トップ化学II1部 物質の構造>第1章 化学結合>2節 共有結合によって結びついた物質

2節 共有結合によって結びついた物質

 

 

有機化合物の炭素原子間の結合
 炭素原子間の単結合,二重結合,三重結合とその結合エネルギーは,炭素原子の
価電子がつくるsp3sp2sp混成軌道を考えることで理解できる。
 炭素原子間の結合の種類と,その結合エネルギー,及び原子間距離は,次表の
ようになる。

炭素原子間の結合

炭素原子間の
結合の名称

飽和結合

不飽和結合

単結合

二重結合

三重結合

ベンゼンの結合

共有結合の数

CC

CC

CC

CC

s 結合1

s 結合1

s 結合1

s 結合1

(sp3混成)

(sp2混成)

(sp混成)

(sp2混成)

p 結合1

p 結合2

p 結合0.5個相当

原子間距離〔nm

0.15

0.13

0.12

0.14

s 結合は,2個の電子軌道の重なり方が大きく,分子軌道が1本の軸の周りに対
称的に分布する結合で,当然結合エネルギーも大きい。p 結合は,1つの平面の両
側にそれぞれ電子雲が分布する結合で,2個の電子軌道の重なり方が小さく,s
合より結合エネルギーが小さい。単結合はs 結合1個で形成されるが,二重結合・
三重結合ではこれにp 結合が1個・2個加わって形成される。結合数の多い結合ほ
ど結合力が強くなり,原子間距離が小さくなる。しかし,p 結合はs  結合より弱い

ので,結合エネルギーは単結合の2倍,3倍にはならず,それより小さい値となる。
 ベンゼンC6H6の炭素原子間の結合は,単純な単結合でも二重結合でもない。こ
のことは,分子が正六角形であることから証明される。もし,単結合と二重結合が
交互に存在するとすれば,炭素原子間の距離も,長いものと短いものが交互に存
在することになり,歪んだ六角形になるはずである。ベンゼンではp 結合が特定の

原子間に固定されず,炭素原子間では平均して0.5個分のp 結合が存在するとみな

すことができる。なお,結合エネルギーは,p 結合の0.5個分相当よりは大きくな

る。これはベンゼンが共鳴構造をとるためと説明されている。

 

アセチレン分子の構造
 三重結合をつくる2個の炭素原子と,それに結合する2つの原子は一直線上に存
在する。このとき炭素原子は,2s1つの2pとでsp混成軌道をつくり,他の炭
素原子や水素原子との間でs 結合を行う。残った2つの2p軌道は,2個の炭素原子
との間で2対のp 結合を行う。結局,炭素原子間は1つのs 結合と2つのp 結合の
三重の結合で結ばれる。



エチレンの分子構造
 アルケンの二重結合をつくる炭素原子と,これに結合する原子は一平面上に存在
し,結合角が約120°になることは実験的事実である。これは,炭素原子が励起さ
れて1s22s12p3の電子配置となり,このうち2s2つの2p(たとえば2px2py)
sp2混成軌道をつくるとすればうまく説明でき,数学的にも証明されている。
 例えばエチレンでこの結合をみると,3つのsp2混成軌道のうち1つは他の炭
素原子と,残りの2つは水素原子と共有結合(s 結合)している。sp2混成軌道に
加わらなかった1つの2p軌道(たとえば2pz)は,2個の炭素原子間で共有結合(p
)するので,炭素原子間はs 結合とp結合との二重の共有結合(二重結合)で結ば
れることになる。

C2H4の構造C=C 0.339nmC-H 0.1087 nmCCH 121.3°HCH 117.4°
C3H6の構造C=C 0.1341 nmC-H 0.1104 nm (ビニル基)0.1117 nm (メチル基)
CC 0.1506 nmCCC 124.3°CCH 121.3°(ビニル基)110.7°(メチル基)

