六方,三方 |
六方,斜方 |
非晶 |
|
比重 |
2.20 |
2.32 |
2.65 |
2.26 |
2.1〜2.3 |
二酸化ケイ素は水に溶けにくく,アルカリや炭酸塩で融解すると,三次元的な
ネットワークが小さい分子やイオンとなって溶けやすくなる。
SiO2+Na2CO3→Na2SiO3+CO2
また,フッ化水素HFと反応し水溶性の気体である四フッ化ケイ素SiF4となる。
フッ化水素酸(フッ化水素水溶液)を用いるとヘキサフルオロケイ酸H2SiF6となる。
SiO2+4HF→SiF4+2H2O,SiO2+6HF→H2SiF6+2H2O
◆ケイ酸ナトリウム
ケイ砂を水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムと高温で融解すると,ケイ酸ナ
トリウムとなる。この濃溶液は,無色透明であるが粘稠(ねんちょう)で,乾燥すると
ガラス状になるため水ガラスという。人造石,ガラス,陶磁器の接着剤,耐火塗
料などに用いられている。
SiO2+2NaOH→Na2SiO3+H2O
SiO2+Na2CO3→Na2SiO3+CO2
ケイ酸ナトリウムは,[SiO4]の基本構造が繰り返し一列に結合し,繊維状の細長
い一次元的鎖状構造のイオン[SiO32−]nとなり,これにナトリウムイオンが結合し
たものである。
◆シリカゲル
吸着力の強いケイ酸のゲルで,成分はSiO2・nH2Oで示される。多孔性で,吸着
力は含まれている水の量による。高温にして脱水したものほど吸着力が大きい。普
通,水ガラスのアルカリ性を酸で中和してゲル化し,それを脱水してつくる。乾燥
剤・脱色剤などに広く用いられている。
►炭化ケイ素
炭化ケイ素SiCはダイヤモンドの置換型構造(SiとCとが隣り合っている)をと
る。すなわち,ダイヤモンドの炭素が1つおきにケイ素と入れ替っている構造であ
る。電気炉内で,過剰のコークスとケイ砂との混合物を2000℃に強熱してつくる。
カーボランダム(商品名)ともいわれ,2700℃で分解する。硬度が大きいので,研磨
剤や砥石に,また,高温(1000℃程度)でも不活性なので耐火物,反応容器としての
用途もある。
►ケイ酸塩化合物
ケイ酸塩化合物は,岩石の主成分として広く分布している。その構造はSiO4の
正四面体の結合のしかたで,次のように大別される。
(1) 一次元的鎖状構造のもの SiO4の基本構造がO原子1個を共有して,繰り返
し1列に結合し,鎖状の細長いイオン[SiO32−]nとなったもの。また,鎖2本が
結合した形のものもある。これらのイオン間に種々の陽イオンが配列する。ある
種のアスベストが繊維状になるのは,このような構造をとるためである。
(2) 二次元的平面構造のもの [SiO4]構造が,平面状に結合したイオン[Si2052−]n
になり,これがさらに種々の陽イオンをはさんで層状に結合したケイ酸塩で,雲
母やカッ石など劈(へき)開性をもった鉱物などがこれにあたる。粘土もこの構造をも
ち,水に濡れると粘土がすべりやすくなるのはこのためである。
(3) 三次元的網目状構造のもの [SiO4]構造が,すべて共有結合で,三次元の網目
状の巨大分子をつくるとき,その組成式はSiO2となり,きわめて融点の高い結
晶となる。SiO2の組成をもつ二酸化ケイ素は,天然には水晶または石英として
産出する。ある種のアスベストは,平面構造のケイ酸塩が強く湾曲し,パイプ状
となって組織をつくっている。
水晶または石英を1600℃以上に熱して融解し,これを冷やすと,一定の融点を
もたない石英ガラスとなる。石英ガラスを熱すると,歪みをもった切れやすい部分
からしだいに切れていき,だんだんと軟らかさを増す。
一般に用いられるガラスは,SiO2にNa2Oが加わった成分であり,SiO2の三次元
的網目構造が部分的に切断され,SiO2+x2x−という組成のネットワークになっている
ため,石英ガラスよりもはるかに低い温度で軟化する。
►ケイ酸塩工業(窯素)
