トップ>化学II>見返し>前見返し 元素の周期表
◆元素の周期表
周期表は,原子番号の順に元素を並べ,その性質に基づいて原子を配列した表で
ある。
(1) 族 周期表の縦の列を族とよび,族には1〜18族の18種類がある。
(2) 典型元素と遷移元素 赤線で囲んだ3〜11族の元素を遷移元素といい,そ
れ以外の元素を典型元素という。1972年以前には,12族元素も遷移元素に含め
ていたが,遷移元素の定義が「不完全に満たされたd軌道をもつ元素,またはそ
のようなd軌道をもつ陽イオンを生ずる元素」と改められ,現在のような分け方
となった。
(3) 金属元素と非金属元素 金属元素は,単体が
いわゆる金属の性質を示す元素であるが,一般には単体が半導体であるゲルマニ
ウムも含めて金属元素とよんでいる。
元素の大部分が金属元素で,非金属元素は22種類にすぎない。遷移元素はす
べて金属元素で,21Scを除いてすべて重金属である。
(4) 天然元素,人工元素,放射性元素 ここに示した元素のうち,43Tc,61Pm,
93Np〜109Mtの19種は,天然に存在せず人工的に合成されている人工元素である。
これらの元素には安定同位体が存在せず,放射性元素である。
天然に存在する放射性元素には,84Po〜92Uの9種がある。したがって,安定
同位体が存在する天然元素は,81種類となる。
(5) 周期と電子配置 周期表上の原子配置は,原子の電子配置と深い関係がある。
原子の最外殻を示す主量子数の数字は,各周期を示す数字と一致し,そのs,p
軌道を満たす過程が1つの周期を形成する。第4・5周期では,その過程でより
内側の電子殻のd軌道に電子が入り,第6・7周期ではより内側のd,f軌道に
電子が入っていくので,これらが遷移元素となり,周期中の元素数が増加する
(d軌道には10個,f軌道には14個の電子が収容できるので,各周期の元素数
は,第4周期が第3周期より10個多く,第6周期が第5周期より14個多い)。
(6) 4桁の原子量表 1983年に,国際純正および応用化学連合原子委員会が教
育上の効果を考え有効数字4桁の原子量表を発表した。その値は,詳しい原子量
の5桁目を四捨五入したものと同じである。
放射性元素で一定の同位体組成をもたないものについては,代表的な同位体の
質量数を括弧内に示した。
なお,原子番号110番以降の元素についてその化学的性質が明らかではなく,
従って周期表上の位置は暫定的なものである。
名が決定されていないが,元素の組織名とその代表的な質量数が次のように一般
の周期表では示されている。
110番;ダームスタチウムDs,269
111番;ウンウンウニウムUuu,272
112番;ウンウンビウム Uub,277
114番;ウンウンクワジウムUuq,289
116番;ウンウンヘキシウムUuh,292
(7) 周期表の新しい族番号 1986年8月に開催されたIUPAC無機化学命名法
委員会で,周期表の族番号を改訂した。新表示法では,左端のアルカリ金属の1
族から右端の希ガスの18族まで,合計18の族に元素を分類する。
新族番号は,日本化学会化合物命名法小委員会の審議を終えて日本でも採用さ
れ,1994年から新表示法に全面的に切り替えられた。
►周期律
原子番号の順に元素を配列すると,周期的に性質の似た元素が現れるという内容
の法則。原子番号と原子の電子配置との関係が明らかでなかった時代に,原子量
の小さいものから順に元素を並べることにより発見された。原子番号の順と原子量
の順とが入れ替わっているのは,放射性元素を除いて3か所(18Ar=39.948と19K=
39.0983,27Co=58.9332と28Ni=58.69,52Te=127.60と53I=126.9045)である。
これは後に,若い原子番号の元素に質量数の大きい同位体が多く含まれるためと説
明され,矛盾は解決した。そして,1914年に発見されたモーズリーの法則により,
原子番号の正確な意味がわかり,周期律は原子番号の順序で考えるべきであること
が明らかにされた。
周期律を示す事柄はいろいろある。マイヤーは融点や原子体積などの周期性を
1869年に見いだした。また,メンデレーエフは原子価,化合物の形式などの周
期性を見いだした。その他,イオン化エネルギーや,典型元素の単体の融点など
周期性の例として,融点・沸点〔°C〕,原子半径〔Å〕,電気陰性度,固体の
密度〔g/cm3〕のグラフを示す。

融点・沸点を見ると,各周期において典型元素では14族付近に極大があり,18
族で極小になることがわかる。これは,各周期の単体の結合方式を反映しており,
周期の初めに金属,中間に共有結合性物質,終わりに分子性物質がくるためである。
遷移元素の融点・沸点は比較的高い。
原子半径のグラフは,希ガスはファンデルワールス半径,非金属は共有結合半径,
金属は金属結合半径で示した。各周期では,アルカリ金属が極大となり,しだいに
減少する形となっており,周期が進むにつれて大きくなっていくことがよく理解で
きるグラフである。各周期の遷移元素では,ほぼ似た値を示し,隣り合う元素の性
質が似ていることが,よく理解できる。
電気陰性度は,ポーリングによるデータを示した。各周期では原子番号とともに
しだいに増加し,ハロゲンで極大となる関係がよく理解できる。
固体の密度は,融点・沸点とよく似たグラフとなり,その周期性の要因が結合の
種類によることを示している。
►メンデレーエフの周期律の長所
メンデレーエフの周期律は,ある形式の表をまとめたというだけでなく,表をつ
くる基本的な考え方において,彼の名を輝かしいものとした。その理由に,次の2
点がある。
(1) 不正確な原子量を,表中の元素の縦・横の関係から訂正した。1863年に発見
されたインジウムInは,当量が37.8とわかっていた。ところが,原子価が2価
と考えられていたために,原子量は37.8×2=75.6とされていた。彼は,周期表
上の1価・2価の原子価の位置が,どこも既知元素で占められていることや,密
度・融点・酸化物の性質などからInは3価ではないかと考え,37.8×3=113.4
を原子量とした。そうすると,ちょうどCdとSnの間の空欄にあてはまった。
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メンデレーエフの予測した元素と実際の元素との性質の比較 |
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性質 |
エカアルミニウム |
ガリウムGa |
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性質 |
