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第3節 金 属
►銀
天然に遊離銀として存在することもあるが,多くは輝銀鉱Ag2S,輝安銅銀鉱(主
成分CuS・Ag2S)などとして産出する。金属の中で最も熱や電気を伝えやすく,展
性・延性も大きい。化学的に安定で,空気中では酸化されにくい。酸化作用のあ
る濃硝酸や熱濃硫酸には溶ける。
Ag+2HNO3→AgNO3+H2O+NO2
2Ag+2H2SO4→Ag2SO4+2H2O+SO2
硫化水素H2Sと反応すると,Ag2Sを生じて黒化する。
銀は貴金属であり,装身具や銀器に用いられる他,金との合金などにも用いら
れる。また化合物として,写真感光剤に利用される。
►鉄
単体は強磁性体で,細かい粉末は水素を吸着する。酸では,2価の陽イオンにな
り,錯イオンをつくりやすい。鉄は2価,3価とも安定だが,2価のものは3価に移
りやすい。鉄,コバルト,ニッケルの3元素は,よく似ているが,コバルトとニッ
ケルは単塩では2価が安定であるが,錯塩では3価が安定となる。
鉄の単体は,鉄の塩類を電解するか,または純粋な酸化鉄(III)Fe2O3,シュウ酸鉄
(II)FeC2O4を水素気流中で熱すると純鉄が得られる。赤熱した鉄は,水蒸気を分解し
て水素を生じる。
3Fe+4H2O→Fe3O4+H2
鉄は塩酸,硫酸に溶けるが,濃硝酸には不動態を生じ溶けない。この不動態になっ
た鉄片を硫酸銅溶液中に入れてもその表面に銅が析出しない。鉄は乾いた空気には侵
されないが,水分と二酸化炭素を含む空気中では速やかに酸化される。
◆鉄の単体の製造
鉄は,溶鉱炉に鉄鉱石(Fe2O3,Fe3O4など),コークス,石灰石などの原料を入れ,
約2000℃まで加熱して製造する。このとき,加熱を効果的に行うために石油を加
えたり,酸素を吹き込んだりすることもある。溶鉱炉内での反応は複雑だが,主に
次のような反応が起こる。
C+O2→CO2 CaCO3→CaO+CO2 CO2+C→2CO
Fe2O3+3CO→2Fe+3CO2 Fe3O4+4CO→3Fe+4CO2
このように,溶鉱炉内では鉄鉱石に含まれる鉄の酸化物が一酸化炭素によって還元
されて鉄になる。石灰石は,鉄鉱石に含まれるSiO2などを除くために加えられる。
SiO2+CaO→CaSiO3(スラグ)
溶鉱炉から出る鉄は,炭素などを3〜5%含み銑鉄という。銑鉄は硬くてもろい性
質をもつ。銑鉄はさらに転炉へ移され,炭素などを部分的に除いて鋼鉄とする。精
密な圧延技術によりいろんな形に成型される。
►電解工業
電気分解を利用して物質を製造したり,材料を加工したりする工業を電気分解工
業という。物質製造で大規模に行われているのは,アルミニウム製錬,食塩電解,
亜鉛製錬,銅精製などである。そのほか,フッ素,カルシウム,ナトリウム,リチ
ウム,塩素酸ナトリウムなども,電解法で製造されている。
技術的には,他の製造法でも製造できるが,製品純度などの問題で,電解法で製
造しているものもある。たとえば,二酸化マンガン,クロムなどである。
そのほか,めっき,電着塗装なども行われている。
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電気分解による製造物質 |
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分 野 |
製 造 物 質 |
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水電解 |
H2 |
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食塩電解 |
NaOH,Cl2,H2 |
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無機電解酸化 |
NaClO3,KMnO4,MnO2,PbO2,NaClO4 |
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金属電解精製 |
