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第3節 脂 質
►油脂
脂肪酸とグリセリンのエステル,すなわちトリグリセリドの構造をもつ物質で,
天然の生物界に広く存在し,生物の主要成分となっている。天然油脂は,その出所
から植物油脂と動物油脂に,室温での状態から液体のものを脂肪油(または脂油),
固体のものを脂肪と分類される。
天然油脂中に存在する脂肪酸には,炭素原子数4個の酪酸から,24個のリグノ
セリン酸に至る飽和脂肪酸と,各種の不飽和脂肪酸がある。飽和脂肪酸では,C16
のパルミチン酸とC18のステアリン酸が大部分を占めている。不飽和脂肪酸には
C18のものが多く,オレイン酸C17H33COOH,リノール酸C17H31COOH,リノレン
酸C17H29COOHなどがある。その他の不飽和脂肪酸では,魚油中のイワシ酸
C21H33COOH,ひまし油中のリシノール酸C17H33OCOOH,きり油中のエレオステアリン酸
C17H29COOHなどがある。
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オレイン酸 リノール酸 リノレン酸 イワシ酸 リシノール酸 エレオステアリン酸 |
CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH CH3(CH2)4CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH CH3(CH2CH=CH)3(CH2)7COOH CH3CH2(CH2CH=CH)3{(CH2)2CH=CH}2(CH2)2COOH CH3(CH2)5CH(OH)CH2CH=CH(CH2)7COOH CH3(CH2)3(CH=CH)3(CH2)7COOH |
天然油脂には,グリセリドのほかに,少量の遊離脂肪酸,複合脂質,ステリン類,
ビタミン類,炭化水素,色素などが含まれている。
参考 油脂の代謝
油脂のトリグリセリドは,小腸内で酵素リパーゼによって脂肪酸とグリセリンに
加水分解される。そして,胆汁酸塩,脂肪酸,ジグリセリド,モノグリセリドなど
の混合物ができ,これらが未分解の油脂の乳化促進剤として働き,乳化された油脂
は腸壁から吸収される。
体内の脂肪の代謝では,まず脂肪酸とグリセリンに加水分解される。グリセリン
は,トリオースリン酸(ホスホジヒドロキシアセトン,3-ホスホグリセリンアルデ
ヒド)を経てピルビン酸になり,TCA回路(クエン酸回路)に入っていく。
脂肪酸は,いわゆるβ酸化によって,-COOH基に対してβの位置の炭素原子の
ところが切れ,アセチル補酵素が順次に生成し,TCA回路に入って代謝され,最
後には二酸化炭素と水になる。炭水化物,脂肪,アミノ酸の相互移行も,TCA回
路がなかだちとなって行われる。
►硬化油
不飽和脂肪酸の脂肪油に,還元ニッケルなどを触媒として,水素を反応させ,固
体状の脂肪に変えたものをいう。その主成分は硬化度により異なるが,普通,飽和
脂肪酸やイソオレイン酸のグリセリドである。硬化油の融点は,その不飽和度に関
係する。これらは,食品,セッケンなどに用いられる。また,硬化条件により選択
的に水素と反応させると,イソオレイン酸に富む半硬化油が得られ,特に大豆油,
綿実油,落花生油のそれはマーガリン原料としてすぐれている。
►乾性油と不乾性油
植物油は,その乾燥性の強弱により,一般に乾性油,半乾性油,不乾性油に分け
られる。乾燥性は,油脂の脂肪酸中に二重結合を多く含むほど強くなる。
(1) 乾性油 ヨウ素価130以上の植物油をいう。薄膜にして空気中に放置すると,
比較的短時間に固化乾燥する。塗料として利用され,亜麻仁(あまに)油,荏油(えの),
桐(きり)油などがこれに含まれる。
(2) 半乾性油 ヨウ素価100〜130の植物油をいう。やや乾燥性がある。食用,セ
ッケン製造などに用いられ,胡麻油,菜種油,綿実油,大豆油などがこれに含
まれる。
(3) 不乾性油 ヨウ素価100以下の植物油をいう。乾燥性が弱く,固化しない。食
用,セッケン,化粧品などの製造に用いられる。椿油,オリブ油,蓖麻子(ひまし)油
などがこれに含まれる。