共有結合

 H2分子が形成されるとき,H原子は電子を1個しかもたない1s電子軌道を互い

に重ね合わせて,2個のH原子の間で電子の行き来ができるようになる。このよう

にして,2個のH原子はより安定なH2分子をつくる。この際,重ね合わされた元の

電子軌道は消滅し,新しく分子軌道がつくられる。分子軌道は2つの原子を一様に

包み込んで原子どうしを強く結びつける。このように,電子を共有することによっ

てできる結合が共有結合である。

 水素分子の解離エネルギーは436kJ/molであることが知られている。これは

次式のように示される。

  H2()2H()436kJ

 2個のH原子が完全に離れているときのポテンシャルエネルギーを0とすると,

この2原子が互いに近寄って共有結合を形成する場合のエネルギー変化は,図

のようになる。2つの原子核の間の距離がr(0.074nm)になったとき,2原子は

最も強く結合して安定になっていることがわかる。この場合,H2原子が完全

に離れているときに比べて,D (436kJ/mol)だけエネルギーを放出している。

H原子の共有結合半径と呼んでいる。

 

テキスト ボックス:  
H2分子のエネルギー

 

 分子軌道が形成される場合,その形と電子密度の関係をH2分子について考えて

みよう。Heの電子配置は1s2である。1s軌道の形は球状で,図の(A)のように

なっている。原子核を通る直線を横軸に,直線に垂直な面内の電子密度を縦軸に

とって図示すれば,図(a)のように表される。そこで,Heの原子核を二分し,そ

れぞれの+eの電荷を少しずつ離していくと考える。+e2つの核が十分離れた

状態では,2個のH原子が離れて存在しているのと同じ状態とみなすことができ

る。そのような状態になるまでの軌道の形は,図の(A)→(B)→(C)→(D)をたどる。

実際のH2分子の核間距離は0.074nmであり,この場合の分子軌道は(C)に相当す

る。この分子軌道はもともと1個のHe原子核を包んでいた1s軌道であるから,

2個の1s電子は2個の核電荷から同じ影響を受けている。

1sの電子配置のH原子2個が,(D)の孤立した状態から近づいて接触した場合,

2つの1sが重なり合って変形し,その過程で安定して436kJ/molもの熱を放出する。

(C)の状態では,どの電子がどの核に所属するかが決められなくなっている。すな

わち,2個の電子は2個の原子核に一様に束縛されている。これが分子を安定に

している主要な原因と考えることができる。すなわち,2個の電子は2個の原子

核に共有され,2つのH原子は共有結合によって強く結びつけられている。

2分子の分子軌動と電子密度

 

分子の構造と結合  主な分子の構造定数を次に示す。

H2

直線

H-H 0.07414nm

CO2 直線

C-0 0.11600nm

H2O

V字形

0-H 0.09575nm

HOH104.51°

 

NH3

三角錐

N-H 0.1012nm

HNH114°

 

O2

直線

0-0 0.12074nm

N2 直線

N-N 0.10977nm

 

配位結合

 三塩化ホウ素BCl3の分子では,B原子はsp2混成軌道をとり,2pzの電子軌

道は空になっている。一方,アンモニアNH3の分子は,非共有電子対を2pz

電子軌道にもつ。BCl3NH3が近づくと,Nの非共有電子対をB2pz軌道に

与え,BNの間でその電子対を共有して結合を形成する。

 この結合は共有結合そのものであるが,一方の原子の非共有電子対を用いて共

結合をしているので,その区別の意味で特に配位結合と呼ぶ。

 ここで注意すべきことは,共有結合の極性を考えるとき,電気陰性度の差から

生じる正負と逆になる場合があるということである。BCl3Bには,Nから非共

有電子対が入ってくるから,電子は過剰になっており,NH3Nの周りの電子は不

足している。したがって,BCl3は負に,NH3は正になっている。

 

電気陰性度

 共有結合の極性(イオン性)は,結合する2原子間の電気陰性度の差によって推

できる。Mullikenは,原子のイオン化エネルギーと,電子親和力の平均値をその

原子の電気陰性度と定義した。しかし,歴史的にはPaulingが結合エネルギーか

ら簡単な数値として求めていたので,この値がよく用いられる。

 

ポーリングの電気陰性度

  

