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1節 物質の状態と粒子の熱運動

 

◆拡散

 気体分子や溶液中の成分が,高濃度の領域から低濃度の領域に移動し,全領域

が均一になって濃度の差がなくなる現象を拡散という。拡散は,分子自身の熱運

動,および周りに存在する分子の衝突によって起こる。熱力学的には,温度・エ

ントロピー・組成などで決まる自由エネルギー勾配によって起こり,不可逆な変

(熱力学第二法則)である。

NOを入れてガラス板でふたをした集気びんを,ふたをしたまま逆にして空気の入

った集気びんに重ねる。ガラス板を取ると同時に両気体の拡散が起こり,互いに

衝突して反応し,赤褐色の気体となる。

     2NO(無色)O2(無色)2NO2(赤褐色)

NOガスと空気に窒素ガスを入れて少し薄め,約10℃程度の室温で実験すると,

ガラス板を取ってから30秒以内で全体が均一な赤褐色になった。

このことから,気体の拡散はきわめて速く,短時間で進むことがわかる。

 

 

拡散

 混合気体または溶液中の成分が,高濃度の領域から低濃度の領域に移動し,全

領域が均一になって濃度の差がなくなる現象。分子の熱運動によって起こる不可

逆な変化であり,高温であるほど速く進む。

 気体中での拡散の速さは,濃度差や分子の平均自由行程,平均速度に比例する。

気体の平均速度は,次式で表され,絶対温度Tが大きいほど,また分子量M

小さいほど大きくなる。したがって,分子量の小さい軽い気体ほど拡散しやすい。

 

 Rは気体定数,kはボルツマン定数, pは円周率,mは分子の質量

 気体分子は,それぞれいろいろな速度で運動している。たとえば,水素分子の

0°Cにおける速度は,ほとんど0に近いものから2000m/s以上のものまで様々で,

平均速度は1692m/sになる(根二乗平均速度は1839m/sとなる)

 図は,窒素分子の速度分布を示したものである。

 

気体分子の運動と圧力

 物体が運動しているとき,この運動を止めようとすれば,力を加えて物体に仕事

をしなければならない。この仕事量は,物体の質量が大きいほど,またその速度が

大きいほど多くなる。

 気体分子は自由に運動しているから,壁に衝突してはね返るとき壁に力を及ぼす。

質量mの気体分子N個が体積V中に存在するとき,その平均二乗速度をとする

と,圧力pは次式で表される。

 気体分子1個のエネルギーはm/2で表されるから,このときの気体全体のエ

ネルギーEは,Nm/2となり,圧力はエネルギーに比例することがわかる。

 この式を発展させると,ボイルの法則になる。

 

分子の運動と固体・液体・気体の状態

(1) 固体  温度が下がって粒子の運動エネルギーが小さくなり,粒子間に働く結

合力で粒子が規則正しく密に並んだ状態。したがって,一定の形,体積をもつ。こ

の状態で粒子が行う運動は,一定位置を中心にした振動に限られる。

(2) 液体  固体の加熱により,温度が上昇して粒子の運動エネルギーが大きくな

 り,粒子間に働く力による束縛を振り切って一定位置から離れて動けるようにな

 った状態。まだ粒子間の引力が多少残っており,粒子はほぼ密着しているが,一

 定位置に固定されないので,一定の形を示さない。

(3) 気体  液体を加熱してさらに温度を上げると,粒子の熱運動に比べて粒子間

 の引力がほとんど無視できるようになり,粒子が自由に運動できるようになった

 状態。気体では,物質の種類や分子量に関係なく,一定体積中の粒子数がほぼ似

 た状態になる。

 

参考 結晶と無定形固体

(1) 結晶 単結晶は,外見的に明瞭な結晶形を示すことが多いが,狭い意味では

 これを結晶という。広義には,外見上結晶の形が明らかでない小結晶の集まり

(多結晶)も結晶という。核酸やタンパク質のような高分子物質でも部分的には結

晶構造をもつものが多く,結晶は,一般的には固体の正常な状態ということがで

きる。

(2) 無定形固体(非結晶固体)  塩化ナトリウムやナフタレンのような結晶に対

 して,ガラス,ゴム,寒天,樹脂などは無定形固体である。このような無定形固

 体は,一定の形をもたないし,一定の融点をもたない。

 水晶を高温にして液体にしたあとで冷却すると,非結晶性の石英ガラスが得られ

る。水晶は1447℃でとけるが,石英ガラスは熱するとしだいに軟らかくなり,い

つとはなしに液状になってしまう。

 水晶の結晶ではSiO2が網目構造の規則正しい配列をつくっているのに対して,

石英ガラスは網目構造はつくっているが,それがきわめて不規則であって,結合の

強さもまちまちである。したがって温度を上げていくと,弱い部分から結合が切れ

て軟らかくなっていくので,明確な融点を示さない。

 無定形固体は,状態は固体であるが,粒子配列の上では液体に近く,液体状態の

物質をそのまま固化させた物質とも考えることができる。

 

参考 液晶(液晶ディスプレイ)

一般に,「液晶ディスプレイLCD」のことを「液晶」といっている。厳密には,

「液晶」とは,液体と固体の中間にある物質の状態(例えば,イカの墨,セッケン

水など)を指す言葉である。見た目にはほぼ透明な液体で,すこし粘りがある。液

晶は,1888年にオーストリアの植物学者ライニツァーによって発見された。1963

年,RCA社のウイリアムズは,液晶に電気的な刺激を与えると,光の通し方が変

わることを発見し,5年後に同社のハイルマイヤーらのグループが,この性質を応

用した表示装置をつくった。これが液晶ディスプレイの始まりである。

<参考サイト>

液晶ディスプレイの原理(SHARP)

 








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