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1節 気体の体積の変化

 

ボイルの法則

 1622年,ボイルは図のような一端を閉じたJ字管を用いて,その開いたほうの

一端から水銀を入れ,水銀の量をだんだんふやすに従って,閉じこめられた空気

の体積がどうなるかを調べ,表のようなデータを得た。

 

ボイルの実験結果

体  積

圧   力

J字管の短い

水銀面の
高さの差
h〔インチ〕

29.1h

〔インチ〕

側の目盛り

48

0.0

29.1

44

2.8

31.9

40

6.2

35.3

36

10.1

39.2

32

15.1

44.2

28

21.2

50.3

24

29.7

58.8

22

35.0

64.1

20

41.6

70.7

18

48.8

77.9

16

58.2

87.3

14

71.3

100.4

12

88.5

117.6

測定時の大気圧=水銀柱29.1インチの高さ

 

ここで圧力が(29.1h)インチとなっているのは,上図右のような装置をつくり,

真空ポンプで空気を除去したところ,両方の管の水銀面の高さの差が29.1インチ

になったからである。表の値について,空気の体積(v)と圧力の逆数の関係をグラフ

に描くと図のようになる。

 

空気の圧力と体積の関係

 

 このグラフは原点を通る直線になり,実験値の各点はみなこの直線に近接してい

ることより,次の(1)(2)の関係がわかる。

(1) 空気の体積vはその圧力pに反比例する。

(2) pvk 空気の圧力pとその体積vとの積は一定である。

 ボイルの実験は,空気の質量を一定とし,温度も一定のもとで行った。その後,

すべての気体は空気と同じ性質を示すことがわかった。このように,温度一定のと

き,一定量の気体の体積は圧力に反比例するという,ボイルの法則が成り立つ。

 

ボイル

 Robert Boyle  1627125アイルランドに生まれる。16911230

没。イギリスの化学者,物理学者。8Eaton大学に入学,11でフランス,イ

タリアに学び,1644年帰国。R.Hokkeの論文「空気の弾性に関する研究」の発表

(1660)にからんでE.Linusと論争し,これに関連して「ボイルの法則」を発表し

(1662)。その後も,酸・アルカリと色の関係(1663),真空と炎(1672)

燃焼,カ焼(1673)などの研究を発表し,錬金術を科学に高め,新しい物質研究の

方法に大きな影響を与えた。

 

シャルルの法則,ゲーリュサックの法則

(1) 1787年シャルルは,一定の圧力のもとでは,ある気体の一定量について,気

体の種類が違っても,同じ温度上昇に対する膨張の割合は等しいことを見いだし

た。すなわち,体積の変化Dvは温度変化DTに比例する。

      DvkDT

(2) ゲーリュサックは,2つの異なる温度における試料の体積比を実験により求め

た。水の沸点(100)における気体の体積と水の氷点(0)における体積とを比

較すると,1.3661になることがわかった。

 これは,すべての気体について成り立ち,この1.3661の値を用いて体積

と温度との関係を調べると下図のようになる。

 

この直線を低温の方向に延長すると,グラフの横軸と交わる点の温度において

は,あらゆる気体の体積は0になる。このときの温度が絶対0Kである。

 

(3) 一般的には となり,圧力一定のとき,体積は絶対温度に比例し,

 

シャルルの法則が成り立つ。

 

シャルル

 J.A.C.Charles  17461112日生,182347日没。フランスの物理

学者。パリの工芸学校の物理学教授で,パリ科学アカデミー会員。1783年,初め

て水素気球を製作し,試乗した。1787年「シャルルの法則」を発見。この法則は

1802年ゲーリュサックにより完全な形となったので,ゲーリュサックの法則とも

呼ばれている。

 

ゲーリュサック

 J.L.Gay-Lussac 1778126日生,185059日没。フランスの化学者,

物理学者,気象学者。Ecole polytechniqueの助手をへて教授。Sorbonne大学でも

物理学を講じた。研究業績は多彩で,化学・物理学に多くの成果を残している。気

体の膨張に関するゲーリュサックの法則(1802),気体反応の法則(1805),金属

カリウム生成(1808),ヨウ素の研究(1811),鉛室法による硫酸製造(1827)

シュウ酸の製造(1829)など,無機・有機・分析化学,地磁気の観測(1804)など

の物理学,気象学に多くの業績を残した。

 なお,気体反応の法則をゲーリュサックの法則ということがある。

 

絶対温度 熱力学的温度ともいう。単位はK(ケルビン)0Kは−273.15

に等しく,温度目盛はセルシウス温度と等しい。熱力学的に考えた場合,0K

最低温度となり,これ以下の温度は考えられない。0Kでは,物質のエネルギー

0になると考えられる。

 

ケルビン

 Lord Kelvin  1824年生〜1907没。イギリスの物理学者で,本名はWilliam

Thomson。アイルランド生まれで,グラスゴー大学,ケンブリッジ大学を卒業後,

1846年グラスゴー大学物理学教授となる。

1847年,ジュールの熱の仕事当量に関する理論を評価し発展させ,1848年,カ

ルノーの論文から絶対温度目盛を導入した。その他,熱力学の第二法則をクラウジ

ウスとは別に導いた。グラスゴー大学教授に就任当時,世界最初の学生実験室を作

るなど,近代科学教育にも貢献した。1904年には,同大学総長となる。

 