原子Aの電気陰性度を*A,原子Bの電気陰性度を*Bとし,ABが共有結合す

るとき,ABの差が大きいほど,結合の極性は大きくなる。したがって,この

結合のイオン性も増大する。電気陰性度の差と結合のイオン性〔%〕の間には,次

の表のような関係がある。これを見ると, (AB)の値が1.7あたりで,イオン性

50(共有結合も50)になる。

           

電気陰性度の差と共有結合のイオン性〔%〕

*A-B

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

2.2

2.4

イオン性

1

4

8

15

22

30

39

47

55

63

70

76

 

分子の極性

 分子の極性の大きさは,双極子モーメントmで表される。

mは,正負電荷間の距離lと電荷量Qとの積l×Qで表される。

 電気素量e4.8×1010esuであり,+eと−eの電荷が0.1nm

隔てて対しているときの双極子モーメントは次のようになる。

  mQ l4.8×1010×108esucm4.8 D

     =1.6×1029 Cm

1018esucm1D(デバイ)とよび,双極子モーメントの単位と

する。1 D3.33×1030 Cm

双極子モーメントの例を,下の表に示す。

テキスト ボックス: 双極子モーメント
分子	D	分子	D
HF 	1.83	H2O2 	1.57
HCl 	1.11	NO 	0.16
HBr 	0.83	NO2 	0.32
HI 	0.45	O3	0.53
H2O 	1.85	SO2 	1.63
H2S 	0.98	CH3Cl 	1.89
H2Se 	0.63	CH2Cl2 	1.62
NH3 	1.47	CHCl3 	1.04
PH3	0.57		

 

分子の極性は,結合する2原子間の極性のほかに,3原子以

上の分子では,分子の形も関係してくる。個々の結合の双極子

モーメントのベクトル和が分子の双極子モーメントになる。

したがって,対称性分子では,双極子モーメントが0になるも

のがある。メタン,二酸化炭素,三酸化硫黄などがその例である。

分子の形と双極子モーメント

 

分子間力

 あらゆる分子の間に引力が働く。この分子間力はファンデルワールス力ともよば

れ,その原因として次の3つの効果が考えられる。

(1)  配向効果  双極子モーメントをもつ極性分子の間には,静電気的な力が働く。

 この力は,分子相互の位置と向きの関係より変化し,場合により引力にも反発力

 にもなる。しかし,平均すると引力になる。このような双極子間の作用による引

 力を配向効果という。配向効果のエネルギーは,m 4r 6に比例する(mは双極子

 モーメント,rは分子間距離)

(2)  誘起効果  極性分子は他の分子(極性分子も無極性分子も含む)を分極して双

 極子モーメントを誘起する。そして,この分子間で引力を生じる。この引力を誘

 起効果という。誘起効果のエネルギーは, am2 r6に比例する(αは分子の分極

 率)

(3)  分散効果  希ガス分子は,双極子モーメントがなく,平均すると正電荷の重

 心と負電荷の重心は一致する。しかし,ある瞬間を考えると両者は一致せず,双

 極子となる。この瞬間的双極子間の相互作用による引力を分散力といい,その効

 果を分散効果という。分散効果のエネルギーは,a2 r6に比例する。

  分散力は,あらゆる分子間に働く。

 ここで説明した3つの効果のうち,普通は分散効果の寄与が最も大きい。また,

これらの効果はすべてr6に比例し(イオン間ではr1に比例),遠距離では急激に

弱くなる。なお,ファンデルワールス力は不対電子をもたない分子間力の引力

の総称だが,ふつう分散力を意味する。

 

分子の結合力と性質

 分子性物質の融点・沸点は,分子間の結合力の大小によって大きく異なる。

 一般には,分子量が大きい,極性がある,水素結合をする,などによって構成分

子間の結合力が強くなり,融点・沸点は高くなる。

 一方,融点は分子の形によっても大きく変わる。たとえば,ベンゼンC6H6の融

点は6°Cであるが,これより分子量の大きいトルエンC6H5CH3の融点は,−95°C

であり,ベンゼンよりはるかに低い。一般に,分子の形の対称性が高いほど融点が

高くなる。これは,分子が結晶をつくるとき,密に詰まった結晶格子になりやすい

かどうかに分子の形が関係するためと考えられる。

 分子性物質についてのデータを,下の表に示す。

分子量と融点・沸点

分子

分子量

融点

°C

沸点

°C

双極子モーメント(D)