エカボロン |
スカンジウムSc |
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原子量 |
68 |
69.9 |
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原子量 |
44 |
43.97 |
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比 重 |
5.5 |
5.94 |
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比 重 |
3.0
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2.5 |
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融 点 |
低い |
30°C |
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硫酸塩 |
Sc2(SO4)3 水に不溶 |
Sc2O3 水に不溶 |
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空気中 の変化 |
変化しない |
酸化されにくい |
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酸化物 |
Sc2O3 |
Sc2O3 |
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水との 変化 |
赤熱すると水 を分解 |
高温で水を分解 |
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比重3.5 |
比重3.864 |
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塩化物 |
弱塩基性 |
弱塩基性 |
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化合物 |
一種のミョウ バンをつくる |
NH4Ga(SO4)2・12H2O |
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ScCl3 |
ScCl3 |
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酸化物 |
Ga2O3 |
Ga2O3 |
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昇華性固体 |
約800°Cで昇華 |
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塩化物 |
GaCl3 |
GaCl3 |
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水に溶けて 分解 |
水に溶けて加 水分解 |
同様の考察から,Ceの92を138に,Uの120を240というように,数種の元素
の原子量を訂正した。
(2) 当時,未発見の元素の性質を,周期表の縦・横の元素の関係から予測し,新元
素発見の手がかりをつくった。前ページの表は,エカアルミニウム(後に発見さ
れガリウムと命名)とエカボロン(後に発見されスカンジウムと命名)についての,
彼の予測と実際のものの性質の対比である。
►メンデレーエフ
1834〜1907年。シベリアのトボルスクの中学校長を父として,14人兄弟の末子に生まれ
た。幼くして父を失い,生活の苦労を味わいながら成長した。科学は,シベリアへ追放中の
政治犯から初めて教わった。母はメンデレーエフの素質を見ぬき,彼に最高の教育を受けさ
せるため,首都のペテルスブルグに引越した。しかし,大学の学区制のため,シベリアで教
育を受けた彼は,ペテルスブルグ大学に入学することはできなかった。

母の努力により,結局彼は教育大学に入ったが,まもなく肺結核にかかった。
幾度も医者に見放される状態であったが,入院や転地療法によりしだいに健康をと
り戻すことができた。
その間も彼は熱心に勉強を続け,25才のときにはあこがれのヨーロッパ留学が
認められた。フランスとドイツで2年間をすごしたのち,かつて入学を許されなか
ったペテルスブルグ大学で化学を教えることになった。
講義用教科書を書きはじめた彼は,大きな問題にぶつかった。当時,60種ほど
の元素が知られていたが,それらを体系的に取り扱う理論が欠けていたのである。
原子量が1つの鍵になると思われた。ベルセリウスらの努力により,原子量はかな
り正確に決められていた。彼は,元素を原子量の順に並べてみた。ほかにもこのよ
うな試みをした化学者はいたが,彼の考えは一歩進んでいた。原子量の小さい元素
から順に左から右へ配置し,しかも原子価の同じ元素が上下に並ぶように,何段に
も重ねて並べた。こうして化学のバイブルといわれる「周期表」の最初の形ができ
た。彼はこの周期表を,1869年に口頭で,1871年に化学学術雑誌Liebig’s
Annalenに掲載した。
周期表をつくってみて,表にいくつかの空席ができることに彼は気づいた。この
空席には未発見の元素が入ると考えて,彼は1875年,未発見元素の性質を予言し
た。1875年,ボアボードランにより発見されたガリウム,1879年,ニルソンによ
るスカンジウム,そして1886年,ウインクラーによるゲルマニウムは,その性質
が彼の予言とほぼ同じであった。ここに,彼の名声は不動のものとなり,古代から
の「元素とは何か」という大問題の解決に,周期表は大きな役割を果たすことにな
った。
彼の実験上の主な功績に溶液の化学,液体−蒸気系の研究,石油の性質と成因の
研究がある。彼は,政治的出版物に自由主義的見解を述べたため,王立学士院会員
に選ばれなかった。1893年以後はロシアの度量衡標準局長になり,そこで研究を
続けた。
►族の名称
元素の族名は,一般にはその族の原子番号最小の元素名で呼ぶ。たとえば,3族
はスカンジウム族,13族はホウ素族となる。ただし,1族は水素が特別扱いなので
リチウム族となる。その他,特別の名称をもつ同族元素もあり,1族(Hを除く)はア
ルカリ金属,2族のCa〜Raはアルカリ土類金属,17族はハロゲン,18族は希ガス
(不活性気体)とよばれる。3族では,第6周期のLa〜Luをランタノイド,第7周期
のAc