Cu,Pb,Au,Ag,Ni,Fe,Bi,In,Sn |
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金属電解採取 |
Zn,Cr,Mn,Ni,Co,Ga,Te,Cd,Tl |
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融解塩電解 |
F2,Al,Mg,Ca,Na |
►アルミニウムの製造
アルミニウムは地殻に非常に多く含まれているが,すべて化合物となっている。
ケイ素と化合した長石のように,複雑なケイ酸塩をつくり岩石や土壌を形成してい
る。これらの量は多いが,それからアルミニウムを取り出すことは困難である。ア
ルミニウム製造に用いる主な原鉱は,アルミナを主成分とするボーキサイトである。
この製造方法を工業化することに成功したのは,1886年にアメリカのホールHall(1863
〜1914年)とフランスのエルーHeroult(1863〜1913年)が独立に発見した。
それまでは,アルミナは融点が高く,炭素で還元しにくいため,塩化アルミニウ
ムをナトリウムやカリウムで還元してつくっていた。
AlCl3+3Na→Al+3NaCl
しかし,ホールたちが氷晶石Na3AIF6を約1000℃に熱してとかし,これに
アルミナを加えて融解させ,電解してアルミニウムを製造するという方法を考え出
してから,急にアルミニウムの製造量が増加した。
アルミナの電解を行うと,電解槽の内壁が陰極となり,Al3+が放電して,アルミ
ニウムが析出して底にたまる。陽極ではO2−が炭素と反応して一酸化炭素や二酸化
炭素を生じて,陽極を消耗する。したがって,アルミナの電解反応は次のようにな
る。
(陰極)Al3++3e−→Al
(陽極)2O2−→O2+4e−,O2+C→CO2,CO2+C→2CO
(全体)2Al2O3+3C→4Al+3CO2,Al2O3+3C→2Al+3CO
電解に用いるAl2O3は純粋でないと上の反応がうまく進行しない。それにはボー
キサイトを加圧下で水酸化ナトリウム水溶液と熱する。すると,酸化鉄などの不純
物は溶けないで残る。溶液となったテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムを加水
分解すると水酸化アルミニウムが沈殿する。これを熱して純粋な酸化アルミニウム
を得る。したがって,アルミニウムの製錬は2段階に区別でき,酸化アルミニウム
を得る方法をバイヤーBayer法,アルミナの電解法をホール・エルー法という。
最近,電解にかわる方法として溶鉱炉法が開発され,注目されている。これはボ
ーキサイトから直接アルミニウムを取り出す方法であり,電力不要の点から今後の
工業化に期待がよせられている。
►融解塩電解
化合物を融解して電解する方法で,溶融塩電解ともいう。アルミニウム製錬が代
表例で,イオン化傾向の大きい金属などの製造法である。
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融解塩電解 |
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生成物 |
陰極 |
陽極 |
電 解 液 |
温度〔℃〕 |
電圧〔V〕 |
副生物 |
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F2 |
Ni,C |
Fe |
HF,KF |
80〜108 |
8〜12 |
H2 |
|
AI |
C |
C |
Al2O3,Na3AlF6 |
960〜980 |
4.04〜4.20 |
CO2 |
|
Mg |
C |
Fe |
MgCl2,CaCl2,KCl,NaCl |
660〜720 |
5〜10 |
Cl2 |
|
Na |
C |
Fe |
NaCl,CaCl2 |
590 |
6.9 |
Cl2 |
|
Li |
C |
Fe |
LiCl,KCl |
400〜420 |
8〜9 |
Cl2 |
|
Ca |
C |
Fe |
CaCl2 |
780〜800 |
17〜30 |
Cl2 |