結合距離

H-X

×101nm

結合角

HXH()

HF

20.0

-83

19.5

1.826567

0.917

 

HCl

36.5

-114.2

-84.9

1.1086

1.275

 

HBr

80.9

-88.5

-67.0

0.8271

1.414

 

HI

127.9

-50.8

-35.1

0.4477

1.609

 

H2O

18.0

0.00

99.974

1.8546

0.958

104.5

H2S

34.1

-85.5

-60.7

0.978325

1.336

92.1

H2Se

81.0

-65.73

-42

0.627

1.461

90.9

H2Te

129.6

-48

-1.8

 

1.658

 

NH3

17.0

-77.7

-33.4

1.471772

1.012

106.7

PH3

34.0

-133

-87

0.57397

1.420

93.3

AsH3

77.9

-117

-55

0.217

1.511

92.1

SbH3

124.8

-88

-17.1

0.116

1.704

91.6

CH4

16.0

-182.76

-161.49

0

1.087

109.5

SiH4

32.1

-185

-111.8

0

1.480

109.5

GeH4

76.6

-165

-90

0

1.525

109.5

SnH4

122.7

-150

-52

0

1.711

109.5

He

4.0

 

-268.934

0

 

 

Ne

20.2

-248.67

-246.048

0

 

 

Ar

39.9

-189.2

-185.7

0

 

 

Kr

83.8

-156.6

-152.3

0

 

 

Xe

131.3

-111.9

-108.1

0

 

 

 

水素結合

 H原子を間にはさんで,ONFのような電気陰性度の大きい原子が結びつくと

き,これを水素結合という。水素結合は,H原子がその電子を陰性の強い原子に引

きつけられて,裸の原子核(すなわち陽子)に近い状態になり,このため強い静電場

を生じて,他の陰性の強い原子の電子と引き合うため生じると考えられている。

 水素結合のエネルギーは数十kJ/mol程度で,普通の共有結合のエネルギー(

kJ/mol)より小さい。しかし,ファンデルワールス力よりもかなり強い。同族

元素の水素化合物のうち,HFH2O NH3の融点・沸点が異常に高く,蒸発熱が

大きいのは,水素結合が分子間に存在することの反映である。フッ化水素は,気体

中でもHFの他に(HF)6(HF)5を含んでいる。このとき,HFの結合距離は,

0.1nm0.15nmである。

 酢酸は,蒸気中やベンゼン溶液中では2分子が会合して二量体となる。ギ酸も気

体や液体中で二量体となる。これらは,結晶中では,水素結合で鎖状構造となる。

 タンパク質や酵素の働き方を考える上で,水素結合の効果を無視できない。いわ

ゆるタンパク質の変性は,水素結合の変化が原因となる立体構造の変化で生じる。

 

●二酸化炭素(ドライアイス)は,フアンデルワールス力によって無極性のCO2

 子が結びついた分子結晶の例である。分子間の結合力が弱く,昇華しやすい。

 

水素化合物の融点・沸点

タンパク質の水素結合

 

 

 

 

(HF)5の構造

共有結合の結晶

 巨大分子ともいう。有機高分子化合物も巨大分子であるが,共有結合の結晶とい

えば,ふつう無機物質の場合を指す。

 単体の巨大分子には,立体的なものとしては,ホウ素,ダイヤモンド,ケイ素な

どがある。平面構造をもつものとしては,黒鉛,ヒ素など,鎖状構造をもつものに

は,セレン,テルルなどがある。平面構造や鎖状構造の巨大分子では,分子間の結

合力はファンデルワールス力であり,ダイヤモンドのような典型的な共有結合結晶

とは性質が異なり,軟らかく,融点も低い。

 化合物の巨大分子としては,SiC炭化ケイ素やSiO2二酸化ケイ素などがある。

 

