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2節 気体の状態方程式

 

理想気体 

 気体の状態方程式pvnRTが厳密に適用できる気体を理想気体という。理想気

体の特徴は,どのような条件でも液化せず,0Kでは体積が0になることである。

しかし,実在の気体にはこのような物質は存在せず,この方程式を適用するには

一定の条件が必要となってくる。

(1) 理想気体は,分子間に引力は存在しないという仮定のもとに成り立っているが,

実際の分子の間では,どんな分子でも非常に接近すれば,ファンデルワールス力

と呼ばれる分子間力が働く。また電気双極子をもっている分子では,電気的な引

力,斥力が働くと考えられる。したがって,気体分子が平均して互いに遠く離れ

ている状態,つまり,圧力が非常に低く,沸点に比べて温度の高い状態では,こ

れらの分子間の相互作用が無視できるため,理想気体に近い挙動を示す。

(2) 理想気体では,温度が0Kになると気体の体積は0になると仮定している。し

かし,実在の気体はあくまで分子という粒子の集まりであり,0Kにおいても,

気体分子固有の体積は存在し,決して0にはならない。

 したがって,圧力が高く,温度の低い場合に大きく理想気体からずれるのは,

気体分子固有の体積が無視できなくなるからである。

 

気体定数

 1molの理想気体の式pVRTによって定義される定数で,記号Rで示される。

標準状態の値で計算すると,(参考までに圧力の単位としてatmhPaを用いたもの

を示す)

  

  R8.31451J/molK

また,1atm1013hPaの値を用いると

  

 

  粒子1個当たりの気体定数は,ボルツマン定数とよばれ,記号kで示す。

   kR/NA1.380658×10-23J/K

                                                                     

理想気体の分子運動と状態方程式の関係 

 気体分子運動論によると,質量m,速度の2乗平均の気体分子N個を体

Vの容器に入れると,圧力pは次式で表される。

  

 

したがって,圧力は粒子の濃度N/Vに比例する。すなわち体積に反比例し,粒子

数に比例する。また,分子の運動エネルギーに比例する。式(1)で,気体の物質量を

n mol,アボガドロ数をNAとすると,NnNAとなり,式(2)が導かれる。

 

 一方,気体分子の速度の2乗平均3kT/mであるから,分子の運動エネル

ギーは式(3)で表される。

 

 式(3)を式(2)に代入すると,理想気体の状態方程式が得られる。

 

 

 

分子量の測定 

 気体または蒸発しやすい液体の分子量測定は,アボガドロの法則や気体の状態方

程式を用いて行われ,多くの測定法がある。一例として,ビクターマイヤー法の概

略を示す。

 図のような装置を用いる。外管Aには水を入れ,ニクロム線で加熱する。内管

Bには試料を入れたガラス小球を置いておく。内管はガスビュレットに接続し,

気密性を確かめておく。内管のCを操作し,ガラス小球を落下させて割ると試料は

蒸発し,その蒸気が内管中の空気を追い出すのでガスビュレットの液面で下がる。

よって,試料気体の体積が測定でき,さらに試料の質量,大気圧,室温などを測定

し,分子量が求められる。


実在気体 

 気体の量と温度が一定のとき,理想気体では,pvの値は圧力の高低によらず一定

になる。しかし,実在の気体は,図(A)のように,高い圧力では大きくずれ,低い

圧力でも図(B)のように少しずれる。

 そのずれ方も,気体の種類によって大きく異なり,特に二酸化炭素の場合はずれ

が大きい。一般に,沸点の低い酸素・窒素・水素・ヘリウムなどは,室温またはそ

れ以上の温度で約10atm以下の圧力の場合,理想気体の値の1%以内で,理想気

体に近い性質を示す。

 