►アルミニウム
銀白色の軟らかい軽金属(密度2.7g/cm3)で,展性・延性に富む。地殻の構成成
分として,酸素,ケイ素に次いで第3位であり,金属としては第1位を占める。主
要鉱物には長石,雲母,氷晶石などがあり,酸化物鉱物としてコランダム,サファ
イア,ルビーなどがあげられ,宝石として珍重されるものも多い。鉱石としてはボ
ーキサイト,カオリンが重要で,工業的には氷晶石とアルミナの溶融塩電解で製造
する。融点660.4℃,電気伝導性は銀,銅に次いでよい。
空気中に放置すると,酸化物の被膜を生じ光沢を失うが,内部まで侵されにくい。
酸には溶けてそれぞれの塩をつくるが,濃硝酸には不動態をつくるので比較的侵さ
れにくい。
アルマイトは,工業的にAlの表面にAl2O3の耐錆性被膜をつくったものの商品名
である。アルミニウム板を陽極とし,シュウ酸や硫酸などの溶液の中で電解すると,
表面に酸化物の被膜ができる。この被膜は硬くて丈夫であり,電気絶縁性がよい。こ
れをさらに過熱水蒸気で処理して緻密にする。電解に際して,直流のみでなく交流を
併用すると,被膜の性能がいっそうよくなる。
Alを強熱すると,白光を放って燃え,多量の熱を発生する。
4Al+3O2→2Al2O3+3350.6kJ
この性質を利用して,炭素で還元しにくい金属酸化物をAl粉末と熱して還元する。
これをGoldschmidt法といい,Cr,Mn,Co,Vなどの冶金に用いられる。また,Fe2O3
粉末とAl粉末の混合物をアルミノテルミットという。点火すると2500℃の高温を生
ずるので,レールの修理などに使用された。
Alは,工業用及び家庭用の器具の製作,銅の代わりに電線,電気器具にも用いられ
る。Al粉は塗料,火薬,花火に,Al箔はスズ箔の代用にする。また,アルミニウムは
いろいろな合金の原料として用いられる。
アルミ銅は,Al10%,Cu90%の合金,ジュラルミンはAlにCu3〜4.5%,Mg0.3〜1
%,Mn0.5〜1%を加えた合金である。
◆アルミニウムの再利用
アルミニウムは多量の電力を用いてつくられており,「電気の缶詰」といわれる
ほどである。回収して再利用すると,原料からアルミニウムをつくるときに比べて
わずか3%程のコストしかかからない。
►酸化アルミニウム
アルミナまたはバン土ともいう。天然には鋼玉として産する。微量のCr2O3を含む
ものは紅色を呈し,紅玉(ルビー)と呼ばれている。TiO2を含むものは青色で青玉(サフ
ァイア)という。色の美しくないものは金剛砂といい,研磨剤として用いる。Al(OH)3
を電気炉内で熱し,半融解したものをアランダムという。耐火性が強く,硬度が高い
ので,るつぼその他の耐火器具及び研磨剤に用いられる。
参考 アルミニウム化合物
アルミニウム化合物の中で,生産量(1998年)の多いのは硫酸アルミニウム約95.05
万t,ポリ塩化アルミニウム約58.49万tなどである。
Al2(SO4)3は硫酸バン土ともよばれ,製紙のサイジング(インキの滲み止め加工),染
色の媒染剤,水の浄化剤,皮なめしなどに利用されている。約50%が製紙用,約35%
が水処理用である。AlK(SO4)2 · 12H2O(ミョウバン)も同様の目的で利用されている。
ポリ塩化アルミニウムとは[Al2(OH)nCl6−n]m(n≒3,m≦10)の組成の塩基性塩
化アルミニウムの液で,浄水剤として用いられている。多核錯イオンの機造をもつた
め,Al2(SO4)3より凝集力が大きく,また中和剤や助剤が不要のため最近需要量が増加
しつつある。
無水塩化アルミニウムAlCl3は,フリーデル-クラフツ反応(アルキル化,アシ
ル化),クラッキング反応などに触媒として用いられる。結晶は180℃で昇華し
Al2Cl6の分子になる。880℃ではAlCl3分子になり,440〜800℃では2種類の分子
が共存する。
►銅
銅,銀,金の3元素を銅族元素という。どれも最外殻のs電子1個を失って1
価の陽イオンになる。しかし内部のd電子を失うこともあり,銅はCu2+,金は
Au3+になりやすく,むしろこのほうが安定である。どれも錯イオンをつくりやす
く,[Cu(NH3)4]2+,[Ag(CN)2]