結合エネルギー
分子内の各共有結合に対し,その結合を切断するのに必要なエネルギーを割りあ

てたものを,結合エネルギーという。

二原子分子では,その解離熱(原子化熱)から直接結合エネルギーが求められる。
たとえば, H-Hの結合エネルギーは,水素の解離熱から436kJ/molとなる。
  H2()2H()436kJ
多原子分子では,単に全体としての解離熱は求められるが,個々の結合の解離エ
ネルギーは場合により異なり,単純には決められない。たとえば,水分子が順に解
離するときのエネルギーは次のようになる。

  H-O-HH-OH499kJ
  H-O   HO 427kJ

    H-O-H2HO926kJ(2×463kJ)

そこで,同等の結合をもつ多原子分子では,便宜的に各結合解離エネルギーの平均
をとって,これを結合エネルギーとしている。水分子のO-H結合では,463kJ/mol

が結合エネルギーとなる。同様にして,C-HN-HS-Hなどの結合エネルギーは,

CH4NH3H2Sなどの値から求められる。また,多種の結合からなる多原子分子

では,全体の解離熱の値をもとにして,既知の結合エネルギーの値を引いて未知

の結合エネルギーを求める。

このようにして,多くの結合の結合エネルギーの値が求められるが,異なる化合
物から求めた値は必ずしも一致せず,場合により大きく異なることがある。たとえ
ば,C= Oの結合エネルギーは,ケトン類から求めると615kJ/molとなるが,CO2
から求めると804kJ/molとなる。これは,CO2では単なる二重結合だけでなくい
くつかの結合が関係して共鳴構造をとるためと考えられる。

このように,結合エネルギーの値は,もともと多くの物質の熱力学的数値を考察
して得られたものであり,正確なものではない。したがって,結合エネルギーと反
応熱を相互に求めさせる問題は,あくまでも結合と反応熱の関係を理解させるため
のものであり,正確な計算には生成熱の値を用いるほうがよい。

結合エネルギーの概念は,化学結合の強さを理解するために必要なものであり,
結合エネルギーが大きいほど強く,その結合を切るためにはより多くのエネルギー
が必要となる。

 

結合エネルギーDkJ/mol(25°C )

結合(分子)

D

結合(分子)

D

結合(分子)

D

H-H(H2)

436

C-C(ダイヤモンド)

357

O-O (H2O2)

145

H-F(HF)

568

C-F(CF4)

489

O=O(O2)

498

H-Cl(HCl)

432

C-Cl(CCl4)

327

S-S(S8)

266

H-Br(HBr)

366

C-O(CH4O)

329

F-F(F2)

158

H-I(HI)

298

C=O(CO2)

804

F-Cl(CIF)

255

H- O (H2O)

463

C=O(H2CO)

679

F-Br(BrF)

285

H-S(H2S)

368

C=S(CS2)

578

Cl-Cl(Cl2)

243

H-N(NH3)

391

C-N(CH3NH2)

273

Cl-Br(BrCl)

219

H-P(PH3)

321

N-N(N2H4)

158

Br-Br(Br2)

193

H-C(CH4)

416

NN(N2)

945

I-I(I2)

151

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結合解離エネルギーDkJ/mol(25 °C )

分子や遊離基中の特定の結合を切るとき必要なエネルギーを表す。

結合(分子)

D

結合(分子)

D

結合(分子)

D

(C-C)

 

(C-H)

 

(O-H)

 

CH3-CH3

368

H-CH3

434

H-OH

499

CH3-C2H5

357

H-CH2

461

H-O

427

CH3-C(CH3)3

344

H-CH

427

H-O2H

376

CH3-C6H5

417

H-C

339

CH3O-H

436

CH3-CHCH2

466

H-C2H5

412

CH3COO-H

442

CH3-CCH

465

H-C(CH3)3

387

(N-H)

 

CH3-CH2OH

350

H-C6H5

460

H-NH2

432

CH3-COOH

403

H-CHCH2

455

H-NH

388

CH3-COCH3

355

H-CCH

500

H-N

352

CH3-CN

513

H-CHO

360

(S-H)

 