参考 ファンデルワールスの状態方程式

 実在気体の状態を状態方程式で表す場合,理想気体と実在気体の違いを考慮して,

状態方程式を修正する必要がある。違いのひとつは,実在気体では分子に体積があ

ることである。他の違いは,分子間に弱いながらも分子間力が働くことである。

(1) 体積vの容器中にn molの気体があるとき,分子が自由に動くことのできる体

 積は,分子自身の体積が無視できる場合(圧力がきわめて低いとき)にのみvに等

 しいが,分子がある大きさをもっていることから,いま1molの気体が排除する

 体積をbとすると,pvnRTにおいて,vの代わりに(vnb)とおいて,次の

 ように表される。

   p(vnb)nRT ……(1)

 このbの大きさは,気体分子の種類によって異なる定数である。

(2) また,分子間に働く引力のために,分子どうしは互いに近づこうとする。1
の分子が他の分子に及ぼす引力は,単位体積中の分子数に比例するので,いま体
v中にn molの気体があるとすると,に比例する。隣の分子はまたその隣


の分子によって同様の力を受けるので,結局,気体分子が全体として引っぱりあ
う力は,に比例する。
このような考察からファンデルワールスは,(1)にさらに分子間力による補正を加
え,次のように表した。
(p
)(vnb)nRT
この式を,実在気体に対するファンデルワールスの式とよんでいる。
ファンデルワールスの式のabは,各気体の臨界定数から算出され,臨界温度
T,臨界圧力をpとすると,次式で表される。
      
定数abの例を,次の表に示す。

ファンデルワールスの式の定数

気   体

空気

He

H2

O2

N2

CO2

CH4

C2H2

C6H6

aatml2mol2

1.33

0.034

0.245

1.36

1.39

3.60

2.26

4.47

18.0

b×103lmol1

36.6

23.8

26.7

31.9

39.2

42.8

43.0

57.3

115

 

ファンデルワールス

 J.D.Van der Waals  18371123日生,192339日没。オランダの

物理学者。1877年より30間アムステルダム大学理論物理学教授。1873年ファ

ンデルワールスの式を発表。電離,表面張力,分子間力などの研究がある。1910

ノーベル物理学賞を受賞。

 

参考 実在気体の状態変化

次の図Aは,蒸気圧曲線の一部である。い
ま,気体状態のP点から,液体状態のQ点と
R
点に変化する場面を考えてみよう。
(1)
 圧力一定のもとでの変化  図AP
の状態の気体を,圧力を一定に保ったまま冷
却すると,q(この圧力での沸点)で凝縮
が始まる。凝縮中は熱が放出されるから,一
定の冷却を続けていても,気体がすべて液体

に変わるまでは,温度が変わらず一定に保た

れる。凝縮が完了してすべて液体になれば,

その液体の温度が下降し,ついにQ点の液体となる。図Bに,PQの変化を,時間経過

と温度変化の関係として示した。

 図Cは,上の変化を温度と体積について示

したものである。ここで,Pq間はシャル

ルの法則に従う変化,q点の温度まで冷えた

とき飽和蒸気圧に達し,qq¢では温度を

一定に保ちながら凝縮が進む。冷却している

にもかかわらず温度が変わらないのは,凝縮

熱が放出されるためである。

(2) 温度一定のもとでの変化  図AP

の気体を,温度一定のもとで加圧していくと,

Pr間ではボイルの法則にしたがって体積

が減少し,r点に達すると凝縮が始まる。r

点の圧力は蒸気圧で,蒸気圧の大きさは温度

のみに依存するから,気体がすべて凝縮する

までは,気体部分の圧力は一定値を保つ。す

べて液体になったとき,その体積は気体の体

積に比べ無視できるほど小さいのが普通であ

る。液体の体積は,圧力を大きくしても実際

上変動はみられない(D)

(3) 体積が一定の場合の変化  P点の気体

を,体積一定の状態で冷却していくと,図E

S点で蒸気圧に達し,凝縮が始まる。それ以後は,冷却するとともに蒸気圧が低下するので,しだいに凝縮が進み,液体の量が増える。そして,気体の圧力は蒸気圧曲線にしたがって低下していく。

 

 

 








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