主要構成物が無機質,非金属からなり,加熱過程を経てつくられるとき,これを
窯業という。また,主要原料として岩石や土壌類を用い,これらはほとんどSiO2
やAl2O3を伴うケイ酸塩やアルミノケイ酸塩からなっているので,窯業をケイ酸塩
工業ともいう。窯業製品は,不燃性,耐熱性,耐候性,耐化学薬品性,電気絶縁性
などに優れ,これらの性質を生かしてさまざまな方面で使用されている。窯業はそ
の起源を1万年前の土器までさかのぼれる古い工業であるが,最近では人工原料を
使用した新しいセラミックス類が製造されている。
(1) 陶磁器 陶土という良質の粘土を水で練って形をつくり,陰干しの後,窯
の中で焼いて素焼きをつくり,これに上薬を塗って,もう一度焼いてつくる。陶
器の素地は多孔質・吸水性であり,叩くと濁った音を出す。磁器の素地はち密で
吸水性がなく,水を通さない。叩くと澄んだ音を出す。上薬(釉薬)は,石英・長
石・陶土・CaCO3などを水に混ぜ,かゆ状にしたもので, 陶器や磁器の素焼き
にこれを塗って1200℃くらいで焼くと,上薬は融けてガラス状となり,美しい
表面をつくるとともに水を通さなくする。
なお,土器は,不純物を含む有色の粘土を比較的低温で焼成してつくったもの
である。素地は多孔質で吸水性が大きい。屋根瓦,土管,植木鉢などで土器が使
われている。陶器は比較的焼成温度が高く,磁器は一般に高温で焼成する。
(2) 耐火物 一般に1500℃以上の耐火度をもつ物質を耐火物という。主に溶鉱
炉などの耐火れんがに使用されている。用途により酸性,中性,塩基性の耐火物
に分けられ,酸性ではSiO2,中性ではAl2O3,塩基性ではMgOやCaOを主成分と
するものが用いられている。
(3) ガラス ケイ砂,石灰岩,炭酸ナトリウムなどの粉末の混合物を高温で融解
し,一定の形にして冷やしたもので,主成分はCaとNaのケイ酸塩である。代表
的なガラスの組成と用途を下表に示す。ガラスは水にいくらか溶ける。温度の高
いときや塩基性の水溶液には長い年月の間にかなり侵される。
窓ガラスには鉄が含まれているので,青緑色に着色している。色ガラスは金属
のイオンやコロイドを着色剤として用いたものである。Co2+で青色,Ni2+で褐
色,Cr3+で緑色,Mn3+で赤紫になる。またコロイドでは,CdSが黄色,Auが金
赤,紫,青など,Agが黄色,Cuが銅赤となる。
|
代表的なガラスの組成と用途 |
|||||||
|
ガラスの種類 |
組 成〔%〕 |
用 途 |
|||||
|
SiO2 |
CaO |
Na2O |
PbO |
K2O |
B2O3 |
||
|
ソーダガラス |
67〜75 |
5〜15 |
10〜20 |
― |
― |
― |
一般ガラス器具用 |
|
鉛ガラス |
50〜70 |
― |
2〜15 |
5〜35 |
4〜10 |
― |
光学用 |
|
ホウケイ酸ガラス |
65〜75 |
― |
6〜14 |
― |
1〜6 |
5〜12 |
理化器具用 |
(4) ほうろう ほうろうとは,金属表面にほうろう薬(ガラス層)を焼き付け
たもので,金属の機械的強さとガラスの耐腐食性を兼ね備えたものである。家
庭では台所の調理台や浴槽などで,そのほか耐熱部品などに用いられている。
七宝焼などもほうろうに含まれる。
ほうろう薬は,ケイ石,長石,炭酸ナトリウム,硝酸ナトリウム,ホウ砂
などを主成分とし,鉄ほうろうでは800〜900℃,アルミニウムほうろうでは
520〜550℃で焼成する。
(5) セメント 石灰岩3〜4と粘土1の比の混合物を細砕して混ぜ,回転炉で高
温に熱し,出てくる小さい塊(クリンカー)に少量のCaSO4を加えて細粉にしたもの
である。水を加えてよく練り,放置すると結晶化して硬い固体となる。
このセメントは,ポルトランドセメントといわれ,最も広く用いられている。そ
のほか,硬化の速さや強度など,その目的に応じていろいろなセメントがつくら
れている。
セメントは水と反応すると,不溶性水和物ができるため硬化すると考えられて
いる。