C2H5-C2H5

346

H-CH2OH

393

H-SH

383

C6H5-C6H5

468

H-COOH

374

H-S

351

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルカンの立体構造
 アルカンの炭素原子の結合が正四面体の中心から頂点に向かう方向にあることは
実験的事実である。また原子間の共有結合は,それぞれの原子の不対電子の軌道が
よく重なり合うほど結合が強い。このことから,アルカン中の炭素原子には,4

の不対電子があり,その方向は正四面体の中心から頂点に向かう線を軸とするもの
であることがわかる。

炭素原子の電子配置は,基底状態では2価で1s22s22p2であるが,結合時には励起
されて1s22s12p3となり,2s2pの軌道が混成して,同等の4つのsp3混成軌道に
なると考えると,これらがうまく説明できる。このことは,量子化学的計算からも証
明される。sp3混成軌道はエネルギー的には基底状態より高いが,化合物ができると
きには,結合が2つより4つのほうが安定になるので,結果としてこのような混成が
起こると考えられる。

 CH4C3H8の構造定数は次の通りである。

CH4C-H 0.10870nmHCH 109.47°(正四面体)
C2H6C-C 0.15351 nmC-H 0.10940 nmCCH 111.17°(ねじれ形)
C3H8C-C 0.1532 nmC-H 0.1107 nmCCC112°HCH 107°

 

 

 

 

 

炭素

 電子配置がと示され,陽イオンにも陰イオンにもなりにくく,共有結合し

やすい。炭素原子どうしが共有結合で長い鎖をつくりやすく,これが有機化合物

の炭素骨格である。炭素原子どうしが共有結合で立体的に巨大分子を形成したも

のが炭素の単体であり,同素体としてダイヤモンド・黒鉛などが知られている。

ここでは,有機化合物には触れず,主に炭素の単体を考える。

(a) ダイヤモンド C原子が他の4個のC原子と共有結合してできている等軸晶

系の正八面体構造をもち(111)面のへき開が容易である。硬度10,密度3.51g/cm3

で,屈折率はnD=2.417でガラスより大きい。白色または無色であるが,着色

したものも多い。空気中では710900℃で燃焼し,燃焼熱は395kJ/molである。

酸やアルカリに侵されない。

  天然では,ダイヤモンドは超塩基性火成岩及びその分解物の蛇紋岩質角レキ

岩中に産する。ダイヤモンドは,近年人工的に結晶を量産できるようになった

が,大きいものでも約4mmで,用途は掘さく機,研摩剤である。炭化水素やア

ルコールを原料としてダイヤモンドの微粒子をつくることもできる。

(b) 黒鉛  石墨ともいう。天然に産出するものは,六方晶系で,鱗状,粒状,

塊状となっている。硬度12,密度1.92.3g/cm3,ろう状の感触があって曲が

りやすい。酸には溶けない。

ダイヤモンドと黒鉛の構造

 