ボイル‐シャルルの法則 

 気体の体積(v),圧力(p)温度(T,絶対温度)の関係を,ボイルーシャルルの法

則に従って示すと,図(a)(c)のようになる。

 図(a)のそれぞれの双曲線は気体の等温線で,T3T2T1の関係がある。

 図(b)のそれぞれの直線は気体の等圧線で,p3p2p1の関係がある。

 図(c)のそれぞれの直線は気体の等容線で,v 3v 2v 1関係がある。

 ボイルの法則とシャルルの法則からボイル‐シャルルの法則を求めるには,次の

ようにすればよい。圧力,温度,体積が,(A) p1T1v 1(B) p2¢T1v ¢(C) p2T2

v 23つの状態を考え,(A)→(B)→(C)と順に変化したとする。

(1) 状態(a)→(b)の変化では,ボイルの法則から,

 

(2) 状態(b)(C)の変化では,シャルルの法則から,

 

 (3) (1)(2)より

 

ボイル-シャルルの法則のグラフ

 

ドルトンの分圧の法則 

 1801年,ドルトンが発見した混合気体の圧力に関する法則。体積や物質量の関

係も導かれる。

(1) 同温・同圧の気体を,その温度,圧力で混合すると,混合気体の体積Vは,各

 成分気体の体積V1V2,…の和に等しい。

   VV1V2……

(2) 混合気体の各成分気体のもつ圧力(分圧)p1p2…の和は,混合気体が示す圧

 力(全圧)pに等しい。

   pp1p2……

(3) 各成分気体の分圧の比は,各成分気体のモル分率の比に等しい。     

 

 

 ドルトンの分圧の法則は,理想気体では厳密に成立するが,実在気体では少しず

れることが知られている。

 

理想気体の状態方程式から分圧の法則を導く

 絶対温度TK,体積vlの気体

ABC……があり,それぞれの気体の圧力がpApB pC……(atm)である

とすると,それぞれの気体の物質量nAnBnC……(mol)は,理想気体の状態

方程式から次のように表される。

 

 

 絶対温度TKで,nAnBnC……n(mol)ABC……の混合気体を

vlの容器に入れたときの圧力(全圧)p(atm)とすると,同様にして

 

 

nAnBnCnであるから,

 

 すなわち,分圧の法則が成り立つ。

 

◆シャルルの法則の実験

【目的】気体の体積が,絶対温度の変化に比例して変化するという,シャルルの法

則を追試し検証する。測定結果の処理の練習を行う。また,測定結果をコンピュー

タを用いて処理する練習も行ってみる。

【準備】丸底フラスコ(300 cm3),注射器(50 cm3),ビーカー(1l),温度計,ガラ

ス管,ビニル管,ゴム栓,かき混ぜ器

【操作】

 下図のように,丸底フラスコ(300 cm3,口の部分を切り取って短くしたもの)を,

ゴム栓,ガラス管,ビニル管を用いて注射器(50 cm3)に接続し,垂直に固定する。

装置の気密性を確かめておく。

 

 

 ビーカーに約50℃の湯を入れ,この装置を浸す。30秒ほどかきまぜ,空気と

水が同じ温度になってから注射器の目盛を読み,温度を記録する。

 湯の一部を拾てて水を加え,と同様の測定を行う。

【結果の例】フラスコの体積310 cm3

 

@

A

B

C

D

水温(気体の温度)

55

45

35

25

15

注射器の目盛 〔cm3

45

34

24

13

3

気体の体積  〔cm3

355

344

334

323

313

 

グラフで表すと

 

 

 

 

◆シャルルの法則の検証実験についてコンピュータ処理

 N88BASICを用いたプログラムの例を次に示す。左端の数字は行番号である。

次頁に,このプログラムの説明と,入力中の画面および結果の画面を示す。教科書

では300 cm3丸底フラスコを使うようになっているが,300 cm3までの丸底フラス

コであればこのプログラムで可能である。

 

<プログラムの説明>

10行目のCLS 3はそれまであった画面を消す命令。

CONSOLEは面画設定の命令。

INPUTは指定した変数(今の場合はN)へ入力する命令。

DIMは配列変数(行列のようなもので,ここにデータを入れる)の次元確保の命令。

FOR 〜 NEXTは繰り返しの命令。

PRINTは   内を画面に表示する命令。

90行目は最小二乗法で必要な数値をFOR 〜 NEXTのループで求めるもの。

110行目で直線の傾きとY切片を知る。

120行目のGOSUBGRAPH300行目以下のサブルーチンへ行って再び戻って

 くる命令。

PRINTUSINGは有効桁数や位取りを指定する命令。

LOCATEは画面中の文字の位置を指定する命令。

GOTOは指定された行へ行く命令。この場合は,同じ行へ行くようになっている

ので,ここでプログラムが止まったようになる(無限ループ)キーを押す

と止まる仕組みである。

300行目の *GRAPHはサブルーチン名。

WINDOWはグラフィック画面に表示させる範囲を決める命令。

LINEは直線を描く命令。

PSETは点を打つ命令。

CIRCLEは円を描く命令。

RETURNはサブルーチンから戻るときの命令。

 

 

 

 

 








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