  普通変成岩中に産する。すなわち,結晶質石灰岩,片岩,片麻岩,変成岩層か

ら産出するが,火成岩中に産することもある。朝鮮,インド,オーストラリアなど

がその産地である。現在では,人工的に多量につくられ,無煙炭,ピッチなどがそ

の原料となる。

(c) 無定形炭素  コークス,ガス炭,木炭,ガスカーボンなどは無定形炭素であ

るが,これらは黒鉛と同じ六方平面格子が乱雑な配列をした小結晶の集まりである

ことがわかってきた。

 無定形炭素は黒色不透明で粗い感じがし,その表面積を広くしたものは,気体

や液体や塩類をよく吸着する。

(d) フラーレン 

C60分子の存在は,豊橋技術科学大学の大沢映二教授が,北海道大学時代の1970

年に最初に予想した。p 電子が3次元的に移動できる分子を考察しているなかで予

想されたものである。しかし,C601985年に英米の化学者(H.W.Krotoサセックス

大学()R.E.Smalleyライス大学() )の共同研究により実際に発見された。二人は

クラスターについて研究し,一連の物質をフラーレンとよんだ。

クラスターとは,原子が数個〜数百個集まった集合体のことで,結晶や個々の原

子・分子とは異なった性質を示す。真空中で黒鉛に強力なレーザーを照射すると炭

素原子となって蒸発するが,真空中で炭素原子が集まると共有結合性の分子すなわ

ち炭素クラスターができる。Krotoたちは,炭素蒸気中にごく微量のC60とともに

C70を見いだし,図のようなサッカーボール・ラグビーボール型の分子を想定した。

得られたクラスターは微量であったが,その大部分はC60であったという。

 KrotoたちはC60を検出したものの,これを単離することはできなかった。C60

をグラム単位の量で取り出すことに成功したのは1990年で,W.Krätschmerマッ

クスプランク核物理学研究所()D.R.Huffmanアリゾナ大学()の共同研究に

よる。彼らは,ヘリウムガス中で黒鉛に電流を通じてススをつくり,その中のベン

ゼンに溶ける成分をカラムクロマト法で分離して取り出した。

 C60の正確な分子構造は,5Kに冷却した結晶の中性子回折により求められた。

そして,12個の5角形と20個の6角形からなるサッカーボール型であることが確

定した。C60分子の直径は約0.7nmで,分子内に金属イオンや小さい分子を取り込

む余地が十分ある。そのような化合物の研究が進んでいる。

 C60は空気中で安定である。真空中では600°C以上に加熱しても壊れないので,

昇華法で精製することができる。C60が安定で反応性に乏しいのは,芳香族分子で

あることの他に,分子に端がないことがあげられる。また,分子内の炭素原子がす

べて等価で,p 電子密度に偏りがないことも安定性に寄与しているであろう。

1990年以降では,ATTベル研究所が発見した,C60の超伝導性が目を引く。カ

リウムを添加したC6019.28Kに冷却すると電気抵抗が0になる。C60そのもの

は絶縁体であるが,いろいろなアルカリ金属を添加すると,金属になったり超伝導

体になったりするのである。このように,黒鉛とC60は,ともに不飽和の結合をも

つ同素体であるが,その性質には大きな違いがある。

1996年度のノーベル化学賞は,フラーレンC60の発見に対して,サセックス大

学のクロトー(イギリス),ライス大学のスモーリーとカール(アメリカ)の三教授に

与えられた。

 

オキソニウムイオン
 水和したプロトンで,普通H3Oで表される。水和が重要でないときには,単に
Hと表し,水素イオンと呼んでいる。
   HH2O―→ H3O
 非水溶媒,たとえばメタノールやジメチルエーテルにHが結合して生じるCH3

OH2(CH3)2OHなどは,メチルオキソニウムイオン,ジメチルオキソニウムイオ

ンと呼ばれている。
HCH3OH―→CH3OH2
H
(CH3)2O―→(CH3)2OH

水溶液中のHは,O原子の間を急速に移動し,個々のH3Oの寿命は約10-13

程度である。また,H3Oが水和した,下図のようなものも知られている。

 

 

水和水(結晶水)

 結晶中に一定の化合比で含まれる水のこと。結晶内で一定の位置を占め,その結

晶格子の安定化に必要な水で,一定の温度範囲で一定の水蒸気圧を示す。熱すれば

ある定まった温度で段階的に脱水が起こり,それに伴って結晶構造が変わる。

 結晶水には,陽イオンと配位結合してアクア錯イオンをつくっている配位水,陰

イオンと強く配位結合しているアニオン水,配位しないで結晶格子の空所を満たし

ている格子水などがある。たとえば,CuSO4·5H2Oの水4分子は配位水,水1分子は

アニオン水で,[Cu(H2O)4]SO4(H2O)とも表現できる。

 

錯イオン

 中心の金属イオンにいくつかの分子またはイオンが配位結合して,1つの原子集

団のイオンとなったものを錯イオンという。これらの分子またはイオンを配位子と

いい,配位子の数を配位数という。錯イオンは水溶液中で,構成イオンや分子にほ

とんど解離せず,1つのイオンとして働く。

 錯イオンを形成する金属イオンは,主として遷移元素のイオンであるが,マグネ

シウムやアルミニウムなども錯イオンをつくる。錯イオンの配位数は,金属元素の

種類によって異なり,246などがある。

 錯イオンの構造は直線形,正方形,正四面体,正八面体など,いろいろの形があ

る。また,配位子はNH3H2Oのような分子か,CN-Cl-などのような安定なイオン

がよく知られている。どれも非共有電子対をもち,その電子対によって中心金属と

配位結合で結びつく。配位子が水分子のときは,この水を特に配位水といい,その

水和錯イオンをアクア錯イオンと呼んでいる。たとえば,次のようなアクア錯イオ

ンがある。

    [Ni(H2O)6]2[Co(H2O)6]2[Fe(H2O)6]2[Cu(H2O)4]2

 したがって,これら金属イオンの水溶液の色は,イオンそのものの色ではなく,

水分子が配位された状態のアクア錯イオンの色である。

錯イオンの例

中心イオン

d電子数

配位数

立体構造

Cr3

3

6

正八面体

[Cr(NH3)6]3

Fe2

6

6

正八面体

[Fe(CN)6]4-

Fe3

5

6

正八面体

[Fe(CN)6]3-

赤褐

Co2

7

6

正八面体

[Co(NH3)6]2

淡赤

Co3

6

6

正八面体

[Co(NH3)6]3

黄赤

Ni2

8

6

正八面体

[Ni(NH3)6]2

青紫

Pt4

6

6

正八面体

[PtCl6]2-

Cu2

9

4

正方形

[Cu(NH3)4]2

深青

Ag

10

2

直線形

[Ag(NH3)2]

Au3

8

4

正方形

[AuCl4]

1個の配位子が2箇所以上で金属原子と結合し,金属原子を含む環状構造になる

とき,生成化合物をキレート化合物という。たとえば,エチレンジアミン銅(U)

[Cu{C2H4(NH2)2}2]2がこれにあたる。

 

キレート化合物は,金属イオンの分析に利用されるものがある。また,非電解質

で水に溶けてもイオンにならないものも存在する。下に示す化合物もその例である。

錯塩,錯イオン,キレート化合物などを総称して錯体とよぶ。

 

参考 ウェルナーの配位説

 錯塩の結合は,19世紀末頃まで説明がつかなかったが,1893Wernerがコバ

ルトアンミンを研究して,解明の糸口を開いた。これをWernerの配位説という。

 Wernerによれば,塩化コバルト(III)とアンモニアからなる配位化合物(高次化

合物)をコバルトアンミンという。コバルトアンミンには,色の美しい化合物が多

くあって,その色によって下表のように名がつけられていた。

 これらのコバルトアンミンの水溶液に硝酸銀溶液を加えると,式中のClの数は

同じであるのに,AgClの沈殿量が異なるのである。

CoCl3 · 6NH3    からは 3AgClが沈殿

CoCl3 · 5NH3H2O からは 3AgClが沈殿

CoCl3 · 5NH3    からは 2AgClが沈殿

CoCl3 · 4NH3    からは 1AgClが沈殿

 Wernerは,1887Arrheniusが発表した電離説を採用してAgClとして沈殿す

Clは,Cl-となっているもので,AgClとして沈殿しないものはCoと結合して

いると考えた。この考え方を基にして,[Co(NH3)6]Cl3[Co(NH3)5H2O]Cl3

[Co(NH3)5Cl]Cl2[Co(NH3)4Cl2]Clで表される式を導いた。

 Wernerは,このようにして数個の分子や基(イオン)が中心原子と結合すること,

すなわち配位の考えを明らかにした。

コバルトアンミン は,上がトランス形,下がシス形である

組 成 式

名称(名称の示す意味)

現在の式

CoCl36NH3

ルテオ塩(luteoは黄色)

[Co(NH3)6]Cl3

CoCl35NH3

赤紫

プルプレオ塩(purpureoは赤紫)

[CoCl(NH3)5]Cl2

CoCl34NH3*

プラセオ塩(praseo)

[CoCl2(NH3)4]Cl

CoCl34NH3*

ビオレオ塩(violeoは紫)

[CoCl2(NH3)4]Cl

CoCl35NH3H2O

ロゼオ塩(roseoは赤)

[Co(NH3)5(H2O)]Cl3

 

 

 

 








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